MCD:マクドナルド の配当推移

消費財,配当

【2025年11月更新】 2024年通期業績と2025年第3四半期決算、最新の配当実績・見通しを反映しています。[1]

マクドナルド(McDonald’s Corporation)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。[2]

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を、2008年〜2024年の実績と2025年通期予想(2025年11月時点のコンセンサスベース)で確認してみます。[3]

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2025E 2.27% 4% 57% 7.08 312.5 12.40
2024 2.40% 9% 60% 6.78 282.4 11.39
2023 2.23% 10% 54% 6.23 279 11.56
2022 2.23% 8% 68% 5.66 253.8 8.33
2021 2.24% 4% 52% 5.25 234.7 10.04
2020 2.51% 7% 80% 5.04 200.9 6.31
2019 2.39% 13% 60% 4.73 198.3 7.88
2018 2.52% 9% 56% 4.19 166.1 7.54
2017 2.57% 6% 60% 3.83 148.8 6.37
2016 3.01% 5% 66% 3.61 120.1 5.44
2015 3.43% 5% 72% 3.44 100.3 4.8
2014 3.40% 5% 68% 3.28 96.4 4.82
2013 3.21% 9% 56% 3.12 97.3 5.55
2012 3.10% 13% 54% 2.87 92.5 5.36
2011 3.01% 12% 48% 2.53 84 5.27
2010 3.19% 10% 49% 2.26 70.9 4.58
2009 3.57% 26% 50% 2.05 57.4 4.11
2008 2.81% 9% 43% 1.63 58.1 3.76

49年連続増配の卓越した実績

マクドナルドの配当実績は、フランチャイズビジネスモデルによる安定した収益基盤を背景として、極めて堅実な成長を示しています。2008年の1.63ドルから2025年予想では7.08ドルへと、17年間で約4.3倍の配当成長を実現しています(いずれも1株当たり年間配当、2025年は現在の年間換算額ベース)。[1]

特筆すべきは、この期間中に一度も減配を行っていない点で、世界的な金融危機やパンデミックを経験しながらも、連続増配を維持してきたことです。2025年時点で49年連続増配を達成しており、S&P500配当貴族指数の中でも長期の実績を持つ企業の一つとなっています。[4] この安定性は、景気変動に強いファストフードビジネスと、資産の軽量化を進めたフランチャイズモデルの恩恵によるものです。

配当成長率の推移

マクドナルドの配当成長率は、事業モデルの進化と共に以下のパターンを示しています(各年の成長率は前年の年間配当比、2025年は現行配当からの増配率ベース)。[1]

  • 2008〜2013年:堅実成長期(8〜26%の成長、平均約12%)
  • 2014〜2016年:事業転換期での安定化(5〜6%の成長)
  • 2017〜2019年:フランチャイズ化加速期(6〜13%の成長)
  • 2020年:パンデミック期も継続成長(7%)
  • 2021年以降:力強い成長継続(4〜10%の安定成長)
  • 2025年:持続的成長(4%増配で年間$7.08達成見込み、2025年11月時点)

この成長パターンは、マクドナルドの戦略的事業転換と密接に関連しています。2015年頃から始まった「モダン・バーガー・カンパニー」戦略により、直営店からフランチャイズ店への転換を積極的に進めました。これにより、より予測可能で安定した収益構造を実現し、2018年以降は営業CFマージンが30%超の高水準で安定しています。[5] この収益性の向上が、継続的な配当成長の基盤となっています。

2020年のパンデミック期においても7%の増配を実施し、その後も単年ごとの増配率を調整しながら、2025年も約4%の増配を継続していることは、同社のビジネスモデルの強靭性と株主還元へのコミットメントを示しています。

配当利回りの魅力

マクドナルドの配当利回りは、優良配当成長株として適切な水準を維持しています。2025年11月時点の株価水準と年間配当換算額に基づく配当利回りはおおよそ2%台前半〜半ばで推移しており、株価上昇と配当増加のバランスにより、成長性と安定性を兼ね備えた水準といえます。[1]

  • 配当利回りは成長株として適正な2〜3%レンジで安定
  • 株価上昇により相対的な利回りは抑制される一方、配当成長率がトータルリターンを押し上げる構造
  • 食品・外食セクターでは高い配当成長率を維持

マクドナルドの真の魅力は、高い配当利回りよりも持続可能な配当成長にあります。フランチャイズビジネスモデルにより、店舗からの安定したロイヤルティ収入と不動産賃貸収入の組み合わせで、景気変動に対する耐性を持った収益構造を実現しています。これが長期的な配当成長の持続可能性を支えています。[2]

注目ポイント:マクドナルドは典型的な「配当貴族」の特徴を持つ企業です。S&P500配当貴族指数の構成銘柄として、25年以上の連続増配実績(実際には2025年時点で49年連続)を誇ります。[4] フランチャイズモデルへの転換により、資本効率性が大幅に向上し、配当性向を適切に管理しながら株主還元を最大化する戦略を成功させています。

配当性向の持続可能性

マクドナルドの配当性向は、フランチャイズビジネスへの転換により変動しましたが、全体的には健全な水準を維持しています。通常時の配当性向は50〜70%程度で推移しており、これは配当の持続可能性と将来の成長投資の両立を示しています。[3]

配当性向の変動要因:2020年の80%という高い配当性向は、パンデミックによる一時的な業績影響を受けたものですが、翌2021年には52%まで改善し、その後も2022年54%、2023年54%、2024年60%程度と、50〜70%レンジ内で管理されています。2025年予想の配当性向も57%と見込まれており、以下の流れが続いています。[3]

  • 2020年:パンデミックによる店舗営業制限でEPSが6.31ドルに減少(前年7.88ドル)
  • 2021年:デジタル化投資とドライブスルー強化により業績が急回復、EPSは10.04ドルに上昇
  • 2022〜2024年:配当性向はおおむね50〜60%台で安定推移
  • 2025年:57%の健全な水準を維持し、持続可能な配当政策を継続(2025年11月時点の予想)

持続可能な配当政策の特徴:マクドナルドの配当政策は以下の原則に基づいています。[1]

  • 営業キャッシュフローの安定性を重視した配当支払い
  • フランチャイズ収入による予測可能な収益基盤
  • 適切な配当性向の維持(概ね50〜70%)
  • 事業成長と株主還元のバランス

フランチャイズビジネスモデルの特性上、キャッシュフローの予測可能性が高く、配当支払い能力の評価において営業キャッシュフローとの比較が特に重要です。同社の営業CFマージンは25〜39%と極めて高水準で安定しており、これが配当の持続可能性を強固に支えています。[5]

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。2024年までは実績値、2025Eは2025年11月時点の会社見通し・市場コンセンサスをもとにした試算です。[3]

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2025E 26,950 9,800 36 8,850
2024 25,920 9,447 36 8,223
2023 25,494 9,612 38 8,469
2022 23,183 7,387 32 6,177
2021 23,223 9,142 39 7,545
2020 19,208 6,265 33 4,731
2019 21,364 8,122 38 6,025
2018 21,258 6,967 33 5,924
2017 22,820 5,551 24 5,192
2016 24,622 6,060 25 4,687
2015 25,413 6,539 26 4,529
2014 27,441 6,730 25 4,758
2013 28,106 7,121 25 5,586
2012 27,567 6,966 25 5,465
2011 27,006 7,150 26 5,503
2010 24,075 6,342 26 4,946
2009 22,745 5,751 25 4,551
2008 23,522 5,917 25 4,313

2024年通期の売上高は約$25.9B、純利益は約$8.2Bと、過去最高水準に近い収益を維持しました(いずれも2024年12月期・通期ベース)。[3] 営業CFマージンも36%と高水準で、フランチャイズモデルの強みが数字に表れています。

2025年の業績動向と最新の回復状況

マクドナルドの2025年の業績は、高インフレや低所得者層の外食頻度減少といった逆風の中でも底堅さを示しています。2025年11月時点で公表されている各四半期の状況は次の通りです。[6]

  • Q1 2025: 希薄化後EPSは$3.67(前年同期$3.12)と増益を確保した一方、世界既存店売上高は+1.9%と伸びが鈍化し、市場予想をやや下回りました。低所得者層の節約志向が、米国を中心に売上に重しとなりました。[6]
  • Q2 2025: バリューミールやプロモーションの強化により、米国を含む主要市場で既存店売上が緩やかなプラス成長へ回復し、上期の落ち込みを徐々に取り戻す展開となりました。
  • Q3 2025: 売上高は$6.85Bと前年同期比1%減(恒常為替ベースでは3%減)となったものの、営業利益は2%増、希薄化後EPSも$3.15と3%増益を達成しました。世界既存店売上高は+1.5%と堅調で、利益率の高さが際立つ決算となっています(いずれも2025年9月期・第3四半期ベース)。[6]
  • 通年見通し: 売上高は約$27B(前年比約4%増)、営業CFマージンは36%前後を維持する見通しが示されており、2024年の高水準をおおむね維持する方向です。[3]
  • デジタル戦略の効果: モバイルアプリ、デジタルキオスク、デリバリーを含むデジタル売上は、直近12か月(2025年第3四半期まで)で約$30B超の規模となっており、ロイヤルティメンバー向け売上の拡大が収益成長を下支えしています。[5]

特に注目すべきは、低所得者層の外食頻度減少という業界全体の課題に対して、マクドナルドが$5前後のバリューミールやスナック系商品の再投入など、価格戦略を柔軟に打ち出している点です。2025年は、インフレ環境下でも客数を維持しつつ、値上げとミックス改善で収益性を守る「微調整の年」といえます。

収益性と効率性の継続的改善

マクドナルドの財務データからは、フランチャイズモデルへの戦略的転換による収益構造の根本的改善が明確に見てとれます。[3]

  • 売上高は2020年の$19.2Bから2024年には$25.9Bへと回復・拡大
  • 営業CFマージンは2018年以降、一貫して30%超の高水準を維持
  • 純利益は2008年の約$4.3Bから2024年には約$8.2Bへとほぼ倍増
  • 2020年のパンデミック期においても営業CFマージン33%を維持し、事業の強靭性を実証

特に2018年以降は、フランチャイズ比率の上昇に伴い、売上高は横ばい〜緩やかな増加にとどまる一方で、利益とキャッシュフローが大きく伸びています。これは、資本集約的な直営店運営から、ロイヤルティと不動産賃貸収入中心のより効率的なビジネスモデルへの転換が奏功した結果です。2021年の営業CFマージン39%は同社史上最高水準であり、デジタル化投資とコロナ後の需要回復が相乗効果を生んだ形です。[5]

強固なキャッシュフロー基盤

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。[5]

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2025E 9,800 4 -3,200 -5,800
2024 9,447 -2 -5,346 -7,495
2023 9,612 30 -3,185 -4,374
2022 7,387 -19 -2,678 -6,580
2021 9,142 46 -2,166 -5,596
2020 6,265 -23 -1,546 -2,249
2019 8,122 17 -3,071 -4,995
2018 6,967 26 -2,455 -5,950
2017 5,551 -8 562 -5,311
2016 6,060 -7 -982 -11,262
2015 6,539 -3 -1,420 735
2014 6,730 -5 -2,305 -4,618
2013 7,121 2 -2,674 -4,043
2012 6,966 -3 -3,167 -3,850
2011 7,150 13 -2,571 -4,533
2010 6,342 10 -2,056 -3,729
2009 5,751 -3 -1,655 -4,421
2008 5,917 21 -1,625 -4,115

マクドナルドのキャッシュフロー構造は、フランチャイズモデルの特性を反映した極めて安定的なパターンを示しています。

  • 2016年の財務CF大幅マイナス(-11,262M$)は積極的な自社株買いと債務調整を反映
  • 2018年以降の営業CF改善(+26%、+17%成長)はフランチャイズ化による収益性向上の成果
  • 2021年の営業CF急回復(+46%成長)はパンデミック後の需要回復とデジタル化投資効果
  • 2024年も営業CFは約$9.4Bと高水準を維持し、2025年も緩やかな増加が見込まれている
  • 投資CFは概ね-2,000〜-3,500M$の範囲で推移し、店舗改装やデジタル投資など成長投資を継続

投資CFの内容を見ると、2015年以降は店舗の新設よりも、既存店舗の改装やデジタル化、テクノロジー投資に重点が移っていることが分かります。2024年の投資CF拡大(-5,346M$)は、AIドライブスルーシステムやモバイルアプリ強化等の戦略的技術投資の増加を反映しており、2025年も継続的な技術投資が計画されています。[5]

キャッシュフロー分析のポイント:マクドナルドのキャッシュフローは「安定創出 → 効率投資 → 積極還元」のサイクルを実現しています。フランチャイズ収入による予測可能なキャッシュインフローを基盤に、成長分野への戦略投資と株主還元(配当と自社株買い)を両立させており、資本効率性の高い経営を実践しています。

特殊な資本構成の理解

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。[3]

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 ROA
2025E 56,000 59,200 -3,200 -6 16
2024 55,182 58,979 -3,797 -7 15
2023 56,147 60,854 -4,707 -8 15
2022 50,436 56,439 -6,003 -12 12
2021 53,854 58,455 -4,601 -9 14
2020 52,627 60,452 -7,825 -15 9
2019 47,511 55,721 -8,210 -17 13
2018 32,811 39,070 -6,258 -19 18
2017 33,804 37,072 -3,268 -10 15
2016 31,024 33,228 -2,204 -7 15
2015 37,939 30,851 7,088 19 12
2014 34,227 21,374 12,853 38 14
2013 36,626 20,617 16,010 44 15
2012 35,387 20,093 15,294 43 15
2011 32,990 18,600 14,390 44 17
2010 31,975 17,341 14,634 46 15
2009 30,225 16,191 14,034 46 15
2008 28,462 15,079 13,383 47 15

マクドナルドの資本構成は、2016年以降の負の株主資本という特殊な状況を呈していますが、これは財務戦略上の意図的な結果であり、事業の健全性に問題はありません。[3]

  • 2016年以降の負の株主資本は、積極的な自社株買いと配当支払いによる株主還元の結果
  • 総資産は概ね$50B〜$56Bで推移し、事業規模は安定
  • ROAはおおむね12〜18%の高水準を維持し、資産効率性は極めて良好
  • 負債の多くは不動産関連で、フランチャイズ事業の不動産を担保とした安定的な借り入れ
  • 2025年も負の株主資本は継続見込みだが、ROAは16%程度と高い収益性を維持する予想

負の株主資本の正しい理解:マクドナルドの負の株主資本は、以下の財務戦略によるものです。[3]

  • 大規模な自社株買いプログラムの実施(2016年前後に約$11B規模の株主還元)
  • 継続的な配当支払いと配当成長
  • フランチャイズモデルによる軽資産経営への転換
  • 不動産ポートフォリオを活用した効率的な資本調達

この資本構成は、強力なキャッシュフロー創出能力を背景とした積極的な株主還元策の結果であり、事業の収益性や持続可能性に問題を示すものではありません。むしろ、余剰資本を効率的に株主に還元する優れた財務管理の証拠といえます。

まとめ:長期配当投資家にとってのマクドナルドとは?

マクドナルドは、フランチャイズビジネスモデルによる安定した収益基盤を活かし、長期にわたって連続増配を実現する理想的な配当成長株です。外食産業でありながら景気変動に対する耐性が高く、グローバルブランドとしての競争優位性により、持続的な成長を実現しています。[2]

同社の強みは以下の点にあります。

  • 49年連続増配の卓越した実績(S&P500配当貴族)[1]
  • フランチャイズモデルによる安定した収益構造
  • 極めて高い営業CFマージン(30%超)と予測可能なキャッシュフロー
  • グローバルブランドとしての強固な競争優位性
  • デジタル化とテクノロジー投資による競争力強化
  • 積極的な株主還元政策(配当と自社株買いの組み合わせ)
  • パンデミック等の危機に対する高い耐性
  • 不動産ポートフォリオによる資産価値
  • 2025年の底堅さ:Q3 2025決算では売上横ばい〜微減の中でもEPS増益を確保

一方で、注意すべき点としては次のようなリスクがあります。

  • 外食業界での競争激化とメニューの差別化圧力
  • 人件費上昇(最低賃金引き上げ)によるコスト圧力
  • 健康志向の高まりによる需要構造の変化
  • 為替変動リスク:グローバル展開による為替の影響
  • 食材価格の変動リスク:インフレ環境下でのコスト上昇
  • フードデリバリー企業などデジタル競合との競争
  • ESG要因:プラスチック削減や持続可能性への対応コスト
  • 負の株主資本による財務指標の特殊性
  • 低所得者層の消費減少:インフレと金利高による客数への影響

投資家へのポイント:マクドナルドは「安定性と成長性を兼ね備えた配当成長株」として位置づけられます。フランチャイズビジネスモデルによる収益の予測可能性は、配当投資家にとって大きな安心材料です。特に、高いキャッシュフロー創出能力と適切な配当性向の管理により、長期的な配当成長の持続可能性が高く評価されます。負の株主資本という特殊な財務構造も、強力なキャッシュフローを背景とした積極的な株主還元の結果であり、経営の効率性を示すものと理解すべきです。デジタル化投資や新技術導入により、今後も競争優位性を維持していく可能性が高く、49年連続増配の実績と2025年の底堅い決算を考慮すると、長期保有に適した優良配当成長株といえるでしょう。

よくある質問

マクドナルドの配当はどれくらい安全ですか?

マクドナルドの配当安全性は、配当成長株の中でも非常に高い水準と評価できます。49年連続増配の実績は、S&P500配当貴族の中でも長期の部類に入ります。フランチャイズビジネスモデルにより、売上の大部分がロイヤルティと不動産賃貸収入から構成されており、景気変動の影響を受けにくい安定収入源となっています。営業CFマージンが30%超という高水準で安定していることも、配当支払い能力の高さを示しています。2020年のパンデミック期においても増配を継続し、2025年も約4%の増配を実施している点からも、同社のビジネスモデルの強靭性と配当政策へのコミットメントがうかがえます。配当性向も50〜70%の適正レンジで管理されており、短期的な減配リスクは高くないと考えられます。[1]

負の株主資本は問題ではないのですか?

マクドナルドの負の株主資本は、一般的な財務危機を示すものではなく、積極的な株主還元政策の結果です。これは「株主価値最大化戦略」の一環として理解すべき現象です。同社は2015年以降、フランチャイズモデルへの転換により資本効率性が大幅に向上し、事業に必要な資本が減少しました。その結果、余剰資本を配当と自社株買いを通じて株主に還元し、これが負の株主資本につながっています。重要なのは、ROAが12〜18%の高水準を維持していることで、これは資産の収益性が極めて高いことを示しています。また、営業キャッシュフローは年間$9〜10B前後と安定しており、配当支払いと債務返済を十分にカバーしています。この資本構成は、強力なキャッシュフロー創出能力を前提とした高度な財務戦略の結果であり、経営効率の高さを示すものといえます。[3]

2025年の業績回復は持続可能ですか?

マクドナルドの2025年の業績は、Q1のやや弱いスタートから、Q2・Q3を通じて徐々に改善しており、この回復は構造的な施策に支えられています。Q3 2025では売上高が小幅減収となる一方、EPSは$3.15と増益を確保しており、価格戦略とコストコントロールの巧みさが見てとれます。[6] $5前後のバリューミールやメニュー構成の最適化により、低所得者層の来店頻度減少を補いつつ、市場シェアを守る戦略を取っています。デジタル戦略の効果も顕著で、ロイヤルティメンバー向け売上の拡大が、客単価・来店頻度の両面で寄与しています。「Accelerating the Arches」戦略に基づき、中期的には店舗網拡大とデジタル会員基盤の拡大が続く見通しであり、2025年の回復は一過性ではなく持続性を持つと考えられます。

インフレ環境はマクドナルドの業績にどのような影響を与えますか?

インフレ環境は、マクドナルドにとって短期的には食材・人件費のコスト圧力となりますが、長期的には価格転嫁能力により収益性を維持しやすいビジネスモデルです。同社は食材コストの上昇に対して、メニュー価格の調整で対応する能力を持っており、ブランド力とスケールメリットにより価格競争力も高い水準にあります。また、フランチャイズモデルにより、直接的な食材コスト変動の影響は限定的で、主にフランチャイズ加盟店の売上高に連動するロイヤルティ収入を通じて間接的に影響を受けます。人件費上昇に関しては、セルフオーダーキオスクやモバイルオーダーの導入による省力化が進んでおり、オペレーション効率の改善で一部を吸収しています。歴史的に見ても、インフレ期においてマクドナルドは価格調整と効率化で収益性を維持してきており、2021〜2024年のインフレ局面でも営業CFマージン30%超を維持していることが、この適応能力を裏付けています。[5]

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

ミニ解説:2024年通期決算と2025年第3四半期決算を踏まえると、マクドナルドは高インフレや消費者行動の変化に直面しつつも、高い利益率と連続増配を維持している「配当成長ストーリー継続中」の銘柄と整理できます。

【注】(出典リンク)

  1. 配当実績・連続増配年数 → McDonald’s Dividends and Stock Split History(配当情報)Macrotrends – Dividend Yield(確認日:2025-11-26)
  2. ビジネスモデル・収益構造 → McDonald’s – Our Growth Strategy(Accelerating the Arches)Wikipedia – McDonald’s(企業概要)(確認日:2025-11-26)
  3. 2024年通期業績・長期財務データ → Annual Reports & Financial InformationWikipedia – Business trends(売上・純利益・総資産)(確認日:2025-11-26)
  4. S&P500配当貴族・指数構成銘柄 → S&P 500 Dividend Aristocrats IndexProShares NOBL(構成銘柄一覧)(確認日:2025-11-26)
  5. キャッシュフロー・マージン・投資CF → McDonald’s – Financial News & FilingsMacrotrends – McDonald’s Financial Statements(確認日:2025-11-26)
  6. 2025年Q1・Q3決算(最新決算) → McDonald’s Reports First Quarter 2025 ResultsMcDonald’s Reports Third Quarter 2025 Results(確認日:2025-11-26)

Posted by 南 一矢