UNP:ユニオンパシフィックの配当推移
ユニオン・パシフィック(UNP)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析
ユニオン・パシフィック(Union Pacific Corporation)は、19年連続で配当を増やし続ける北米最大の鉄道会社として、インフラ投資銘柄の代表格です。その安定した配当実績を支える同社の財務指標の推移をMacroTrends.comなどのデータを用いて詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockprice.comを参照)
データソースの制約について
**重要な注意事項**:MacroTrends.comでは、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrendsでは四半期ごとの配当支払額や直近の配当利回りは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。
そのため、19年連続増配などの具体的な配当成長実績については、MacroTrends以外の複数のソース(株式情報サイト、投資分析プラットフォーム等)を参照して確認しています。本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、営業CF、バランスシート等)を中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrendsとそれ以外の信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2024 | 2.41% | 8% | 48% | 5.36 | 223.62 | 11.09 |
2023 | 2.28% | 5% | 47% | 4.94 | 238.45 | 10.45 |
2022 | 1.89% | 10% | 42% | 4.70 | 258.01 | 11.21 |
2021 | 1.98% | 7% | 42% | 4.28 | 242.15 | 10.21 |
2020 | 2.05% | 5% | 40% | 3.99 | 195.83 | 9.97 |
2019 | 2.26% | 10% | 44% | 3.80 | 168.25 | 8.59 |
2018 | 2.40% | 12% | 40% | 3.44 | 143.76 | 8.58 |
2017 | 2.64% | 7% | 39% | 3.08 | 116.82 | 7.85 |
2016 | 3.39% | 11% | 38% | 2.88 | 84.96 | 7.50 |
2015 | 2.84% | 13% | 33% | 2.60 | 91.45 | 7.87 |
2014 | 2.05% | 15% | 25% | 2.30 | 112.33 | 9.18 |
2013 | 1.89% | 13% | 25% | 2.00 | 105.89 | 8.07 |
2012 | 1.72% | 8% | 22% | 1.77 | 102.85 | 7.95 |
2011 | 2.05% | 12% | 28% | 1.64 | 80.23 | 5.83 |
2010 | 2.01% | 16% | 25% | 1.46 | 72.65 | 5.53 |
2009 | 3.57% | 8% | 44% | 1.26 | 35.32 | 2.92 |
2008 | 2.21% | – | 24% | 1.17 | 52.89 | 4.85 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合
** EPSと平均株価はMacroTrends.comより
堅実な配当成長の実績
ユニオン・パシフィック(UNP)は、北米最大の鉄道会社として、**19年連続で配当を増額し続けている配当貴族**の地位を確立しています。2008年から2024年にかけて、1株配当は1.17ドルから5.36ドルへと358%増加し、年平均成長率は約9.6%を記録しています。
この期間中、リーマンショック(2008年)やCOVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても一度も減配することなく、継続的な配当成長を維持してきました。鉄道インフラの独占的地位と効率性改善による収益力向上が、この安定性を支えています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 24,250 | 9,346 | 38.6 | 6,747 |
2023 | 24,119 | 8,379 | 34.7 | 6,379 |
2022 | 24,875 | 9,362 | 37.6 | 6,998 |
2021 | 21,804 | 9,032 | 41.4 | 6,523 |
2020 | 19,533 | 8,540 | 43.7 | 5,317 |
2019 | 21,708 | 8,609 | 39.7 | 5,919 |
2018 | 22,832 | 8,686 | 38.0 | 5,966 |
2017 | 21,240 | 7,230 | 34.0 | 10,712 |
2016 | 19,941 | 7,525 | 37.7 | 4,233 |
2015 | 21,813 | 7,344 | 33.7 | 4,772 |
2014 | 23,988 | 7,385 | 30.8 | 5,180 |
2013 | 21,963 | 6,823 | 31.1 | 4,388 |
2012 | 20,926 | 6,161 | 29.4 | 3,943 |
2011 | 19,557 | 5,873 | 30.0 | 3,292 |
2010 | 16,965 | 4,105 | 24.2 | 2,780 |
2009 | 14,143 | 3,204 | 22.6 | 1,486 |
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
ユニオン・パシフィックの配当支払能力は極めて堅固です。2024年の営業キャッシュフローは93億ドルで、配当支払額約33億ドルを大幅に上回っています。これは**2.8倍の配当カバー比率**を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。
配当支払余力の推移(2009年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 9,346 | 3,254 | 2.9 |
2023 | 8,379 | 2,989 | 2.8 |
2022 | 9,362 | 3,049 | 3.1 |
2021 | 9,032 | 2,782 | 3.2 |
2020 | 8,540 | 2,674 | 3.2 |
2019 | 8,609 | 2,598 | 3.3 |
2018 | 8,686 | 2,300 | 3.8 |
2017 | 7,230 | 2,156 | 3.4 |
2016 | 7,525 | 2,042 | 3.7 |
2015 | 7,344 | 1,837 | 4.0 |
2014 | 7,385 | 1,592 | 4.6 |
2013 | 6,823 | 1,386 | 4.9 |
2012 | 6,161 | 1,235 | 5.0 |
2011 | 5,873 | 936 | 6.3 |
2010 | 4,105 | 730 | 5.6 |
2009 | 3,204 | 622 | 5.2 |
配当支払余力の分析結果:
- **安定したカバー比率**:過去16年間で2.8〜6.3倍を維持し、常に配当を十分にカバー
- **景気耐性**:2009年不況、2020年パンデミック時でも安定した配当支払能力を維持
- **持続可能性**:近年のカバー比率は適正水準で、継続的な増配余力を保持
鉄道業界特有の堅固なキャッシュフロー創出力
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFをM$(百万ドル)単位、営業CF成長率を%単位で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 成長率 (%) | 投資CF (M$) | 財務CF (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 9,346 | 11.5 | -3,288 | -5,998 |
2023 | 8,379 | -10.5 | -3,588 | -4,627 |
2022 | 9,362 | 3.7 | -3,526 | -5,902 |
2021 | 9,032 | 5.8 | -3,118 | -6,183 |
2020 | 8,540 | -0.8 | -2,913 | -5,734 |
2019 | 8,609 | -0.9 | -3,299 | -5,168 |
2018 | 8,686 | 20.1 | -3,516 | -5,216 |
2017 | 7,230 | -3.9 | -2,937 | -4,382 |
2016 | 7,525 | 2.5 | -3,397 | -4,036 |
2015 | 7,344 | -0.6 | -4,261 | -3,175 |
2014 | 7,385 | 8.2 | -4,112 | -3,387 |
2013 | 6,823 | 10.7 | -3,312 | -3,525 |
2012 | 6,161 | 4.9 | -3,138 | -3,032 |
2011 | 5,873 | 43.1 | -2,612 | -3,224 |
2010 | 4,105 | 28.1 | -2,226 | -1,859 |
2009 | 3,204 | – | -2,273 | -963 |
鉄道業界のキャッシュフロー特性
**営業キャッシュフロー**:
- **安定した創出力**:2009年以降、営業CFは32億ドル〜93億ドルの範囲で推移
- **高い収益性**:営業CFマージンは22〜44%と高水準を維持
- **景気耐性**:2009年不況、2020年パンデミック時も堅調な水準を維持
**投資キャッシュフロー**:
- **継続的な設備投資**:年間22億〜43億ドルの鉄道インフラへの投資を継続
- **維持型投資**:既存線路・車両の保守更新が中心で、成長性より安定性重視
- **効率的投資**:近年は30億ドル台で安定、適度な投資水準を維持
**財務キャッシュフロー**:
- **株主還元重視**:ほぼ全年でマイナス、配当と自社株買いによる積極的な株主還元
- **健全な資本政策**:過度な借入に依存せず、キャッシュフロー創出力に基づく還元
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 67,715 | 48,236 | 19,479 | 28.8 | 34.6 | 248 |
2023 | 67,132 | 47,892 | 19,240 | 28.7 | 33.2 | 249 |
2022 | 65,449 | 48,305 | 17,144 | 26.2 | 40.8 | 282 |
2021 | 63,525 | 49,364 | 14,161 | 22.3 | 46.1 | 349 |
2020 | 62,398 | 45,440 | 16,958 | 27.2 | 31.4 | 268 |
2019 | 61,673 | 43,545 | 18,128 | 29.4 | 32.7 | 240 |
2018 | 59,147 | 38,720 | 20,427 | 34.5 | 29.2 | 190 |
2017 | 57,806 | 37,359 | 20,447 | 35.4 | 52.4 | 183 |
2016 | 55,718 | 36,205 | 19,513 | 35.0 | 21.7 | 186 |
2015 | 54,600 | 35,229 | 19,371 | 35.5 | 24.6 | 182 |
2014 | 52,372 | 33,018 | 19,354 | 37.0 | 26.8 | 171 |
2013 | 49,731 | 31,216 | 18,515 | 37.2 | 23.7 | 169 |
2012 | 47,153 | 29,276 | 17,877 | 37.9 | 22.1 | 164 |
2011 | 45,096 | 27,512 | 17,584 | 39.0 | 18.7 | 156 |
2010 | 43,088 | 26,227 | 16,861 | 39.1 | 16.5 | 156 |
2009 | 42,184 | 26,516 | 15,668 | 37.1 | 9.5 | 169 |
バランスシート分析の重要な観点
**自己資本率の推移と業界特性**:
- **適正水準の維持**:22〜39%の範囲で推移、鉄道業界として健全な水準
- **資本集約的業界**:巨額の固定資産(線路・車両)を要するため、負債活用は一般的
- **安定したバランス**:過去15年間で大幅な悪化は見られず、適切な財務管理
**ROE(自己資本利益率)の特徴**:
- **高い収益性**:過去15年間で平均約30%の高水準ROEを維持
- **景気連動性**:好況時(2017年52.4%)と不況時(2009年9.5%)で大きく変動
- **効率的な資本活用**:インフラ資産の独占的地位を活かした高収益性
総合評価
ユニオン・パシフィックの財務戦略は**「鉄道インフラの独占的地位を活かした安定的な資本活用」**と評価できます。自己資本率は鉄道業界として適正水準を維持し、安定したキャッシュフロー創出能力により負債水準は持続可能です。ROEの高さは鉄道インフラの参入障壁の高さと pricing power を示しており、長期投資価値の高い戦略といえるでしょう。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- **安定した配当履歴**:19年連続増配という実績ある配当成長パターン
- **インフラの独占性**:鉄道網の代替困難性による安定したキャッシュフロー
- **景気耐性**:必需輸送サービスによる相対的な景気耐性
- **適正な配当性向**:48%と健全な水準で、持続的な増配余力を保持
配当投資戦略における位置づけ
インフラ・ユーティリティ銘柄として最適
- **ポートフォリオの安定化**:景気変動に対する相対的な耐性
- **インフレヘッジ効果**:運賃値上げによるインフレ転嫁能力
- **長期保有適性**:インフラ投資として「バイ・アンド・ホールド」戦略に最適
- **分散効果**:一般消費財とは異なる事業特性による分散効果
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- **景気敏感性**:製造業・エネルギー輸送による景気変動の影響
- **規制リスク**:政府による運賃・安全規制の強化
- **環境規制**:石炭輸送比率の減少とクリーンエネルギーへの転換
- **競合交通手段**:トラック輸送やパイプラインとの競争
- **設備老朽化**:継続的な設備投資負担と維持費用の増加
リスク軽減策:
- **分散投資**:鉄道セクターへの過度な集中を避ける
- **長期投資**:短期的な貨物量変動に惑わされない投資姿勢
- **配当再投資**:配当を再投資して複利効果を最大化
- **業界トレンド監視**:電子商取引やニアショアリングによる貨物需要変化への注意
まとめ:配当投資家にとってのユニオン・パシフィック
ユニオン・パシフィックは、**19年連続増配という実績**、**鉄道インフラの独占的地位**、**年8%前後の配当成長実績**を兼ね備えた、配当重視投資家にとって検討価値の高いインフラ投資対象です。
北米経済の大動脈としての役割、高い参入障壁による価格決定力、効率性改善による収益力向上により、長期的な配当成長の継続が期待できます。一方で、景気敏感性や環境規制の影響など、投資家が注意すべきリスク要因も存在します。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、ユニオン・パシフィックは**「インフラの独占性を活かした安定配当成長銘柄」**として、ポートフォリオのコア部分に位置づけることを検討できる銘柄です。ただし、景気変動リスクや業界動向を継続的にモニタリングしながら、適切なポジションサイズでの投資が推奨されます。
出典
**MacroTrends.com(主要財務データ):**
- Union Pacific EPS – Earnings per Share 2010-2025 (UNP)
- Union Pacific Revenue 2010-2025 (UNP)
- Union Pacific Cash Flow from Operating Activities 2010-2025 (UNP)
- Union Pacific Net Income 2010-2024 (UNP)
- Union Pacific Total Assets 2010-2025 (UNP)
- Union Pacific Share Holder Equity 2010-2022 (UNP)
- Union Pacific ROE – Return on Equity 2010-2025 (UNP)
- Union Pacific Stock Price History 2010-2025 (UNP)
- Union Pacific Dividend Yield History (UNP)
**配当データ(複数ソース統合):**
- Dividend.com – Union Pacific Dividend Analysis
- Koyfin – Union Pacific Dividend History & Safety
- Stock Analysis – Union Pacific Dividend History & Yield
- NASDAQ – Union Pacific Dividend History
- GuruFocus – Union Pacific Dividend Analysis
**追加財務データ:**
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。