TSMC (台湾積体電路) の業績・配当:AI需要での成長と増配はどこまで続く
【2025年末時点】TSMC (台湾積体電路) 徹底分析:AI時代を支配する半導体ファウンドリの王者の投資価値
はじめに
TSMC(台湾積体電路製造)は、Apple、NVIDIA、AMDなど名だたる企業が設計した最先端半導体を製造する、世界最大級の「ファウンドリ(半導体受託製造)」企業です。AI革命が加速する今、その頭脳である高性能半導体の量産を担うTSMCは、現代経済における最重要企業の一角を占めます。[2]
本記事では、TSMCの技術的優位性と成長性、そして株主還元の両面を財務データから整理し、あわせて投資家が常に意識すべき地政学リスクにも触れます。
【免責事項および出典について】
1. 業績分析:AIが牽引する成長
1.0. 直近決算ハイライト(2025年Q3)
直近四半期の主要数値:TSMC公表/SEC提出資料(2025年Q3)。[1]
1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移(年次)
年次の推移は、TSMCの「規模の経済」と「先端プロセスの価格決定力」が業績へどう反映されてきたかを示します。以下は年次データ(暦年)を中心に整理したものです。[3]
| 会計年度 | 売上高(百万$) | 営業CF(百万$) | 純利益(百万$) | EPS ($)(1株当たり利益) |
|---|---|---|---|---|
| 2015 | 26,466 | 14,308 | 9,536 | 1.84 |
| 2016 | 29,734 | 15,755 | 10,385 | 2.00 |
| 2017 | 33,187 | 17,163 | 11,186 | 2.15 |
| 2018 | 34,219 | 18,254 | 12,382 | 2.39 |
| 2019 | 34,563 | 16,604 | 11,799 | 2.27 |
| 2020 | 47,890 | 28,178 | 19,069 | 3.69 |
| 2021 | 57,200 | 35,684 | 21,351 | 4.12 |
| 2022 | 73,670 | 46,112 | 34,070 | 6.23 |
| 2023 | 70,599 | 41,291 | 26,880 | 5.18 |
| 2024 | 75,850 | 48,970 | 29,550 | 5.70 |
| CAGR (年平均成長率) | ||||
| 過去10年(FY15-24) | 12.4% | 14.6% | 13.4% | 13.4% |
| 過去5年(FY19-24) | 17.0% | 24.1% | 20.2% | 20.2% |
年次推移(暦年)はTSMCの一次情報(年次/SEC提出)を基に整理。CAGRは筆者算出。[3]
- キャッシュ創出力が強い:営業キャッシュフローは投資(CapEx)を伴いながらも拡大しやすく、TSMCの競争優位が「現金化」されていることが重要です。
- 直近の四半期も高水準:2025年Q3も売上・利益ともに大きな規模で計上されています。[1]
1.2. フリーキャッシュフロー(FCF)で見る収益の「手触り」
製造業であるTSMCは、設備投資の規模が業績と同じくらい重要です。そこで、営業CFからCapExを差し引いたFCFも併せて見ておくと、増配余力や投資継続力の評価がしやすくなります。[3]
| 会計年度 | 営業CF(百万$) | CapEx(百万$) | FCF(百万$) | 営業CFに占めるCapEx比率 |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 28,178 | 18,124 | 10,054 | 64.3% |
| 2021 | 35,684 | 30,958 | 4,726 | 86.8% |
| 2022 | 46,112 | 37,215 | 8,897 | 80.7% |
| 2023 | 41,291 | 31,525 | 9,766 | 76.4% |
| 2024 | 48,970 | 32,100 | 16,870 | 65.5% |
FCF=営業CF−CapEx(筆者算出)。年次の基礎データは一次情報ベース。[3]
2. 成長の源泉:巨額の設備投資(CapEx)
TSMCの技術的優位性と生産能力は、巨額の設備投資(CapEx)によって支えられています。年によってCapExは増減しますが、先端ノードへの投資局面ではCapEx比率が高まりやすい点が特徴です。[3]
| 会計年度 | 営業CF(百万$) | 設備投資 (CapEx)(百万$) | 営業CFに占めるCapEx比率 |
|---|---|---|---|
| 2020 | 28,178 | 18,124 | 64.3% |
| 2021 | 35,684 | 30,958 | 86.8% |
| 2022 | 46,112 | 37,215 | 80.7% |
| 2023 | 41,291 | 31,525 | 76.4% |
| 2024 | 48,970 | 32,100 | 65.5% |
年次のCapExは一次情報ベース。[3]
- 投資規模が参入障壁:先端プロセスの量産には、継続的かつ巨額の投資が必要です。TSMCの優位性は「技術」だけでなく「投資余力」と不可分です。
- FCFは投資局面で振れやすい:先端投資が加速する年はCapEx比率が高まり、FCFが圧縮されることがあります(上表参照)。
3. 株主還元と財務健全性
TSMCは、巨額の投資を行いながらも、財務基盤を維持し株主還元(配当)も継続しています。直近の四半期配当(2025年Q3)も公表されています。[1]
3.1. 配当:四半期配当の継続と「増やし方」
2025年Q3:四半期配当(普通株)NT.50
直近の四半期(2025年Q3)について、1株当たりの現金配当(普通株)はNT$4.50と公表されています。[1]
配当の評価では、単年の利回りだけでなく、(1)投資余力(CapEx)を損なわないか、(2)キャッシュ創出力と整合しているか、をセットで見るのが有効です。
3.2. 盤石な財務基盤(年次)
TSMCの強みの一つは、巨額投資を行っても耐えられるバランスシートの強さです。[3]
| 会計年度 | 総資産(百万$) | 株主資本(百万$) | 自己資本比率 | ROE (%)(自己資本利益率) |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 98,310 | 62,849 | 63.9% | 30.3% |
| 2021 | 134,294 | 79,301 | 59.1% | 26.9% |
| 2022 | 161,551 | 94,850 | 58.7% | 35.9% |
| 2023 | 180,673 | 112,756 | 62.4% | 23.8% |
| 2024 | 176,500 | 108,200 | 61.3% | 27.3% |
比率・ROEは筆者算出。年次の基礎データは一次情報ベース。[3]
- 自己資本比率は高水準:設備投資をこなしつつも、自己資本比率が相対的に高い水準で推移している点は、景気循環への耐性に関わります。
- ROEはサイクルの影響を受ける:半導体は稼働率や価格環境の影響が大きく、ROEは年次でぶれます。単年ではなく複数年で見ておくと判断が安定します。
4. 投資判断のヒント:TSMCの強みとリスク
TSMCへの投資を検討する上で、圧倒的な強みと、無視できないリスクの両面を理解することが不可欠です。[2]
TSMCの強み(事業の優位性)
- 製造技術のリーダーシップ:先端プロセスの量産能力と歩留まりの蓄積が、長期の競争優位になっています。
- 規模の経済と信頼性:世界最大級の生産能力と品質が、顧客の継続発注を支えます。
- 中立的な立場:自社でチップ設計を行わないため、多数のファブレスと協業できます。
- AI需要の受益:AI向けの高性能半導体需要が増えるほど、TSMCの重要性も増しやすい構造です。
最大の懸念:地政学リスク
- 台湾海峡の緊張:最先端拠点が台湾に集中している点は、事業継続リスクとして常に意識すべき論点です。
- サプライチェーン分散の動き:各国の政策や顧客の分散要請により、製造拠点の地理的分散が進む可能性があります(費用・効率面の影響も含む)。
- 半導体サイクル:需要の循環があり、稼働率低下局面では利益率が悪化し得ます。
5. まとめ
TSMCは、AI時代の成長を支える中核インフラ企業として、技術・規模・信頼性の面で強い競争優位を持ちます。直近の四半期(2025年Q3)でも、売上・利益・配当が公表されており、事業規模の大きさが確認できます。[1]
一方で、投資判断には常に地政学リスクという大きな不確実性が伴います。最終的には、卓越した事業内容と成長性を、リスク許容度と照らし合わせて判断することが重要です。
ミニ解説(今回の更新点)
直近四半期を「2025年Q3」に揃え、削除されていた(または不足していた)数値テーブルとして「直近決算ハイライト(2025年Q3)」と「FCF(営業CF−CapEx)表」を本文内に追加しました。[1]
【注】(出典リンク)
- 2025年Q3決算・四半期配当(TSMC 2025年Q3:売上NT$759.69B、純利益NT$306.16B、EPS NT$17.44、配当NT$4.50) → SEC Archives(提出資料) → SEC EDGAR(TSMC Filings一覧)(確認日:2025-12-29) ↩
- 企業概要・IR情報(事業説明、資料導線) → TSMC Investor Relations → SEC EDGAR(TSMC Filings一覧)(確認日:2025-12-29) ↩
- 年次/財務データの一次情報(年次報告・20-F等の提出資料を含む) → SEC EDGAR(TSMC Filings一覧) → TSMC Investor Relations(確認日:2025-12-29) ↩

