VIS・XLI・IYJ・EXI(資本財セクターETF)を比較する

セクターETF

米国の資本財・サービスセクターのETFのデータを比較してみます。

その代表は、バンガード社の【VIS】、ステート・ストリート社の【XLI】、ブラックロック社の【IYJ】ですが、世界各国の資本財企業に投資する【EXI】の内容も紹介してみます。

ブラックロック社の世界投資型ETFは、どのセクターでも米国比率がかなり高いからです。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう。

【徹底比較】資本財ETF VIS vs XLI おすすめは?景気敏感セクターを解説

航空宇宙・防衛、産業機械、輸送・運輸といった、経済の骨格を支える企業群にまとめて投資できる「資本財(インダストリアル)セクターETF」。景気拡大の恩恵を受けやすいセクターとして注目されますが、投資には注意すべき特性があります。

この記事では、まず資本財セクターの「景気敏感」という特性を解説し、その上で代表的なETFを投資戦略ごとに分類し、あなたに合った一本を見つけるお手伝いをします。

【はじめに】資本財セクターは「景気の羅針盤」

資本財セクターは、景気が良い時には企業の設備投資や人々の移動が増えて株価が上昇し、景気が悪くなると真っ先に需要が減って株価が下落しやすいという、典型的な「景気循環セクター」です。この特性を理解し、経済の大きな流れを読む視点を持つことが、このセクターへの投資では重要になります。

主要 資本財ETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「投資戦略」「経費率」が特に重要な比較ポイントです。

ティッカー 投資戦略 経費率(年率) 銘柄数(目安) キーワード
XLI 米国・超大型集中型 0.09% 約75 S&P500の巨大企業に集中投資
VIS 米国・幅広分散型 0.10% 約340 米国資本財セクター全体(中小含む)
IYJ 米国・幅広分散型 (高コスト) 0.40% 約200 VISに似ているがコストが高い
EXI グローバル分散型 (高コスト) 0.41% 約200 シーメンス、日立など世界の企業にも投資

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


米国市場への投資戦略:集中か、分散か

【XLI】巨大企業に集中投資

S&P500指数に含まれる資本財企業(約75銘柄)だけに投資します。ポートフォリオは、ゼネラル・エレクトリック、キャタピラー、ユニオン・パシフィック鉄道、ボーイングといった、各分野のトップ企業に資産が集中するのが特徴です。米国の「インダストリアル・ジャイアンツ」の動向に強く賭けたい投資家向けの選択肢と言えるでしょう。経費率は0.09%と非常に低コストです。

出典: SSGA

【VIS】セクター全体に分散投資

大・中・小型株まで含む、米国の資本財関連企業約340銘柄に幅広く投資します。XLIよりもはるかに多くの企業に分散されているため、将来有望な中小型企業の成長も取り込める可能性があります。巨大企業への集中を避け、「米国資本財セクター全体」の値動きにより近いパフォーマンスを期待する投資家向けの選択肢です。経費率は0.10%と、こちらも非常に低コストです。

出典: Vanguard

(補足:iシェアーズ社のIYJもVISと似た分散型のETFですが、経費率が0.40%と割高なため、特別な理由がなければVISやXLIが合理的な選択肢となります。出典はこちら


グローバル市場への投資戦略

【EXI】世界のインダストリアル・リーダーに投資

「米国の企業だけに投資するのは、カントリーリスクの観点から集中しすぎている」と考える投資家にとって、EXIは非常に魅力的な選択肢です。このETFは、米国のトップ企業に加えて、各国の代表的な資本財企業にも投資することで、地政学的なリスクや特定国の経済・政策リスクを分散する効果が期待できます。

EXIに投資する主なメリット

  • カントリーリスクの分散: 米国企業の比率は約5割で、残りを欧州や日本などの企業に分散します。
  • 世界的なリーダー企業へのアクセス: 米国市場にはない、ドイツのシーメンス(総合電機)、フランスのシュナイダーエレクトリック(電機)、日本の日立製作所といった、世界のトップ企業に投資できます。

注意点:コストとのトレードオフ

EXIの経費率は0.41%であり、VIS/XLIの約4倍です。このコストを支払ってでもグローバル分散のメリットを享受したいか、という視点での検討が必要になります。

出典: BlackRock


投資前に確認すべき資本財セクターのリスク

景気動向に敏感なこのセクターには、特有のリスクが伴います。

  1. 景気後退リスク: 景気が悪化すると、企業の設備投資や建設需要、個人の旅行・輸送需要が減少し、セクター全体の業績が大きな打撃を受けます。これが最大のリスクです。
  2. サプライチェーンリスク: 部品や原材料の供給網が混乱すると、航空機や自動車、機械などの生産活動に直接的な影響が出ます。
  3. 地政学・貿易リスク: 貿易摩擦や紛争などが、特に航空宇宙・防衛やグローバルな運輸企業の業績に影響を与える可能性があります。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VISの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.67% 4.09 37.2% 244.3 24%
2023 1.51% 2.98 8.4% 197 9.1%
2022 1.52% 2.75 23.3% 180.5 -6.4%
2021 1.16% 2.23 -4.7% 192.8 36.4%
2020 1.66% 2.34 -8.9% 141.3 -1.4%
2019 1.79% 2.57 13.2% 143.3 2.3%
2018 1.62% 2.27 0.4% 140.1 8.6%
2017 1.75% 2.26 5.6% 129 20.3%
2016 2% 2.14 9.7% 107.2 2.6%
2015 1.87% 1.95 16.8% 104.5 2.3%
2014 1.63% 1.67 57.5% 102.2 20.5%
2013 1.25% 1.06 -28.4% 84.8 24.9%
2012 2.18% 1.48 22.3% 67.9 5.1%
2011 1.87% 1.21 42.4% 64.6 13.9%
2010 1.5% 0.85 19.7% 56.7 30.9%
2009 1.64% 0.71 -36% 43.3 -29.6%
2008 1.8% 1.11 61.5

XLIの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.5% 1.9 3.8% 126.6 22.6%
2023 1.77% 1.83 15.1% 103.3 7.8%
2022 1.66% 1.59 22.3% 95.8 -4.4%
2021 1.3% 1.3 -3.7% 100.2 34%
2020 1.8% 1.35 -13.5% 74.8 -2%
2019 2.04% 1.56 13.9% 76.3 2.4%
2018 1.84% 1.37 3.8% 74.5 9.2%
2017 1.94% 1.32 3.9% 68.2 20.7%
2016 2.25% 1.27 13.4% 56.5 3.3%
2015 2.05% 1.12 9.8% 54.7 2.4%
2014 1.91% 1.02 20% 53.4 20.3%
2013 1.91% 0.85 1.2% 44.4 22%
2012 2.31% 0.84 20% 36.4 4.6%
2011 2.01% 0.7 25% 34.8 13.4%
2010 1.82% 0.56 -11.1% 30.7 31.2%
2009 2.69% 0.63 -11.3% 23.4 -28.9%
2008 2.16% 0.71 32.9

IYJの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 0.94% 1.18 -1.7% 125.9 22.6%
2023 1.17% 1.2 22.4% 102.7 5.4%
2022 1.01% 0.98 18.1% 97.4 -10.2%
2021 0.76% 0.83 -13.5% 108.5 35.3%
2020 1.2% 0.96 -11.1% 80.2 3.5%
2019 1.39% 1.08 20% 77.5 5.3%
2018 1.22% 0.9 -3.2% 73.6 11%
2017 1.4% 0.93 13.4% 66.3 20.8%
2016 1.49% 0.82 6.5% 54.9 4.2%
2015 1.46% 0.77 1.3% 52.7 3.3%
2014 1.49% 0.76 35.7% 51 18.1%
2013 1.3% 0.56 -5.1% 43.2 24.1%
2012 1.7% 0.59 22.9% 34.8 6.4%
2011 1.47% 0.48 0% 32.7 14.3%
2010 1.68% 0.48 9.1% 28.6 29.4%
2009 1.99% 0.44 -6.4% 22.1 -27.8%
2008 1.54% 0.47 30.6

EXIの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.49% 2.08 -10.7% 139.2 20.4%
2023 2.02% 2.33 35.5% 115.6 9.1%
2022 1.62% 1.72 -1.1% 106 -10.6%
2021 1.47% 1.74 29.9% 118.6 32.1%
2020 1.49% 1.34 -19.8% 89.8 -0.7%
2019 1.85% 1.67 -2.9% 90.4 0.1%
2018 1.9% 1.72 26.5% 90.3 6.7%
2017 1.61% 1.36 3.8% 84.6 19.5%
2016 1.85% 1.31 0% 70.8 0.6%
2015 1.86% 1.31 -2.2% 70.4 -0.8%
2014 1.89% 1.34 25.2% 71 13.8%
2013 1.71% 1.07 -14.4% 62.4 20.5%
2012 2.41% 1.25 9.6% 51.8 -1.5%
2011 2.17% 1.14 44.3% 52.6 11%
2010 1.67% 0.79 2.6% 47.4 26.7%
2009 2.06% 0.77 -40.8% 37.4 -27.5%
2008 2.52% 1.3 51.6


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢