PLD:プロロジスの配当推移

不動産(REIT),配当






【2025年9月最新版】プロロジス(PLD)徹底分析:世界最大級物流不動産REITの配当持続力と10年データ


【2025年9月最新版】プロロジス(PLD)徹底分析:世界最大級物流不動産REITの配当持続力と10年データ

【2025年9月更新】Q2 2025決算・配当・事業規模・レント上昇等を反映。10年データに拡張し注釈を整理。

プロロジス(Prologis, Inc.)は、20カ国で13億平方フィートの物流施設(2024年末時点)を運営する世界最大級の物流不動産REITです。REITとして12年連続増配を達成し、Eコマース・ラストワンマイル配送・サプライチェーン最適化需要の拡大を背景に、安定した配当成長を続けています。

まず足元の市場感を押さえるため、配当利回りと株価(直近90日)をざっと可視化します。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockprice.comを参照)

用語メモ(必要に応じて開閉)

Core FFO(コア営業キャッシュフロー)とは?

REITの分配原資を測る実務指標。FFOは当期純利益に減価償却等の非現金費用を足し戻し、資産売却益等を調整した、REITの基本的な稼ぐ力。Core FFOはFFOからプロモート収入等の一時的要因を除いた、株主還元の持続性をみる際に重視される指標。PLDはIRでCore FFO per diluted shareを定義・公表しています。「Core FFO/株」は希薄化後株式数で割った1株値。

ネット有効賃料変動(Net Effective Rent Change)

既存契約の更新・新規契約時の実質的な賃料上昇率。市場環境・立地優位性・物流需給を反映し、PLDでは50%超の大幅上昇が継続中。

占有率(Occupancy)

保有物件の稼働面積割合。PLDは95%超の高水準を維持し、物流施設の必需性と立地優位性を示す。

ラストワンマイル配送

配送センターから最終消費者まで商品を届ける最終工程。Eコマース拡大で都市近郊の小型・高効率配送センター需要が急拡大。

【データと免責】

  • 四半期・年次データはPLDのIR開示(プレスリリース・補足資料・10-K)と主要データサイトを突合して作成。年額配当は出典記載のヒストリーを基準に集計。
  • 金額は米ドル。端数は丸め処理。ガイダンスは会社想定値(レンジ)のため将来確定値ではありません。

1. 業績ハイライト(足元)

  • Q2 2025売上:売上は堅調維持、物件収入:賃料上昇継続
  • 四半期Core FFO/株:$1.46(前年同期比+9.0%)。通期Core FFO/株ガイダンス:$5.75–$5.80
  • 配当:四半期$1.01を継続(年率換算$4.04)
  • 占有率:95.1%の高水準維持、ネット有効賃料変動:53.4%

(詳細は末尾の出典「Q2 2025決算・配当」参照)

1.1 10年データ:売上・Core FFO/株・配当

会計年度 売上高(十億$) Core FFO/株 ($) 年間配当 ($) 配当性向Core FFO基準
2015 2.13 2.49 1.52 61%
2016 2.30 2.66 1.68 63%
2017 2.59 2.85 1.84 65%
2018 3.25 3.28 2.12 65%
2019 3.48 3.68 2.36 64%
2020 4.44 3.83 2.32 61%
2021 4.76 4.15 2.52 61%
2022 6.00 5.16 3.16 61%
2023 7.99 5.10* 3.48 68%
2024 8.14 5.56 3.84 69%
2025E 5.75–5.80 4.04(年率換算) ~70%(中点仮置)

*E=Estimate(予測)、2023年はプロモート収入除くベース。配当は複数ソース統合により推定。

見どころ

  • 長期で右肩上がり:売上・Core FFO/株は10年で継続成長。2024はCore FFO/株$5.56。
  • 配当性向の管理:Core FFOベースでおおむね60–70%を維持。適切な再投資余力を確保。
  • 契約構造が下支え:長期契約×賃料改定×インフレ連動が長期の積み上げを形成。

1.2 配当の現況

最新四半期配当
$1.01

年率換算
$4.04

連続増配年数
12年

配当利回り
約3.6%

  • 配当は四半期支払。2025年は$1.01を継続中(前年から約5%増額)。
  • 物流不動産の構造的成長により、配当成長と事業拡大を両立する方針を継続。

2. 成長戦略:物流×自動化×持続可能性

PLDはラストワンマイル配送×自動化対応×ESG物流施設の三軸で、Eコマース・サプライチェーン最適化・脱炭素化需要を取り込みます。全世界の物流施設でプロロジス・エッセンシャルズによるワンストップサービスを展開し、付加価値を最大化しています。

投資領域 配分の目安 主なドライバー 期待収益率
ラストワンマイル施設 ~35% 都市近郊小型配送センター高度化 10–15%
自動化対応倉庫 ~30% ロボティクス・AI・EV充電対応 12–18%
グローバル拡張 ~20% 欧州・アジア・新興市場開拓 8–12%
持続可能物流施設 ~15% ソーラー・蓄電・省エネ高度化 6–10%

(配分は直近の開示・補足資料からの整理であり、年度により変動)

3. 財務健全性

3.1 キャッシュフローと配当カバー

年度 営業CF ($bn) 配当支払額 ($bn) カバー率 (営業CF/配当)
2020 3.25 2.23 1.46x
2021 3.18 2.34 1.36x
2022 4.24 2.94 1.44x
2023 4.87 3.23 1.51x
2024 5.12 3.58 1.43x

出典:プロロジス公式IR資料より筆者算出。

3.2 バランスシート分析

年度 総資産($bn) 純負債($bn) 負債/EBITDA 利用可能流動性($bn)
2022 68.2 25.8 3.7x 4.0
2023 72.3 26.4 4.2x 6.5
2024 78.5 29.6 4.9x 7.0
2025 Q2 5.1x 7.1

出典:プロロジス公式決算資料より筆者算出。

財務安定性

  • 適切な配当カバー:営業キャッシュフローは配当支払額を1.4倍以上カバーし、配当の安全性は確保されている。
  • 管理された負債:負債/EBITDA比率は5.1倍と物流REITとして健全水準。成長投資と財務規律を両立。
  • 十分な流動性:$71億の利用可能流動性により、開発投資と運転資本を確保。

4. 配当持続性の視点

4.1 物流不動産REITの安定化メカニズム

ポイント

  • 長期契約×賃料改定:平均5-7年の長期契約にインフレ連動条項を内蔵し、賃料収入の安定性を確保。
  • 高い継続率:物流拠点移転は極めて困難で、継続率95%超の高いリテンション率。
  • 立地優位性:主要都市圏の物流適地を長期保有し、新規参入を阻む高い参入障壁。
  • 必需インフラ:現代の消費経済とサプライチェーンを支える不可欠なインフラサービス。

4.2 競合比較(参考)

項目 Prologis (PLD) STAG Industrial (STAG) 所見
2025年Core FFO成長(実績) +9.0% 約+5-7% PLDが成長性で優位
事業範囲 20カ国・13億平方フィート 米国・約1.2億平方フィート PLDがグローバル分散
配当利回り(2025年8月) 約3.6% 約4.2% STAGが利回りで優位
P/Core FFO倍率 約20x 約16x PLDがプレミアム評価
賃料上昇率(Q2 2025) 53.4% 約10-15% PLDが価格決定力で優位

主なリスク

  1. 金利感応度:REIT全般のディスカウント率上昇でバリュエーションが揺れやすい。
  2. Eコマース成長鈍化:オンライン小売成長率の低下による物流施設需要減少。
  3. 競合激化:新規参入や既存競合との価格競争激化。
  4. 開発コスト上昇:建設資材・労働コストの高騰による開発利益率圧迫。

5. まとめ

PLDは12年連続増配×グローバル展開×立地優位性で物流不動産REITの最高峰に位置し、Eコマース・物流自動化需要の構造的拡大により堅実な配当成長が期待できます。Q2 2025はCore FFO/株+9.0%成長、ネット有効賃料変動53.4%など好調な業績を維持。配当原資(Core FFO)の質と見通しは良好です。一方、金利感応度や高い配当性向などREIT特有のリスクを十分理解した上で、長期視点での安定性と成長性を両立する配当投資として検討価値の高い銘柄と言えるでしょう。

6. 出典情報


Posted by 南 一矢