TSM(タイワンセミコンダクター)今後の見通し

ADR銘柄,AI(人工知能),半導体,情報技術,株価•決算

タイワンセミコンダクター・マニュファクチャリング(台湾積体電路製造〔TaiwTaiwan Semiconductor Manufacturing Company〕)の今後の見通しを考えるために、まず、金利と株価チャートの推移を参照し、次に、直近の決算を確認します。

目標株価やPERなどの情報も踏まえて主な指標についても掲載します。

金利と株価:過去~現在

※チャート左目盛り:青線は株価推移赤線は200日移動平均線

※チャート右目盛り:緑線は10年国債利回り

※株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、時価総額、株式数、取引の出来高などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。

銘柄比較については関連記事(TSM(タイワンセミコンダクター)とASMLを比較)を参照

直近決算

TSMCは7月17日(米国時間)に決算を発表しました。
★EPS:予想$2.38→$2.47
★売上:予想$302.1億→$300.7億(+44%)
★ガイダンス(次期売上):予想$307億→$318億~$330億
★出典:
IRページ
★予想値は以下のページを参照しました。
IBD

企業概要

台湾積体電路製造(TSMC:Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、台湾に本社を置く世界最大の半導体ファウンドリ(受託製造)企業です。顧客が設計したチップをTSMCの工場で製造する「純粋な受託製造」モデルで業界を牽引し、2025年4–6月期(Q2)には世界のファウンドリ市場で約70%のシェアを記録しました[1]

高い市場シェアを背景に、Apple、Qualcomm、NVIDIA、AMD、Broadcom、MediaTekなど多くのファブレス企業を主要顧客に抱えています。2025年Q2の売上構成では、HPC(高性能コンピューティング)60%、スマートフォン27%、また7nm以下の先端ノードが全ウエハー売上の74%を占めました[2]。幅広い顧客からの受託製造により、スマートフォン、自動車、IoT、AIなど多様な半導体需要に対応しています。

TSMCは1987年、台湾政府の支援に加えフィリップス等の出資を受けて設立。創業者モリス・チャン氏のリーダーシップの下、顧客と競合しない中立的な「製造特化」を貫きました。1997年10月8日にはADR(米国預託証券)をNYSEに上場し、グローバルな資金調達と投資家基盤を拡大しました[3]

TSMCは、半導体の設計は顧客に委ね、ファウンドリとしてウエハー製造〜組立・テストまで提供。加えて、OIP(Open Innovation Platform)によるIP/EDA/DFM連携など設計容易化のエコシステムを展開し、短TAT・高歩留まりを支えています[4]

具体的な提供領域

先端プロセス技術
3nm(N3)は量産が立ち上がり、スマホSoCやAI/HPC用途で採用が拡大。2nm(N2)2025年後半に量産開始予定で、TSMC初のGAA(ナノシート)を採用。さらにA16(1.6nm世代相当)はSPR(Super Power Rail=背面給電)を統合し、2026年後半量産の計画です[11][12]

特化型プロセスおよび付帯サービス
モバイル、車載、アナログ/電源、RFなど用途別プロセスに加え、OIP連携による設計IP・リファレンスフロー・DFM(Design for Manufacturability)を提供し、顧客の「設計→試作→量産」を効率化します[4]

先端パッケージング(3DFabric:CoWoS®/SoIC®/InFO)
AI向けのHBM+ロジックを大面積で統合する需要に対応し、CoWoS(2.5D)SoIC(3D積層)の能力を増強。2025年にCoWoS月産7.5万枚規模へ拡張との業界推計が示されています[13]

TSMCはリーディングカンパニーとして微細化とパッケージの両輪を磨き、AI時代の膨大な計算需要を取り込みながら成長。大規模生産と高歩留まりでコスト競争力を維持し、景気変動にも強い基盤を構築しています。

グローバル拠点とサプライチェーン多角化
日本・熊本(JASM)は2024年2月に開所し、第2工場(6/7nm)の建設計画も公表。2工場合計で月産10万枚超を見込みます[5][6]。米国アリゾナは最大66億ドルのCHIPS補助金最大50億ドルのローン枠の対象で、3工場体制・総投資650億ドル超の計画です[7]。欧州ドレスデンではBosch/Infineon/NXPと合弁のESMCで自動車・産業向け製造を2027年生産開始に向けて整備中(EUの50億ユーロ補助金承認)[9]

懸念事項(アップデート)
地政学・規制リスクとして、2025年12月31日付で南京工場のVEU(Validated End-User)認定が失効し、対中輸出に個別許可が必要になります(成熟ノード中心のため影響は限定的との見方も)[10]。また、先端パッケージ能力の逼迫やコスト上昇を背景に、価格改定(値上げ)の動きも報じられています[14]。一方、台湾・日本・米国・欧州にまたがる多極分散で供給リスクの低減を図っています。


用語ミニ解説

  • nm(ナノメートル):回路の細かさの目安。数字が小さいほど高性能・省電力に。
  • GAA/SPR:次世代トランジスタ(GAA)と、電力を裏面から供給する背面給電(SPR)。配線の混雑を減らし、省電力・高性能化に寄与。
  • CoWoS/SoIC:複数チップやHBMメモリを近接・積層実装する先端パッケージ。AIチップの性能と供給のカギ。

【出典】(詳細は本文末のをご参照ください)

  1. TrendForce「2Q25 Foundry Revenue…TSMC’s Market Share Hits 70%」(2025/9/1) リンク ↩︎
  2. TSMC「Q2 2025 Management Report」(HPC 60%、スマホ27%、7nm以下74%)PDF ↩︎
  3. TSMCプレス「TSMC First Taiwan Company to List on NYSE」(1997/10/8) リンク(参考:TSMC旧年報にも記載) ↩︎
  4. TSMC「Open Innovation Platform(OIP)」 リンク(3Dblox 2.0紹介ブログ:リンク↩︎ ↩︎
  5. TSMCプレス「JASM開所」(2024/2/24)リンク(PDF版:リンク↩︎
  6. TSMCプレス「JASM第2工場計画(6/7nm、2工場合計で10万枚/月超)」リンク ↩︎
  7. NIST「CHIPS Incentives Award – TSMC Arizona」(直接補助最大66億ドル、ローン枠最大50億ドル、3工場・投資650億ドル超) リンク ↩︎
  8. 欧州委「ESMCに対する独政府の50億ユーロ補助金を承認」(2024/8/19) リンク ↩︎
  9. Reuters「米国、TSMC南京のVEUを取り消し(12/31発効)」リンク(Investopedia整理も:リンク↩︎
  10. SemiEngineering「TSMC Tech Symposium 2025」(N2=2025H2量産見通し、A16概要) リンク ↩︎
  11. TSMCプレス(2024/4/24)「A16はSPR採用、2026年量産/N2は2025年後半へ」リンク(補足:Tom’s Hardware解説 リンク↩︎
  12. TrendForce「CoWoS能力、2025年に月7.5万枚へ」リンク ↩︎
  13. TrendForce「TSMCが2026年以降に先端ノードの大幅値上げを計画」(2025/9/5)リンク ↩︎

四半期決算(EPSと売上)の推移:予想と結果

最後に、四半期決算について予想と結果を確認します。

売上高とEPSについて、マーケットのアナリスト平均値と企業の発表を比べてみます。

(単位はEPSがドル、売上高が100万ドル)。

【出典】

Posted by 南 一矢