SRE(センプラエナジー)今後の見通し(配当推移・成長率・安全性)

配当

センプラエナジー (Sempra Energy) の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

配当の安定性と成長性

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さらに、長期の指標を見てみます。

以下の表では、EPSと1株配当は$(ドル)単位、配当成長率(表記は「成長率」)と配当性向は%単位で表示しています。

配当関連指標の推移

年度 EPS 1株配当 成長率 配当性向
2008 2.22 0.69 10 30
2009 2.26 0.78 14 34
2010 1.43 0.78 0 54
2011 2.76 0.96 23 35
2012 1.74 1.20 25 67
2013 2.01 1.26 5 62
2014 2.32 1.32 5 56
2015 2.69 1.40 6 52
2016 2.73 1.70 21 62
2017 0.51 1.64 -3 322
2018 1.71 1.79 9 104
2019 3.65 1.94 8 52
2020 6.44 2.09 8 34
2021 2.01 2.20 5 109
2022 3.31 2.29 4 69
2023 4.79 2.38 4 50
2024 4.42 2.48 4 54

一貫した配当増加の実績

センプラ・エナジーの最も注目すべき特徴の一つは、2017年の一時的な減少を除き、ほぼ連続して配当を増加させてきた実績です。2008年の1株当たり0.69$から2024年には2.48$へと、約3.6倍の成長を示しています。特に過去7年間(2018年から2024年)は連続増配を維持しており、株主還元が強化されています。

配当成長率の推移

配当成長率には変動がありますが、2017年を除いて一貫してプラスを維持しています:

  • 2008〜2012年:年平均約18%の高い成長
  • 2013〜2016年:年平均約9.3%の安定成長
  • 2017年:3%のマイナス成長(唯一の減配)
  • 2018〜2020年:年平均約8.3%の再加速
  • 2021〜2024年:年平均約4.3%と緩やかな成長

この成長パターンは、企業の発展段階や経営戦略の変化を反映しています。初期段階(2008〜2012年)では高い成長率を実現し、中期(2013〜2016年)では安定成長へと移行。2017年の一時的な減配の後、2018〜2020年には成長率が回復し、近年(2021〜2024年)は4%台の安定した成長率を維持しています。

注目ポイント:センプラ・エナジーは2017年に一度だけ3%の減配を経験していますが、その後7年連続で配当を増加させており、配当重視の投資家にとって着実な実績を築いています。

配当性向の持続可能性

センプラの配当性向は年によって大きく変動しています。2024年の配当性向は54%と、公益事業セクターとしては比較的健全な水準です。しかし過去データを見ると、2017年(322%)、2018年(104%)、2021年(109%)と、複数年にわたり100%を超える配当性向を記録しています。

これらの高水準の配当性向は以下の要因によるものと考えられます:

  • 2017年:純利益が大幅に減少(前年比81%減)したにもかかわらず、配当をほぼ維持したため
  • 2018年:純利益は回復傾向にあったものの、まだ十分な水準に達していなかった
  • 2021年:前年の好業績から一転して純利益が67%減少、しかし配当は増加を継続

一般的に、100%を超える配当性向が長期間続くことは財務的に持続可能とは言えませんが、公益事業会社の場合、安定収入(規制価格で電気などが売れる)と予測可能なキャッシュフローがあるため、短期的な収益変動に対しても配当を維持できる傾向があります。センプラの場合、2019年以降(2021年を除く)は配当性向が70%未満に改善しており、より持続可能なレベルへの回帰を示しています。

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)とROEは%単位で表示しています。ROE(自己資本利益率)は、純利益を株主資本で割った指標で、株主資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示します。

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益 ROE
2008 10,758 1,191 11 1,123 14
2009 8,106 1,875 23 1,129 13
2010 9,003 2,154 24 719 8
2011 10,036 1,867 19 1,339 14
2012 9,647 2,018 21 865 8
2013 10,557 1,784 17 1,009 9
2014 11,035 2,161 20 1,162 10
2015 10,231 2,898 28 1,350 11
2016 10,183 2,311 23 1,371 11
2017 9,640 3,625 38 257 2
2018 10,102 3,516 35 1,050 6
2019 10,829 3,088 29 2,198 11
2020 11,370 2,591 23 3,932 16
2021 12,857 3,842 30 1,317 5
2022 14,439 1,142 8 2,138 7
2023 16,720 6,218 37 3,074 9
2024 13,185 4,907 37 2,861 8

収益性と効率性の分析

センプラ・エナジーの財務データからは、以下のような特徴が見られます:

  • 営業CFマージンは2017年に38%、2023年と2024年に37%と高い水準を記録
  • ROEは2008年から2024年の期間で平均約10%を維持、但し年による変動が大きい
  • EPSは長期的に上昇傾向、2020年には6.44$の高水準を記録するも、その後は変動あり
  • 純利益は2017年に大幅減少後、2020年に過去最高の3,932M$を記録、近年も比較的高水準を維持

特に注目すべきは、営業CFマージンの改善傾向です。2022年に一時的な落ち込み(8%)がありましたが、その後急速に回復し、2023年と2024年には37%という高水準に達しています。これは、事業効率の向上と戦略的な経営判断が功を奏していることを示唆しています。

安定したキャッシュフロー基盤

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2008 1,191 -43 -2,386 858
2009 1,875 57 -2,672 576
2010 2,154 15 -1,283 -69
2011 1,867 -13 -3,070 534
2012 2,018 8 -3,158 1,355
2013 1,784 -12 -1,689 338
2014 2,161 21 -3,342 854
2015 2,898 34 -2,868 -176
2016 2,311 -20 -4,835 2,502
2017 3,625 57 -4,885 1,192
2018 3,516 -3 -12,470 8,850
2019 3,088 -12 -4,593 1,475
2020 2,591 -16 553 -2,373
2021 3,842 48 -5,508 1,260
2022 1,142 -70 -5,039 3,779
2023 6,218 444 -8,716 2,419
2024 4,907 -21 -9,118 5,424

センプラ・エナジーのキャッシュフローは、公益事業会社としては比較的変動が大きい特徴があります:

  • 2023年に過去最高の6,218M$の営業キャッシュフローを記録
  • 営業CF成長率は年によって大きく変動し、-70%(2022年)から444%(2023年)まで幅広い変化
  • 2018年には投資CFが-12,470M$と大幅増加、同時に財務CFも8,850M$と大幅増加
  • 2020年にはプラスの投資CF(553M$)を記録、資産売却などの可能性

2018年の投資CFと財務CFの大幅増加は、大型の買収または設備投資を行った可能性を強く示唆しています。実際、この年にセンプラは子会社のOnocoEnergyを通じてTexas Utilitiesの買収を完了させています。

2022年の営業キャッシュフローの大幅減少(前年比70%減)は、以下の要因によるものと考えられます:

  • 天然ガスや石炭などの燃料コストの急激な上昇(ロシア・ウクライナ紛争の影響)
  • 異常気象による運用コストの増加
  • インフレ圧力による全般的なコスト増加

キャッシュフロー分析のポイント:センプラの営業キャッシュフローは変動が大きいものの、2023年の大幅な改善(前年比444%増)は、過去の投資が結実し始めた証と考えられます。2024年には若干減少(-21%)していますが、依然として高水準を維持しており、配当支払いと投資活動の両立が可能な状態にあります。

負債水準と資本構成

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率(「ECR]と表記。「Equity Capital Ratio」の略)と負債比率は%単位で表示しています。負債比率は「総負債÷株主資本×100%」で計算され、企業の財務レバレッジを示す指標です。

年度 総資産 総負債 株主資本 ECR 負債比率
2008 26,400 18,091 7,969 30 227
2009 28,512 19,261 9,007 32 214
2010 30,283 21,045 9,027 30 233
2011 33,249 23,071 9,775 29 236
2012 36,499 25,816 10,282 28 251
2013 37,244 25,394 11,008 30 231
2014 39,651 27,551 11,326 29 243
2015 41,150 28,571 11,809 29 242
2016 47,786 32,545 12,951 27 251
2017 50,454 35,314 12,670 25 279
2018 60,638 41,390 17,138 28 242
2019 65,665 43,860 19,929 30 220
2020 66,623 41,689 24,934 37 167
2021 72,045 44,626 27,419 38 163
2022 78,574 49,318 29,256 37 169
2023 87,181 53,527 33,654 39 159
2024 96,155 58,367 37,788 39 154

センプラ・エナジーの資本構成には、いくつかの重要な特徴が見られます:

  • 2018年には総資産が大幅に増加(50,454M$から60,638M$へ)、これは前述のTexas Utilities買収を反映
  • 負債比率は2017年の279%をピークに、以降一貫して低下し、2024年には154%に改善
  • 自己資本比率(ECR)は、2017年の25%からその後大きく改善し、2023年と2024年には39%の高水準
  • 株主資本は一貫して拡大を続け、2008年の7,969M$から2024年には37,788M$へと約4.7倍に成長

特筆すべきは、2017年以降の財務構造の顕著な改善です。負債比率は2017年の279%から2024年には154%へと大幅に低下し、自己資本比率は同時期に25%から39%へと向上しています。この改善は、過去の投資が収益化し、株主資本が着実に拡大していることを示しています。

総資産の成長を見ると、2018年のTexas Utilities買収以降も安定した拡大を続けており、積極的な成長戦略を反映しています。2024年には総資産が初めて900億ドルを超え、96,155M$に達しています。

まとめ:長期配当投資家にとってのセンプラ・エナジーとは?

センプラ・エナジーは、安定した成長性と財務健全性の向上により、配当重視の長期投資家にとって魅力的な投資先と評価できます。

同社の強みは以下の点にあります:

  • 2017年の一時的な減配を除き、長期的な配当増加実績を維持
  • 直近7年間(2018-2024年)は連続増配を継続
  • 近年の自己資本比率の大幅改善(2024年には39%と公益事業としては高水準)
  • 負債比率の継続的な低下(2017年の279%から2024年には154%へ)
  • 近年の高い営業CFマージン(2023年と2024年は37%)
  • 2024年の配当性向54%と、公益事業として持続可能なレベル

一方で、注意すべき点としては:

  • 営業CFの年による変動性が大きい(特に2022年に大きく減少)
  • 過去に複数回、100%を超える高い配当性向を記録(2017年、2018年、2021年)
  • 2024年の売上高は前年比21%減と大幅減少、事業環境の変化に注意が必要
  • 規制リスク:公益事業は規制産業であり、規制当局の決定が収益に直接影響を与える可能性
  • 自然災害リスク:気候変動による異常気象の増加により、インフラ設備への被害や復旧コストが増加する恐れ
  • エネルギー転換リスク:脱炭素化に向けた巨額投資と技術的課題が将来的な収益性に影響する可能性
  • 地域集中リスク:主要事業がカリフォルニア州とテキサス州に集中しており、これらの地域の経済状況や規制環境に左右される
  • 金利変動リスク:負債比率が改善しているとはいえ、依然として高い水準であり、金利上昇環境下ではコスト増加の影響を受けやすい

投資家へのポイント:センプラ・エナジーは「成長を続ける配当」と「財務体質の改善」を両立させている点が評価できます。近年の財務指標の改善(特に自己資本比率の向上と負債比率の低下)は、長期的な持続可能性を高めています。配当成長率は近年4%程度と、インフレ率を上回る水準を維持しており、実質購買力を保護するのに十分な水準です。ただし、営業CFの変動性や売上高の減少傾向については注視すべきでしょう。総合的に見て、センプラ・エナジーは「成長と安定のバランスが取れた」公益事業株として、分散投資ポートフォリオの一角を担うのに適した銘柄と言えます。

よくある質問

センプラ・エナジーの配当はどれくらい安全ですか?

2024年時点の配当性向

将来の配当成長率はどの程度期待できますか?

過去4年間(2021-2024年)の実績では年率4%程度の配当成長を維持しており、この傾向が短期的に継続する可能性はあります。この成長率は現在の一般的なインフレ率に近い水準であり、実質的な購買力の維持に寄与する可能性があります。

近年の財務指標の改善(自己資本比率の向上と負債比率の低下)は、配当を支える財務基盤を強化する要素です。しかし、以下の要因により将来の配当成長率は影響を受ける可能性があります:

1) 2024年の売上高減少(前年比21%減)が継続するか一時的なものかによる影響
2) 営業キャッシュフローの変動性(2022年に70%減、2023年に444%増、2024年に21%減)
3) 気候変動対応やエネルギー転換に向けた大型投資の必要性
4) カリフォルニア州とテキサス州の規制環境の変化

公表されている投資計画や規制環境の動向を踏まえると、今後は従来の4%程度の成長率が維持される可能性がある一方、上記要因によっては成長率が抑制される可能性も考慮する必要があるでしょう。

負債比率の低下傾向はどのように評価できますか?

センプラ・エナジーの負債比率は2017年の279%から2024年には154%へと顕著に低下しています。同時に自己資本比率も25%から39%へと向上しており、財務体質に明らかな改善傾向が見られます。この変化は、過去の投資が収益化し、株主資本が拡大した結果と考えられます。

この財務健全性の向上は、将来の経済環境の変化や金利上昇に対する耐性を高め、長期的な配当の継続性を支える要因となる可能性があります。公益事業セクターにおいて、自己資本比率39%という水準は相対的に良好な値であり、財務面での安定性を重視する投資家からは肯定的に捉えられる特性でしょう。ただし、公益事業は一般的に高い設備投資を継続的に必要とするため、今後の投資計画によっては再び負債が増加する可能性も考慮する必要があります。

2022年の営業キャッシュフロー減少の原因は何ですか?

2022年の営業キャッシュフロー減少(前年比70%減の1,142M$)は、主に以下の要因によるものです:ロシア・ウクライナ紛争に起因する天然ガスや石炭などの燃料コストの急激な上昇、異常気象対応による運用コストの増加、そして全般的なインフレ圧力によるコスト増加などが挙げられます。また、規制承認の遅延によるコスト回収の遅れも影響した可能性があります。2023年に営業CFが大幅に回復(444%増の6,218M$)したことから、2022年の減少は構造的な問題ではなく、一時的な外部要因によるものだったと考えられます。ただし、2024年に再び21%減少していることから、一定の変動性は今後も続く可能性があります。

2024年の売上高減少はどのように捉えるべきですか?

2024年の売上高は前年比21%減の13,185M$となり、これは確かに注視すべき減少幅です。この減少の具体的要因としては、エネルギー価格の変動、事業ポートフォリオの調整(例:一部事業の売却や再編)、規制環境の変化などが考えられますが、同社の公表情報からその詳細を確認する必要があります。

興味深い点として、この売上高減少にもかかわらず、営業CFマージンは前年と同水準の37%を維持しており、収益性の構造には大きな変化が見られません。これは、コスト管理の効率化や高収益事業への集中が進んでいる可能性を示します。純利益も前年比で7%の減少にとどまっており、売上高の減少率(21%)に比べれば相対的に小さな影響です。

公益事業セクターでは、規制料金の改定、燃料費の変動、一時的な需要変動などによって売上高が変動することがあります。単年の売上高減少だけでなく、収益構造や利益率の変化、将来の成長戦略についても総合的に評価することが重要です。

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

【出典】

 

Posted by 南 一矢