【物流の巨人対決】UPS vs フェデックス(FDX)!効率のUPSか、変革のFDXか?
世界経済の動脈として、Eコマースの拡大を支える2大物流企業、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)とフェデックス(FDX)。両社はともに景気敏感株でありながら、安定した配当を求める投資家からも人気を集めています。しかし、その事業運営の仕組みや収益性には大きな違いがあります。
本記事では、「一つのネットワーク」で高効率を誇るUPSと、「ネットワーク統合」による変革を進めるフェデックスの業績、配当、そして将来性を徹底的に比較・分析します。
最重要ポイント:ビジネスモデルと労働形態の違い
- UPS(単一ネットワーク・正社員中心)
航空・陸上の荷物を単一の統合ネットワークで運ぶモデル。高いオペレーション効率を実現する一方、労働組合(Teamsters)比率が高く、賃金改定の影響を受けやすい構造です。2024年は売上$91.1B、通期の営業利益率(非GAAP調整後)約9.8%と、景気減速下でも一定の収益性を維持しました[1]PDF。 - フェデックス(複数ネットワーク→統合へ)
これまでExpress(航空)とGround(陸上)など複数ネットワークを並行運用してきましたが、重複・非効率を解消するため「One FedEx / Network 2.0」で統合・簡素化を進行中。FY2025には$2.2Bの構造的コスト削減を達成、2年間累計で$4.0Bに到達。FY2026は追加$1Bの削減目標を掲げています[2][3]。
この違いが、両社の収益性と今後の課題を理解するうえで最も重要です。
比較サマリー:高収益のUPS、改革中のFDX
| 項目 | UPS | フェデックス (FDX) |
|---|---|---|
| ビジネスモデル | 単一統合ネットワーク(航空×陸上を一体運用) | 複数ネットワークを統合中(One FedEx / Network 2.0) |
| 営業利益率の目安 | 約9~10%(2024年・非GAAP調整後)[1] | 約6~8%(統合効果織込期/FY25-26レンジ)[2] |
| 連続増配 | 四半期配当を継続(2025/8/6も$1.64を発表)[4] | 2022年以降 連続増配(2022年に大幅増配)[5] |
| 配当利回り(直近目安) | 約5%前後(経営陣は配当維持方針)[6] | 約2%前後 |
| PER(参考レンジ) | 約16~19倍 | 約14~17倍 |
業績と成長性の詳細分析
コロナ禍のEコマース特需後、両社とも荷量・単価の再調整局面にあります。UPSは2024年に減収も、ネットワーク効率と価格で一定の利益率を維持。フェデックスはネットワーク統合・固定費圧縮でマージン改善を狙う段階です。
| 年 | UPS 売上高(前年比) | フェデックス 売上高(前年比) |
|---|---|---|
| 2024 | $91.1 B (-9.1%)[1] | $87.9 B(FY、5月期)(+0.3%)[7][8] |
| 2023 | $100.3 B (+3.1%) | $87.7 B (-2.7%)[7] |
| 2022 | $97.3 B (+15.0%) | $90.1 B (+11.6%)[7] |
| 2021 | $84.6 B (+14.2%) | $84.0 B (+22.2%)[7] |
| 2020 | $74.1 B | $69.2 B |
※B=10億ドル。UPSは12月期、フェデックスは5月期(FY)。フェデックスのFY2025 Q4(2025年6月24日公表)では、統合・コスト削減進捗とともに慎重な見通しを提示[9][10]。
配当の詳細比較:利回りのUPS、増配ピッチはFDX
配当利回りはUPSが高め。フェデックスは2022年に50%超の大幅増配を実施後も増配を継続しています。
| 年 | UPS 年間配当(参考) | FDX 年間配当(参考) |
|---|---|---|
| 2025(見込み・現行水準) | $6.56($1.64×4)[4] | 約$5.04($1.26×4) |
| 2024 | $6.52($1.63×4) | 約$5.00 |
| 2023 | $6.48 | 約$4.60 |
| 2022 | $6.08 | 約$3.00(+50%超の増配起点)[5] |
補足:UPSの配当維持方針
UPSは2025年ガイダンスで売上・成長見通しが控えめななかでも、配当の維持を強調。経営陣は「利回り5~6%でも安全」とコメントしています[6]。
(参考)経営トピック・リスクの最新アップデート
- UPS:2025年はアマゾン向け取扱量を半減させる合意の影響と、ネットワーク再編・コスト対応を進行[11]。
- FDX:Network 2.0の展開地域では、P/Dコストが約10%低下との説明も(外部取材)[12]。
結論:あなたに合うのはどちら?
「安定性と高い配当利回り」を重視するなら → UPS
単一ネットワークの効率性と価格コントロールで、景気減速下でも約9~10%の営業利益率(非GAAP)を確保。配当方針も堅持されています[1][4]。インカム重視のコア持ち株として有力です。
「経営改革の成功による将来の株価上昇」に期待するなら → フェデックス (FDX)
One FedEx / Network 2.0で重複コストを削減し、Ground/Expressの統合最適化でマージン拡大を狙う局面。FY2025に構造的コスト削減$2.2B達成、FY2026も追加削減を目標化[2]。中期での再評価余地があります。
※本ページの分析は2025年10月18日(日本時間)時点の公開情報に基づいています。投資判断は必ずご自身の責任でお願いします。
- UPS 2024通期:売上$91.1B、非GAAP営業利益率9.8%ほか(2025/1/30発表)… Press Release / PDF
- FedEx FY2025:DRIVEで$2.2Bコスト削減達成、FY2026に追加$1B目標… FedEx IR
- Network 2.0(One FedEx)概要… FedEx 公式解説 / 統合発表の原典… Newsroom
- UPS 四半期配当の継続($1.64/株、2025/8/6)… UPS IR
- FedEx 2022年の大幅増配(株主価値向上策)… FedEx IR
- UPS配当の安全性に関する報道(利回り約5~6%)… Barron’s
- FedEx 年間売上(FY2025 $87.9B)… Macrotrends / FedEx IR(Company Overview)
- FY2025 Q4後の見通し・反応… Reuters / Investopedia
- Network 2.0の進捗(P/Dコスト約10%低下の言及)… Supply Chain Dive
- UPS 2025年のAmazon取扱量半減・ガイダンス… Reuters

