エネルギーセクターETF(VDE·XLE·IYE·IXC)を比較する

セクターETF

【徹底比較】エネルギーETF VDE vs XLE おすすめは?リスクも解説

原油価格の上昇局面などで注目を集める「エネルギーセクターETF」。高い配当利回りも魅力の一つですが、このセクターへの投資は、S&P500などの市場全体への投資とは全く異なる注意点が必要です。

この記事では、まずエネルギーETFに投資する上での「大原則」と「リスク」を解説し、その上で代表的なETFを投資戦略ごとに分類し、あなたに最適な一本を見つけるための情報を整理します。

【はじめに】エネルギーETF投資の大原則

エネルギーETFへの投資を検討する上で最も重要な原則は、「その価格は、原油や天然ガスといったコモディティ価格に強く連動する」ということです。企業の努力だけではコントロールできない外部要因にパフォーマンスが大きく左右される、極めてシクリカル(景気循環的)なセクターであることを、まず理解しておく必要があります。

主要 エネルギーETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「投資戦略」「経費率」が特に重要な比較ポイントです。

ティッカー 投資戦略 配当利回り(目安) 経費率(年率) キーワード
XLE 米国・超大型集中型 約3.7%前後 0.08%[1] XOM・CVXの2社で約4割超の高集中[1]
VDE 米国・幅広分散型 約3%台 0.09%[2] 米国エネルギー約110銘柄に分散[3]
IYE 米国・幅広分散型 (コスト高め) 約3%台 0.38%[4] VDEに近いが手数料が高い
IXC グローバル分散型 約3%台後半 0.40%[5] シェル・トタルなど欧州大手も網羅

※配当利回りは株価・分配のタイミングで変動します。ここでは直近の概況からの目安を示しています。最新は各社サイトをご確認ください。


米国エネルギー市場への投資戦略

【集中投資】巨大企業に賭けるなら:XLE

  • 投資対象: S&P500採用のエネルギー企業(おおむね20〜25銘柄)。最新ファクトシートの保有銘柄数は23[6]
  • ポートフォリオの特徴: エクソンモービル(XOM)とシェブロン(CVX)の2社で約41%(10/9/2025時点・指数構成)と高集中。値動きは2社の影響が大きい[1]
  • メモ: 経費率は0.08%。原油・ガス価格の変動が業績・株価に直結する点を意識[1]
  • 出典: SSGA(XLE公式)

【分散投資】セクター全体に網を張るなら:VDE

  • 投資対象: 米国のエネルギー関連企業を大型〜小型まで幅広く組み入れ。直近の保有銘柄数は約111(2025/8/31時点)[3]
  • ポートフォリオの特徴: XLEに比べ中小型のシェール企業なども取り込みやすく、「米国エネルギーセクター全体」の値動きに近づきやすい。
  • コスト: 経費率0.09%(2025年公表)[2]
  • 出典: Vanguard(VDE)Vanguard地域サイト(保有銘柄数)

【参考】コスト面で見直したい:IYE

  • 特徴: 分散の考え方はVDEに近いが、経費率0.38%と割高。長期ではコスト差が効きやすい[4]
  • 出典: iShares(IYE公式)

グローバルエネルギー市場への投資戦略

【国際分散】カントリーリスクを避けるなら:IXC

「米国のエネルギー企業だけに投資するのは、カントリーリスクの観点から集中しすぎている」と考える場合、IXCは魅力的です。米国大手に加え、シェル(SHEL)、トタルエナジーズ(TTE)など欧州の代表的企業も含むため、地政学や規制の地域偏りを緩和できます。

IXCに投資する主なメリット

  • カントリーリスクの分散: 米国一極から、欧州・カナダ・中東関連まで裾野を広げられる。
  • 世界的リーダー企業へのアクセス: 製油・上流・パイプラインまでバリューチェーンが広い。
  • コスト: 経費率は0.40%(直近プロスペクタス)[5]

出典: BlackRock(IXC公式)


エネルギーセクター投資の主なリスク

エネルギーETFへの投資には、特有の大きなリスクが伴います。

  1. コモディティ価格リスク: 原油・天然ガスの価格が下落すれば、企業の収益も株価も直撃。
  2. 地政学リスク: 中東情勢や産油国(OPECプラス)方針など、予測困難な政治イベントの影響は大きい。
  3. エネルギー転換(ESG)リスク: 脱炭素の進展により、化石燃料依存の収益性が長期的に圧迫される可能性。
  4. 景気循環リスク: 景気後退局面では需要減速による業績悪化が起こりやすい。
  5. 供給過剰リスク: シェール増産や政策的な備蓄放出などで供給が上振れた場合、価格急落の恐れ。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。記載の数値(経費率・組入比率・利回り・保有銘柄数など)は公表資料に基づくもので、随時変動します。最新情報は各運用会社の公式サイトでご確認ください。

参考・出典リンク

  • XLE公式:SSGA(経費率0.08%、トップ保有銘柄・比率)[1] / ファクトシート(保有銘柄数23)PDF[6]
  • VDE公式(アドバイザー向け):Vanguard(経費率0.09%)[2]
  • VDE 保有銘柄数の目安:Vanguard地域サイト(Number of holdings 111, 2025/8/31時点)[3]
  • IYE公式:iShares(経費率0.38%)[4]
  • IXC公式:BlackRock(経費率0.40%、概要・保有銘柄等)[5]

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VDEの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.12% 3.92 0.5% 125.7 6.2%
2023 3.29% 3.9 -11.6% 118.4 8.5%
2022 4.04% 4.41 38.7% 109.1 52.6%
2021 4.45% 3.18 29.3% 71.5 38.3%
2020 4.76% 2.46 -10.9% 51.7 -37.4%
2019 3.34% 2.76 7.8% 82.6 -16.2%
2018 2.6% 2.56 -9.9% 98.6 5.2%
2017 3.03% 2.84 18.3% 93.7 2%
2016 2.61% 2.4 -8.7% 91.9 -9.7%
2015 2.58% 2.63 19.5% 101.8 -21.4%
2014 1.7% 2.2 0.5% 129.5 11.2%
2013 1.88% 2.19 10.1% 116.5 13.4%
2012 1.94% 1.99 23.6% 102.7 -2.3%
2011 1.53% 1.61 29.8% 105.1 25%
2010 1.47% 1.24 4.2% 84.1 15%
2009 1.63% 1.19 0.8% 73.1 -27.8%
2008 1.17% 1.18 101.2


XLEの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.2% 2.88 -2.7% 89.9 5.8%
2023 3.48% 2.96 -7.5% 85 8.8%
2022 4.1% 3.2 37.9% 78.1 52.8%
2021 4.54% 2.32 9.4% 51.1 32.4%
2020 5.49% 2.12 -47.3% 38.6 -37.7%
2019 6.48% 4.02 99% 62 -13.6%
2018 2.81% 2.02 -6.5% 71.8 5.1%
2017 3.16% 2.16 27.8% 68.3 3%
2016 2.55% 1.69 -16.3% 66.3 -8.4%
2015 2.79% 2.02 9.8% 72.4 -19.8%
2014 2.04% 1.84 21.9% 90.3 11.1%
2013 1.86% 1.51 17.1% 81.3 15.2%
2012 1.83% 1.29 24% 70.6 -1.5%
2011 1.45% 1.04 6.1% 71.7 24.9%
2010 1.71% 0.98 -3% 57.4 13.9%
2009 2% 1.01 17.4% 50.4 -27.7%
2008 1.23% 0.86 69.7


IYEの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.65% 1.25 -3.8% 47.2 5.4%
2023 2.9% 1.3 -16.1% 44.8 7.2%
2022 3.71% 1.55 76.1% 41.8 51.4%
2021 3.19% 0.88 -6.4% 27.6 34.6%
2020 4.59% 0.94 -55.% 20.5 -38.6%
2019 6.26% 2.09 117.7% 33.4 -15.4%
2018 2.43% 0.96 -7.7% 39.5 5.3%
2017 2.77% 1.04 19.5% 37.5 1.6%
2016 2.36% 0.87 -23% 36.9 -9.6%
2015 2.77% 1.13 27% 40.8 -20.5%
2014 1.73% 0.89 17.1% 51.3 10.8%
2013 1.64% 0.76 15.2% 46.3 14.%
2012 1.63% 0.66 24.5% 40.6 -1.2%
2011 1.29% 0.53 10.4% 41.1 24.2%
2010 1.45% 0.48 2.1% 33.1 11.1%
2009 1.58% 0.47 11.9% 29.8 -26.2%
2008 1.04% 0.42 40.4


IXCの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 4.23% 1.74 29.9% 41.1 5.7%
2023 3.44% 1.34 -27.6% 38.9 7.5%
2022 5.11% 1.85 71.3% 36.2 40.3%
2021 4.19% 1.08 10.2% 25.8 25.9%
2020 4.78% 0.98 -32.4% 20.5 -35.3%
2019 4.57% 1.45 43.6% 31.7 -11.2%
2018 2.83% 1.01 -5.6% 35.7 7.9%
2017 3.23% 1.07 8.1% 33.1 6.4%
2016 3.18% 0.99 -5.7% 31.1 -8.3%
2015 3.1% 1.05 -5.4% 33.9 -22.6%
2014 2.53% 1.11 4.7% 43.8 7.9%
2013 2.61% 1.06 10.4% 40.6 5.7%
2012 2.5% 0.96 10.3% 38.4 -4%
2011 2.18% 0.87 22.5% 40 16.6%
2010 2.07% 0.71 -4.1% 34.3 8.9%
2009 2.35% 0.74 -5.1% 31.5 -23.2%
2008 1.9% 0.78 41


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢