ヘルスケアETF(VHT・XLV・IYH・IXJ)を比較:株価・配当・構成銘柄

セクターETF

米国のヘルスケアセクターETFのデータを比較してみます。

その代表は、バンガード社の【VHT】、ステート・ストリート社の【XLV】、ブラックロック社の【IYH】ですが、世界各国のヘルスケア企業に投資する【IXJ】の内容も紹介してみます。

ブラックロック社の世界投資型ETFは、どのセクターでも米国比率がかなり高いからです。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう

【徹底比較】ヘルスケアETF VHT vs XLV おすすめは?リスクも解説

私たちの生活に不可欠な「ヘルスケアセクター」。その安定性と成長性から、ポートフォリオに組み入れたいと考える投資家は少なくありません。その代表的な投資手段が、VHTやXLVといったヘルスケアETFです。

しかし、一見すると同じように見えるこれらのETFですが、その中身(ポートフォリオ)には重要な違いがあります。この記事では、まずヘルスケアセクターの投資妙味と特有のリスクを解説し、その上で代表的なETFの戦略の違いを徹底的に比較します。

【はじめに】ヘルスケアセクターの魅力:「ディフェンシブ」と「成長」の両立

ヘルスケアセクターは、景気の良し悪しに関わらず医療への需要が安定している「ディフェンシブ(守りの)セクター」としての側面と、世界的な高齢化やバイオテクノロジーの技術革新を背景とした「グロース(成長)セクター」としての側面を併せ持つ、ユニークな投資対象です。守りと攻めの両方を期待できるのが、このセクターの最大の魅力と言えるでしょう。

主要 ヘルスケアETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「トップ2銘柄への集中度」が、現在のヘルスケアセクターETFを理解する上で非常に重要なポイントです。

ティッカー 投資戦略 経費率(年率) トップ2集中度(目安) キーワード
XLV 米国・超大型集中型 0.09% 約22% S&P500の巨大企業に集中投資
VHT 米国・トップ集中/幅広分散型 0.10% 約21% トップ2は集中、以下は中小まで分散
IYH 米国・トップ集中/幅広分散型 (高コスト) 0.40% 約22% VHTに似ているがコストが高い
IXJ グローバル分散型 (高コスト) 0.41% 約16% ノボノルディスクなど世界の企業にも投資

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。トップ2集中度はLLY,UNHの合計比率の目安。各種データは変動します。


【米国ヘルスケアETF対決】XLV vs VHT

米国ヘルスケアセクターに投資するなら、この2つが中心的な選択肢となります。どちらもトップ2銘柄への集中度が高い点は共通していますが、ポートフォリオの「幅」が異なります。

【XLV】ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンド (超大型・集中型)

  • 投資対象: S&P500指数に含まれるヘルスケア企業(約65銘柄)だけに投資します。
  • ポートフォリオの特徴: 投資対象が巨大企業に限定されるため、ユナイテッドヘルス、イーライリリー、ジョンソン・エンド・ジョンソンといった、超大型株に資産が集中します。パフォーマンスはこれらトップ企業の株価に大きく左右されます。
  • 出典: SSGA

【VHT】バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF (トップ集中・幅広分散型)

  • 投資対象: 大・中・小型株まで含む、米国のヘルスケア関連企業約360銘柄に幅広く投資します。
  • ポートフォリオの特徴: 注意すべきは、VHTもまた、イーライリリーとユナイテッドヘルスの2社で資産の約2割を占めている点です。このトップ2への集中度はXLVと非常に似通っています。XLVとの最大の違いは、トップ2以外の部分で、XLVが残りの約60銘柄の巨大企業で構成されるのに対し、VHTは残りの約350銘柄に中小型のバイオベンチャーや医療機器メーカーなども含んでいる、という点になります。
  • 出典: Vanguard

【選択肢を広げる】iシェアーズ社の米国・グローバルETF

VanguardやSPDRの主力ETF以外にも、iシェアーズ社は特徴的な選択肢を提供しています。

【IYH】高コストな米国の選択肢

iシェアーズ 米国ヘルスケアETF (IYH) は、VHTと同様に米国のヘルスケア企業に幅広く投資するETFです。しかし、経費率が0.40%と、VHTやXLVの4倍も高いため、長期投資のコスト負担が大きくなります。特別な理由がない限り、より低コストなVHTやXLVが合理的な選択肢と言えるでしょう。

出典: iShares

【IXJ】グローバル戦略という選択肢

「米国の企業だけに投資するのは、カントリーリスクが心配だ」と考える投資家にとって、iシェアーズ グローバル・ヘルスケアETF (IXJ)は非常に魅力的な選択肢です。このETFは、米国のトップ企業に加えて、各国の代表的なヘルスケア企業にも投資することで、地政学的なリスクや特定国の経済・政策リスクを分散する効果が期待できます。

IXJに投資する主なメリット

  • カントリーリスクの分散: 米国一国への依存を減らし、欧州や日本などの安定したヘルスケア市場の成長も取り込むことができます。
  • 世界的なリーダー企業へのアクセス: 米国市場にはない、肥満症治療薬で世界を席巻するノボノルディスク(デンマーク)や、がん治療で有名なロシュ(スイス)アストラゼネカ(英国)といった世界のトップ企業に投資できます。

注意点:コストとのトレードオフ

IXJの経費率は0.41%であり、VHT/XLVの約4倍です。このコストを支払ってでもグローバル分散のメリットを享受したいか、という視点での検討が必要になります。

出典: iShares


【重要】ヘルスケアセクター投資の主なリスク

安定と成長が期待できる一方、ヘルスケアセクターには特有のリスクが伴います。

  1. 政治・規制リスク: 政府による薬価引き下げ圧力や、大統領選挙の結果に伴う医療保険制度の変更(いわゆるオバマケアの見直しなど)が、セクター全体の株価を左右する最大の変動要因です。
  2. パテントクリフ(特許の崖): 製薬会社は、主力医薬品の特許が切れると、後発医薬品(ジェネリック)の登場によって収益が激減するリスクを常に抱えています。
  3. 臨床試験の成否: 特にバイオテクノロジー企業は、開発中の新薬の臨床試験の結果次第で株価が一日で数十%も乱高下することがあります。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VHTの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.44% 3.87 14.5% 268.1 11.2%
2023 1.4% 3.38 3% 241.1 -0.5%
2022 1.35% 3.28 8.6% 242.3 -1.2%
2021 1.23% 3.02 11.9% 245.2 24.6%
2020 1.37% 2.7 -25% 196.8 14.3%
2019 2.09% 3.6 64.4% 172.2 4.6%
2018 1.33% 2.19 9.5% 164.6 13.8%
2017 1.38% 2 9.9% 144.7 12.9%
2016 1.42% 1.82 13% 128.2 -4.6%
2015 1.2% 1.61 25.8% 134.4 19.4%
2014 1.14% 1.28 13.3% 112.6 26.9%
2013 1.27% 1.13 -5% 88.7 29.5%
2012 1.74% 1.19 14.4% 68.5 14.2%
2011 1.73% 1.04 7.2% 60 10.9%
2010 1.79% 0.97 -34.5% 54.1 14.1%
2009 3.12% 1.48 97.3% 47.4 -10.7%
2008 1.41% 0.75 53.1

XLVの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.57% 2.3 7.5% 146.2 11.3%
2023 1.63% 2.14 8.6% 131.3 0.1%
2022 1.5% 1.97 6.5% 131.2 4.2%
2021 1.47% 1.85 10.8% 125.9 22.7%
2020 1.63% 1.67 -23.4% 102.6 11.6%
2019 2.37% 2.18 63.9% 91.9 5.4%
2018 1.53% 1.33 10.8% 87.2 11.8%
2017 1.54% 1.2 11.1% 78 11.1%
2016 1.54% 1.08 5.9% 70.2 -2.9%
2015 1.41% 1.02 13.3% 72.3 17.6%
2014 1.46% 0.9 8.4% 61.5 26%
2013 1.7% 0.83 7.8% 48.8 28.4%
2012 2.03% 0.77 18.5% 38 13.8%
2011 1.95% 0.65 16.1% 33.4 9.5%
2010 1.84% 0.56 1.8% 30.5 13%
2009 2.04% 0.55 -1.8% 27 -11.8%
2008 1.83% 0.56 30.6

IYHの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.19% 0.73 12.3% 61.5 11.4%
2023 1.18% 0.65 5.2% 55.2 0.4%
2022 1.12% 0.618 10.4% 55 1.1%
2021 1.03% 0.56 -1.4% 54.4 23.6%
2020 1.29% 0.568 16.4% 44 13.7%
2019 1.26% 0.488 -18.9% 38.7 4.6%
2018 1.63% 0.602 58.4% 37 13.1%
2017 1.16% 0.38 3.3% 32.7 12.4%
2016 1.26% 0.368 -32.1% 29.1 -4.9%
2015 1.77% 0.542 81.9% 30.6 18.1%
2014 1.15% 0.298 50.5% 25.9 26.3%
2013 0.97% 0.198 -28.8% 20.5 28.9%
2012 1.75% 0.278 27.5% 15.9 14.4%
2011 1.57% 0.218 7.9% 13.9 10.3%
2010 1.6% 0.202 5.2% 12.6 14.5%
2009 1.75% 0.192 11.6% 11 -11.3%
2008 1.39% 0.172 12.4

IXJの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.39% 1.29 8.4% 92.8 10.5%
2023 1.42% 1.19 21.4% 84 1.3%
2022 1.18% 0.98 -3% 82.9 0.1%
2021 1.22% 1.01 5.2% 82.8 18.8%
2020 1.38% 0.96 0% 69.7 13.5%
2019 1.56% 0.96 -18.6% 61.4 4.8%
2018 2.01% 1.18 43.9% 58.6 9.3%
2017 1.53% 0.82 1.2% 53.6 8.7%
2016 1.64% 0.81 -43.8% 49.3 -7.3%
2015 2.71% 1.44 111.8% 53.2 13%
2014 1.44% 0.68 6.2% 47.1 22.3%
2013 1.66% 0.64 -12.3% 38.5 26.6%
2012 2.4% 0.73 21.7% 30.4 10.9%
2011 2.19% 0.6 7.1% 27.4 9.2%
2010 2.23% 0.56 12% 25.1 12.1%
2009 2.23% 0.5 0% 22.4 -12.5%
2008 1.95% 0.5 25.6


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢