FDX:フェデックスの配当推移

資本財,配当






FedEx配当利回りと株価分析 2025年最新版


フェデックス (FedEx Corp.) の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

(*年次決算が5月なので平均株価は6月1日~5月30日の期間で計算しています)

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2025 2.58% 12% 34% 5.80 225.0 17.21
2024 1.86% 10% 30% 5.16 277.1 17.21
2023 1.85% 39% 30% 4.71 254.3 15.48
2022 1.69% 26% 24% 3.4 201.7 14.33
2021 1.10% 4% 14% 2.7 246.4 19.45
2020 1.07% 0% 53% 2.6 243.7 4.9
2019 1.76% 30% 128% 2.6 147.6 2.03
2018 0.96% 25% 12% 2 208.9 16.79
2017 0.69% 60% 14% 1.6 231.9 11.07
2016 0.56% 25% 15% 1 179.4 6.51
2015 0.51% 33% 22% 0.8 155.7 3.65
2014 0.37% 7% 8% 0.6 164.3 7.48
2013 0.45% 8% 7% 0.56 125 8.55
2012 0.55% 8% 8% 0.52 93.7 6.41
2011 0.56% 9% 11% 0.48 85.4 4.57
2010 0.50% 0% 12% 0.44 87.8 3.76
2009 0.57% 10% 142% 0.44 77.3 0.31
2008 0.61% 11% 11% 0.4 65.5 3.6

【出典】

一貫した配当成長の歩み

FedExの配当実績は、物流業界の変動にも関わらず、長期的に安定した成長を遂げています。2008年の1株あたり0.40ドルから2025年には5.80ドルへと約14.5倍に増加しました。特に2015年以降、配当成長が加速し、2017年には前年比60%増、2019年には30%増と大幅な増配を実施。2020年のCOVID-19パンデミック時には一時的に配当を据え置きましたが、その後も成長を継続し、2023年には39%の増配、2025年には12%の増配を実現しています。

同社は現在5年連続で増配を継続しており、2025年の年間配当$5.80は過去最高水準となっています。これは株主還元を重視する経営方針と、DRIVEプログラムによるコスト削減効果が配当支払能力の向上に寄与していることを示しています。

2025年の業績動向とDRIVEプログラムの成果

2025年(2025年5月期)のFedExは、変革プログラムの成果が顕著に現れた年となりました。年間売上高は$87.9B(前年比微増)、調整後EPSは$17.21を維持し、安定した業績を実現しました:

  • DRIVEプログラムの完遂:目標の$4Bコスト削減を達成し、収益性が大幅に改善
  • 効率化の進展:設備投資を$5.2Bから$4.1Bに削減(22%減)、対売上高比率は史上最低を記録
  • 株主還元の拡大:配当と自社株買いで年間$4.3Bを株主に還元
  • 事業再構築の進展:FedEx Freightのスピンオフを2026年6月に予定

2026年度も新たに$1Bのコスト削減を計画しており、継続的な効率化により収益性のさらなる向上が期待されています。第1四半期のガイダンスでは、売上高は横ばい〜2%増、調整後EPSは$3.40-$4.00と予想されており、堅調な業績継続が見込まれます。

配当成長率の推移

FedExの配当成長率は以下のように推移してきました:

  • 2008〜2014年:安定期(7〜11%の緩やかな成長)
  • 2015年:成長加速の始まり(33%増)
  • 2016〜2019年:積極的増配期(25〜60%の高成長)
  • 2020年:パンデミックの影響で据え置き(0%)
  • 2021〜2025年:持続的成長期(4〜39%、平均約15%)

このパターンは、FedExのビジネスモデルの進化と経営戦略の変化を反映しています。特に注目すべきは、2015年以降の配当成長の加速です。これは同社がeコマースの急成長の恩恵を受けると同時に、株主還元を重視する戦略へとシフトしたことを示しています。2025年の12%増配は、DRIVEプログラムの成功による利益率改善の成果を株主と分かち合う姿勢の表れといえるでしょう。

配当性向の持続可能性

FedExの配当性向(配当÷EPS)は、一部の年を除いて比較的安定した推移を見せています:

  • 2008〜2018年:概ね7〜15%の低い配当性向を維持
  • 2009年および2019年:例外的に高い配当性向(それぞれ142%と128%)
  • 2020年:一時的に上昇(53%)
  • 2021〜2025年:安定した30〜34%の水準に収束

高配当性向年の理解:2009年と2019年の異常に高い配当性向は、特殊要因によるEPSの一時的な落ち込みが原因です:

  • 2009年:世界金融危機の影響で純利益が98M$まで減少し、EPSが0.31ドルと極めて低い水準となりました。この年は配当を維持する方針を採ったため、結果的に配当性向が142%となりました。
  • 2019年:事業構造改革費用や年金関連の特別費用により、純利益が540M$に落ち込み、EPSが2.03ドルとなりました。この年も配当を2.60ドルに増額したため、配当性向は128%に達しました。

最近の傾向:2021年以降、FedExは30%台前半の配当性向を安定的に維持しています。これは同社が持続可能な配当政策を確立したことを示唆しています。この水準は物流業界としては適正であり、成長投資ニーズとのバランスを考慮すると、持続可能な範囲内にあると評価できます。

財務パフォーマンスと成長見通し

2025年業績と将来展望

期間 売上高($B) 営業利益($B) 調整後EPS($) 純利益($B)
2025年通年 87.9 17.21 4.09
2025年Q4 22.22 6.07 1.65
2024年通年 87.7 17.80 4.33
2026年Q1見通し 21.5-21.9 3.40-4.00

2025年通年では売上高$87.9B(前年比微増)、純利益$4.09B(前年比-5.5%)と、売上は安定している一方で利益は若干減少しました。これは主に変革コストの影響によるものですが、調整後ベースでは安定した収益性を維持しています。

主要財務指標の推移

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2025 87,900 8,500 10 4,090
2024 87,693 8,312 9 4,331
2023 90,155 8,848 10 3,972
2022 93,512 9,832 11 3,826
2021 83,959 10,135 12 5,231
2020 69,217 5,097 7 1,286
2019 69,693 5,613 8 540
2018 65,450 4,674 7 4,572
2017 60,319 4,930 8 2,997
2016 50,365 5,708 11 1,820
2015 47,453 5,366 11 1,050
2014 45,567 4,264 9 2,324
2013 44,287 4,688 11 2,716
2012 42,680 4,835 11 2,032
2011 39,304 4,041 10 1,452
2010 34,734 3,138 9 1,184
2009 35,497 2,753 8 98
2008 37,953 3,465 9 1,125

収益性と効率性の変動

FedExの財務データからは、成長の軌跡とビジネスモデルの変化が見て取れます:

  • 売上高は2008年の37,953M$から2022年の93,512M$へと約2.5倍に成長
  • 2020年のパンデミックで一時的に売上が停滞するも、2021年には急回復(21%成長)
  • 2022年にピークの93,512M$に達した後、2023-2025年は安定化(87-90B$レンジ)
  • 営業CFマージンは7〜12%の範囲で推移し、2021年に最高の12%を記録
  • 純利益は変動が大きく、特に2009年と2019年に大幅減少、2018年と2021年に高水準を記録

特に注目すべきは、2025年のDRIVEプログラム完遂による構造的な効率性向上です。設備投資の大幅削減にもかかわらず営業CFを維持しており、資本効率の改善が顕著です。2026年以降はさらなる$1Bのコスト削減により、利益率のさらなる向上が期待されます。

安定したキャッシュフロー基盤

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2025 8,500 2 -4,100 -4,300
2024 8,312 -6 -5,200 -3,426
2023 8,848 -10 -6,174 -2,597
2022 9,832 -3 -6,816 -3,019
2021 10,135 99 -6,010 -2,090
2020 5,097 -9 -5,846 3,381
2019 5,613 20 -5,473 -1,039
2018 4,674 -5 -5,677 227
2017 4,930 -14 -4,981 528
2016 5,708 6 -9,446 3,611
2015 5,366 26 -5,752 1,349
2014 4,264 -9 -3,551 -2,719
2013 4,688 -3 -3,803 1,184
2012 4,835 20 -4,049 -244
2011 4,041 29 -3,419 -287
2010 3,138 14 -2,781 -692
2009 2,753 -21 -2,383 400
2008 3,465 -3 -2,897 -617

FedExの強みは、安定したキャッシュフロー創出能力にあります。2025年の主な特徴:

  • 営業CFは$8.5Bと堅調に推移(年間配当支払額約$1.4Bを十分カバー)
  • 投資CFは$4.1Bと前年から大幅減(22%削減)、効率的な資本配分を実現
  • 財務CFは-$4.3Bと大きなマイナス(積極的な株主還元を反映)
  • フリーキャッシュフローは$4.4Bと健全な水準を維持

特に注目すべきは、2025年の設備投資削減です。従来の$5-6B水準から$4.1Bに圧縮しながらも、ネットワークの機能は維持しており、DRIVEプログラムによる効率化の成果が顕著に現れています。

負債水準と資本構成

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 負債比率
2025 88,000 60,000 28,000 32 214
2024 87,007 59,425 27,582 32 215
2023 87,143 61,055 26,088 30 234
2022 85,994 61,055 24,939 29 245
2021 82,777 58,609 24,168 29 243
2020 73,537 55,242 18,295 25 302
2019 54,403 36,646 17,757 33 206
2018 52,330 32,914 19,416 37 170
2017 48,552 32,479 16,073 33 202
2016 45,959 32,175 13,784 30 233
2015 36,531 21,538 14,993 41 144
2014 33,070 17,793 15,277 46 116
2013 33,567 16,169 17,398 52 93
2012 29,903 15,176 14,727 49 103
2011 27,385 12,165 15,220 56 80
2010 24,902 11,091 13,811 55 80
2009 24,244 10,618 13,626 56 78
2008 25,633 11,107 14,526 57 76

FedExの資本構成は2021年以降安定化しており、2025年も自己資本率32%、負債比率214%と健全な水準を維持しています:

  • 総資産は$88Bと安定しており、効率的な資産運用を実現
  • 株主資本は$28Bと過去最高水準に達し、財務基盤の強化が継続
  • 負債比率は214%と、2020年のピーク(302%)から大幅に改善
  • 自己資本率32%は、運輸業界としては適正な水準を維持

2026年に予定されているFedEx Freightのスピンオフにより、さらなる財務構造の最適化が期待されます。

まとめ:長期配当投資家にとってのFedExとは?

FedExは、物流業界のリーディングカンパニーとして、構造的な変革を成功させながら安定した成長と株主還元の強化を両立させています。2025年のDRIVEプログラム完遂は、同社が新たな成長ステージに入ったことを示しています。

同社の強みは以下の点にあります:

  • 5年連続増配記録と今後も継続可能な配当政策
  • DRIVEプログラムの成功による構造的な効率性向上
  • 安定した営業キャッシュフロー創出能力(年間$8.5B水準)
  • 健全な財務基盤(自己資本率32%、負債比率214%)
  • 継続的な変革への取り組み(2026年に追加$1B削減予定)
  • FedEx Freightスピンオフによる事業集中とバリューアップ期待
  • eコマース市場の構造的成長による長期的な追い風

一方で、注意すべき点としては:

  • 競争激化:Amazon Logisticsなど新規参入による利益率への圧力
  • マクロ経済の影響:景気減速や貿易摩擦による荷物量への影響
  • 燃料価格リスク:原油価格変動による運営コストへの影響
  • 労働コストの上昇:人手不足とインフレによるコスト圧力
  • 設備投資の必要性:長期的な競争力維持のための継続的投資
投資家へのポイント:FedExへの投資は、「変革完了後の安定成長と配当拡大」という特性を持っています。DRIVEプログラムの成功により、同社は構造的に高い収益性を実現できる体制を構築しました。2026年以降の追加コスト削減とFedEx Freightスピンオフにより、さらなる株主価値向上が期待できます。配当投資家としては、5年連続増配の実績と34%という持続可能な配当性向を評価できるでしょう。現在の配当利回り2.6%は歴史的に見て妥当な水準であり、今後の配当成長により総リターンの向上が期待できます。短期的には経済環境の影響を受ける可能性がありますが、長期的には物流インフラの不可欠な担い手として安定した株主還元を続けると期待できます。

よくある質問

FedExの配当はどれくらい安全ですか?

FedExの配当は非常に安全と評価できます。2025年の配当性向は34%と適正水準であり、営業キャッシュフロー$8.5Bに対して年間配当支払額は約$1.4Bと十分な余裕があります。同社は5年連続で増配を継続しており、2020年のパンデミック時にも配当を維持したことは、配当に対するコミットメントの強さを示しています。また、DRIVEプログラムの成功により構造的な効率性が向上しており、配当支払能力は以前より強化されています。自己資本率32%という健全な財務基盤も、配当の安全性を支える要因です。2026年のFedEx Freightスピンオフにより、コア事業への集中とさらなる効率化が期待されるため、配当の持続可能性はさらに高まると考えられます。

DRIVEプログラム完了後の成長戦略はどのようなものですか?

DRIVEプログラム完了後のFedExは、「効率性追求から成長投資へ」の段階的シフトを計画しています。2026年にはさらに$1Bのコスト削減を目標としており、継続的な効率化による利益率向上を図ります。同時に、以下の成長戦略を推進する予定です:(1)FedEx Freightのスピンオフによるコア事業への集中と株主価値の最大化、(2)デジタル化とeコマース需要拡大への対応強化、(3)国際ネットワークの最適化と新興市場での事業拡大、(4)持続可能な物流ソリューションへの投資(電動車両、再生可能エネルギーなど)。これらの戦略により、同社は安定した収益性を維持しながら、長期的な成長機会を追求する方針です。投資家にとっては、効率化による短期的な利益拡大と、成長投資による長期的な価値創造の両方が期待できます。

FedEx Freightのスピンオフは配当にどのような影響を与えますか?

2026年6月に予定されているFedEx Freightのスピンオフは、配当政策にプラスの影響を与えると期待されます。スピンオフにより、FedExはコア事業(エクスプレス、グラウンド、サービス)に集中でき、より効率的な資本配分が可能になります。具体的な影響として:(1)コア事業の利益率向上により、配当支払能力が強化される、(2)スピンオフ企業の独立により、株主は2つの会社の株式を保有することになり、総リターンの向上が期待される、(3)各社が独自の配当政策を採用できるため、株主還元の最適化が図られる、(4)負債の分離により、FedEx本体の財務健全性がさらに改善される。経営陣は、スピンオフ後も配当成長を継続する意向を表明しており、コア事業の収益性向上と効率的な資本配分により、現在の配当成長トレンドが維持されると予想されます。投資家にとっては、スピンオフによる一時的な複雑さはあるものの、長期的には株主価値の向上につながる重要な戦略的転換点と位置づけられます。

現在の株価水準(約$225)は投資タイミングとして適切ですか?

現在のFedEx株価(約$225)は、投資タイミングとして魅力的な水準にあると考えられます。株価は2024年7月の最高値$308.53から約27%下落しており、これは市場の過度な悲観を反映している可能性があります。アナリストの平均目標株価は$282.75と、現在価格から約25%の上昇余地を示しています。バリュエーション面では、P/E比約13.7倍と歴史的平均を下回る割安水準で取引されており、DRIVEプログラムの成功による構造的な収益性向上を考慮すると魅力的です。また、配当利回り2.6%は過去の平均的な水準であり、今後の配当成長を考慮すると十分な投資魅力があります。リスク要因として短期的な経済減速の影響はありますが、FedExの構造改革完了と2026年のスピンオフ期待を考えると、中長期投資家にとっては良いエントリーポイントと判断できます。特に配当投資家にとっては、現在の利回り水準で5年連続増配企業を取得できる機会として価値があるでしょう。

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

【出典】


Posted by 南 一矢