MU:マイクロンテクノロジーの業績

AI(人工知能),半導体,情報技術,業績






【2026年版】Micron (MU) 徹底分析:AIブームとメモリ市場のサイクルを読む – FY2008-FY2025財務データとHBM戦略


【2026年版】Micron (MU) 徹底分析:AIブームとメモリ市場のサイクルを読む – FY2008-FY2025財務データとHBM戦略

はじめに
マイクロン・テクノロジー (Micron Technology, Inc., MU) は、DRAMやNANDフラッシュメモリといった半導体メモリおよびストレージソリューションの設計・製造で世界をリードする企業の一つです。同社の製品は、データセンター、PC、スマートフォン、自動車、産業機器など、現代社会を支える多様なアプリケーションに不可欠な存在です。[1]
半導体メモリ市場は需要と供給のバランスにより価格が大きく変動する「シリコンサイクル」と呼ばれる景気循環に左右される特性を持ちますが、近年ではAI(人工知能)の爆発的な成長がHBM(広帯域幅メモリ)などの高性能メモリへの需要を牽引し、新たな成長局面を迎えています。
この記事では、Micronの過去の会計年度 (FY2008~FY2025) の財務データを基に、その業績の軌跡、シリコンサイクルの影響、そしてAI時代におけるHBM戦略と将来展望を、投資家の視点から解説します。

【免責事項および出典について】

  • 本記事に掲載されている財務情報は、主にMicron Technology, Inc.が米国証券取引委員会 (SEC) に提出している年次報告書 (Form 10-K)、四半期報告書 (Form 10-Q)、及び決算発表資料といった公式IR情報に基づいて作成されています。FY2025のデータは2025年9月発表の通期決算、FY2026 Q1は2025年12月17日発表の第1四半期決算に基づきます。[2]
  • 記事内の成長率 (CAGRなど) や一部の経営指標は、公式データに基づき筆者が算出したものです。半導体メモリ業界の特性上、利益やキャッシュフローは年度により大きく変動するため、CAGRの解釈には注意が必要です。
  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
  • Micron Technology, Inc. 投資家向け情報ページ: https://investors.micron.com/

会計年度について: マイクロン・テクノロジーの会計年度は、通常、毎年8月最終木曜日または9月最初の木曜日に終了します(52週または53週)。例えば、本記事で「FY2025」と表記する会計年度は、おおむね2024年9月初旬から2025年8月末までの期間を指します。

1. Micronの長期的な業績:V字回復から過去最高へ

Micronの業績は、半導体メモリ市場の需給バランスによって大きく左右される「シリコンサイクル」の影響を強く受けます。FY2023の大幅赤字から、FY2024に黒字転換、FY2025にはAI需要を追い風に過去最高売上を記録する劇的なV字回復を遂げました。[2][3]

1.1. 売上、利益、キャッシュフローの推移

会計年度 売上高(百万$) 売上成長率 営業利益/(損失)(百万$) 純利益/(損失)(百万$) 希薄化後EPS ($)
FY2018 30,391 +49.5% 14,491 14,135 11.95
FY2019 23,406 -23.0% 7,870 6,313 5.51
FY2020 21,435 -8.4% 3,602 2,687 2.37
FY2021 27,712 +29.3% 8,313 5,861 5.14
FY2022 30,758 +11.0% 9,848 8,687 7.75
FY2023 15,540 -49.5% (4,415) (5,833) (5.33)
FY2024 25,111 +61.6% 1,304 778 0.70
FY2025 37,378 +48.9% 10,833 8,126 7.28
CAGR (年平均成長率)
過去7年(FY18-25) 売上高 3.0%

出典: Micron社 公式IR資料 (Form 10-K, Quarterly Results)より筆者作成。[2][3]

  • FY2025: 売上高374億ドル(前年比+49%)で過去最高を更新。データセンター向けHBMとDRAM価格上昇が牽引。[3]
  • 営業利益: FY2025は108億ドルと大幅黒字化。営業利益率は29%に回復。
  • 純利益・EPS: FY2023の58億ドル赤字から、FY2025には81億ドルの黒字へ急回復。

1.2. FY2026 第1四半期実績(2025年12月17日発表)

FY2026 Q1(2025年9月~11月)は、AI需要の加速により四半期として過去最高の売上・利益を記録しました。[2]

項目 FQ1 FY2026 FQ4 FY2025 FQ1 FY2025 前年同期比
売上高 $13,643M $11,315M $8,709M +57%
売上総利益率 (GAAP) 56.0% 44.7% 38.4% +17.6pp
営業利益 (GAAP) $6,136M $3,654M $2,174M +182%
営業利益率 (GAAP) 45.0% 32.3% 25.0% +20.0pp
純利益 (GAAP) $5,240M $3,201M $1,870M +180%
希薄化後EPS (GAAP) $4.60 $2.83 $1.67 +175%
営業キャッシュフロー $8,411M $5,730M $3,244M +159%
調整後フリーCF $3,906M $803M $112M +3,387%

出典: Micron Q1 FY2026 Earnings Release(2025年12月17日)[2]

1.3. 収益性:シリコンサイクルの鏡

会計年度 売上総利益率 (GM) 営業利益率 純利益率
FY2021 40.0% 30.0% 21.1%
FY2022 45.9% 32.0% 28.2%
FY2023 8.9% -28.4% -37.5%
FY2024 22.0% 5.2% 3.1%
FY2025 41.0% 29.0% 21.7%
FQ1 FY2026 56.0% 45.0% 38.4%

出典: Micron社 公式IR資料より筆者作成。[2][3]

  • 売上総利益率: FY2023の8.9%からFY2025の41%へ急回復、さらにFQ1 FY2026は56%に到達。AI需要とメモリ価格上昇が寄与。
  • 営業利益率: FQ1 FY2026は45%という極めて高い水準を達成。

2. 事業概要と製品ポートフォリオ:DRAMとNANDが柱

Micronの事業は、主にDRAMとNANDフラッシュメモリの2つの製品群で構成されます。[1]

  1. DRAM (Dynamic Random Access Memory):
    • コンピュータやサーバーの主記憶装置として使用される揮発性メモリ。データセンター、PC、モバイル、グラフィックス、自動車など幅広い用途。
    • 近年の注目は、AIサーバー向けに不可欠なHBM (High Bandwidth Memory)。MicronはHBM3Eで市場をリード。
    • その他、最新世代のDDR5、低消費電力のLPDDR5/LPDDR6なども主要製品。
  2. NANDフラッシュメモリ:
    • スマートフォン、SSD(ソリッドステートドライブ)、USBメモリなどに使われる不揮発性ストレージ。
    • MicronはG9 NAND(最新世代)技術で競争力を維持。データセンター向けSSDでは世界初のPCIe Gen6 SSDを発表。[2]

主要事業部門 (Business Units):

FY2026 Q1より新たな事業部門体制に移行しました。[2]

  • クラウドメモリ事業部 (Cloud Memory BU): AIサーバー、HBM、データセンター向けDRAM。FQ1 FY2026売上$5,284M(+100% YoY)、粗利益率66%。
  • コアデータセンター事業部 (Core Data Center BU): 汎用サーバー、ネットワーキング、データセンターSSD。FQ1売上$2,379M。
  • モバイル&クライアント事業部 (Mobile and Client BU): スマートフォン、PC向け製品。FQ1売上$4,255M(+63% YoY)、粗利益率54%。
  • 自動車&エンベデッド事業部 (Automotive and Embedded BU): 自動車、産業機器向け。FQ1売上$1,720M(+49% YoY)。

FQ1 FY2026の売上構成: DRAM 約75%、NAND 約25%。DRAM売上は前年比+69%増加。[2]

Crucialコンシューマ事業からの撤退

2025年12月3日、MicronはCrucialブランドのコンシューマ向け製品(メモリ、SSD)の販売を終了すると発表しました。2026年2月(FQ2末)までに出荷を終了し、AI需要の急増に対応するため、データセンター・エンタープライズ向け製品に経営資源を集中します。[4]

3. AI時代のHBM戦略と技術リーダーシップ

生成AIの急速な普及に伴い、AIアクセラレータ(GPUなど)の性能を最大限に引き出すためのHBMの需要が爆発的に増加しています。Micronはこの市場で重要なプレイヤーです。[2]

  • HBM3Eの市場投入とリーダーシップ: Micronは業界をリードする性能と電力効率を持つHBM3Eメモリを量産出荷中。NVIDIAのH200 Tensor Core GPUなど、最新のAIアクセラレータに採用。
  • HBM4への移行: 次世代HBM4は2026年下半期に量産開始予定。1β(1-beta)DRAMと革新的な設計で業界最高の性能・電力効率を実現。[2]
  • 2026年の供給は完売: カレンダー2026年のHBMは価格・数量ともに契約完了(完売状態)。[2]
  • HBM市場規模予測: HBMのTAM(総アドレッサブル市場)は2025年の約350億ドルから、2028年には約1,000億ドルへ拡大すると予測(CAGR約40%)。これは2024年のDRAM市場全体に匹敵する規模。[2]
  • 収益への貢献: FY2025のHBM、高容量DIMM、LPサーバーDRAMの合計売上は100億ドル超(前年比5倍以上)。[3]

4. 財務の健全性と設備投資

半導体メーカーであるMicronは、技術競争力を維持し生産能力を確保するために巨額の設備投資(CapEx)を必要とします。[2]

4.1. 資産・負債・資本の推移

会計年度末 総資産(百万$) 総負債(百万$) 株主資本(百万$) 自己資本率 現金・投資(百万$)
FY2022 65,863 17,753 48,110 73.0% 12,735
FY2023 58,898 17,651 41,247 70.0% 9,985
FY2024 69,604 22,334 47,270 67.9% 9,161
FY2025末 82,798 28,633 54,165 65.4% 11,936
FQ1 FY2026末 85,971 27,165 58,806 68.4% 12,015

出典: Micron社 公式IR資料より筆者作成。[2]

  • 財務基盤: 自己資本比率は約68%と健全な水準を維持。
  • 現金及び投資: FQ1 FY2026末時点で約120億ドルと十分な流動性を確保。

4.2. キャッシュフローと設備投資

  • 設備投資 (CapEx): FY2026は約200億ドルを計画(従来の180億ドルから増額)。HBM生産能力と1-gamma DRAMへの投資が中心。[2]
  • フリーキャッシュフロー: FQ1 FY2026は調整後FCF39億ドルと過去最高を記録。
  • 政府支援 (CHIPS Act): 米国CHIPS法により、アイダホ州・ニューヨーク州での大型投資に対する補助金を受領。ニューヨーク州のメガファブは2026年1月に着工予定。[5]

5. 市場環境と競争:寡占市場と地政学リスク

半導体メモリ市場は、Micron、Samsung Electronics(韓国)、SK Hynix(韓国)の3社による寡占状態にあります。[1]

  • 市場のサイクル: 現在はAI関連需要という大きな波により、特にHBM市場は急拡大中。2026年はDRAM・NANDともにビット出荷量が約20%増加する見通しだが、供給は依然タイト。[2]
  • 主要競合:
    • Samsung Electronics: DRAM、NANDともに世界最大のシェア。幅広い事業ポートフォリオを持つ。
    • SK Hynix: DRAM、NANDの大手。特にHBM技術でMicronと激しく競合。
  • 地政学リスクとサプライチェーン: 米中対立の激化は、半導体技術の輸出規制やサプライチェーンの分断リスクを高めています。各国政府は自国内での半導体生産能力強化を進めており、Micronもアイダホ、ニューヨーク、日本、シンガポール、インドで生産拠点を拡大中。[2]

6. FY2026年の見通しと今後のポイント

Micron経営陣は、AIサーバー向けHBMの力強い需要継続と、各市場の回復を背景に、FY2026年の業績は過去最高を更新する見通しを示しています。[2]

FY2026年 第2四半期(2026年2月期)会社ガイダンス:

項目 GAAP Non-GAAP
売上高 $18.7B ± $400M
売上総利益率 67.0% ± 1.0% 68.0% ± 1.0%
希薄化後EPS $8.19 ± $0.20 $8.42 ± $0.20

出典: Micron Q1 FY2026 Earnings Release(2025年12月17日)[2]

Q2ガイダンスは売上高187億ドル、粗利益率68%、EPS $8.42と、いずれも四半期として過去最高を更新する見通しです。

投資家が注目すべきポイントとリスク:

  • HBMの収益貢献と市場シェア: HBM3E/HBM4の生産拡大と収益化、2028年のTAM 1,000億ドル予測の実現可能性。
  • 技術ロードマップ: 1-gamma DRAMが2026年後半にDRAMビット出荷の過半を占める見通し。G9 NANDの普及も進行中。[2]
  • 設備投資の規模: FY2026の200億ドル投資が中長期の競争力にどう寄与するか。
  • メモリ価格の動向: 現在は供給タイトで価格上昇基調だが、サイクル反転リスクは常に存在。
  • 中国市場の動向と地政学リスク: 米中間の規制強化の影響、中国国内メーカーの台頭。

7. まとめ:AI時代の勝者となれるか

Micron Technologyは、FY2023の大幅赤字から劇的なV字回復を遂げ、FY2025には過去最高の売上を記録。FY2026 Q1も四半期として過去最高を更新し、Q2ガイダンスも極めて強い数字が示されています。[2]

  • 強み: HBM3E/HBM4における技術リーダーシップ、AI需要の追い風、主要3社寡占という市場構造、過去最高の利益率と潤沢なキャッシュフロー。
  • 課題と機会: シリコンサイクルのボラティリティへの対応、HBM市場でのSamsung・SK Hynixとの競争、巨額な設備投資の回収、地政学リスク。

HBMを筆頭とするAI関連メモリ需要は、中長期的にMicronの業績を大きく押し上げる可能性を秘めています。同社が技術的優位性を保ち、市場の波を巧みに乗りこなせるか、引き続き注目が集まります。

【注】(出典リンク)

  1. Micron会社概要・10-K → Micron SEC FilingsMicron公式サイト(確認日:2026-02-02)
  2. Micron Q1 FY2026決算(2025年12月17日発表) → Earnings ReleaseQuarterly Results(確認日:2026-02-02)
  3. Micron FY2025通期決算(2025年9月23日発表) → FY2025 Full Year Results(確認日:2026-02-02)
  4. Crucial事業撤退発表(2025年12月3日) → Micron IRCNBC報道(確認日:2026-02-02)
  5. ニューヨーク州メガファブ着工 → GlobeNewswire(確認日:2026-02-02)

本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行うようにしてください。

最終更新日時: 2026年2月2日(FY2026 Q1決算反映)


Posted by 南 一矢