TSM(タイワンセミコンダクター)今後の見通し

ADR銘柄,AI(人工知能),半導体,情報技術,株価•決算

タイワンセミコンダクター・マニュファクチャリング(台湾積体電路製造〔TaiwTaiwan Semiconductor Manufacturing Company〕)の今後の見通しを考えるために、まず、金利と株価チャートの推移を参照し、次に、直近の決算を確認します。

目標株価やPERなどの情報も踏まえて主な指標についても掲載します。

金利と株価:過去~現在

※チャート左目盛り:青線は株価推移赤線は200日移動平均線

※チャート右目盛り:緑線は10年国債利回り

※株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、時価総額、株式数、取引の出来高などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。

銘柄比較については関連記事(TSM(タイワンセミコンダクター)とASMLを比較)を参照

直近決算

TSMCは4月16日(米国時間)に決算を発表しました。
★業績
《四半期》
・EPS:予想3.26$→結果3.49$
・売上高:予想352.1億$→結果359億$(前年同期比+35%)
★ガイダンス
《四半期》
・売上高:予想381.1億$→結果390~402億$
(※通年売上高:+30%以上)
★出典
IRページ
★予想値は以下のページを参照しました。
streetinsider

企業概要

台湾積体電路製造(TSMC:Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、台湾に本社を置く世界最大の半導体ファウンドリ(受託製造)企業です。顧客が設計したチップをTSMCの工場で製造する「純粋な受託製造」モデルで業界を牽引しており、2025年通期では世界ファウンドリ市場で約69.9%のシェアを占めたと報じられています。[1]

高い市場シェアを背景に、Apple、Qualcomm、NVIDIA、AMD、Broadcom、MediaTekなど、多くのファブレス企業や大手テック企業を主要顧客に抱えています。2026年Q1の売上構成では、HPC(高性能コンピューティング)61%、スマートフォン26%でした。また、同四半期のウエハー売上では3nmが25%、5nmが36%、7nmが13%を占め、7nm以下の先端ノードが全ウエハー売上の74%に達しました。[2]

TSMCは1987年、台湾政府の支援に加え、フィリップス等の出資を受けて設立されました。創業者モリス・チャン氏のリーダーシップの下、顧客と競合しない中立的な「製造特化」を貫きました。1997年10月8日にはADR(米国預託証券)をNYSEに上場し、グローバルな資金調達と投資家基盤を拡大しました。[3]

TSMCは、半導体の設計は顧客に委ね、ファウンドリとしてウエハー製造から先端パッケージング、関連サービスまでを提供しています。加えて、OIP(Open Innovation Platform)によるIP、EDA、設計支援、DFM(Design for Manufacturability)などのエコシステムを展開し、顧客の設計から量産までの時間短縮と歩留まり改善を支えています。[4]

具体的な提供領域

先端プロセス技術
3nm(N3)はスマートフォンSoCやAI/HPC用途で採用が拡大し、2026年Q1にはウエハー売上の25%を占めました。2nm(N2)は、TSMC初のナノシート型トランジスタを採用する世代で、同社公式ページでは2025年Q4に量産を開始したとされています。さらに、A16はナノシートとSPR(Super Power Rail=背面給電)を組み合わせる技術として位置づけられており、AI/HPC向けの高性能・高密度設計に対応するロードマップ上の重要技術です。[2][5]

特化型プロセスおよび付帯サービス
モバイル、車載、アナログ/電源、RF、IoTなど用途別プロセスに加え、OIP連携による設計IP、リファレンスフロー、DFMを提供し、顧客の「設計→試作→量産」を効率化します。TSMCの強みは、最先端ノードだけでなく、車載・産業・IoT向けの成熟ノードや特化型プロセスも幅広く抱えている点にあります。[4]

先端パッケージング(3DFabric:CoWoS®/SoIC®/InFO)
AI向けのHBM+ロジックを大面積で統合する需要に対応し、CoWoS(2.5D)SoIC(3D積層)の能力を増強しています。AIアクセラレーターでは、最先端ロジックだけでなく、HBMと演算チップを高帯域・低遅延で接続するパッケージング能力が供給制約になりやすいため、3DFabricはTSMCの競争力を左右する重要領域です。[6]

TSMCはリーディングカンパニーとして、微細化とパッケージングの両輪を磨き、AI時代の膨大な計算需要を取り込みながら成長しています。2026年Q1の売上高は1兆1,341億台湾ドル、粗利益率は66.2%で、強い先端プロセス需要と高稼働率が収益性を支えました。[2]

グローバル拠点とサプライチェーン多角化
日本・熊本(JASM)は2024年2月に開所し、第1工場は2024年末までの生産開始を目標として整備されました。第2工場については、当初6/7nmなどを含む計画として公表され、2工場合計で12インチウエハー月産10万枚超を見込むとされています。なお、2026年には日本側の承認により、第2工場で3nmプロセスを導入する方向が報じられており、日本拠点の位置づけは、従来の成熟・準先端ノード中心から、より先端寄りへ広がる可能性があります。[7][8]

米国アリゾナでは、CHIPS Actに基づく最大66億ドルの直接補助金最大50億ドルの融資枠の対象となり、当初計画では3工場体制、投資額650億ドル超が示されました。さらに2025年3月には、TSMCが米国で追加1,000億ドルを投資する意向を発表し、既存計画と合わせた米国投資総額は1,650億ドル規模になる見通しです。追加計画には、3つの新しい半導体工場、2つの先端パッケージング施設、主要R&Dセンターが含まれます。[9][10]

欧州ドレスデンでは、Bosch、Infineon、NXPと合弁でESMCを設立し、自動車・産業・IoT・通信向けの製造拠点を整備しています。計画では、28/22nm planar CMOSおよび16/12nm FinFETプロセスで、月産4万枚の300mmウエハー能力を想定し、2027年末までの生産開始を目標としています。[11]

懸念事項(アップデート)
TSMCの最大のリスクは、地政学、顧客集中、設備投資負担、先端パッケージ能力の逼迫です。2025年のForm 20-Fでは、上位10顧客が売上の約78%、最大顧客が19%、第2位顧客が17%を占めたとされています。AI需要が強い一方で、顧客集中が高まるほど、大口顧客の設計変更、在庫調整、規制対応、投資タイミングの変化が業績に与える影響も大きくなります。[12]

また、米中規制リスクも継続しています。2025年には、TSMC南京工場のVEU(Validated End-User)認定が2025年12月31日付で失効する見通しとなり、対象となる米国由来装置・技術の輸出には個別許可が必要になると報じられました。南京工場は成熟ノード中心とみられるため、最先端ノードへの直接影響は限定的と考えられますが、中国向け事業や装置調達の手続き負担には注意が必要です。[13]

一方で、台湾・日本・米国・欧州にまたがる多極分散により、TSMCは顧客の地政学リスク低減ニーズに応えようとしています。ただし、海外生産は建設費、人件費、サプライチェーン整備費が高くなりやすく、台湾本拠地と同じコスト構造を維持できるとは限りません。今後は、先端ノードと先端パッケージングの供給力を増やしながら、海外拠点のコスト上昇をどこまで価格・歩留まり・稼働率で吸収できるかが焦点になります。

用語ミニ解説
nm(ナノメートル):回路の細かさを示す目安です。数字が小さいほど、一般に高性能・省電力化しやすくなります。
GAA/ナノシート:トランジスタのゲートがチャネルをより広く囲む構造です。微細化が進んだ世代で、電流制御と省電力化に寄与します。
SPR(Super Power Rail):電力をチップ裏面側から供給する背面給電技術です。信号配線と電源配線の混雑を減らし、高性能・高密度化を狙います。
CoWoS/SoIC:複数チップやHBMメモリを近接・積層実装する先端パッケージング技術です。AIチップの性能と供給能力を左右する重要技術です。

【注】(出典リンク)

  1. ファウンドリ市場シェア → TrendForce:2025年ファウンドリ市場動向Taipei Times:TSMC 2025年シェア約69.9%(確認日:2026-05-10)
  2. 2026年Q1売上構成・先端ノード比率・粗利益率 → TSMC 1Q26 Management ReportTSMC 1Q26 Earnings Call Transcript(確認日:2026-05-10)
  3. 設立・NYSE上場 → TSMC First Taiwan Company to List on NYSETSMC Annual Reports(確認日:2026-05-10)
  4. OIP・設計エコシステム → TSMC Open Innovation PlatformTSMC 3Dblox 2.0 Blog(確認日:2026-05-10)
  5. 2nm量産・A16/SPRの位置づけ → TSMC 2nm TechnologyTSMC North America Technology Symposium 2024(確認日:2026-05-10)
  6. 3DFabric・先端パッケージング → TSMC 3DFabricTSMC Advanced Packaging(確認日:2026-05-10)
  7. JASM開所・熊本第2工場計画 → TSMC Celebrates the Opening of JASM in KumamotoJASM Set to Expand in Kumamoto Japan(確認日:2026-05-10)
  8. 日本第2工場の3nm導入報道 → Reuters:TSMC plans 3nm chip production launch in JapanOCAC/CNA:台湾政府承認報道(確認日:2026-05-10)
  9. 米国CHIPS補助金・アリゾナ3工場計画 → NIST:TSMC ArizonaNIST:CHIPS Incentives Award(確認日:2026-05-10)
  10. 米国追加1,000億ドル投資計画 → TSMC Intends to Expand Its Investment in the United States to US$165 BillionWhite House Announcement(確認日:2026-05-10)
  11. ESMC・ドレスデン計画 → TSMC, Bosch, Infineon, and NXP Establish Joint VentureESMC Official(確認日:2026-05-10)
  12. 顧客集中リスク・上位顧客比率 → TSMC 2025 Form 20-FTSMC Annual Reports(確認日:2026-05-10)
  13. 南京工場VEU失効・米中規制リスク → Reuters:U.S. revokes TSMC fast-track China export statusInvestopedia解説(確認日:2026-05-10)

四半期決算(EPSと売上)の推移:予想と結果

最後に、四半期決算について予想と結果を確認します。

売上高とEPSについて、マーケットのアナリスト平均値と企業の発表を比べてみます。

(単位はEPSがドル、売上高が100万ドル)。

【出典】

Posted by 南 一矢