F:フォードモーターの配当推移
フォードモーター(Ford Motor Company)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
2025 | 5.11% | -5% | 77% | 0.60 | 11.7 | 0.78 |
2024 | 5.43% | -5% | 43% | 0.63 | 11.6 | 1.46 |
2023 | 8.94% | -12% | 102% | 0.72 | 12.3 | 1.08 |
2022 | 3.36% | 400% | -102% | 0.5 | 14.9 | -0.49 |
2021 | 0.70% | -33% | 2% | 0.1 | 14.2 | 4.45 |
2020 | 2.14% | -75% | -47% | 0.15 | 7 | -0.32 |
2019 | 6.52% | -18% | 6000% | 0.6 | 9.2 | 0.01 |
2018 | 7.02% | 12% | 79% | 0.73 | 10.4 | 0.92 |
2017 | 5.51% | -24% | 34% | 0.65 | 11.8 | 1.93 |
2016 | 6.75% | 42% | 74% | 0.85 | 12.6 | 1.15 |
2015 | 4.00% | 20% | 33% | 0.6 | 15 | 1.84 |
2014 | 3.14% | 25% | 161% | 0.5 | 15.9 | 0.31 |
2013 | 2.61% | 100% | 14% | 0.4 | 15.3 | 2.94 |
2012 | 1.82% | – | 14% | 0.2 | 11 | 1.41 |
【出典】
Ford Motor Company (F)の配当と財務分析:変動するEV転換期の株主還元
変動する配当の実績と2025年の状況
Ford Motor Company(F)の配当実績は、自動車産業の景気循環性と同社独自の財務課題により、大きく変動してきました。2008年の金融危機に直面した同社は、深刻な損失と流動性の懸念から配当を完全に停止しました。財務再建とリストラクチャリングを経て2012年に配当を再開し、その後段階的に増加させましたが、2020年のCOVID-19パンデミックによる事業停止と需要急減により、再び大幅な配当削減(-75%)を実施。さらに2021年には自動車産業の構造的な変革期(電気自動車への移行)に対応するための資金確保として追加の削減(-33%)を行いました。
2025年の配当状況:2025年の年間配当は$0.60(前年$0.63から若干減少)で、現在の株価$11.70前後に対し配当利回りは約5.1%となっています。直近の第3四半期配当として$0.15が2025年8月11日を権利落ち日として宣言され、9月2日に支払われました。配当性向は約77%と高水準となっており、これは2025年のEPSが関税などの影響で$0.78程度に低下していることが要因です。
配当成長率と政策の推移(2025年更新)
Fordの配当政策は極めて変動的で、景気サイクルと企業再建の状況に大きく左右されています:
- 2008〜2011年:深刻な財務危機を背景に配当を完全停止
- 2012〜2016年:財務回復に伴う段階的な配当の再開と拡大($0.20から$0.85へ)
- 2017〜2019年:競争環境の悪化と電動化投資に備えた配当削減($0.65、$0.73、$0.60)
- 2020〜2021年:パンデミック危機と電気自動車転換に伴う大幅減配($0.15、$0.10)
- 2022〜2024年:事業回復と電気自動車戦略の進展に伴う配当の部分的回復($0.50、$0.72、$0.63)
- 2025年:関税影響とEV投資継続により微減($0.60)
このパターンは、自動車業界特有の景気循環性、金融危機からの回復、そして現在進行中の電気自動車へのシフトという戦略的転換を反映しています。2025年の注目点は、関税による年間約$2 billionの影響と、Ford+戦略における各事業部門の収益格差です。Ford Pro(商用車部門)は高収益を維持する一方、Model e(EV部門)は第2四半期だけで$1.33 billionの損失を計上しており、全社の配当政策にも影響を与えています。
配当性向と持続可能性(2025年分析更新)
配当性向(「1株配当 ÷ EPS」)は、Fordの場合、非常に変動的であり、EPSの大きな浮き沈みを反映しています。EPSがマイナスとなった年(2008年、2020年、2022年)には計算上、配当性向は negative となります。一方で、2014年(161%)、2016年(74%)、2018年(79%)、2019年(6000%)、2023年(102%)、そして2025年(77%)と、複数年で高い配当性向を記録しています。
2025年の配当性向77%の分析:2025年の配当性向上昇は、主に以下の要因によるものです:
- 関税による年間約$2 billionの負担(第2四半期だけで$800 million)
- 電気自動車部門(Model e)の継続的な損失
- リコール関連費用(第2四半期に$570 million)
- サプライチェーンコストの上昇
それでも、Fordの2025年第2四半期の営業キャッシュフローは$6.3 billion、調整フリーキャッシュフローは$2.8 billionと堅調で、年間配当約$2.4 billion($0.60×約40億株)を十分にカバーしています。
極端な配当性向の理解:特に2019年の異常に高い配当性向(6000%)は、EPSが極端に低い値になったことによる計算上の結果です。この年、Fordの純利益はわずか47M$と極めて低い水準でした(前年は3,677M$)。EPSはわずか0.01ドルとなり、0.60ドルの1株配当に対して6000%という異常な配当性向が算出されました。
会計上の一時的要因の影響:自動車メーカーの純利益は以下の理由で大きく変動します:
- 構造改革費用:工場閉鎖や人員削減に伴う一時的コスト
- 年金関連の特別損益:割引率変更や運用実績による変動
- 新製品開発や電気自動車への移行に伴う一時的費用
- 為替変動:グローバルに事業展開する自動車メーカーは為替の影響を大きく受ける
- 規制対応コスト:排出ガス規制の強化等に伴う技術投資や罰金
- 保証関連費用:リコールや品質問題に関連する引当金の変動
- 関税コスト:2025年は特に国際貿易政策による追加負担が顕著
これらの一時的な会計処理が純利益を大きく変動させるため、配当性向だけでは配当の持続可能性を正確に評価することは困難です。自動車業界の配当分析では、会計上の純利益よりも、営業キャッシュフローに対する配当の割合を見ることが重要となります。
財務パフォーマンスと成長見通し(2025年更新)
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。
主要財務指標の推移(2025年データ追加)
年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
---|---|---|---|---|
2025* | 192,000 | 20,000 | 10 | 3,100 |
2024 | 184,992 | 15,423 | 8 | 5,879 |
2023 | 176,191 | 14,918 | 8 | 4,347 |
2022 | 158,057 | 6,853 | 4 | -1,981 |
2021 | 136,341 | 15,787 | 12 | 17,937 |
2020 | 127,144 | 24,269 | 19 | -1,279 |
2019 | 155,900 | 17,639 | 11 | 47 |
2018 | 160,338 | 15,022 | 9 | 3,677 |
2017 | 156,776 | 18,096 | 12 | 7,731 |
2016 | 151,800 | 19,850 | 13 | 4,589 |
2015 | 149,558 | 16,226 | 11 | 7,373 |
2014 | 144,077 | 14,507 | 10 | 1,231 |
2013 | 146,917 | 10,444 | 7 | 11,953 |
2012 | 133,559 | 9,045 | 7 | 5,613 |
2011 | 135,605 | 9,784 | 7 | 20,213 |
2010 | 128,954 | 11,477 | 9 | 6,561 |
2009 | 116,283 | 15,477 | 13 | 2,717 |
2008 | 143,584 | -263 | 0 | -14,766 |
*2025年は第2四半期まで実績と通期予想に基づく推計値
収益性と効率性の変動(関税・EV影響含む)
Fordの財務データからは、自動車産業特有の景気循環性と構造転換の影響を強く受ける特性が見て取れます:
- 売上高は2008年の金融危機で大幅に減少した後回復し、COVID-19パンデミックで再び落ち込み、2022年以降は過去最高水準へ
- 営業CFマージンは2008年のマイナスから回復し、特に2020年には19%の高水準を記録、2022年に一時的に低下するも回復
- 純利益は極めて変動が大きく、2011年の20,213M$から2019年にはわずか47M$、2021年には再び17,937M$へと乱高下
- 2025年は関税により年間約$2 billionの追加コストが発生するも、売上高は過去最高の$192 billion予想
2025年の業績特徴:2025年第2四半期の業績は、収益$50.2 billion(前年同期比+5%)、調整EPS $0.37と市場予想を上回りました。しかし、調整EBITは$2.14 billion(前年同期$2.76 billion)に減少し、これは主に以下の要因によるものです:
- 関税による第2四半期$800 millionの負担(年間$2 billion予想)
- Ford Model e(EV部門)の$1.33 billion損失
- リコール関連費用$570 million
- 品質・保証コストの増加
一方で、Ford Pro(商用車部門)は第2四半期に$2.318 billionのEBITと好調な業績を維持しており、これが全社の収益を下支えしています。
変動するキャッシュフロー基盤(2025年見通し含む)
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。
年度 | 営業CF | 成長率 | 投資CF | 財務CF |
---|---|---|---|---|
2025* | 20,000 | 30 | -28,000 | -1,500 |
2024 | 15,423 | 3 | -24,370 | 7,485 |
2023 | 14,918 | 118 | -17,628 | 2,584 |
2022 | 6,853 | -57 | -4,347 | 2,511 |
2021 | 15,787 | -35 | 2,745 | -23,498 |
2020 | 24,269 | 38 | -18,615 | 2,315 |
2019 | 17,639 | 17 | -13,721 | -3,129 |
2018 | 15,022 | -17 | -16,261 | -122 |
2017 | 18,096 | -9 | -19,360 | 3,394 |
2016 | 19,850 | 22 | -25,302 | 7,400 |
2015 | 16,226 | 12 | -26,162 | 14,266 |
2014 | 14,507 | 39 | -21,124 | 3,423 |
2013 | 10,444 | 15 | -19,731 | 8,133 |
2012 | 9,045 | -8 | -14,290 | 3,705 |
2011 | 9,784 | -15 | -3,041 | -4,241 |
2010 | 11,477 | -26 | 6,908 | -24,421 |
2009 | 15,477 | -5985 | 6,619 | -22,830 |
2008 | -263 | -2,939 | -9,172 |
*2025年は第2四半期まで実績と通期予想に基づく推計値
Fordのキャッシュフローは、景気循環と戦略的投資の波を明確に反映しています:
- 2008年の金融危機時には営業CFがマイナスとなり、資金調達も困難な状況に
- 2009〜2017年は比較的安定した営業CF創出期(9,000M$〜20,000M$程度)
- 2020年のパンデミック時に営業CFが24,269M$と過去最高を記録(在庫削減と運転資本最適化)
- 2022年には営業CFが6,853M$まで急減(サプライチェーン混乱と電気自動車投資の影響)
- 2023〜2024年にかけて再び15,000M$前後の安定水準に回復
- 2025年は第2四半期だけで$6.3 billionと好調で、通期$20 billion程度の高水準を予想
2025年のキャッシュフロー特徴:
- 営業CFは関税負担にもかかわらず堅調(第2四半期$6.3 billion)
- 調整フリーキャッシュフローも第2四半期$2.8 billionと健全
- 投資CFは$28 billion規模の大規模投資継続(EV関連設備とR&D)
- 運転資本管理の効率化により、売上高の増加に対してCF効率が改善
投資CFを見ると、いくつかの特徴的なパターンが見られます:
- 2009〜2010年はポジティブな投資CF(金融危機時の資産売却と投資抑制)
- 2013〜2017年は大規模な投資期(-19,000M$〜-26,000M$)
- 2021年には投資CFがプラス(2,745M$)となり、非中核資産の売却を示唆
- 2023〜2025年は再び大規模投資へ(年間$17,628M$〜$28,000M$)で、電気自動車への積極投資を反映
キャッシュフロー分析のポイント:Fordのキャッシュフローパターンは、「景気サイクル対応→戦略的投資→構造転換」の進化を示しています。現在は、従来型車事業からの安定したキャッシュフローを活用しながら、電気自動車およびコネクテッドカー技術への投資を拡大する転換期にあると言えます。特に2025年の大規模投資継続は、Ford+戦略の実行とEV競争力強化への同社のコミットメントを示しています。
財務の健全性と資本構成(2025年見通し)
以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。
年度 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 | 負債比率 |
---|---|---|---|---|---|
2025* | 295,000 | 248,000 | 47,000 | 16 | 528 |
2024 | 285,196 | 240,338 | 44,858 | 16 | 536 |
2023 | 273,310 | 230,512 | 42,798 | 16 | 539 |
2022 | 255,884 | 212,717 | 43,167 | 17 | 493 |
2021 | 257,035 | 208,413 | 48,622 | 19 | 429 |
2020 | 267,261 | 236,450 | 30,690 | 11 | 770 |
2019 | 258,537 | 225,307 | 33,185 | 13 | 679 |
2018 | 256,540 | 220,474 | 35,932 | 14 | 614 |
2017 | 258,496 | 222,792 | 35,578 | 14 | 626 |
2016 | 237,951 | 208,668 | 29,170 | 12 | 715 |
2015 | 224,925 | 196,174 | 28,642 | 13 | 685 |
2014 | 208,615 | 183,808 | 24,438 | 12 | 752 |
2013 | 202,179 | 175,703 | 26,112 | 13 | 673 |
2012 | 189,406 | 173,095 | 15,947 | 8 | 1085 |
2011 | 178,348 | 163,277 | 15,028 | 8 | 1086 |
2010 | 164,687 | 165,329 | -673 | 0 | -24566 |
2009 | 192,040 | 199,822 | -7,820 | -4 | -2555 |
2008 | 218,298 | 232,825 | -15,722 | -7 | -1481 |
*2025年は第2四半期まで実績と通期予想に基づく推計値
Fordの資本構成には、金融危機からの回復と電気自動車時代への準備という二つの大きな変化が見られます:
- 2008〜2010年:株主資本がマイナス(金融危機の深刻な影響)
- 2011〜2020年:株主資本のプラス転換と徐々な改善(8%から14%へ)
- 2021年:自己資本率が大幅に改善し19%へ(パンデミック後の収益回復と税効果)
- 2022〜2025年:電気自動車投資に伴い自己資本率が16%で安定
2025年の財務状況:2025年は自己資本率16%、負債比率528%という水準で、過去数年間と類似した財務構造を維持する見込みです。総資産は約$295 billionまで拡大する予想で、これは主にEV関連の設備投資と研究開発投資によるものです。
資本構成の変化には、以下の要因が影響していると考えられます:
- 2008〜2010年:金融危機と自動車需要の急減による大幅な損失
- 2011〜2013年:「One Ford」戦略による事業合理化と収益性回復
- 2014〜2020年:グローバル展開と新技術投資による資産拡大と負債増加
- 2021年:パンデミック後の収益急回復とリストラ効果による株主資本の大幅改善
- 2022〜2025年:電気自動車への大規模投資と市場競争激化による収益変動
- 2025年:関税・品質コスト増加下でも安定した財務基盤を維持
流動比率は2015年以降、概ね120%前後の安定した水準を維持しており、短期的な支払い能力には問題がない状況です。ただし、自動車業界の基準からするとFordの自己資本率(16%)はやや低く、負債比率(528%)は高い水準にあります。これは、自動車製造業と金融サービス業(Ford Credit)を併せ持つFordの事業構造を反映しています。
まとめ:長期配当投資家にとってのFordとは?(2025年更新版)
Ford Motor Companyは、世界的な自動車メーカーとして景気循環と産業の構造的変化の両方に直面しながら、財務再建と事業転換を進めています。配当投資家の観点からは、同社の株主還元は景気サイクルと戦略的優先順位に大きく影響される特性を持っています。
同社の強みは以下の点にあります:
- 北米市場(特にピックアップトラックとSUV)における強固な市場地位と収益力
- 危機からの回復力と事業構造改革の実績(2008年金融危機とCOVID-19パンデミック)
- 電気自動車戦略への積極投資と商用車分野におけるリーダーシップ
- 関税逆風下でも安定した営業キャッシュフロー創出能力(2025年予想$20B)
- Ford Credit(金融部門)による安定的な収益貢献
- 過去の危機時に配当を一時停止した後も回復させてきた実績
- Ford Pro(商用車)部門の高収益性と成長性
一方で、注意すべき点としては:
- 配当の安定性に欠け、景気後退期には削減または停止された実績(2008年、2020年)
- 純利益の変動性が極めて高く、予測が困難
- 電気自動車への移行に伴う大規模資本投資の必要性
- Model e(EV部門)の継続的な大幅損失(2025年Q2で$1.33B)
- グローバル競争の激化(特に中国メーカーと新興EV専業メーカー)
- 従来型エンジン車からEVへの利益構造の転換リスク
- 規制環境の変化:排出ガス規制の強化や各国のEV推進政策の影響
- 自動車産業特有の高い固定費構造と景気循環への脆弱性
- 関税政策による年間$2 billionレベルの追加コスト負担
- リコール・品質問題の頻発とコスト増加
2025年投資家へのポイント:Fordへの投資は、「構造転換期における高リスク・高リターンの機会」という特性を持っています。同社は伝統的自動車メーカーとしての収益基盤を活かしながら、電気自動車とコネクテッドカーへの移行を進めるという転換期にあります。配当投資家としては、景気サイクルや戦略的転換期における配当の変動を前提とした投資アプローチが適切です。
特に、2025年は関税による年間$2 billionの逆風とModel e部門の継続的損失により、配当性向が77%と高水準にあります。一方で、Ford Pro部門の好調な業績と強固な営業キャッシュフロー(第2四半期$6.3B)が配当を支えています。長期的には、電気自動車の収益化成功とFord+戦略の実行が、持続可能な配当成長の鍵となるでしょう。
よくある質問(2025年更新)
2025年の関税影響でFordの配当は安全ですか?
関税により年間約$2 billionの追加コストが発生していますが、Fordの配当は短期的には維持可能と考えられます。同社の2025年第2四半期営業キャッシュフローは$6.3 billionと堅調で、調整フリーキャッシュフローも$2.8 billionを記録しています。年間配当約$2.4 billion($0.60×約40億株)に対し、十分なカバー力があります。ただし、配当性向77%は高水準であり、関税が長期化した場合や景気後退が重なった場合は、配当調整の可能性も排除できません。重要なのは、Ford Pro(商用車部門)の高収益性が配当を下支えしている点です。一方で、Model e(EV部門)の損失が継続する限り、配当政策への圧力は続くと考えられます。
Ford Model e(EV部門)の巨額損失は配当にどう影響しますか?
Ford Model e部門は2025年第2四半期だけで$1.33 billionの損失を計上しており、これは配当政策に深刻な影響を与える可能性があります。同部門の損失は主に、EV市場の競争激化、生産効率の課題、技術開発コストの高騰によるものです。短期的には、Ford Pro(商用車)とFord Blue(従来車)の収益がこの損失をカバーしていますが、長期的にはEV事業の収益化が配当の持続可能性にとって重要です。Fordは2026年までに年間200万台以上のEV生産能力確立を目指していますが、この移行期間中は配当よりも戦略的投資を優先する可能性があります。投資家としては、EV市場でのシェア拡大と収益化の進展を注視し、短期的な配当変動を受け入れる覚悟が必要でしょう。
2025年の営業キャッシュフローが好調な理由は何ですか?
2025年第2四半期の営業キャッシュフロー$6.3 billionという好調な結果は、複数の要因によるものです。第一に、運転資本管理の効率化です。在庫回転率の改善、売掛金回収の迅速化、サプライヤーとの支払い条件最適化により、売上高の増加以上にキャッシュフロー効率が向上しています。第二に、価格設定力の強化です。特にFord Pro部門では、商用車の強い需要を背景に価格上昇を実現し、関税コストの一部を相殺しています。第三に、製造効率の改善です。「Ford+」戦略の一環として、生産プロセスのデジタル化と自動化が進み、固定費の吸収率が向上しています。第四に、金融部門(Ford Credit)の安定した貢献です。これらの要因が複合的に作用し、関税や品質コストの逆風にもかかわらず、強力なキャッシュフロー創出を実現しています。
Ford Proの好業績は持続可能ですか?
Ford Pro(商用車部門)は2025年第2四半期に$18.8 billionの収益と$2.318 billionのEBITを記録し、全社の収益を牽引しています。この好業績の持続可能性は比較的高いと考えられます。理由として、第一に商用車市場の構造的成長があります。eコマースの拡大、ラストワンマイル配送の需要増加、インフラ投資の拡大により、商用車への需要は中長期的に堅調です。第二に、Fordの商用車での競争優位性です。F-150やトランジットなどの実績ある製品ラインと、商用顧客向けのサービス・ソリューションの提供により、高い顧客ロイヤルティを確立しています。第三に、電動化への対応です。商用EVの分野でも先行投資を行っており、規制強化に対応しつつ新たな収益機会を創出しています。ただし、経済減速時には商用車需要も影響を受けるため、景気サイクルへの注意は必要です。それでも、Ford Proは当面の間、同社の収益とキャッシュフローを支える重要な柱となるでしょう。
【2025年9月更新情報】
- 2025年第2四半期までの最新財務データを反映
- 年間配当$0.60(微減)と配当性向77%の最新情報を追加
- 関税影響(年間約$2 billion)の詳細分析を追加
- Ford Model e(EV部門)の損失状況と影響を分析
- Ford Pro(商用車部門)の好業績を詳述
- 最新株価情報($11.70前後)と配当利回り5.1%を更新
【出典】
- 配当情報
- 年間報告書
- IRページ
- Macrotrends – F Financial Statements
- Koyfin – F配当情報
- 平均株価はグーグルファイナンス関数を用いて計算