GEエアロスペース:今後の見通し
GEエアロスペース(GE_Aerospace)の今後の見通しを考えるために、まず、金利と株価チャートの推移を参照し、次に、直近の決算を確認します。
目標株価やPERなどの情報も踏まえて主な指標についても掲載します。
金利と株価:過去~現在
※チャート左目盛り:青線は株価推移、赤線は200日移動平均線
※チャート右目盛り:緑線は10年国債利回り
※株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、時価総額、株式数、取引の出来高などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。
銘柄比較については関連記事(GEとHONを比較:ゼネラルエレクトリックとハネウェル)を参照
直近決算
GEは7月17日(米国時間)に決算を発表しました。
★業績
《四半期》
・EPS:予想1.4$→結果1.66$
・売上高:予想95.4億$→結果101.5億$(前年同期比+23.5%)
★ガイダンス
《通年》
・EPS:予想5.63$→結果5.6~5.8$
★出所
企業概要
GEエアロスペース(GE Aerospace)は、航空機用エンジンの設計・製造・整備(MRO)と、運航データを活用するデジタルソリューションを提供するグローバル企業です。もとはGeneral Electric(GE)の航空宇宙部門で、2024年4月2日に独立・発足。社名はGEエアロスペース、ティッカーはNYSE: GEです。12
商用/軍用の各エンジンは「燃費(燃料効率)・耐久性・安全性」を重視して設計され、航空会社や軍の運航コスト削減と安全性向上に寄与しています。近年は、機体から集まるデータをAIで解析し、故障の前兆を早めに見つける予知保全や燃費・整備計画の最適化など、デジタル面の価値提供も拡大しています。34
GEエアロスペースの事業は、①航空機エンジン(商用/軍用)とMRO、②航空システム・デジタルソリューションに大別できます。
★航空機用エンジンの設計・製造・整備
商用エンジンでは、CFM International(GEとSafranの50:50合弁)によるLEAP(A320neo/737 MAX等)と既存のCFM56、ワイドボディ向けGEnx(787等)、GE90/GE9X(777/777X)、ビジネス機のPassport、ターボプロップCatalystなどを展開。整備は「TrueChoice™」などのメニューでライフサイクルを一体支援します。GE9Xは777-9の就航(現在は2026年見込み)に向け量産を加速中です。5678
軍用エンジンでは、F/A-18等のF404/F414、回転翼のT700/CT7、CH-53K向けT408(GE38)、そして米陸軍のUH-60/Apache向けT901(ITEP)を擁します。T901は2025年5月にUH-60で初のホバーテストを実施しました(量産判断はプログラム調整中)。910
★航空システム/デジタルソリューション
センシングとクラウド分析を組み合わせたRemote Diagnostics/Maintenance Insightなどを提供し、AOG(運航停止)を回避、部品・整備のムダを削減します。34
★包括的アフターサービス
グローバルMROネットワークとデータ連携で、エンジンの稼働率を最大化。稼働に応じて支払う契約(パワー・バイ・ザ・アワー型)も選べます。3
そのルーツはGEの多角化の歴史にあり、近年は「GEヘルスケア」「GEヴェルノヴァ」「GEエアロスペース」の3社体制へ再編を完了。GEエアロスペースは航空宇宙に経営資源を集中しています。2
経営・技術戦略(要点)
・次世代推進:CFM “RISE” 計画(オープンファン等)…現行最良機比で燃費・CO₂を20%以上改善を目標に、2030年代半ばの実用化を見据え実証を継続。SAF100%や水素対応もスコープ。1112
・先端材料:CMC(セラミックマトリックス複合材)…高温で軽い=燃費改善に効く中核素材。GE9X/LEAPでも適用拡大。7
・ハイブリッド電動化…ターボジェネレーター等のハイブリッド電動推進に投資。直近ではeVTOL/電動機のBeta Technologiesに出資。13
・SAF対応・脱炭素…SAF(持続可能な航空燃料)の適用、将来燃料への適合性を継続検証。12
最近の業績トピック
2024年通期は売上$38.7B(+9%)、営業利益* $7.3B(+30%)、フリーCF* $6.1B(+28%)。2025年4–6月期(Q2)は売上$11.0B(+21%)、受注$14.2B(+27%)、調整EPS $1.66で通期見通しを上方修正(*Non-GAAP)。牽引役は商用サービスとLEAP/ワイドボディの装備需要です。1415
初心者向けミニ解説
- 燃費が良い=航空会社の利益に直結。燃料は運航コストの大きな割合を占めます。
- 予知保全=“壊れる前に直す”。前倒し整備で欠航や大修理を防止。
- オープンファン/ハイブリッド電動は約20%の燃費改善を狙う次世代アプローチ。
【出典】(詳細は本文末の注をご参照ください)
注
- 1. GE Aerospace「Launches as Independent…」(2024/4/2) リンク ↩︎
- 2. GE「Board Approves Spin-Off of GE Vernova…」/GE Aerospace IR「Stock」 リンク1・リンク2 ↩︎ ↩︎
- 3. GE Aerospace「Digital Solutions(TrueChoice)」 リンク ↩︎ ↩︎ ↩︎
- 4. GE Aerospace「Maintenance Insight」 リンク ↩︎ ↩︎
- 5. CFM International「About(GE×Safran JV)」 リンク ↩︎
- 6. GE Aerospace「Commercial Engines」 リンク ↩︎
- 7. GE Aerospace「GE9X」/CMC適用 リンク ↩︎ ↩︎
- 8. Simple Flying「777-9進捗(FAA試験段階)」ほか リンク ↩︎
- 9. FlightGlobal「US Army completes first hover with GE T901 on UH-60」(2025/5/16) リンク ↩︎
- 10. DoD「ITEP Selected Acquisition Report(Dec 2023)」 PDF ↩︎
- 11. Safran Press「GE & Safran launch RISE」(20%改善目標) リンク ↩︎
- 12. CFM「RISE Program」 リンク ↩︎ ↩︎
- 13. Barron’s「GE Aerospace invests in Beta Technologies」(ハイブリッド電動) リンク ↩︎
- 14. GE Aerospace「Q2 2025 Results Press Release」(売上/受注/EPS) リンク ↩︎
- 15. GE Aerospace「2024通期 Press Release / Presentation」 PR ・ PPT ↩︎
四半期決算(EPSと売上)の推移:予想と結果
最後に、四半期決算について予想と結果を確認します。
売上高とEPSについて、マーケットのアナリスト平均値と企業の発表を比べてみます。
(単位はEPSがドル、売上高が100万ドル)。
【出典】