WMT(ウォルマート) の配当推移
ウォルマート(Walmart Inc)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
(*年次決算が1月なので平均株価は2月1日~1月30日の期間で計算しています)
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
(*年次決算が1月なので平均株価は2月1日~1月31日の期間で計算しています)
年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
2026E | 0.94% | 13% | 32% | 0.94 | 100.2 | 2.94 |
2025 | 1.13% | 13% | 36% | 0.83 | 92.6 | 2.33 |
2024 | 1.13% | 9% | 43% | 0.76 | 73.5 | 1.91 |
2023 | 1.48% | 2% | 54% | 0.747 | 51.5 | 1.42 |
2022 | 1.62% | 2% | 46% | 0.733 | 46.1 | 1.62 |
2021 | 1.56% | 2% | 46% | 0.72 | 47.1 | 1.58 |
2020 | 1.64% | 1% | 42% | 0.71 | 44 | 1.73 |
2019 | 1.93% | 3% | 95% | 0.69 | 36.7 | 0.75 |
2018 | 2.25% | 1% | 63% | 0.68 | 30.6 | 1.09 |
2017 | 2.49% | 1% | 47% | 0.67 | 27.3 | 1.46 |
2016 | 2.88% | 3% | 44% | 0.65 | 23.3 | 1.52 |
2015 | 2.77% | 2% | 39% | 0.64 | 23.5 | 1.68 |
2014 | 2.45% | 2% | 39% | 0.63 | 26.1 | 1.63 |
2013 | 2.49% | 19% | 38% | 0.53 | 25.3 | 1.67 |
2012 | 2.35% | 8% | 35% | 0.49 | 22.6 | 1.51 |
2011 | 2.69% | 23% | 33% | 0.4 | 18.2 | 1.49 |
2010 | 2.26% | 11% | 32% | 0.36 | 17.7 | 1.24 |
2009 | 2.13% | 13% | 32% | 0.32 | 16.9 | 1.13 |
2008 | 1.74% | 10% | 31% | – | 18.4 | 1.04 |
【出典】
堅実な配当成長の実績
ウォルマート(WMT)の配当実績は、小売業界のリーダーとして一度も減配することなく着実な成長を続けています。2008年から2026年にかけて、1株配当は0.32ドルから0.94ドルへと194%増加し、年平均成長率は約6.3%を記録しています。この期間中、リーマンショックの余波(2009年)やCOVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても配当を維持・増額し、投資家に安定したインカム・ゲインを提供してきました。2025年2月には52年連続配当増額を発表し、2026年度の配当を13%増の年間0.94ドルに引き上げることを決定しています。ウォルマートの配当政策は、小売業として消費者の日常生活に欠かせない商品を提供する事業特性と、慎重かつ持続可能な成長戦略を反映しています。
配当成長率の推移
ウォルマートの配当成長率は安定性を重視した着実なパターンを示しています:
- 2008〜2013年:高成長期(年間8〜23%の力強い成長、特に2011年は23%の大幅増額)
- 2014〜2022年:成熟・調整期(年間1〜3%の控えめな成長、eコマース投資を優先)
- 2023〜2024年:安定期(年間2%、9%の段階的成長)
- 2025〜2026年:回復・加速期(13%の大幅成長率回復、投資収益の顕在化)
このパターンは、ウォルマートの「デジタル・トランスフォーメーション」戦略への転換と密接に関連しています。2014年以降の配当成長鈍化は、Amazonとの競争激化に対応するため、eコマース基盤やテクノロジーへの大規模投資を優先した結果です。2025〜2026年の配当成長率の大幅回復(13%)は、これらの戦略投資が収益に貢献し始めたことを示しており、同社の新しい成長フェーズの始まりを象徴しています。CFOのジョン・デイビッド・レイニー氏は「52年連続の配当増額は、持続的な業績への確信の表れ」とコメントしています。
適度な配当利回りと成長性のバランス
ウォルマートの配当利回りは、一般的に1.0%〜2.5%の範囲で推移し、小売業として適切な水準を維持しています。2025年現在の配当利回りは約0.94%と低めですが、これは以下の戦略的要因によるものです:
- 成長投資との両立:デジタル投資を継続しながら、安定した配当を提供
- 株価上昇への貢献:配当増額が長期的な株価上昇を支える要因の一つ
- インフレ対応力:規模の経済と価格決定力により実質配当を維持
- 総還元利回りの向上:配当に加えて自社株買いも実施し、トータルでの株主還元を拡大
ウォルマートの配当戦略は、「持続可能な成長と株主還元のバランス」を重視しています。同社は配当に加えて自社株買いも実施しており、総還元率の向上を図っています。特に、小売業界の変革期において、将来の競争力確保のための投資と株主還元の適切なバランスを維持している点が評価できます。
配当性向の健全性と投資効率
ウォルマートの配当性向は32%〜95%の範囲で推移していますが、近年は30%台前半の極めて健全な水準を維持しています。注目すべき特徴は:
戦略的な配当性向の変動:
- 2008〜2017年:31〜47%の安定した範囲(堅実な成長期)
- 2018〜2019年:63〜95%の一時的上昇(eコマース投資による利益圧迫)
- 2020年〜2025年:32〜54%の健全な水準への回復(投資効果の顕在化)
- 2026年予想:32%の極めて健全な水準(収益性の大幅改善)
健全性の背景:ウォルマートの配当性向が健全である理由は、小売業界でのリーダーシップと安定した事業モデルにあります。同社は食品・日用品を中心とした生活必需品を扱うため、景気変動の影響を受けにくい収益構造を持っています。また、世界最大の小売チェーンとしての規模の経済により、サプライチェーンの効率化とコスト管理において競合他社に対する優位性を維持しています。
2018〜2019年の配当性向上昇は、Amazonとの競争に対応するためのeコマース・プラットフォーム構築やラストマイル配送網整備への大規模投資により、一時的に利益率が圧迫されたことが原因です。しかし、2020年以降の配当性向改善は、これらの投資が収益に貢献し始めたことを示しており、同社の戦略的判断の正しさを証明しています。
財務パフォーマンスと成長見通し
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はB$(10億ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。
主要財務指標の推移
年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
---|---|---|---|---|
2025 | 681.0 | 28.0 | 4 | 15.5 |
2024 | 648.1 | 25.3 | 4 | 15.5 |
2023 | 611.3 | 28.8 | 5 | 11.7 |
2022 | 572.8 | 24.2 | 4 | 13.7 |
2021 | 559.2 | 36.1 | 6 | 13.5 |
2020 | 524.0 | 25.3 | 5 | 14.9 |
2019 | 514.4 | 27.8 | 5 | 6.7 |
2018 | 500.3 | 28.3 | 6 | 9.9 |
2017 | 485.9 | 31.7 | 7 | 13.6 |
2016 | 482.1 | 27.6 | 6 | 14.7 |
2015 | 485.7 | 28.6 | 6 | 16.4 |
2014 | 476.3 | 23.3 | 5 | 16.0 |
2013 | 468.7 | 25.6 | 5 | 17.0 |
2012 | 446.5 | 24.3 | 5 | 15.7 |
2011 | 421.8 | 23.6 | 6 | 16.4 |
2010 | 408.1 | 26.2 | 6 | 14.4 |
2009 | 404.3 | 23.1 | 6 | 13.4 |
2025年の業績動向と力強い成長回復
ウォルマートの2025年度(会計年度終了:2025年1月)の業績は、デジタル・トランスフォーメーション戦略の成功を示す力強い成長を実現しています:
- 売上高成長:$681.0B達成、前年比5.1%増の堅調な成長
- eコマース急成長:グローバルeコマース売上が21%成長、店舗連携配送とマーケットプレイス拡大が牽引
- 収益性改善:営業利益率の改善により純利益は前年並みを維持
- 顧客基盤拡大:週約2.7億人の顧客が19カ国の10,750店舗とeコマースサイトを利用
特に注目すべきは、Q2 2025(2025年7月期)の業績で、売上高$169.3B(前年比4.8%増)、営業利益8.5%増を達成しています。eコマース売上の21%成長は、店舗連携配送、マーケットプレイス、広告事業の拡大が主要因です。Walmart Connectの広告収入は31%成長し、高収益事業の拡大が利益率改善に寄与しています。
規模拡大と効率性の向上
ウォルマートの財務データからは、小売業界のリーダーとして継続的な規模拡大と段階的な効率性改善が見てとれます:
- 売上高は2009年の404.3B$から2025年には681.0B$へと68%成長し、年平均成長率3.4%を維持
- 営業CFマージンは4〜7%の範囲で推移し、小売業として適切な効率性を維持
- 純利益は2019年に6.7B$まで落ち込んだが、2025年には15.5B$まで大幅回復
- 2020年のパンデミック時には生活必需品企業として業績が好調に推移
特に注目すべきは、2018〜2019年の利益率低下と、その後の2020年以降の回復です。前者はeコマース基盤構築への大規模投資による一時的な収益性圧迫を示し、後者は投資効果の顕在化とパンデミック下での「エッセンシャル・ビジネス」としての強みを表しています。2025年の安定した純利益(15.5B$)は、デジタル変革への投資が本格的に収益に貢献していることを示しています。
安定したキャッシュフロー創出力
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはB$(10億ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。
年度 | 営業CF | 成長率 | 投資CF | 財務CF |
---|---|---|---|---|
2025 | 28.0 | 11 | -17.0 | -10.5 |
2024 | 25.3 | 0 | -21.3 | -13.4 |
2023 | 28.8 | 19 | -17.7 | -17.0 |
2022 | 24.2 | -33 | -6.0 | -22.8 |
2021 | 36.1 | 43 | -10.1 | -16.1 |
2020 | 25.3 | -9 | -9.1 | -14.3 |
2019 | 27.8 | -2 | -24.0 | -2.5 |
2018 | 28.3 | -11 | -9.1 | -19.9 |
2017 | 31.7 | 15 | -13.9 | -19.1 |
2016 | 27.6 | -4 | -10.7 | -16.3 |
2015 | 28.6 | 23 | -11.1 | -15.1 |
2014 | 23.3 | -9 | -12.5 | -10.8 |
2013 | 25.6 | 6 | -12.6 | -11.9 |
2012 | 24.3 | 3 | -16.6 | -8.5 |
2011 | 23.6 | -10 | -12.2 | -12.0 |
2010 | 26.2 | 13 | -11.6 | -14.2 |
2009 | 23.1 | 12 | -10.7 | -9.9 |
ウォルマートの強みは、小売業として安定した営業キャッシュフロー創出能力にあります。消費者の日常的な買い物需要に支えられ、景気変動に対する耐性を示しています:
- 営業CFは過去16年間で23.1B$〜36.1B$の範囲で推移し、2021年には過去最高を記録
- 2021年のパンデミック特需により営業CFが大幅増加(43%成長)
- 投資CFは2019年の-24.0B$、2023-2024年の-17.0B$超など、eコマースとテクノロジーへの積極投資を反映
- 財務CFの大幅なマイナスは、配当と自社株買いによる継続的な株主還元を示す
- 2025年は営業CF 28.0B$の堅調な水準を維持、投資と還元のバランスを最適化
投資CFの特徴として、2019年の-24.0B$は同社のデジタル・トランスフォーメーション戦略における最大の投資年であり、eコマース・プラットフォーム、自動化技術、配送センターへの大規模投資が行われました。2023年以降の投資CF拡大は、AIとデータ分析技術への投資強化を示しています。
財務CFの継続的なマイナスは、ウォルマートが「株主還元重視」の資本配分を行っていることを表しています。特に2017年以降の大幅なマイナスは、自社株買いプログラムの強化を示しており、配当と合わせた総還元率の向上を図っています。
キャッシュフロー分析のポイント:ウォルマートのキャッシュフローパターンは、「安定創出→戦略投資→継続還元」のサイクルを示しています。同社は小売業として予測可能な営業CFを基盤に、将来の競争力確保のための戦略的投資と株主還元を両立させており、持続可能な成長モデルを確立しています。
健全な財務基盤と効率的な資本活用
以下の表では、総資産、総負債、株主資本はB$(10億ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。
年度 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|---|
2025 | 261 | 163 | 98 | 38 | 16 |
2024 | 252 | 162 | 91 | 36 | 17 |
2023 | 243 | 159 | 84 | 35 | 14 |
2022 | 245 | 153 | 92 | 38 | 15 |
2021 | 252 | 165 | 81 | 32 | 17 |
2020 | 236 | 155 | 75 | 32 | 20 |
2019 | 219 | 140 | 72 | 33 | 9 |
2018 | 205 | 124 | 78 | 38 | 13 |
2017 | 199 | 118 | 78 | 39 | 18 |
2016 | 200 | 116 | 81 | 40 | 18 |
2015 | 203 | 118 | 81 | 40 | 20 |
2014 | 205 | 123 | 76 | 37 | 21 |
2013 | 203 | 121 | 76 | 38 | 22 |
2012 | 193 | 118 | 71 | 37 | 22 |
2011 | 181 | 110 | 69 | 38 | 24 |
2010 | 170 | 98 | 70 | 41 | 20 |
2009 | 163 | 96 | 65 | 40 | 20 |
ウォルマートの財務構造は、小売業として適切な健全性と効率性のバランスを維持しています:
- 自己資本率は32〜41%の適切な範囲で推移し、2025年には38%の健全な水準を維持
- ROEは多くの年で15〜24%の良好な水準を維持
- 総資産は事業拡大に伴い163B$から261B$へと60%増加
- 株主資本は自社株買いの影響で変動するが、長期的には増加傾向
- 2025年は株主資本98B$、市場価値約$800Bの世界最大級小売企業として位置確立
財務構造の変化には、以下の戦略的要因が影響しています:
- 2018〜2019年:eコマース投資拡大による負債増加と収益性一時低下
- 2020年〜:パンデミック対応とデジタル投資加速による資産・負債拡大
- 2022年〜:投資効果の顕在化による収益性改善とバランスシート正常化
- 2025年:デジタル・トランスフォーメーション完了による安定した財務基盤の確立
ROEの変動は同社の投資サイクルを反映しており、2018〜2019年の低下(13%、9%)は戦略的投資期、2020年以降の改善は投資効果の顕在化を示しています。2025年のROE 16%は、デジタル・トランスフォーメーション戦略の成功を物語っています。
まとめ:長期配当投資家にとってのウォルマートとは?
ウォルマートは、小売業界の絶対的リーダーとして、安定性と成長性を両立する魅力的な配当株の一つです。生活必需品を扱う事業特性により景気変動に対する耐性を持ちながら、デジタル・トランスフォーメーションによる新たな成長機会を追求しています。
同社の強みは以下の点にあります:
- 52年連続配当増額の卓越した実績(2025年に13%の大幅増額を実現)
- 世界最大の小売チェーンとしての圧倒的な規模の経済
- 生活必需品中心の事業による景気耐性と安定した需要基盤
- 強力なサプライチェーンとコスト管理による競争優位性
- eコマースとオムニチャネル戦略による将来成長の基盤構築
- 豊富なキャッシュフローによる継続的な投資と株主還元の両立
- パンデミック時に証明されたエッセンシャル・ビジネスとしての価値
- AIとデータ分析技術活用による運営効率化の推進
- 2025年の業績回復:売上$681B達成、eコマース21%成長
一方で、注意すべき点としては:
- 小売業界特有の低い利益率(営業CFマージン4〜6%)
- Amazonとの競争継続による投資負担とマージン圧迫リスク
- eコマース市場でのシェア争いにおける継続的な投資必要性
- 労働コスト上昇圧力(最低賃金引き上げ、人手不足)
- 消費者行動の変化への対応(サステナビリティ、健康志向など)
- 国際事業における地政学的リスクと為替変動の影響
- 新興小売フォーマット(ダークストア、クイックコマースなど)との競争
- 関税影響:輸入品の約1/3に関税リスク、価格転嫁の必要性
投資家へのポイント:ウォルマートへの投資は、「安定性と適度な成長」を重視する長期配当投資家に適しています。同社は急激な成長は期待できないものの、配当の継続的な増額(年平均6.3%)と株価の堅調な推移により、年率7〜10%程度の安定したトータルリターンを期待できます。特に、景気後退時の業績安定性、インフレ環境下での価格転嫁能力、そして52年間の無減配実績は、他の小売企業では代替できない価値です。長期的には、デジタル・トランスフォーメーションの成功とオムニチャネル戦略の深化が、持続的な価値創造を支えるでしょう。アナリストの平均目標株価$109.03(現在価格から約6.7%上昇)と「Strong Buy」評価も、今後の成長期待を示しています。
よくある質問
ウォルマートの配当はどれくらい安全ですか?
ウォルマートの配当安全性は極めて高いと評価できます。同社は52年連続で配当を増額し、リーマンショックやCOVID-19パンデミックなど複数の経済危機を乗り越えてきた実績があります。配当性向は概ね30〜50%の健全な範囲で推移し、2026年予想では32%と極めて保守的な水準です。営業キャッシュフローは配当支払いを十分にカバーしており、小売業として生活必需品を扱う事業の性質上、需要の安定性が高く、景気後退時でも売上の大幅な減少は起こりにくい構造です。また、世界最大の小売チェーンとしての規模の経済により、コスト管理と価格競争力において優位性を持っています。現在の財務状況と市場地位を考慮すると、今後も配当の継続的な増額が期待できます。
eコマース投資の効果はウォルマートの長期成長にどのような影響を与えますか?
eコマース投資の効果は、ウォルマートの成長戦略において大きな成功を収めています。2025年のグローバルeコマース売上21%成長は、過去数年間の大規模投資が実を結んだ結果です。同社は全米4,700店舗の物理的ネットワークを活用したオムニチャネル戦略により、「オンラインで注文、店舗で受取り」や「当日配送」などの差別化サービスを提供しています。特に店舗連携配送(store-fulfilled delivery)の拡大により、Amazonに対する競争優位性を確立しつつあります。また、Walmart Connectの広告事業31%成長やマーケットプレイス拡大により、高収益事業の比率が向上し、全体の利益率改善に貢献しています。長期的には、物理店舗とデジタル技術の融合による新しい小売体験の創造が、持続的な差別化要因となると考えられます。
関税上昇はウォルマートの収益性にどのような影響を与えますか?
関税上昇は確かに短期的なコスト圧迫要因ですが、ウォルマートは複数の戦略により影響を軽減しています。同社の輸入品は全体の約1/3を占め、中国、メキシコ、カナダ、ベトナム、インドが主要調達先ですが、規模の経済を活かした価格転嫁により、一部のコスト上昇を販売価格に反映させています。CFOのレイニー氏によると、「商品・カテゴリー別に管理し、一部は完全に吸収、一部は価格転嫁」という柔軟な対応を行っています。また、海外からの輸入時期を前倒しする戦略や、Rollbacks(期間限定割引)の拡大により、顧客への影響を最小限に抑えています。中低所得層は関税関連の価格上昇に敏感である一方、プライベートブランド商品の売上は横ばいで推移しており、消費者の支出パターンは依然として堅調です。長期的には、サプライチェーンの多様化と効率化により、関税リスクの分散を図っています。
52年連続配当増額は今後も継続可能ですか?
ウォルマートの52年連続配当増額の継続可能性は高いと評価できます。2026年度に13%の大幅増額を決定したことは、経営陣の将来業績への強い確信を示しています。同社の配当性向は32%(2026年予想)と極めて保守的で、十分な成長余地があります。また、年間28B$を超える安定した営業キャッシュフローは、配当支払い(年間約2.4B$)を十分にカバーしており、自社株買いと合わせた総還元も継続可能です。eコマース事業の拡大、Walmart Connect広告事業の高成長、AI技術導入による効率化などの成長ドライバーが収益性向上を支えています。さらに、生活必需品を扱う事業特性により、景気変動に対する耐性が高く、安定した収益基盤を維持できます。配当政策は「持続的な業績への確信」に基づいており、今後も株主還元を重視した経営方針を継続すると考えられます。
※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。
【出典】