TSMC (台湾積体電路) の業績・配当:AI需要での成長と増配はどこまで続く

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TSMC (台湾積体電路) の業績・配当:AI需要・2nm・巨額CapExをどう見る(2026年9月時点)

【2026年9月時点】TSMC (台湾積体電路) 徹底分析:AI需要・2nm量産・巨額CapExと増配をどう見る

はじめに
TSMC(台湾積体電路製造)は、Apple、NVIDIA、AMDなどの半導体設計企業が開発した最先端チップを量産する、世界最大級の専業ファウンドリです。2026年Q2(2026年6月30日終了四半期)は、売上高NT$1,270.38B、純利益NT$706.56B、希薄化後EPSNT$27.25を記録しました。売上高は前年同期比36.0%増、純利益とEPSはともに77.4%増です。粗利益率は67.7%、営業利益率は60.3%まで上昇しました。[1]

さらに、2026年7月売上はNT$467.58B(前年比+44.7%)、8月売上はNT$514.81B(+53.3%)となり、2026年1〜8月累計売上はNT$3,386.87B(+39.3%)に達しています。Q3に入ってもAI・HPC向けの強い需要が継続していることが確認できます。[2]

本記事では、TSMCの技術的優位性、AI・HPC需要、2nm量産、巨額設備投資、株主還元を財務データから整理し、台湾海峡や海外工場立ち上げに伴うリスクもあわせて確認します。

【免責事項および出典について】

  • 本記事の数値・出来事は、TSMCのIR資料、年次報告、SEC提出資料、四半期資料など一次情報を優先して参照しています。
  • 会計年度は暦年(12月期)です。四半期は「2026年Q2=2026年6月期」のように表記します。
  • 2025年通期の純利益は、四半期データとの比較をそろえるため台湾IFRS(TIFRS)ベースの親会社株主帰属純利益NT$1,717.88Bを本文で使用します。Form 20-FのIASB版IFRSではNT$1,697.60Bとなり、主因は台湾の未処分利益課税の認識時期の差です。[3]
  • 記事内のFCFは、特記のない限り「営業CF-設備投資」で計算しています。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資の最終決定はご自身の判断と責任でお願いします。

【2026年9月更新】
2026年Q2決算、Q3ガイダンス、2026年通期売上・CapEx見通し、2nm量産、Q2末の財務状況、2026年Q1・Q2利益分の配当、2026年7〜8月月次売上を反映しました。特に大きな変更は、2026年CapEx見通しが従来記事のUS$38B〜US$42Bではなく、2026年7月時点でUS$60B〜US$64Bまで引き上げられている点です。[4]

1. 業績分析:AIが牽引する成長

1.0. 直近決算ハイライト(2026年Q2)

売上高(2026年Q2)
NT$ 1,270.38B
当期純利益(2026年Q2)
NT$ 706.56B
EPS(2026年Q2)
NT$ 27.25
最新承認配当(2026年Q2利益分)
NT$ 7.00

2026年Q2は2026年6月30日終了四半期。最新承認配当は2026年8月11日承認の2026年Q2利益分です。[1][5]

  • 売上・利益とも高成長:2026年Q2売上高は前年同期比36.0%増、純利益と希薄化後EPSはともに77.4%増でした。Q1比でも売上高は12.0%、純利益は23.4%増えています。[1]
  • 収益性がさらに上昇:Q2の粗利益率は67.7%、営業利益率は60.3%、純利益率は55.6%でした。高い稼働率とコスト改善が寄与しています。[1]
  • 一時的な利益押し上げもある:Q2にはVanguard株式の売却・時価評価益が約NT$63B計上され、EPSを約NT$2.24押し上げました。基礎的な利益成長は強いものの、Q2 EPSの全額を恒常利益とみなさないほうが安全です。[4]
  • Q3ガイダンス:会社は2026年Q3売上高をUS$44.6B〜US$45.8B、粗利益率を65%〜67%、営業利益率を56%〜58%と見込んでいます。[1]

1.1. 売上・利益の推移(年次)

長期比較では通貨換算によるブレを避けるため、年次データを新台湾ドル(NT$)に統一しました。2015年から2025年までの10年間で、売上高は約4.5倍、親会社株主帰属純利益とEPSは約5.6倍に拡大しています。[3]

会計年度 売上高(NT$ bn) 親会社株主帰属純利益(NT$ bn) 希薄化後EPS(NT$)
2015 843.50 306.57 11.82
2016 947.94 334.25 12.89
2017 977.45 343.11 13.23
2018 1,031.47 351.13 13.54
2019 1,069.99 345.26 13.32
2020 1,339.25 517.89 19.97
2021 1,587.42 596.54 23.01
2022 2,263.89 1,016.53 39.20
2023 2,161.74 838.50 32.34
2024 2,894.31 1,173.27 45.25
2025 3,809.05 1,717.88 66.25
CAGR(年平均成長率)
過去10年(2015→2025) 約16.3% 約18.8% 約18.8%
過去5年(2020→2025) 約23.3% 約27.1% 約27.1%

2015〜2025年の年次実績はTSMC年次報告のTIFRSベース。CAGRは筆者算出。[3]

  • 2025通期は過去最高:売上高はNT$3,809.05B、親会社株主帰属純利益はNT$1,717.88B、希薄化後EPSはNT$66.25でした。2024年比で売上高は31.6%増、純利益とEPSは46.4%増です。[3]
  • 2026年はさらに加速:会社は2026年通期売上高について、2026年Q2決算時点で米ドル建て前年比40%をやや上回る成長を見込んでいます。[4]

1.2. フリーキャッシュフロー(FCF)で見る収益の「手触り」

TSMCは成長率が高い一方、最先端プロセスと先端パッケージングに巨額の設備投資を続ける企業です。営業CFからCapExを差し引いたFCFを見ることで、設備投資後にどれだけ現金が残るかを確認できます。

期間 営業CF(NT$ bn) CapEx(NT$ bn) FCF(NT$ bn) 営業CFに占めるCapEx比率
2020 822.67 507.24 315.43 61.7%
2021 1,112.16 839.20 272.96 75.5%
2022 1,610.60 1,082.67 527.93 67.2%
2023 1,241.97 949.82 292.15 76.5%
2024 1,826.18 956.01 870.17 52.4%
2025 2,274.98 1,272.41 1,002.57 55.9%
2026年Q1 698.97 350.76 348.21 50.2%
2026年Q2 783.36 496.00 287.36 63.3%
2026年上期 1,482.34 846.77 635.58 57.1%

2020〜2025年はTSMCの各年Q4決算プレゼンテーション、2026年Q1・Q2は四半期資料。FCF=営業CF-CapEx。[3][6]

  • 2026年Q2も大幅なプラスFCF:Q2営業CFはNT$783.36B、CapExはNT$496.00Bで、FCFはNT$287.36Bでした。設備投資を大幅に増やしたうえでなお大きな余剰資金を確保しています。[6]
  • 上期FCFはNT$635.58B:2026年上期の営業CFはNT$1,482.34B、CapExはNT$846.77Bです。AI需要に対応した投資加速局面でもFCFが維持されています。[6]

2. 成長の源泉:巨額の設備投資(CapEx)

TSMCの技術的優位性と供給能力は、継続的な巨額投資によって支えられています。2025年のCapEx実績はNT$1,272.41Bでした。2026年はAI・HPC、2nm、先端パッケージング需要を受け、会社は年間資本予算をUS$60B〜US$64Bへ引き上げました。2026年1月時点のUS$52B〜US$56B、4月時点の「US$56B寄り」からさらに上方修正された形です。[4]

期間 営業CF(NT$ bn) 設備投資 (CapEx)(NT$ bn) 営業CFに占めるCapEx比率 補足
2020 822.67 507.24 61.7% 5nm量産・先端投資
2021 1,112.16 839.20 75.5% 先端ノード投資加速
2022 1,610.60 1,082.67 67.2% 大型投資継続
2023 1,241.97 949.82 76.5% 需要調整下でも高水準
2024 1,826.18 956.01 52.4% AI需要拡大
2025 2,274.98 1,272.41 55.9% 2nm・先端パッケージング投資
2026年 US$60B〜US$64B 会社資本予算ガイダンス

2020〜2025年実績はTSMC公式プレゼンテーション、2026年予算は2026年Q2決算説明時点。[3][4]

  • CapEx増額は需要の強さを示す:会社は増額理由として、AIを含む顧客需要の継続的な増加と装置価格のインフレを挙げています。[4]
  • 投資先は先端技術が中心:2026年資本予算の約70〜80%を先端プロセス、約10%を特殊技術、約10〜20%を先端パッケージング・テスト・マスク製造などへ配分する計画です。[4]
  • 2nmの急拡大:2026年Q2には2nmが早くもウェハ売上の3%を占めました。Q3以降は急速な量産立ち上げが続く見込みです。[1]

3. 株主還元と財務健全性

TSMCは、巨額の投資を行いながらも、財務基盤を維持し株主還元(配当)も継続しています。ここでは、直近の四半期配当だけでなく、元記事で削れていた過去の配当系列もできるだけ戻して見ていきます。

3.1. 配当:四半期配当の増額が続く

最新承認配当:2026年Q2利益分は1株NT.00

2026年8月11日、取締役会は2026年Q2利益分として1株NT$7.00の現金配当を承認しました。普通株の除息日は2026年12月10日、基準日は12月16日、支払日は2027年1月7日です。2026年9月17日時点では、これらはいずれも将来日です。[5]

2026年Q1利益分もNT$7.00で、除息日は2026年9月16日、支払日は10月8日です。会社は2026年中に株主が受け取る現金配当を合計NT$24/株と説明しており、2025年のNT$18/株から33%増える見込みです。[4][5]

利益帰属期間 取締役会決議日 現金配当(NT$/株) 支払日
2024年Q3 2024-11-12 4.50 2025-04-10
2024年Q4 2025-02-12 4.50 2025-07-10
2025年Q1 2025-05-13 5.00 2025-10-09
2025年Q2 2025-08-12 5.00 2026-01-08
2025年Q3 2025-11-11 6.00 2026-04-09
2025年Q4 2026-02-10 6.00 2026-07-09
2026年Q1 2026-05-12 7.00 2026-10-08
2026年Q2 2026-08-11 7.00 2027-01-07

配当履歴および2026年Q1・Q2取締役会決議に基づく。[5]

配当は増額基調ですが、TSMCの成長投資額はさらに大きいため、配当性向だけでなくFCFとCapExの余力を一緒に見る必要があります。2026年はCapExをUS$60B〜US$64Bまで引き上げても、会社は四半期・年間ベースで持続的に配当を増やす方針を維持しています。[4]

3.2. 盤石な財務基盤

TSMCの強みの一つは、巨額投資を続けながらも自己資本と手元流動性を拡大している点です。2026年Q2末の総資産はNT$9,375.65B、総株主資本はNT$6,474.47B、自己資本比率は69.1%でした。現金・有価証券はNT$3,518.01Bに達しています。[6]

時点 総資産(NT$ bn) 総株主資本(NT$ bn) 自己資本比率 現金・有価証券(NT$ bn)
2020年末 2,761.18 1,764.11 63.9% 791.48
2021年末 3,733.87 2,205.60 59.1% 1,188.46
2022年末 4,960.70 2,911.14 58.7% 1,561.49
2023年末 5,702.47 3,556.36 62.4% 1,687.65
2024年末 6,691.76 4,279.27 64.0% 2,422.02
2025年末 7,933.02 5,460.80 68.8% 3,068.59
2026年Q1末 8,660.95 5,932.39 68.5% 3,383.60
2026年Q2末 9,375.65 6,474.47 69.1% 3,518.01

2020〜2025年は年次・Q4資料、2026年Q1・Q2は四半期プレゼンテーション。[3][6]

  • 自己資本比率は約7割:2026年Q2末は69.1%で、2025年末からさらに上昇しました。[6]
  • 現金・有価証券はNT$3.52兆:2026年Q2末の現金・有価証券はNT$3,518.01Bで、前年同期のNT$2,634.43Bを大きく上回りました。[6]
  • 在庫増は2nm立ち上げの影響:Q2末在庫はNT$385.53B、在庫回転日数は87日へ上昇しました。会社は主因をN2(2nm)立ち上げと説明しています。[4][6]

4. 投資判断のヒント:TSMCの強みとリスク

2026年Q2時点では、AI・HPC需要と先端ノードの成長が想定以上に強く、会社は売上見通しとCapExを相次いで引き上げています。一方、2nm立ち上げと海外工場拡大は、中長期の競争力を高める反面、短期的には粗利益率を押し下げる要因になります。[4]

TSMCの強み(事業の優位性)

  • HPC主導の成長:2026年Q2の売上構成比はHPCが66%、スマートフォンが22%でした。HPCはQ1比20%増えており、AIアクセラレータとCPUの双方が需要を押し上げています。[4]
  • 2nmが量産寄与を開始:Q2のウェハ売上構成は2nmが3%、3nm30%、5nm33%、7nm11%で、7nm以下の先端技術合計は77%でした。[1]
  • 2026年売上見通しを上方修正:会社は2026年通期の米ドル建て売上高について、前年比40%をやや上回る成長を見込んでいます。[4]
  • 月次売上も高成長:2026年7月は前年比44.7%増、8月は53.3%増でした。1〜8月累計も39.3%増です。[2]
  • 財務余力:Q2末の現金・有価証券はNT$3,518.01B、自己資本比率は69.1%です。[6]

注意すべきリスク:地政学・投資負担・利益率

  1. 台湾海峡の地政学リスク:最先端能力の中核が台湾にある以上、軍事・物流・保険・顧客のBCP判断を含む事業継続リスクは残ります。
  2. 2nm立ち上げの利益率希薄化:会社は2026年下期について、2nmの急速な立ち上げが粗利益率を約3〜4ポイント押し下げる可能性を示しています。[4]
  3. 海外工場のコスト:海外Fab拡大による粗利益率への希薄化は、初期段階で2〜3ポイント、規模が広がる後期には3〜4ポイントへ拡大する可能性があります。[4]
  4. CapEx急増:2026年資本予算はUS$60B〜US$64Bへ上方修正されました。需要が想定を下回った場合、減価償却・稼働率・FCFへの負担が大きくなる可能性があります。[4]
  5. 消費者向け需要のばらつき:会社はAI関連を非常に強いとする一方、価格感応度の高い消費者向け市場には部品価格上昇やマクロ不確実性の影響があると述べています。[4]

5. まとめ

TSMCの2026年Q2は、売上高NT$1,270.38B、純利益NT$706.56B、EPSNT$27.25と大幅な増収増益になりました。2nmがウェハ売上の3%を占め始め、HPC構成比は66%まで上昇しています。会社はQ3売上高をUS$44.6B〜US$45.8B、2026年通期の米ドル建て売上成長率を40%超と見込んでいます。[1][4]

一方、2026年CapExはUS$60B〜US$64Bへ急増し、2nmと海外Fabの立ち上げが粗利益率を押し下げる見込みです。今後はQ3以降の粗利益率、2nmの売上比率、HPC構成、FCF、CapEx、海外Fabの希薄化をセットで追う必要があります。[4]

株主還元では、2026年Q1・Q2利益分の四半期配当がともにNT$7.00へ引き上げられました。配当余力を判断する際はFCFと設備投資の増加率をあわせて確認するのが適切です。[5]

ミニ解説
今回の更新では、元記事の長期比較を残しつつ、年次表を新台湾ドルベースに統一し、過去のFCF・CapEx系列もTSMC公式プレゼンテーションに合わせて修正しました。最新情報は2026年Q2決算に加え、2026年8月売上まで反映しています。

最終更新日時:2026年9月17日

【注】(出典リンク)

  1. 2026年Q2実績・Q3ガイダンス・先端ノード構成 → 一次情報:TSMC 2026 Q2 Quarterly Results一次情報:TSMC Q2 2026 Earnings Release(確認日:2026-09-17)
  2. 2026年7月・8月月次売上 → 一次情報:TSMC July 2026 Revenue Report一次情報:TSMC August 2026 Revenue Report(確認日:2026-09-17)
  3. 年次業績・過年度FCF・2025年会計基準差異 → 一次情報:TSMC Annual Reports一次情報:TSMC 2025 Annual Report一次情報:SEC 6-K(TIFRSとIASB版IFRSの差異)(確認日:2026-09-17)
  4. 2026年通期見通し・CapEx・2nm/海外Fabの粗利率影響 → 一次情報:TSMC Q2 2026 Earnings Call Transcript(確認日:2026-09-17)
  5. 2026年Q1・Q2配当 → 一次情報:TSMC Latest Dividend一次情報:2026年8月11日取締役会決議一次情報:2026年5月12日取締役会決議(確認日:2026-09-17)
  6. 2026年Q2財務状況・キャッシュフロー → 一次情報:TSMC 2Q26 Management Report一次情報:SEC 6-K / 2026 Q2 Consolidated Report(確認日:2026-09-17)

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Posted by 南 一矢