TSM(タイワンセミコンダクター)とASMLを比較:戦略の違いとは
TSMとASMLを違いを踏まえて比較します。(2025年6月更新)
タイワンセミコンダクター・マニュファクチャリング(台湾積体電路製造〔TaiwTaiwan Semiconductor Manufacturing Company〕)とASMLホールディング(ASML Holding N.V.)は半導体製造業におけるADR銘柄の代表格です。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。
株価:過去~現在
※チャート左目盛り:株価推移(SOXX:iShares Semiconductor ETFを含めて比較)
※チャート右目盛り:10年国債利回り
※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。
株価推移や成長率比較については以下の関連記事を参照
決算(予想:結果)
マーケットにおけるEPSと売上の予想値の変動を更新してみます。
決算の予想:結果のグラフについては以下の関連記事を参照
★タイワンセミコンダクター(TSM)決算:予想と結果 売上&EPS
★ASMLホールディング(ASML)決算:予想と結果 売上&EPS
【半導体エコシステムの心臓部】TSMC vs ASML!製造の王か、装置の独占企業か?
現代のAI革命とデジタル社会を根底から支える2つの企業、TSMC(台湾積体電路製造)とASML(エーエスエムエル)。両社は、最先端半導体の製造に不可欠な存在でありながら、その役割は全く異なります。彼らは競合ではなく、互いがいなければ成り立たない「運命共同体」です。
本記事では、半導体「製造」の絶対王者TSMCと、その製造に必要な「装置」を世界で唯一供給するASMLの、ユニークな関係性と投資対象としての魅力を徹底的に比較・分析します。
最重要ポイント:彼らは競合しない「パートナー」である
この2社を理解する上で、彼らの共存関係を知ることは不可欠です。
- TSMC (ファウンドリ) → 半導体を「作る」会社
Apple、NVIDIA、AMDといった企業から設計図を受け取り、半導体チップを実際に製造する世界最大の受託製造企業(ファウンドリ)。TSMCの役割は、いかに微細で高性能なチップを、効率よく大量に作れるか、という「製造技術」にあります。 - ASML (製造装置メーカー) → チップを作るための「機械を作る」会社
TSMCのような会社が最先端のチップを作るために必要不可欠な、「EUV露光装置」を世界で唯一製造・販売している企業。ASMLの機械がなければ、5nmや3nmといった最先端の半導体は製造不可能です。
つまり、ASMLが「道具」を売り、TSMCがその「道具」を使って製品を作る、という関係です。
比較サマリー:製造のTSMC、装置のASML
項目 | TSMC | ASML |
---|---|---|
役割 | 半導体ファウンドリ(受託製造) | 半導体製造装置メーカー |
強み・堀(Moat) | 圧倒的な製造技術、生産規模、顧客からの信頼 | EUV露光装置における完全な技術的独占 |
主要顧客 | Apple, NVIDIA, AMDなど | TSMC, Samsung, Intelなど |
最大のリスク | 地政学リスク(台湾) | 顧客集中リスク、輸出規制 |
配当利回り(直近) | 約1.5% | 約0.7% |
業績と成長性の詳細分析
AIや高性能コンピューティングの需要拡大を背景に、両社ともに力強い成長を続けています。ASMLの売上は、1台数百億円もするEUV装置の納入タイミングによって年度ごとに変動が大きいのが特徴です。
年 | TSMC 売上高 (前年比) | ASML 売上高 (前年比) |
---|---|---|
2024 | $69.30 B (-8.7%) | $27.56 B (+30.1%) |
2023 | $75.88 B (+33.5%) | $21.17 B (+13.8%) |
2022 | $56.84 B (+24.9%) | $18.61 B (+33.1%) |
2021 | $45.51 B (+29.4%) | $13.98 B (+18.3%) |
2020 | $35.17 B | $11.82 B |
※B=10億ドル。会計年度や基準により数値は多少変動します。
配当の詳細比較
両社とも株価の成長が著しいため配当利回りは低いですが、株主還元には積極的で、着実に配当を増やしています。
年 | TSM 年間配当 (増配率) | ASML 年間配当 (増配率) |
---|---|---|
2024 | $2.09 (+20.1%) | $6.51 (+12.6%) |
2023 | $1.74 (+2.4%) | $5.78 (+0.5%) |
2022 | $1.70 (+9.7%) | $5.75 (+104.6%) |
2021 | $1.55 (+9.9%) | $2.81 (+15.6%) |
2020 | $1.41 (+10.2%) | $2.43 |
結論:あなたに合うのはどちら?
両社への投資は、半導体エコシステムの中で、どの部分のリターンとリスクを取るか、という選択になります。
「半導体需要全体」の成長に乗るなら → TSMC
TSMCに投資することは、Apple、NVIDIA、AMDなど、世界の主要なテクノロジー企業すべてに間接的に投資することと似ています。半導体の需要が続く限り、その製造を一手に引き受けるTSMCの成長も続きます。最大のリスクは台湾を巡る地政学的なものですが、それを許容できるならば、これ以上ないほど強力な事業基盤を持つ企業です。
「技術的独占」という究極の堀(Moat)に投資するなら → ASML
ASMLは、現代のテクノロジー社会において「代わりがいない」という究極の強みを持つ企業です。最先端半導体の進化が続く限り、ASMLの独占的な地位は揺るぎません。TSMCやIntel、Samsungといった巨大企業が、ASMLの「顧客」であるという構造そのものが、同社の価値を物語っています。より技術の根源に近い部分に投資したいと考える方向けです。
※本ページの分析は2025年6月9日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。