TSM(タイワンセミコンダクター)とASMLを比較:戦略の違いとは
TSMとASMLを違いを踏まえて比較します。(2025年10月更新)
タイワンセミコンダクター・マニュファクチャリング(台湾積体電路製造〔TaiwTaiwan Semiconductor Manufacturing Company〕)とASMLホールディング(ASML Holding N.V.)は半導体製造業におけるADR銘柄の代表格です。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。
株価:過去~現在
※チャート左目盛り:株価推移(SOXX:iShares Semiconductor ETFを含めて比較)
※チャート右目盛り:10年国債利回り
※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。
株価推移や成長率比較については以下の関連記事を参照
決算(予想:結果)
マーケットにおけるEPSと売上の予想値の変動を更新してみます。
決算の予想:結果のグラフについては以下の関連記事を参照
★タイワンセミコンダクター(TSM)決算:予想と結果 売上&EPS
★ASMLホールディング(ASML)決算:予想と結果 売上&EPS
【半導体エコシステムの心臓部】TSMC vs ASML!製造の王か、装置の独占企業か?
現代のAI革命とデジタル社会を根底から支える2つの企業、TSMC(台湾積体電路製造)とASML(エーエスエムエル)。両社は、最先端半導体の製造に不可欠な存在でありながら、その役割は全く異なります。彼らは競合ではなく、互いがいなければ成り立たない「運命共同体」です。
本記事では、半導体「製造」の絶対王者TSMCと、その製造に必要な「装置」を世界で唯一供給するASMLの、ユニークな関係性と投資対象としての魅力を徹底的に比較・分析します。
最重要ポイント:彼らは競合しない「パートナー」である
この2社を理解する上で、彼らの共存関係を知ることは不可欠です。
- TSMC (ファウンドリ) → 半導体を「作る」会社
Apple、NVIDIA、AMD、Qualcommなどから設計を受け、実際のチップを製造する世界最大の受託製造企業(ファウンドリ)。2024年の売上はUS$90.08B(前年比+30%)と過去最高で、先端プロセスとCoWoS等の先端パッケージがけん引しました。[1][2] - ASML (製造装置メーカー) → チップを作るための「機械を作る」会社
最先端ロジック/メモリの量産に不可欠なEUV露光装置を世界で唯一提供(High-NA/EUVも展開)。2024年の売上は€28.3B、2025年は前年比約+15%の増収見通しとガイダンスしています。[3][4]
つまり、ASMLが「道具」を売り、TSMCがその「道具」を使って製品を作る、という関係です。直近(2025年)のASML決算でもAI向け需要に支えられた堅調な受注と、第4四半期の高水準売上見通しが示されています。[5][6]
比較サマリー:製造のTSMC、装置のASML
項目 | TSMC | ASML |
---|---|---|
役割 | 半導体ファウンドリ(受託製造) | 半導体製造装置メーカー(露光、EUV/High-NAの独占供給)[7] |
強み・堀(Moat) | 先端プロセス量産力・良品率・先端パッケージ(CoWoS等) | EUV/High-NA露光で実質的な独占+巨大なインストールベース |
主要顧客 | Apple, NVIDIA, AMD, Broadcom, Qualcomm 等[8] | TSMC, Intel, Samsung, SK hynix 等[5] |
最大のリスク | 地政学(台湾)、海外拠点立ち上げコスト | 顧客設備投資の循環、輸出規制/対中販売の変動 |
配当利回り(直近目安) | 約1.1〜1.7%(ADRベース。直近発表の四半期配当はADRあたり約$0.82〜0.83)[9][10] | 約0.6〜0.8%(四半期配当継続。10/29権利の中間配当€1.60発表)[11][12] |
業績と成長性の詳細分析
AI/HPC需要を背景に、両社とも2024年〜2025年にかけて高水準の売上と利益を維持しています。ASMLは装置認定・納入タイミングにより四半期変動が大きい一方、通期ガイダンスは強気です。
年 | TSMC 売上高(前年比) | ASML 売上高(前年比) |
---|---|---|
2025 | (進行中)四半期は過去最高水準が続く。Q3単独でUS$33.1B規模との報道。会社側もドル建て年率+30%程度の強気見通しを示唆。[13][14] | (進行中)通期+約15%成長見通し。Q3売上€7.5B、Q4ガイダンス€9.2–9.8B。[5][6] |
2024 | US$90.08B (+30.0%)[1][2] | €28.3B (前年比ほぼ横ばい〜微増)[3][4] |
2023 | US$69.30B | €27.56B[15] |
2022 | US$56.84B | €21.17B[15] |
2021 | US$45.51B | €18.61B[15] |
※TSMCは米ドル換算の通年実績をTSMC年次報告・マネジメントレポートから引用。ASMLはユーロ表示の通年実績をIRから引用。2025年は各社の四半期実績/ガイダンス・主要報道を併記。
- TSMCの近況:AI/HPC関連の強い需要で2025年Q3も記録的決算。トレンドフォース等の外部調査ではQ2 2025のファウンドリ市場シェア70%超とされ、寡占が強化。[13][16][17]
- ASMLの近況:EUV/High-NAを含む受注が堅調。2025年通期は売上+約15%・粗利率約52%見通し。2026年は対中販売鈍化で地域ミックスに変化見込みも、通期売上は2025年を下回らないとの見方。[5][6][18]
配当の詳細比較
両社とも成長投資が主軸のため利回りは高くありませんが、定期的な配当を実施しています。
項目 | TSMC(ADR) | ASML(NY登録株) |
---|---|---|
直近の配当実績 | 2025/10/09支払:$0.822/ADR、次回 2026/01/08支払予定:約$0.83/ADR[10][9] | 2025/08/06支払:$1.847/株、2025/11/06支払予定:約$1.86/株[12][19] |
目安の配当利回り | 約1.1〜1.7%(株価水準に依存)[9][20] | 約0.6〜0.8%[11][21] |
結論:あなたに合うのはどちら?
両社への投資は、半導体エコシステムの中でどのリスク/リターンの取り方を選ぶか、という構図です。
「半導体需要全体」の成長に乗るなら → TSMC
TSMCに投資することは、主要テック各社の先端半導体需要に間接的に乗ることに近い発想。2024年の過去最高売上、2025年もAI/HPC主導で高成長が続くシナリオ。地政学や海外拠点のコストは留意点ですが、先端プロセス量産力という参入障壁は極めて高い。[1][13]
「技術的独占(EUV/High-NA)」という堀に投資するなら → ASML
ASMLはEUV/High-NA露光という代替不可能なコア技術の供給者。2025年は受注・売上ともに堅調見通しで、高粗利率を維持。装置需要のサイクルや輸出規制の影響はあるものの、AI時代の先端ロジック/メモリの前提条件としての重要性はむしろ増しています。[5][6][7]
最終的な結論:両社は補完関係にあります。ポートフォリオでは「製造(TSMC)」と「装置(ASML)」の二段構えでテーマ全体に分散させる戦略が理にかないます。
※本ページの分析は2025年10月18日時点の公開情報に基づいています。投資の最終判断は必ずご自身の責任で行ってください。
- TSMC 2024アニュアルレポート(US$90.08B、前年比+30%)。TSMC Annual Report 2024。
- TSMC 4Q24 マネジメントレポート(2024年通期ハイライト)。PDF。
- ASML 2024通期:売上€28.3B(公式)。Annual Report 2024/2024通期リリース。
- ASML 2025通期ガイダンス(売上+約15%、粗利率約52%)。Q3 2025リリース。
- ASML Q3 2025:売上€7.5B、受注€5.4B、Q4見通し€9.2–9.8B。ASML IR/配信各社Yahoo! Finance。
- ASMLの最新決算報道(AI需要・対中販売動向)。Reuters/WSJ。
- ASML製品ページ:EUV/High-NA露光の位置づけ(唯一の供給者としての説明)。ASML Products。
- TSMCの主な顧客に関する概説(NVIDIA/Apple/AMD/Qualcomm等)。IMD解説。
- TSMC 最新配当(ADR換算の直近水準)。TSMC IR:Latest Dividend。
- 配当額・スケジュール(ADRサイトの集計)。DividendMax(TSM ADR)。
- ASMLの配当利回り・履歴(米Nasdaqの集計)。Nasdaq:ASML Dividend。
- ASML資本政策ページ:2025年10月発表の中間配当€1.60。ASML Investors。
- TSMC 2025年Q3の記録的決算報道(売上〜AI/HPC需要)。Financial Times/Barron’s。
- TSMC 月次/声明(2025/2月公表など)からの強い成長基調。TSMC Press。
- ASML 財務オーバービュー(過去売上推移)。ASML Financial overview。
- TrendForce:2025年Q2ファウンドリ市場シェア70%(TSMC)。TrendForce。
- 同主旨の各社配信(TSMC 70.2%)。Counterpoint/中央社。
- ASMLの対中販売見通し(2026年鈍化)と全社売上見通し。Investopedia。
- ASMLの配当履歴(米・英の配当情報サイト)。DividendMax(ASML)。
- TSMの配当利回り指標(Yahoo Finance)。Yahoo Finance: TSM
- ASMLの配当利回り時点値(YCharts等)。YCharts