TSLA(テスラ)の業績:EVとAI・ロボティクス企業の現在

AI(人工知能),財務情報

【2025年版】Tesla (TSLA) 徹底分析:EVの覇者からAI・ロボティクス企業への進化 – 2010-2024年財務データと未来戦略

はじめに
テスラ(Tesla, Inc.)はEVのパイオニアとして自動車産業を変革し、エネルギー貯蔵やAI・ロボティクスへと事業を拡大するイノベーション企業です。本稿では2010–2024年の財務データと最新動向(2025年Q2まで)から、成長の軌跡と「第二章」の論点を投資家目線で整理します。

【免責・出典】本稿の数値は主にTeslaの年次報告書(Form 10-K)、四半期資料(Shareholder Update/8-K)などの公式IRに基づき作成。
2024年の通期データは2025年1月提出のForm 10-K(2024/12期)2025年の四半期はQ1/Q2 Updateを参照しています。投資判断は自己責任でお願いします。
公式IR:https://ir.tesla.com/

会計年度:テスラの会計年度は暦年(1/1–12/31)。以下の「20XX年」は当該暦年決算を指します。

1. テスラの長期業績:成長の軌跡と足元の踊り場

Model 3/Yの量産確立で急拡大し、2024年は売上・エネルギーが過去最高。車両は価格競争等で伸び悩み、利益率は一時的に低下しました。

1.1 売上・利益・納車台数の推移(抜粋)

車両納車台数(千台) 売上高(百万$) 売上成長率 営業利益(百万$) 純利益(百万$) 希薄化後EPS($)
2018 245.2 21,461 +82.5% -387 -976 -5.72
2019 367.5 24,578 +14.5% -69 -862 -4.66
2020 499.6 31,536 +28.3% 1,994 721 0.25
2021 936.2 53,823 +70.7% 6,523 5,519 1.87
2022 1,313.9 81,462 +51.4% 13,656 12,556 3.62
2023 1,808.6 96,773 +18.8% 9,695 15,002 4.30
2024 1,808.6 97,690 +0.9% 7,076 7,091 2.04

注)2010–2017年の詳細行は割愛。EPSは株式分割調整後。

1.2 収益性の推移(GAAPベース)

年/四半期 総粗利率(GM) 営業利益率 純利益率
2018 18.8% -1.8% -4.5%
2019 16.6% -0.3% -3.5%
2020 21.0% 6.3% 2.3%
2021 25.3% 12.1% 10.2%
2022 25.6% 16.8% 15.4%
2023 18.2% 10.0% 15.5%
2024 17.9% 7.2% 7.3%
2025 Q1 16.3% 4.4% 2.1%
2025 Q2 17.2% 8.4% 6.5%

注)2025年は四半期(Update Deck)より。

2. 事業セグメントとエコシステム

テスラはEVを核に、エネルギー貯蔵・充電、ソフトウェア(FSD等)、AI/ロボティクスを垂直統合。2024年はエネルギー事業が売上・利益とも大幅伸長。

2.1 セグメント売上(百万$)

期間 自動車 エネルギー生成・貯蔵 サービスその他 合計
2022年 71,462 3,909 6,091 81,462
2023年 82,419 6,035 8,319 96,773
2024年 77,070 10,086 10,534 97,690
2025年Q1 13,967 2,730 2,638 19,335
2025年Q2 16,661 2,789 3,046 22,496

ポイント:エネルギーはIRA製造クレジット等の寄与もあり高成長&高採算化。

3. AI・自動運転(FSD)・ロボティクス

  • FSD(Supervised)とRobotaxi:学習はリアルワールドデータ×E2E NNへシフト。
    2025年6月に米テキサス州オースティンでRobotaxiサービスを開始し、「顧客車の完全自動運転での初回配車に成功」と公表(但し注記で“運転者の監視が必要で自動運転を意味しない”旨を明記)。
  • より手頃な次世代EV:2025年6月に初号ビルド、2025年後半に量産開始見込み(既存ライン活用)。
  • Dojo/AIインフラ:動画学習のための社内HPC投資を継続。
  • Optimus(人型ロボット):工場内での適用を拡大中。限定実用化→将来の商用化を視野。

4. エネルギー事業の拡大

  • 2024年の蓄電導入量:31.4GWhで過去最高。Megapack中心に拡大。
  • 2025年Q2:四半期の蓄電導入は9.4GWh(前年比+14%)、セグメント粗利率は25.9%。

5. 財務の健全性と投資

5.1 貸借対照と流動性(抜粋)

  • 現金・現金同等物+投資:2024年末 $36.56B。2025年Q2末 $36.78B
  • 研究開発費:2024年 $4.54B(対売上比5%)。

5.2 キャッシュフロー(百万$)

期間 営業CF CAPEX フリーCF 備考
2020 5,943 3,209 2,734
2021 11,497 8,014 3,483
2022 14,724 7,569 7,155
2023 13,256 8,898 4,358
2024 14,923 10,738 3,935 大型投資継続
2025 Q1 2,156 1,492 664 FCFはプラス

注)CAPEXはギガファクトリー、次世代車、AI/ロボ等へ。
10-Kでは2025年およびその後2年度のCAPEXは各年$11B超見込みと記載。

6. 2025年の見通しと注目点

  • 次世代EVの量産開始:2025年後半に既存ラインで立ち上げ、コスト/価格競争力を回復できるか。
  • FSD/Robotaxiの規制・実装:監視前提→真の自動化へ技術と規制の前進が鍵。ライセンス戦略の動向も注視。
  • エネルギー事業:高成長・高採算の柱へ。供給能力と受注の見合い、粗利率の維持。
  • 利益率の底打ち:価格とミックス、コスト低減(4680/工程革新)、ソフトウェア収益がどこまで改善に寄与するか。
  • 現在の強み:ブランド/ソフトウェア/充電網/データ×AIの優位と垂直統合。
  • 次の成長ドライバー:次世代低価格EV、FSD/Robotaxi、Optimus、そしてMegapackを中心とするエネルギー。

本記事は情報提供目的です。最終更新:2025年8月31日

Posted by 南 一矢