【米自動車大手対決】GM vs フォード(F)!EV時代の勝者は?配当と戦略を徹底比較

アメリカの魂とも言える自動車産業の二大巨頭、ゼネラル・モーターズ(GM)フォード・モーター(F)。長年のライバルである両社は今、「100年に一度の変革期」と言われるEV(電気自動車)シフトの荒波の真っただ中にいます。高配当株として注目されることも多いですが、その配当には注意すべき歴史があります。

本記事では、この伝統的な自動車メーカーがEV時代をどう戦うのか、その戦略、業績、そして株主還元の実態を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:配当は「安定」ではない

高配当株として語られる両社ですが、インカム投資家は注意が必要です。GMとフォードは、コロナショックが起きた2020年に、揃って配当金の支払いを一時停止(無配化)しました。GMは2022年に配当再開(四半期$0.09で再開 → その後増額)、フォードも定期配当を戻し、年によって補足的な「特別配当」を組み合わせています。自動車は典型的なシクリカル産業であり、不況時に減配・無配の可能性を常に織り込むべきです。[1]

EV戦略の違い:統合のGM、分業のフォード

  • GM(ゼネラル・モーターズ) → 「Ultium(アルティウム)」プラットフォーム戦略
    共通電動プラットフォームUltiumを高級車からピックアップまで横断展開。電池についてはNMC系(NMCA)だけでなく、LFPや高エネルギー密度の新化学(LMR等)を車格で使い分け、コストと供給安定性を両立する方針です。[2][3][4]
  • フォード(F) → 事業分割の「Ford+」体制
    収益源のICE(エンジン車)Ford Blue、投資加速のModel e(EV)、商用のFord Proの三本柱に分け、KPI・損益も分けて可視化。Blue/Proで稼ぎ、Model e へ投資する「分業」戦略です。[5]

比較サマリー:EV戦略で未来は変わるか

項目 ゼネラル・モーターズ (GM) フォード・モーター (F)
EV戦略 共通プラットフォーム「Ultium」による統合戦略(複数電池化学を柔軟採用) ICE/EV/商用の3部門に分けた分業戦略(Blue・Model e・Pro)
現在の利益源 大型ピックアップ・SUVなど高収益なICEが主柱(EVは成長投資段階)
配当の歴史 2020年に無配化 → 2022年以降に段階的に復配(GMは増配継続中、Fordは年により特別配当)[1][6]
配当利回り(直近目安) 1%前後(四半期$0.15/2025年時点)[7] 約5%前後($0.15/四半期+年次の特別配当は変動)[6]
PER(参考レンジ) 約5~8倍 10~14倍

業績と成長性の詳細分析

コロナ後の需給正常化・価格ミックス改善で両社は2023~2024年にかけて回復。もっとも、金利・労務コスト・EV投資(特に電池)などの逆風は続き、成長の軌跡は平坦ではありません。

GM 売上高(前年比) F 売上高(前年比)
2024 $171.8 B (+約9–10%)[8] $176.2 B (+約11%)[9]
2023 $156.7 B (+約23%) $158.1 B (+約16%)
2022 $127.0 B (+約4%) $136.4 B (+約7%)
2021 $122.5 B (-約11%) $127.5 B (-約18%)
2020 $137.1 B $156.2 B

※B=10億ドル。GMは2024年通期のIR開示、Fordは2024年Form 10-K(12/31期)。前年比は各社開示・IR資料のレンジに基づく概算。

配当の詳細比較:復活した配当、その中身は?

GMは復配後、2024年に四半期$0.12 → 2025年に$0.15と段階的に増配。Fordは定期$0.15/四半期に加え、年次の特別配当を組み合わせる方針(例:2025年1Qに$0.15の特別配当)。

GM 年間配当(増配率) F 年間配当(増配率)
2024 $0.48($0.12×4)(+33%) $0.60 + 特別配当(年次で可変)
2023 $0.36($0.09×4)(復配1年目) $0.60 + 特別配当(実施)
2022 $0.09(9–12月分) $0.40(定期配当再開)
2021 $0.00(無配) $0.15
2020 $0.00(無配) $0.00(無配期あり)

参考:Fordは2025年1Qに$0.15の特別配当を宣言。年次の補足配当は業績・FCFに連動し変動します。[6]

関連記事:
ゼネラルモーターズ(GM)の配当推移
フォードモーター(F)の配当推移

結論:あなたに合うのはどちら?

「共通基盤(プラットフォーム)化」の効率性に賭けるなら → ゼネラル・モーターズ (GM)

Ultiumの水平展開と、LFP等の低コスト電池を含む多化学戦略はスケール優位を最大化。増配基調も確認でき、回復局面のレバレッジを取りに行く投資家に向きます。[2][7]

「事業分割による選択と集中」の明確さを評価するなら → フォード・モーター (F)

Blue/Proが利益を下支えする一方、Model e は投資フェーズ。Ford Proの商用×ソフト/サービスは景気耐性と粘着性が高く、配当+特別配当のポリシーも魅力です。[5][10]


※本ページの分析は2025年8月29日(日本時間)時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

  1. GM、配当再開(2022/8/19発表):Reuters
  2. GM公式:EV/Ultiumの概要:GM EVサイト
  3. FT:GMの北米電池戦略強化(LFP等、供給網内製化):Financial Times
  4. WIRED:LFP導入・低コスト化の最新動向:WIRED
  5. Ford「新セグメント(Blue/Model e/Pro)説明会」:Investor Teach-In
  6. Ford、2025年1Qに特別配当$0.15(定期$0.15に追加):Automotive World
  7. GM、四半期配当を$0.15へ(2025/7/21発表):GM IR
  8. GM 2024通期リリース(業績概要・見通し):GM IR
  9. Ford 2024 Form 10-K(通期売上等):SEC EDGAR
  10. Ford 2025 Integrated Report(Pro等の戦略・収益質):Integrated Report 2025