ペプシコ(PEP)53年連続増配(配当貴族)を支える財務健全性

必需品,配当

ペプシコ(PEP)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等)の分析

ペプシコ(PepsiCo, Inc.)は、2025年時点で53年連続で配当を増やし続ける「配当貴族」銘柄です。[1] その卓越した配当実績を支える財務指標の推移を、Macrotrendsなどの系列データとIR資料を組み合わせて確認していきます。

まず、直近の株価と配当利回りの動きを、2025年11月時点の直近約3ヶ月チャートでざっくり把握しておきましょう。[2]

ミニ解説:PEPの「配当ストーリー」を一言で

2008年の年間配当$1.65から2024年の$5.33まで、長期的におおむね年率7%前後のペースで増配を継続してきた銘柄です。2025年も年率ベースで5%の増配(年額$5.69)を決定しており、生活必需品に近いビジネスと比較的厚い営業キャッシュフローが、その配当余力を支えています。[1]

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

(株価・利回りのデータはGoogle Finance等を基に筆者作成。直近の配当利回り水準や増配率は、主な金融情報サイトのデータをあわせて確認)[2]

データソースについて

配当の連続増配年数や一株あたり配当金はIR/プレスリリースおよびForm 10-K/年次報告書を一次情報として採用し、長期の推移や補完にはMacrotrends等の二次情報も利用しています。[3]

配当成長の実績(要点)

以下は2008年以降の年間配当と配当利回り、配当性向などの推移です(いずれもおおむね暦年ベース、2024年まで)。[3]

配当データ* 平均株価** 年EPS**
平均利回り 成長率 配当性向 年間配当($)
2024 3.15% 8% 77% 5.33 164.71 6.95
2023 2.79% 9% 75% 4.945 167.54 6.56
2022 2.63% 7% 70% 4.525 158.15 6.42
2021 2.82% 6% 77% 4.247 134.83 5.49
2020 2.95% 6% 79% 4.022 118.57 5.12
2019 2.96% 6% 73% 3.79 108.21 5.20
2018 3.24% 13% 41% 3.59 90.67 8.78
2017 2.81% 7% 94% 3.17 89.83 3.38
2016 2.85% 7% 68% 2.96 80.14 4.36
2015 2.85% 9% 75% 2.76 72.69 3.67
2014 2.85% 13% 59% 2.53 64.84 4.27
2013 2.79% 5% 52% 2.24 57.03 4.32
2012 3.12% 5% 54% 2.13 47.10 3.92
2011 3.11% 7% 50% 2.03 43.54 4.03
2010 2.93% 6% 48% 1.89 41.74 3.91
2009 3.21% 8% 47% 1.78 34.84 3.77
2008 2.50% 15% 51% 1.65 40.18 3.21

* 配当はIR/10-K及び複数サイトの整合確認。
** EPS・平均株価の系列はMacroTrends等を参考。[3]

連続増配年数(2025年時点)
53年

配当成長率(平均)
約7%

2024年配当性向
77%

2024年年間配当
$5.33

着実な配当成長の実績

ペプシコは生活必需品に近い需要と強力なブランド基盤を背景に、2008年の年間配当$1.65から2024年の$5.33へと増配を継続してきました(年平均成長率は概ね7%前後)。[3] さらに2025年には、年率ベースで5%の増配(年額$5.69)が発表されており、連続増配は53年に達しています。[1]

最新決算(2025年Q3)のポイント

2025年Q3決算と通期見通し(2025年10月発表)[7]

  • 2025年Q3の純売上高は約$23.9B(前年同期比+2.6%)、有機売上高成長率は+1%強と、価格主導の成長が落ち着きつつもプラス成長を維持。
  • GAAPベースEPSは$1.90と前年同期から減少した一方、コアEPSは$2.29と、市場予想をやや上回る水準を確保。
  • 2025年通期ガイダンスでは、有機売上高は低一桁台の成長、コア一定為替EPSは概ね前年並みとしつつ、為替逆風の縮小を反映して「ドルベースのコアEPSは2024年比▲0.5%程度の減少」と上方修正。
  • 2025年通期の株主還元は総額約$8.6B(配当$7.6B+自社株買い$1.0B)を計画しており、配当が還元の中心である姿勢は維持されています。

財務パフォーマンスと成長見通し

主要財務指標の推移

売上高、営業キャッシュフロー(営業CF)、純利益はいずれもM$(百万ドル)表示です。2024年通期の純売上高は約$91.9B、営業CFは$12.5B、純利益は$9.6Bと、いずれも堅調な水準を維持しました。[4]

年度 売上高 (M$) 営業CF (M$) 同マージン (%) 純利益 (M$)
2024 91,854 12,507 13.6 9,578
2023 91,471 13,442 14.7 9,074
2022 86,392 10,811 12.5 8,910
2021 79,474 11,616 14.6 7,618
2020 70,372 10,613 15.1 7,120
2019 67,161 9,649 14.4 7,314
2018 64,661 9,415 14.6 12,513
2017 63,525 10,030 15.8 4,857
2016 62,799 10,663 17.0 6,329
2015 63,056 10,864 17.2 5,452
2014 66,683 10,506 15.7 6,503
2013 66,415 9,688 14.6 6,740
2012 65,492 8,479 12.9 6,171
2011 66,504 8,944 13.4 6,436
2010 57,838 8,448 14.6 6,314
2009 43,232 6,796 15.7 5,940
2008 43,251 6,999 16.2 5,142

配当支払能力の分析

営業キャッシュフローによる配当カバー(最新)

2024年通期の営業CFは$12,507M、同年の現金配当支払は$7,229Mでした。配当カバー比率は約1.7倍であり、直近でも配当の持続可能性は比較的高い水準と評価できます。[5]

配当支払余力の推移(2008年以降)

営業CFと年間配当支払額(いずれもM$)、および営業CFベースの配当カバー比率(倍)の推移です。[5]

年度 営業CF (M$) 年間配当支払額 (M$) 配当カバー比率
2024 12,507 7,229 1.7
2023 13,442 6,682 2.0
2022 10,811 6,172 1.8
2021 11,616 6,121 1.9
2020 10,613 5,638 1.9
2019 9,649 5,281 1.8
2018 9,415 4,930 1.9
2017 10,030 4,472 2.2
2016 10,663 4,227 2.5
2015 10,864 3,993 2.7
2014 10,506 3,730 2.8
2013 9,688 3,434 2.8
2012 8,479 3,220 2.6
2011 8,944 3,047 2.9
2010 8,448 2,894 2.9
2009 6,796 2,732 2.5
2008 6,999 2,541 2.8

強固なキャッシュフロー創出力と資金配分戦略

営業CF、投資CF、財務CFはいずれもM$表記、営業CF成長率は前年比の%です。2024年は営業CFが増加する一方で、投資CF・財務CFはマイナス(設備投資・配当・自社株買い等による資金流出)が続いています。[5]

年度 営業CF (M$) 成長率 (%) 投資CF (M$) 財務CF (M$)
2024 12,507 -7.0 -5,472 -7,556
2023 13,442 24.3 -5,495 -3,009
2022 10,811 -6.9 -2,430 -8,523
2021 11,616 9.5 -3,269 -10,780
2020 10,613 10.0 -11,619 3,819
2019 9,649 2.5 -6,437 -8,489
2018 9,415 -6.1 4,564 -13,769
2017 10,030 -6.0 -4,403 -4,186
2016 10,663 -2.1 -7,150 -3,211
2015 10,864 3.4 -3,569 -4,112
2014 10,506 8.4 -4,937 -8,264
2013 9,688 14.3 -2,625 -3,789
2012 8,479 -5.2 -3,005 -3,306
2011 8,944 5.9 -5,618 -5,135
2010 8,448 24.3 -7,668 1,386
2009 6,796 -2.9 -2,401 -2,497
2008 6,999 -2,667 -3,025

バランスシートと財務健全性

総資産・負債・株主資本はいずれもM$、自己資本比率・ROE・負債比率は%です。レバレッジを積極的に活用してROEを高めている一方で、自己資本比率は足元で18%前後とやや低めの水準にあります。[6]

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 ROE 負債比率
2024 99,467 81,296 18,171 18.3 49.4 447
2023 100,495 81,858 18,637 18.5 44.3 439
2022 92,187 74,914 17,273 18.7 54.4 434
2021 92,377 76,226 16,151 17.5 49.5 472
2020 92,918 79,366 13,552 14.6 53.4 586
2019 78,547 63,679 14,868 18.9 50.9 428
2018 77,648 63,046 14,602 18.8 108.3 432
2017 79,804 68,823 10,981 13.8 39.9 627
2016 73,490 62,291 11,199 15.2 53.3 556
2015 69,667 57,637 12,030 17.3 37.6 479
2014 70,509 52,961 17,548 24.9 29.8 302
2013 77,478 53,089 24,389 31.5 29.3 218
2012 74,638 52,239 22,399 30.0 28.2 233
2011 72,882 51,983 20,899 28.7 27.7 249
2010 68,153 46,677 21,476 31.5 30.2 217
2009 39,848 22,406 17,442 43.8 39.8 128
2008 35,994 23,412 12,203 33.9 42.1 192

総合評価

自己資本率は2014年以降やや低下し、2024年通期でも18%台と高くはありませんが、営業CFの厚み(2024年$12.5B)と価格決定力により配当原資は安定しています。レバレッジを活用してROEを高水準に維持する一方で、金利上昇局面や信用市場の環境変化に伴う負債コストのモニタリングは重要です。[6]

配当重視投資家にとっての投資価値

インカム投資家への魅力

  1. 53年連続増配(2025年時点)という実績[1]
  2. 過去15年以上でおおむね年7%前後の持続的な配当成長
  3. 飲料・スナックなど生活必需品に近い需要とブランド力による収益の予見性
  4. 景気後退局面でも配当原資を支える営業キャッシュフローの厚み

投資リスクと対策

主要リスク

  1. 金利上昇:バリュエーション(PER)の圧縮や利払いコスト上昇を通じた株主価値への影響
  2. 健康志向の加速:糖分・塩分に対する規制・嗜好変化により、炭酸飲料や一部スナックの需要構造が変化する可能性
  3. 原材料コスト:穀物・砂糖・包装材・物流費などの上昇によるマージン圧迫
  4. 為替:米国外売上比率が高く、多通貨でビジネスを展開しているため、ドル高局面では売上・利益ともにマイナス影響を受けやすい(2024年通期でも売上のかなりの部分を海外が占める)。[4]
  5. 財務レバレッジ:自己資本比率18%台とレバレッジが高めであり、金利水準や信用スプレッドの変化に注意が必要

対策

  • 個別銘柄への集中を避け、セクター・通貨を分散させたポートフォリオ構築
  • 時間分散(定期積立)と配当再投資による取得単価の平準化と複利効果の活用
  • IRや決算資料で、価格政策・製品ポートフォリオ転換(ゼロシュガー、ヘルシースナックなど)・負債管理の方針を継続的に確認

まとめ

2024年通期の業績は売上・利益ともに堅調で、営業CFは$12.5Bと高水準を維持しました。2025年については、有機売上高の伸びが徐々に鈍化している一方、価格決定力とコスト管理により収益性はおおむね安定しており、通期ガイダンスも「低一桁成長+コアEPS横ばい」という保守的なレンジにとどまっています。[4][7]

2025年の年率5%増配(年額$5.69)により、配当貴族としてのトラックレコードはさらに積み上がります。GAAPベースの配当性向はやや高めであり、レバレッジ水準も低くはありませんが、営業キャッシュフローとブランド力にもとづく価格決定力が、現時点では配当の継続性を裏づけていると言えるでしょう。中長期でのインカム+緩やかな配当成長を狙う投資家にとって、有力な候補となりうる銘柄です。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的とするものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。個別の投資判断は、必ずご自身のご判断と責任で行ってください。
(最終更新日:2025-11-24)

【注】(出典リンク)

  1. 配当履歴・連続増配と2025年増配PepsiCo – Quarterly Dividend Press Release(2025/7/24)Dividend.com – PEP Dividend HistoryStockAnalysis – PepsiCo Dividend (確認日:2025-11-24)
  2. 株価・配当利回りの短期推移Koyfin – PEP Dividends & YieldNasdaq – PEP Quote & Chart (確認日:2025-11-24)
  3. 配当データ長期系列(年間配当・利回り・配当性向ほか)Macrotrends – PepsiCo Dividend Yield & HistoryStockAnalysis – PepsiCo Dividend (確認日:2025-11-24)
  4. 業績(売上・純利益)と事業全体像SEC – PepsiCo Form 10-K FY2024PepsiCo – Annual Report 2024(PDF)PepsiCo – Q4/FY2024 Earnings Release (確認日:2025-11-24)
  5. キャッシュフローと配当カバー(2008〜2024年)PepsiCo – Annual Report 2024(Cash Flow Statement)Macrotrends – PepsiCo Cash Flow (確認日:2025-11-24)
  6. バランスシート・ROE・レバレッジ指標SEC – PepsiCo Form 10-K FY2024(Balance Sheet)Macrotrends – PepsiCo Total Assets & Liabilities (確認日:2025-11-24)
  7. 2025年Q3決算と2025年通期ガイダンスPepsiCo – Q3 2025 Earnings Release(PDF) (確認日:2025-11-24)

Posted by 南 一矢