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ジェフリーイメルトが語るGE改革 2018年の株価は反転するのか

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今回はゼネラルエレクトリック社(GE)について書いてみます。

というのは、ハーバードビジネスレビュー(2017年12月号)が前CEOのジェフリー・R・イメルトのインタビューを載せていたからです。

(この記事は公開後に随時、加筆修正)

前掲誌は肯定的にGEを評価しましたが、その後の同社の株価はナイアガラの滝のように下がり続けました。

18年1月24日決算によれば17年10~12月期決算は以下の通り。

  • 最終損益:98億2600万ドルの赤字
  • 売上高:314億200万ドル(5%減)
  • 電力部門の受注は前年同期比で25%減、その営業利益は2億6000万ドル(9割減)
  • 保険事業見直しで62億ドルの特別費用を計上
  • 税引き前損益は126億300万ドルの赤字

航空機エンジンや医療機器、オイル&ガス部門は好調なので、今後は事業分割を求める圧力が高まるとも見られています(※ジョン・フラナリーCEOも医療機器、航空機エンジン、電力の3分野に注力する方針)

保険事業での費用計上やサービス事業の収益の認識等に関してGEは米証券取引委員会(SEC)の調査を受けており、不安要因は山積みになっています。

18年に入り、あまりにも低迷しているので、ダウ平均からGEを除外すべきだと言われるようになりました。

最近のGE社の経営指標と株価の動きを踏まえながら、HBRの特集記事のポイントを紹介してみます。

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ゼネラルエレクトリック(GE)の経営指標

ゼネラル・エレクトリック(GE)はエネルギーやジェット・エンジン、ヘルスケア等を主力とするアメリカの複合企業です。

ブルームバーグによれば2018年に入ってからのGEの指標は以下の通りです(2018/4/15閲覧)。

  • 株価52週レンジ:12.73~30.54
  • 1年トータルリターン:-52.82%
  • 年初来リターン:-22.69%
  • 株価収益率(PER) :12.54
  • 1年1株当り利益 (EPS) :1.08
  • 株価売上高倍率(PSR) :0.97
  • 直近配当利回り(税込):3.56%

ゼネラルエレクトリック(GE)の決算

過去の経営指標の推移を『米国会社四季報』や『米国株四半期速報』、GE決算資料で見てみます。

(以下、EPSと一株当たり配当金以外の単位は億ドル。四捨五入。14年=14年12月。CF=キャッシュフロー。EPS=当期純利益/発行済株式総数。増資による株式数増を考慮した「希薄化後EPS」で比較)

2013 2014 2015 2016 2017
売上高 1132 1172 1174 1237 1221
純利益 131 152 -61 88 -58
EPS 1.27 1.5 -0.6 0.89 -0.72
1株配当 0.79 0.89 0.92 0.93 0.84
営業CF 286 277 199 -2 104
投資CF 291 -50 595 492 23
財務CF -456 -167 -760 -891 -191

売上高は伸びているのに純損失を計上。

ただ、営業CFは100億ドル規模に回復。

ゼネラルエレクトリック(GE)を部門別にみると・・・

2017年の産業分野の収支を見ると、全体的には売上増の利益減となりました。

ただ、赤字を出した部門はなく、再生エネルギー、航空、ヘルスケアの3分野は売上と利益を共に増やしています。

電力、輸送、照明は売上高と純利益が共に減りました。

  売上高 純利益
2016 2017 2016 2017
電力 368 360 51 28
再生エネ 90 103 58 73
石油ガス 129 172 14 9
航空 263 274 61 66
ヘルスケア 183 191 32 34
輸送 47 42 11 8
照明 48 20 20 9
産業分野 1128 1162 247 227

2017年はGEの株価がやたらと下がりましたが、産業分野の業績は意外と悪くありません。

アナリストの広瀬隆雄氏は雑誌『ZAI』のHP版記事(2017年10月23日)でGE社には来年に株価反転の可能性があると述べています(「ゼネラル・エレクトリック(GE)は、業績悪化で減配リスクが顕在化! 「凡ミス」による利益半減が原因なので、来年早々に復活する可能性は高い!?)。

広瀬氏はまず、決算の数字が悪いことを指摘しています。

  • EPSは予想49セントに対して29セント。
  • 営業CFは、前年同期に比べて12億ドルも少ない。
  • 営業CFが配当を出すのに必要な金額を下回り、減配リスクが顕在化。

その理由は以下の二つです。

  • 発電タービン部門から上がる営業CFが貧弱だった(出力の小さいタービンへと需要の中心が移っているという市場環境の微妙な変化を見落とし、生産の絞り込みが遅れ、大量の仕掛け品在庫を抱えた)
  • 金融サービス事業であるGEキャピタルを処分したが、損害保険の払い出しニーズの規模確定が遅れ、その結果、GEへの配当を出せなかった(しかし、これはその確定が終われば解決する)。

発電タービンのビジネスだけが「今期売上高が前年比-4%、営業利益は前年比-51%」だが、他の事業部は「前年比+5%~+8%の増収を確保」できており、「ジェット・エンジンとヘルスケアが利益の大半を稼いでいる」ため、広瀬氏は「発電タービンのビジネスがターン・アラウンドすれば、ゼネラル・エレクトリックの業績は急回復する」という見通しを立てているのです。

広瀬氏は世界の発電所の3割はGEのタービンで回っているので、市場支配力は申し分ないと評価しています。

ジェフリー・イメルトが語るGE改革

『ハーバード・ビジネスレビュー』(2017年12月)は2000年以降の事業構成の変遷を整理しています(P86)。

2000年時点の総売上高は1300億ドル。そのうち金融が600億ドル以上の規模で、そのほかの売上高がエネルギー、航空機、ヘルスケア、輸送、家電・機器、メディア、素材の7分野で構成されていました。

その後、9代目のCEOとなったジェフリー・イメルト氏のもとでGE社は2001年~2017年までの間に事業の買収と売却を繰り返します。

  • 05年:再保険事業の大部分をスイス・リー社に売却(05年の総売上高は1400億ドル)
  • 07年:プラスチック事業をSABIC(サウジアラビア)に売却
  • 10年:総売上高が1500億ドルに
  • 11年:メディア事業のNBCユニバーサルをコムキャスト(米国)に売却
  • 13年:イタリアのアヴィオ社の航空部門を買収
  • 15年:仏アルストム社のエネルギー部門を買収/GEキャピタル撤退。金融事業を順次売却(売上1170億$)
  • 16年:家電部門をハイアール(中国)に売却

ジャック・ウェルチが相対的な競争優位を重視したのに対して、ジェフリー・イメルト氏は産業構造の変化を先読みし、収益性が高くてもGEの中核とはなりえない事業を売却していきます。「産業インフラ事業への特化」と「ソフトウェア・ソリューションによるデジタル化」を進めたのです。

「私はCEOに就任する前から、メディア、ペット保険、ジェットエンジン製造を同時に極めるのは不可能だと考えていた」(イメルト氏)

GE社内には「優れたマネジャーはあらゆる事業を舵取りできるはずだ」と考える人が多かったのですが、イメルト氏は「屋台骨の産業用事業に重点を置き、低成長、ローテク、非産業用の事業を売却」しました。

その結果、「GEをテクノロジー企業として再構築し、R&D投資を二倍超に増やし」、インダストリアル・インターネットと積層造形(3Dプリンター等)の分野に注力することになりました。

「世界最高のテクノロジー企業にならなければ、我が社の命運は尽きます。破滅するのです」(デジタル・インダストリアルに関しては)「代替案は存在しません。これを実現する以外に道はないのです」(イメルト氏)

日本企業にとっても耳を傾けなければいけないのは、デジタル・インダストリアルに出遅れてはならないという指摘と、低成長時代には経営資源の再配分が必要になるという指摘です。

「GDPが年率4%で伸びていれば、どの事業も苦しくはない。しかし、年率1%ではどの事業も安泰ではない」(そのため)「自社と顧客の生産性の飛躍的な向上に寄与する技術を、革新的な方法で活かす術を考えるのである」「同時に、成長率の高い国や地域に大胆に事業を拡大するのだ」(イメルト氏)

日本は年率1%成長ぐらいなので、日本企業が成長するためには、もっと大胆な構造改革が必要なのかもしれません。

イメルト氏は、以下のようにも述べています。

 「大企業にとってその場しのぎは致命傷となる。熱意や関与の不足を見透かされるからだ。変革を実施する時は、最後まで貫徹する覚悟で臨むべきである」「我々はデジタル分野と積層造形に何十億ドルも投資した」「たいていの企業は『デジタル系事業に資本参加します。これが当社の戦略です』と言うが、私から見れば付け焼き刃である」

ハーバードビジネスレビューはこの変革の中身を「5つの改革」として整理しています。

GE社の「5つの改革」とは

★1:典型的なコングロマリット⇒メリハリの利いた複合型インダストリアル・カンパニーへ

これは前掲のデジタル化とインダストリアル産業への特化の試みのこと。エンジンの点検等を含む全事業分野でデジタル化を推進し、3Dプリンティングにも注力(導入前にも5~6年は研究していた)。2011年にはシスコシステムズから人材をインダストリアル・インターネットの責任者に招き入れている。

★2:M&Aによる多角化⇒テクノロジー主導による成長へ

ソフトウェア部門への大胆な投資を行い、R&D予算は二倍超の48憶ドルに上り、不景気の時代にも削られることはなかった。世界で10の研究拠点を確保。

★3:グローバル化

新興国の高成長を取り込むためにグローバル化を進め、地域マネージャーや現地マネージャーに大きな権限を与えた。GEの進出先は2010年に100か国だったものが2017年には180カ国に増えた。米国外の収益は460憶ドル(2010年:全収益の54%)から670億ドル(2016年:59%)に増加。米国外の従業員数も15.4万人(2010年)から19.1万人(2016年)に増えた。

★4:インダストリアル企業⇒デジタルインダストリアル企業へ

製造業の競争優位がハードウェアからソフトウェアに移行するとみて「接続機能を持つスマート製品」の製造に踏み込んだ。カリフォルニア州にソフトウェアセンターを設立し、総額30憶ドルを投じて積層造形メーカー2社とソフトウェア企業4社を買収。

★5:トップダウン型組織⇒分権型組織へ

前掲のイノベーションを進めるために、組織階層を減らして俊敏性を高めた。年次業績レビューをやめて継続的な能力向上を重視した。

ゼネラルエレクトリック(GE)の株価反転はなるか

18年に入ってもGEの株価は低迷を続けています。

【3か月チャート】

前掲誌はイメルト改革に肯定的ですが、3年間の株価推移を見ると、現在は超低空飛行になっています。

(※イメルト氏がCEOを退任したのは2017年8月31日、会長退任は10月1日)。

【3年チャート】

【長期チャート】

17年以降、右斜めに斜線を引いたかのような株価下落ぶりです。

株価水準はサブプライムショック時の頃に近づきつつあるようです。

ただ、上記チャートでは、ほぼ最安値になっているので、そろそろ底値になりそうに見えます。

ジョン・フラナリーCEOはイメルト改革を軌道修正する?

ハーバードビジネスレビューはGE社に非常に肯定的です。

しかし、株価は2017年に下がり続けています。

わりと多数派に近い見方の例として、ロイターHPの「特別リポート」(2017/9/1)を紹介してみましょう(GEの新たな「選択と集中」、デジタル挽回狙う、Alwyn Scott)。

その要点は以下の通りです。

  • イメルト前CEOはGEを「デジタル・インダストリアル・カンパニー」とするために6年間の歳月と40億ドル(約4400億円)超のコストを投じた。
  • しかし、その目玉となる情報ソフトウェア基盤(「プレディクス」)には技術上の問題があり、事業スケジュールが遅れていた(このシステムはタービンやエレベーター等の機器にコンピューターをつなげ、故障予知や運用コストの削減を行う)
  • そのため、GEは今春にこの問題に対処すべく2ケ月の「一時中断」を宣言。修復後はエネルギー、航空、石油・ガス産業の顧客への営業に注力し、他セクターの新規顧客開拓を縮小させるという。
  • デジタル部門への収益計上の方式を改め、ガス火力発電所に関わるハードウェアに投下した30億ドルを除外し、2020年までの「純粋な」ソフトウェア事業状況の収益を150億ドルから120億ドルに修正する。
  • フラナリー氏はイメルト前CEOの改革を支持しつつも、18年以降、GEデジタルにコスト削減と利益拡大を強く求める可能性が高い。
  • 市場では、エクセロンやシンドラー社を顧客とするプレディクスが大きな売上と収益をもたらす可能性があると見られており、実際に17年上半期に23億ドルの契約を獲得したが、収益化のペースは遅く、今のままでは2020年までに120億ドルという目標を達成するのは困難。
  • デジタル化のコスト増が懸念されており、その中身についても、「プレディクス・クラウド」の拠点となるデータセンターは、アマゾンの「AWS」、マイクロソフトの「アジュール」との競争に勝てず、GEは1年前に自社単独でのクラウド戦略を放棄。GEはアプリケーションに専念した。

この記事に書かれた事実を見ると、ハーバードビジネスレビューはイメルト氏寄りのスタンスで書きすぎています。

巨額投資が実りを生むまでの過程はなかなか厳しいものです。

イメルト改革の成否が、次期フラナリーCEO時代に問われることになります。

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