CAT:キャタピラーの配当推移
キャタピラー(CAT)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析
キャタピラー(Caterpillar Inc.)は、32年連続で配当を増やし続ける「配当貴族」銘柄です。世界最大の建設・鉱山機械メーカーとして、その堅実な配当実績を支える財務指標の推移を、最新の2024年実績と2025年9月時点の情報を用いて詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報は複数の財務情報サイトを参照)
データソースの制約について
**重要な注意事項**:キャタピラーは2025年9月時点で32年連続増配を達成している確立された配当貴族銘柄です。S&P 500配当貴族指数にも組み入れられており、25年以上の連続増配を達成した企業として認定されています。
本記事では、キャタピラー公式発表の2024年通年実績と複数の信頼性の高い金融情報サイトのデータを中心に、建設機械業界の特性を考慮した配当支払能力の分析を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、最新の2024年実績を含めて分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2025 | 1.44% | 7% | 28% | 6.04 | 420.25 | 21.24 |
2024 | 1.60% | 7% | 27% | 5.64 | 353.01 | 22.05 |
2023 | 1.65% | 8% | 26% | 5.20 | 315.00 | 20.12 |
2022 | 2.10% | 8% | 38% | 4.80 | 228.50 | 12.64 |
2021 | 2.20% | 7% | 38% | 4.44 | 201.80 | 11.83 |
2020 | 2.95% | 4% | 77% | 4.16 | 141.00 | 5.46 |
2019 | 2.35% | 7% | 37% | 4.00 | 170.15 | 10.74 |
2018 | 2.65% | 13% | 37% | 3.74 | 141.10 | 10.26 |
2017 | 2.95% | 4% | 270% | 3.32 | 112.50 | 1.26 |
2016 | 4.10% | 3% | N/A | 3.18 | 77.50 | -0.11 |
2015 | 4.25% | 5% | 74% | 3.08 | 72.45 | 4.18 |
2014 | 2.55% | 17% | 75% | 2.94 | 115.20 | 3.90 |
2013 | 2.65% | 12% | 44% | 2.52 | 95.00 | 5.75 |
2012 | 2.45% | 15% | 27% | 2.24 | 91.50 | 8.48 |
2011 | 2.10% | 18% | 26% | 1.94 | 92.30 | 7.40 |
2010 | 2.65% | 13% | 40% | 1.64 | 61.90 | 4.15 |
2009 | 3.85% | 2% | 102% | 1.46 | 37.90 | 1.43 |
2008 | 2.90% | 9% | 29% | 1.44 | 49.65 | 5.00 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合、2024-25年は最新実績
** EPSと平均株価は公式発表と各種財務情報サイトより
景気循環に強い配当成長の実績
キャタピラー(CAT)は、建設・鉱山機械業界のリーダーとして、**32年連続で配当を増額し続けている確立された「配当貴族」**の地位を確立しています。2008年から2025年にかけて、1株配当は1.44ドルから6.04ドルへと319%増加し、年平均成長率は約8.1%を記録しています。
この期間中、リーマンショック(2008年)、鉱山業界の低迷期(2015-2016年)、COVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても一度も減配することなく、継続的な配当成長を維持してきました。2024年は**調整後EPSで史上最高の21.90ドルを記録**し、景気循環の影響を受けやすい産業でありながら、強固な財務基盤と多角化された事業ポートフォリオがこの安定性を支えています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) | 調整後EPS ($) |
---|---|---|---|---|---|
2024 | 64,800 | 12,000 | 18.5 | 10,792 | 21.90 |
2023 | 67,060 | 12,885 | 19.2 | 10,335 | 21.21 |
2022 | 59,427 | 7,766 | 13.1 | 6,705 | 12.28 |
2021 | 50,971 | 7,198 | 14.1 | 6,489 | 11.14 |
2020 | 41,748 | 6,327 | 15.2 | 2,998 | 5.46 |
2019 | 53,800 | 6,912 | 12.8 | 6,093 | 10.74 |
2018 | 54,722 | 6,558 | 12.0 | 6,147 | 10.26 |
2017 | 45,462 | 5,706 | 12.6 | 754 | 1.26 |
2016 | 38,537 | 5,639 | 14.6 | -67 | -0.11 |
2015 | 47,011 | 6,699 | 14.2 | 2,512 | 4.18 |
配当支払能力の分析
史上最高の収益力と配当カバー分析
キャタピラーの配当支払能力は極めて堅固です。2024年の営業キャッシュフローは120億ドルで、配当支払額約26億ドルを大幅に上回っています。これは**4.6倍の配当カバー比率**を意味し、景気循環型企業としては卓越した配当の持続可能性を示しています。さらに、2024年は**調整後EPSで史上最高の21.90ドルを記録**し、配当性向も27%という極めて保守的な水準を維持しています。
配当支払余力の推移(2008年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 12,000 | 2,600 | 4.6 |
2023 | 12,885 | 2,563 | 5.0 |
2022 | 7,766 | 2,440 | 3.2 |
2021 | 7,198 | 2,331 | 3.1 |
2020 | 6,327 | 2,243 | 2.8 |
2019 | 6,912 | 2,171 | 3.2 |
2018 | 6,558 | 2,082 | 3.1 |
2017 | 5,706 | 1,989 | 2.9 |
2016 | 5,639 | 1,903 | 3.0 |
2015 | 6,699 | 1,850 | 3.6 |
配当支払余力の分析結果:
- **最高水準のカバー比率**:2023-2024年は5倍前後と過去最高水準を維持
- **景気耐性の証明**:景気循環の底(2020年)でも2.8倍のカバー比率を確保
- **史上最高の収益力**:2024年の調整後EPSは過去最高を記録
- **大幅な増配余地**:現在の保守的な配当性向は更なる配当成長の余地を示唆
キャッシュフロー創出力と資金配分戦略
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFをM$(百万ドル)単位、営業CF成長率を%単位で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 成長率 (%) | 投資CF (M$) | 財務CF (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 12,000 | -6.9 | -2,493 | -10,300 |
2023 | 12,885 | 65.9 | -2,311 | -14,785 |
2022 | 7,766 | 7.9 | -1,769 | -7,281 |
2021 | 7,198 | 13.8 | -1,201 | -4,188 |
2020 | 6,327 | -8.5 | -1,595 | -3,755 |
2019 | 6,912 | 5.4 | -2,086 | -4,536 |
2018 | 6,558 | 14.9 | -1,808 | -5,462 |
2017 | 5,706 | 1.2 | -1,277 | -2,961 |
2016 | 5,639 | -15.8 | -873 | -3,937 |
2015 | 6,699 | -16.9 | -2,725 | -3,764 |
キャッシュフロー分析のポイント
**営業キャッシュフロー**:
- **高水準の安定化**:2023-2024年は120億ドル超の高水準で安定
- **回復力の実証**:景気後退からの急速な回復能力を持続的に実証
- **業界リーダーとしての地位**:建設・鉱山機械業界で最強の現金創出力
**投資キャッシュフロー**:
- **規律ある投資**:年間15億〜25億ドルの範囲で効率的な投資を実施
- **景気連動型投資**:好況期に投資を増やし、不況期には抑制する柔軟性
- **技術革新への投資**:電動化・自動化技術への戦略的投資を継続
**財務キャッシュフロー**:
- **記録的な株主還元**:2024年に103億ドル(配当26億ドル+自社株買い77億ドル)
- **配当優先の姿勢**:32年連続増配を最優先としつつ、余剰資金で自社株買いを積極実施
- **資本効率の追求**:適正な資本構成により株主価値を最大化
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 87,764 | 68,270 | 19,494 | 22.2 | 55.4 | 350 |
2023 | 87,476 | 67,973 | 19,503 | 22.3 | 53.0 | 349 |
2022 | 81,943 | 66,052 | 15,891 | 19.4 | 42.2 | 416 |
2021 | 82,793 | 66,277 | 16,516 | 20.0 | 39.3 | 401 |
2020 | 78,324 | 62,946 | 15,378 | 19.6 | 19.5 | 409 |
2019 | 78,453 | 63,824 | 14,629 | 18.6 | 41.7 | 436 |
2018 | 78,509 | 64,429 | 14,080 | 17.9 | 43.7 | 458 |
2017 | 76,962 | 63,196 | 13,766 | 17.9 | 5.5 | 459 |
2016 | 74,704 | 61,491 | 13,213 | 17.7 | -0.5 | 465 |
2015 | 78,342 | 63,457 | 14,885 | 19.0 | 16.9 | 426 |
バランスシート分析の重要な観点
**自己資本率の改善と安定化**:
- **健全水準の達成**:2024年の22.2%は重機械業界で適正かつ健全な水準
- **安定したバランス**:過去5年間で20%前後を安定維持
- **景気循環への耐性**:不況期でも適正な自己資本率を維持し、財務の安定性を確保
- **効率的な資本構成**:過剰な自己資本を避け、ROEを最適化
**ROE(自己資本利益率)の卓越性**:
- **業界最高水準**:2023-2024年の50%超は建設機械業界で最高クラス
- **持続的な高収益性**:景気回復期には一貫して40%以上の高ROEを達成
- **効率的な資本活用**:適度な財務レバレッジと高い営業利益率の組み合わせ
- **株主価値創造力**:継続的な高ROEにより長期的な株主価値を創造
総合評価
キャタピラーの財務戦略は**「景気循環を克服した優良企業モデル」**と評価できます。2024年の史上最高調整後EPSと120億ドルの営業キャッシュフロー創出により、景気循環型企業としての制約を超越した安定的な配当成長基盤を確立しています。32年連続増配の実績と28%という保守的な配当性向は、今後も持続的な配当成長が期待できることを示しています。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- **確立された配当貴族**:32年連続増配というS&P 500配当貴族としての信頼性
- **史上最高の収益力**:2024年調整後EPSは過去最高を記録し、配当成長基盤が強化
- **極めて保守的な配当性向**:28%という配当性向は大幅な増配余地を示唆
- **世界的な競争優位性**:建設・鉱山機械のグローバルリーダーとしての強固なブランド力
配当投資戦略における位置づけ
プレミアム配当成長銘柄として最適
- **インフラ投資拡大の恩恵**:世界的なインフラ投資拡大により株価上昇と配当成長の両方を享受
- **ポートフォリオの成長エンジン**:景気敏感株として力強い配当成長をポートフォリオに提供
- **グローバル分散効果**:世界中の建設・鉱山需要から収益を得る地理的分散メリット
- **技術革新への先行投資**:電動化・自動化・AI技術の導入により将来の成長機会を確保
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- **景気循環リスク**:建設・鉱山需要は景気変動の影響を受ける可能性
- **地政学リスク**:主要市場での政治的不安定や貿易制限の影響
- **中国経済依存**:世界最大の建設機械市場である中国経済の動向
- **為替変動リスク**:海外売上比率約60%による為替変動の影響
- **環境規制強化**:脱炭素社会への移行に伴う新たな規制対応コスト
リスク軽減策:
- **長期投資戦略**:32年連続増配の実績を活かし、景気サイクルを超えた長期保有
- **分散投資の実践**:ディフェンシブ銘柄との組み合わせによるポートフォリオバランス
- **配当再投資戦略**:配当を再投資して長期的な複利効果を最大化
- **段階的投資**:定期積立により購入価格の平準化を図る
- **業界動向の継続監視**:建設・鉱山業界とマクロ経済指標の定期的な確認
2025年見通しと投資戦略
2025年の成長見通し
持続的な成長を支える要因
- **世界的インフラ投資**:各国のインフラ投資拡大により建設機械需要の持続的成長
- **技術革新の収益化**:電動化・自動化技術の普及により高付加価値製品の販売拡大
- **アフターマーケット事業**:部品・サービス事業の安定的な収益貢献
- **配当成長の継続**:保守的な配当性向を活かした年率7-8%の配当成長継続
まとめ:配当投資家にとってのキャタピラー
キャタピラーは、**32年連続増配という堅実な実績**、**年平均8%の高い配当成長率**、**史上最高の収益力**、**極めて保守的な配当政策**を兼ね備えた、配当成長投資家にとって最高クラスの投資対象です。
2024年の調整後EPS史上最高更新と120億ドルの営業キャッシュフロー創出により、景気循環型企業の制約を超越した安定的な配当成長基盤を確立しています。グローバルなインフラ需要、技術革新への先行投資、強力なブランド力により、今後も持続的な配当成長の継続が高い確度で期待できます。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、キャタピラーは**「確立されたプレミアム配当貴族銘柄」**として、ポートフォリオの中核を担う投資対象です。現在の1.44%という配当利回りは一見控えめですが、32年連続増配の実績と28%という極めて保守的な配当性向を考慮すると、将来的な高い配当成長により十分に報われる可能性が極めて高く、長期投資視点での保有が強く推奨されます。景気循環の影響を理解しつつも、同社の卓越した財務体質と配当政策により、安心して長期保有できる銘柄です。
出典
**キャタピラー公式発表(2024年実績):**
- Caterpillar 2024年第4四半期・通年決算発表(2025年1月30日)
- Caterpillar Quarterly Results
- Caterpillar Dividend History
**配当データ(複数ソース統合):**
- Koyfin – Caterpillar Dividend History & Safety
- Stock Analysis – Caterpillar Dividend History & Yield
- Dividend.com – Caterpillar Dividend Analysis
- StockInvest.us – Caterpillar Dividend Growth Analysis
**追加財務データ:**
免責事項
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。記事の情報は2025年9月5日時点のものです。