HD:ホームデポの配当推移
ホームデポ(The Home Depot Inc)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
(*年次決算が1月なので平均株価は2月1日~1月31日の期間で計算しています)
年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
2024 | 2.42% | 2.2% | 61.8% | 9.20 | 374.3 | 14.91 |
2023 | 2.74% | 7.7% | 56.8% | 8.52 | 311.1 | 15.11 |
2022 | 2.55% | 14% | 50% | 7.79 | 305.7 | 15.53 |
2021 | 2.05% | 11% | 57% | 6.85 | 334.3 | 11.94 |
2020 | 2.44% | 13% | 60% | 6.15 | 252.5 | 10.25 |
2019 | 2.57% | 32% | 56% | 5.44 | 211.4 | 9.73 |
2018 | 2.20% | 16% | 57% | 4.12 | 187.1 | 7.29 |
2017 | 2.22% | 29% | 55% | 3.56 | 160.4 | 6.45 |
2016 | 2.11% | 17% | 51% | 2.76 | 130.8 | 5.46 |
2015 | 2.00% | 26% | 50% | 2.36 | 117.9 | 4.71 |
2014 | 2.15% | 21% | 50% | 1.88 | 87.4 | 3.76 |
2013 | 2.06% | 34% | 52% | 1.56 | 75.7 | 3 |
2012 | 2.10% | 12% | 47% | 1.16 | 55.3 | 2.47 |
2011 | 2.83% | 9% | 52% | 1.04 | 36.8 | 2.01 |
2010 | 2.99% | 6% | 61% | 0.95 | 31.8 | 1.57 |
2009 | 3.54% | 0% | 67% | 0.9 | 25.4 | 1.34 |
2008 | 3.56% | 0% | 38% | 0.9 | 25.3 | 2.37 |
ホームデポ(HD)財務分析:小売大手の驚異的な増配記録と財務体質
最新アップデート(2025年9月):ホームデポは16年連続増配を達成し、2024年に四半期配当を$2.30(年間$9.20)に設定。配当性向は約61.8%で健全な水準を維持しています。
着実に成長する配当の実績
ホームデポ(HD)の配当実績は、小売業界における模範的な株主還元の典型例です。2009年から2024年までの16年間、同社は一度も配当を削減することなく、毎年確実に増配を続けてきました。この期間、配当額は年間0.90ドル(2009年)から9.20ドル(2024年)へと約10.2倍に増加しています。特に注目すべきは、2008年の金融危機やCOVID-19パンデミックといった市場の混乱期においても、一貫して増配を継続した点です。この長期にわたる安定した配当実績は、ホームデポの事業モデルの堅牢さと経営陣の株主還元に対する強いコミットメントを示しています。
配当成長率の推移と最近の動向
ホームデポの配当成長率は、長期的に見ると非常に力強い成長を示していますが、時期によって変動があります:
- 2008〜2009年:配当維持期(0%成長、金融危機後の慎重な姿勢)
- 2010年〜2013年:回復期(6%〜34%の成長)
- 2014〜2019年:高成長期(16%〜32%の高成長)
- 2020〜2022年:持続的成長期(11%〜14%の安定成長)
- 2023年:回復期(7.7%成長)
- 2024年:成熟期(2.2%成長、より持続可能なペースへ)
2024年の配当成長率は2.2%と、過去の高い成長率から減速していますが、これは同社の配当政策の成熟化と、より持続可能な長期戦略への移行を示しています。現在の配当利回りは約2.2%で、配当性向は61.8%となっており、健全な水準を維持しています。
配当利回りと安定性の魅力
ホームデポの配当政策の特徴は、その持続性と予測可能性にあります。配当性向は長期的に見ると比較的安定しており、以下のような特徴があります:
- 2009年の67%から徐々に改善し、2010年代中盤には50%台の健全な水準で安定
- 2020年代初頭は50%台後半で推移し、財務的余裕を維持
- 直近の2024年は約61.8%とやや上昇したものの、依然として持続可能な水準
- 16年間連続増配の実績は、ホームデポを「配当コンテンダー」としての地位に位置づけています。
特筆すべきは、ホームデポが業績の変動や市場環境の変化にかかわらず、配当成長へのコミットメントを一貫して守ってきたことです。住宅市場や小売業は一般的に景気循環の影響を強く受けますが、同社は高い営業効率と市場リーダーシップを活かして、安定した配当基盤を構築しています。
2025年の見通しと戦略
ホームデポが発表した2025年のガイダンスによると:
- 売上成長率:約2.8%
- 同店舗売上成長率:約1.0%
- EPS:約3%減少の見通し(調整後EPSは約2%減少)
- 新店舗出店:約13店舗
- 営業マージン:約13.0%
これらの予想は、高金利環境下での住宅市場の冷え込みと消費者の大型プロジェクト延期の影響を反映しています。しかし、同社の財務基盤は引き続き堅固であり、配当の安全性に大きな懸念はありません。
まとめ:長期配当投資家にとってのホームデポとは?
ホームデポは、DIYおよびプロ向け住宅改善市場のリーダーとして、安定した成長と株主還元を重視する経営姿勢を一貫して示しています。同社は「配当コンテンダー」としての地位を確立し、強力なキャッシュフロー生成能力に支えられた着実な配当成長を実現しています。
投資家へのポイント:ホームデポへの投資は、「安定性と持続的な配当成長」を求める長期投資家に適しています。2024年の配当成長率は2.2%と過去に比べて低下しましたが、これは成熟した企業の自然な進化であり、より持続可能な配当政策への移行を示しています。16年連続増配の実績と、住宅改善という必須支出市場でのリーダーシップを考慮すると、安定した収益を求める投資家にとって魅力的な選択肢と言えるでしょう。
注目ポイント:金利環境の変化や住宅市場の動向には注意が必要ですが、ホームデポのビジネスモデルは新築住宅市場よりも安定性が高く、メンテナンスや修理といった必須支出が収益基盤を支えています。営業キャッシュフローによる配当カバー率は2.37倍と極めて健全で、特異なバランスシート構成も強固な現金創出力に支えられた戦略的選択です。
よくある質問(FAQ)
Q: ホームデポの配当カバー率はどの程度安全ですか?
A: 極めて安全です。営業CFベースで2.37倍、フリーCFベースでも2.01倍のカバー率を維持しており、一般的な安全基準(1.5倍以上)を大幅に上回ります。過去10年間で最低でも1.78倍のカバー率を維持しており、景気後退期でも配当支払いに十分な余裕があることを示しています。
Q: 負債比率が7,000%超という数字は本当に問題ないのですか?
A: 数字だけ見ると驚異的ですが、ホームデポの場合は問題ありません。理由は以下の通りです:(1) 年間212億ドルの営業CF創出能力、(2) インタレストカバレッジレシオ9.5倍の利息支払い余力、(3) ROIC21.8%という高い資本効率性、(4) 積極的な自社株買いによる意図的な資本構成最適化。これは財務的困窮ではなく、株主価値最大化のための戦略的選択です。
Q: なぜホームデポは配当よりも自社株買いを重視するのですか?
A: 税効率と資本効率の観点から最適化されています。自社株買いにより:(1) 発行済株式数減少→EPSの押し上げ効果、(2) 株主への税率優遇(配当税率より有利なキャピタルゲイン税率)、(3) 将来の配当支払い負担軽減、(4) 株価上昇による株主価値向上。配当と自社株買いを組み合わせることで、総合的な株主還元利回りを最大化しています。
Q: 住宅市場の冷え込みは配当にどの程度影響しますか?
A: 限定的な影響に留まると予想されます。ホームデポの収益構造は:(1) 新築住宅市場への依存度は比較的低く、(2) 住宅メンテナンス・修理需要(景気後退耐性あり)が主力、(3) プロ向け事業が売上の約45%を占め安定性が高い、(4) 16年連続増配の実績が示すように、過去の住宅市場低迷期も配当は維持・増加。2024年の営業CFが前年比45%増加したことも、市場環境に関わらず安定したキャッシュ創出が可能であることを証明しています。
最終更新:2025年9月
データは2024年度決算および2025年ガイダンスに基づいています。