エネルギーセクターETF(VDE·XLE·IYE·IXC)を比較する

セクターETF

米国のエネルギーセクターETFのデータを比較してみます。

その代表は、バンガード社の【VDE】、ステート・ストリート社の【XLE】、ブラックロック社の【IYE】ですが、世界各国のエネルギー企業に投資する【IXC】も紹介してみます。

ブラックロック社の世界投資型ETFは、どのセクターでも米国比率がかなり高いからです。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう。

【徹底比較】エネルギーETF VDE vs XLE おすすめは?リスクも解説

原油価格の上昇局面などで注目を集める「エネルギーセクターETF」。高い配当利回りも魅力の一つですが、このセクターへの投資は、S&P500などの市場全体への投資とは全く異なる注意点が必要です。

この記事では、まずエネルギーETFに投資する上での「大原則」と「リスク」を解説し、その上で代表的なETFを投資戦略ごとに分類し、あなたに最適な一本を見つけるための情報を整理します。

【はじめに】エネルギーETF投資の大原則

エネルギーETFへの投資を検討する上で最も重要な原則は、「その価格は、原油や天然ガスといったコモディティ価格に強く連動する」ということです。企業の努力だけではコントロールできない外部要因にパフォーマンスが大きく左右される、極めてシクリカル(景気循環的)なセクターであることを、まず理解しておく必要があります。

主要 エネルギーETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「投資戦略」「経費率」が特に重要な比較ポイントです。

ティッカー 投資戦略 配当利回り(目安) 経費率(年率) キーワード
XLE 米国・超大型集中型 約3.5% 0.09% XOM, CVXに超集中、S&P500の巨人達
VDE 米国・幅広分散型 約3.4% 0.10% 米国エネルギーセクター全体(中小含む)
IYE 米国・幅広分散型 (高コスト) 約3.4% 0.40% VDEに似ているがコストが高い
IXC グローバル分散型 (高コスト) 約3.6% 0.41% シェル、トタルなど欧州の巨人にも投資

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


米国エネルギー市場への投資戦略

【集中投資】巨大企業に賭けるなら:XLE

  • 投資対象: S&P500指数に含まれるエネルギー企業(約25銘柄)だけに投資します。
  • ポートフォリオの特徴: 投資対象が巨大企業に限定されるため、エクソンモービル(XOM)とシェブロン(CVX)の2社だけで資産の4割以上を占めるという「超・集中投資」になります。そのパフォーマンスは、この2社の株価に大きく左右されます。
  • 出典: SSGA

【分散投資】セクター全体に網を張るなら:VDE

  • 投資対象: 大・中・小型株まで含む、米国のエネルギー関連企業約110銘柄に幅広く投資します。
  • ポートフォリオの特徴: XLEよりも多くの企業に分散されているため、中小型のシェール企業などの成長も取り込める可能性があります。巨大企業への集中を避け、「米国エネルギーセクター全体」の値動きにより近いパフォーマンスを期待する投資家向けの選択肢です。
  • 出典: Vanguard

【参考】高コストな選択肢:IYE

  • 特徴: VDEと似た分散型の投資戦略ですが、経費率が0.40%とVDEの4倍高いため、長期投資においてはコスト負担が重くなります。特別な理由がなければ、より低コストなVDEやXLEが合理的な選択肢となります。
  • 出典: iShares

グローバルエネルギー市場への投資戦略

【国際分散】カントリーリスクを避けるなら:IXC

「米国のエネルギー企業だけに投資するのは、カントリーリスクの観点から集中しすぎている」と考える投資家にとって、IXCは非常に魅力的な選択肢です。このETFは、米国のトップ企業に加えて、各国の代表的なエネルギー企業にも投資することで、地政学的なリスクや特定国の経済・政策リスクを分散する効果が期待できます。

IXCに投資する主なメリット

  • カントリーリスクの分散: 米国一国への依存を減らし、欧州やカナダなど、世界の多様なエネルギー市場の動向を取り込むことができます。
  • 世界的なリーダー企業へのアクセス: 米国市場にはない、英国のシェル(SHEL)やフランスのトタルエナジーズ(TTE)、カナダのカナディアン・ナチュラル・リソーシズといった、世界のエネルギーメジャーに投資できます。

注意点:コストとのトレードオフ

IXCの経費率は0.41%であり、VDE/XLEの約4倍です。このコストを支払ってでもグローバル分散のメリットを享受したいか、という視点での検討が必要になります。

出典: BlackRock


エネルギーセクター投資の主なリスク

エネルギーETFへの投資には、特有の大きなリスクが伴います。

  1. コモディティ価格リスク: 原油・天然ガスの価格が下落すれば、企業の収益も株価も直接的な打撃を受けます。これが最大のリスクです。
  2. 地政学リスク: 中東情勢や産油国の生産方針(OPECプラスの決定など)といった、予測困難な政治的イベントが価格を大きく左右します。
  3. エネルギー転換(ESG)リスク: 長期的な脱炭素化の流れが、化石燃料を事業の柱とする企業の将来的な収益性を圧迫する可能性があります。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VDEの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.12% 3.92 0.5% 125.7 6.2%
2023 3.29% 3.9 -11.6% 118.4 8.5%
2022 4.04% 4.41 38.7% 109.1 52.6%
2021 4.45% 3.18 29.3% 71.5 38.3%
2020 4.76% 2.46 -10.9% 51.7 -37.4%
2019 3.34% 2.76 7.8% 82.6 -16.2%
2018 2.6% 2.56 -9.9% 98.6 5.2%
2017 3.03% 2.84 18.3% 93.7 2%
2016 2.61% 2.4 -8.7% 91.9 -9.7%
2015 2.58% 2.63 19.5% 101.8 -21.4%
2014 1.7% 2.2 0.5% 129.5 11.2%
2013 1.88% 2.19 10.1% 116.5 13.4%
2012 1.94% 1.99 23.6% 102.7 -2.3%
2011 1.53% 1.61 29.8% 105.1 25%
2010 1.47% 1.24 4.2% 84.1 15%
2009 1.63% 1.19 0.8% 73.1 -27.8%
2008 1.17% 1.18 101.2


XLEの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.2% 2.88 -2.7% 89.9 5.8%
2023 3.48% 2.96 -7.5% 85 8.8%
2022 4.1% 3.2 37.9% 78.1 52.8%
2021 4.54% 2.32 9.4% 51.1 32.4%
2020 5.49% 2.12 -47.3% 38.6 -37.7%
2019 6.48% 4.02 99% 62 -13.6%
2018 2.81% 2.02 -6.5% 71.8 5.1%
2017 3.16% 2.16 27.8% 68.3 3%
2016 2.55% 1.69 -16.3% 66.3 -8.4%
2015 2.79% 2.02 9.8% 72.4 -19.8%
2014 2.04% 1.84 21.9% 90.3 11.1%
2013 1.86% 1.51 17.1% 81.3 15.2%
2012 1.83% 1.29 24% 70.6 -1.5%
2011 1.45% 1.04 6.1% 71.7 24.9%
2010 1.71% 0.98 -3% 57.4 13.9%
2009 2% 1.01 17.4% 50.4 -27.7%
2008 1.23% 0.86 69.7


IYEの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.65% 1.25 -3.8% 47.2 5.4%
2023 2.9% 1.3 -16.1% 44.8 7.2%
2022 3.71% 1.55 76.1% 41.8 51.4%
2021 3.19% 0.88 -6.4% 27.6 34.6%
2020 4.59% 0.94 -55.% 20.5 -38.6%
2019 6.26% 2.09 117.7% 33.4 -15.4%
2018 2.43% 0.96 -7.7% 39.5 5.3%
2017 2.77% 1.04 19.5% 37.5 1.6%
2016 2.36% 0.87 -23% 36.9 -9.6%
2015 2.77% 1.13 27% 40.8 -20.5%
2014 1.73% 0.89 17.1% 51.3 10.8%
2013 1.64% 0.76 15.2% 46.3 14.%
2012 1.63% 0.66 24.5% 40.6 -1.2%
2011 1.29% 0.53 10.4% 41.1 24.2%
2010 1.45% 0.48 2.1% 33.1 11.1%
2009 1.58% 0.47 11.9% 29.8 -26.2%
2008 1.04% 0.42 40.4


IXCの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 4.23% 1.74 29.9% 41.1 5.7%
2023 3.44% 1.34 -27.6% 38.9 7.5%
2022 5.11% 1.85 71.3% 36.2 40.3%
2021 4.19% 1.08 10.2% 25.8 25.9%
2020 4.78% 0.98 -32.4% 20.5 -35.3%
2019 4.57% 1.45 43.6% 31.7 -11.2%
2018 2.83% 1.01 -5.6% 35.7 7.9%
2017 3.23% 1.07 8.1% 33.1 6.4%
2016 3.18% 0.99 -5.7% 31.1 -8.3%
2015 3.1% 1.05 -5.4% 33.9 -22.6%
2014 2.53% 1.11 4.7% 43.8 7.9%
2013 2.61% 1.06 10.4% 40.6 5.7%
2012 2.5% 0.96 10.3% 38.4 -4%
2011 2.18% 0.87 22.5% 40 16.6%
2010 2.07% 0.71 -4.1% 34.3 8.9%
2009 2.35% 0.74 -5.1% 31.5 -23.2%
2008 1.9% 0.78 41


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢