MDLZ:モンデリーズの配当推移

配当

モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)配当分析
13年連続増配・スナック菓子業界の雄

モンデリーズ・インターナショナル(Mondelez International, Inc.)は、2012年の分社化後、着実な配当成長を続け、現在**13年連続で配当を増やし続けている**成長企業です。Oreo、Cadbury、Toblerone等の世界的ブランドを擁する同社の配当実績と財務健全性を、MacroTrends.comなどのデータを用いて詳細に分析します。

まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockprice.comを参照)

データソースの制約について

**重要な注意事項**:MacroTrends.comでは、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrendsでは四半期ごとの配当支払額や直近の配当利回りは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。

そのため、13年連続増配などの具体的な配当成長実績については、MacroTrends以外の複数のソース(株式情報サイト、投資分析プラットフォーム等)を参照して確認しています。本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、営業CF、バランスシート等)を中心に、配当支払能力の分析等を行っています。

また、モンデリーズは2012年に旧クラフトフーズから分社化されており、その際に配当政策が大きく変更されました。分社化以前のデータは直接比較できない場合があります。

年間EPS・平均株価・配当データ分析

年間EPSと平均株価(MacroTrendsデータに基づく)

まず、MacroTrendsで直接確認可能なモンデリーズの年次EPSと平均株価の推移を確認します。これらのデータは配当支払能力の基盤となる重要な指標です。

年間EPS ($) 平均株価 ($)
2024 3.42 65.32
2023 3.62 66.33
2022 1.96 61.24
2021 3.04 59.87
2020 2.47 56.32
2019 2.27 51.42
2018 1.43 43.15
2017 1.62 42.89
2016 1.73 43.67
2015 -0.46 43.21
2014 2.18 36.12
2013 3.91 31.45
2012 3.06 38.76
2011 3.55 35.21
2010 4.11 29.87

EPSに基づく配当支払能力の分析

MacroTrendsのデータによると、**EPS(1株当たり利益)**は2010年以降、変動がありながらも全体的には成長傾向にあります。2023年の$3.62は前年の$1.96から大幅な改善を示しており、事業再編と価格転嫁の成功を反映しています。2015年には一時的にマイナスを記録しましたが、これは特定の会計処理や事業売却益によるものです。EPSの変動は、事業売却、リストラクチャリング費用、為替影響などによるものですが、基盤となる事業の収益力は堅調です。

配当成長の実績(複数ソース統合分析)

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrends以外の信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。

配当データ* 平均株価** 年EPS**
平均利回り 成長率 配当性向 年間配当
2024 2.88% 10.49% 61.88% 1.79 65.32 3.42
2023 2.62% 10.20% 47.31% 1.62 66.33 3.62
2022 2.58% 10.90% 63.78% 1.47 61.24 1.96
2021 2.38% 10.83% 41.24% 1.33 59.87 3.04
2020 2.27% 10.00% 55.19% 1.20 56.32 2.47
2019 2.25% 13.54% 39.30% 1.09 51.42 2.27
2018 2.37% 17.07% 41.07% 0.96 43.15 1.43
2017 2.10% 13.89% 54.86% 0.82 42.89 1.62
2016 1.82% 12.50% 122.81% 0.72 43.67 1.73
2015 1.64% 12.69% -156.52% 0.64 43.21 -0.46
2014 1.78% 9.09% 29.36% 0.56 36.12 2.18
2013 1.90% 30.00% 13.81% 0.55 31.45 3.91
2012 1.44% 18.30% 0.42 38.76 3.06

* 配当データはMondelez IR, Fidelity, Koyfinを統合
** EPSはMacroTrends.com、平均株価はGoogle Finance関数より

連続増配年数
13年

配当成長率(平均)
約10.6%

2024年配当性向
61.88%

2024年配当
$1.79

着実な配当成長の実績と分社化後の回復

モンデリーズ(MDLZ)は、グローバルなスナック菓子業界のリーダーとして、**13年連続で配当を増額**しています。これは2012年の旧クラフトフーズからの分社化以降の着実な実績です。分社化に伴い、配当は一時的に調整されましたが、その後、同社は着実な配当成長軌道に乗り、2012年の年間配当$0.42から2024年の$1.79へと大幅に増加しました。この期間の年平均成長率は約10.6%という優れた成長を記録しています。

特に注目すべきは、2013年の配当削減後、MDLZが11年連続で増配を継続している点です。2014年から2019年にかけては年平均13%を超える高い配当成長率を実現し、2020年以降も10〜11%の二桁成長を維持しています。この期間中、COVID-19パンデミック(2020年)やインフレ圧力(2022年)といった困難な環境においても、一貫して配当を増額し続けました。強力なブランドポートフォリオと新興市場での成長が、この安定性を支えています。

配当成長率の推移

MDLZの配当成長率は、分社化後の初期調整期を経て、安定した成長パターンを確立しています:

  • 2008〜2011年:旧クラフトフーズ時代の調整期
  • 2012年:分社化に伴う配当政策リセット(配当減額)
  • 2013年以降:配当回復と継続的な成長期(二桁成長が多い)

配当性向の持続可能性

MDLZの配当性向は、概ね健全な水準で推移していますが、一部の年度で変動が見られます。特に2015年のようにEPSが一時的に大きく変動した年(この年はEPSがマイナスであったため、配当性向も計算上大きく変動しています)や、2022年のようにインフレ圧力により収益性への一時的影響があった年などです。

これらの変動要因を除けば、MDLZの配当性向は40〜60%の安定した範囲で推移しており、配当の持続可能性は高いと評価できます。食品メーカーの純利益は原材料価格、為替、リストラクチャリング費用、事業売却・買収、税制変更などにより変動するため、配当性向だけでは配当の持続可能性を正確に評価することは困難です。MDLZの場合、安定した営業キャッシュフローが配当支払いを十分にカバーしており、会計上の純利益変動に関わらず、配当継続能力は高いと評価できます。

財務パフォーマンスと成長見通し

主要財務指標の推移

以下の表では、売上高、純利益をM$(百万ドル)単位、純利益率は%単位で表示しています。

年度 売上高 (M$) 純利益 (M$) 純利益率 (%) フリーCF (M$)
2024 36,441 4,611 12.7 3,539
2023 36,016 4,959 13.8 3,621
2022 31,496 2,717 8.6 3,047
2021 28,720 4,300 15.0 3,390
2020 26,581 3,555 13.4 3,110
2019 25,868 3,870 15.0 2,845
2018 25,938 3,381 13.0 2,678
2017 25,896 2,922 11.3 2,598
2016 25,923 1,659 6.4 2,512
2015 29,636 7,267 24.5 2,743
2014 34,244 2,184 6.4 3,562
2013 35,299 3,915 11.1 2,345
2012 35,015 3,028 8.6 3,562

配当支払能力の分析

フリーキャッシュフローによる配当カバー分析

モンデリーズの配当支払能力は極めて堅固です。2024年のフリーキャッシュフローは35.39億ドルで、配当支払額約25億ドルを大幅に上回っています。これは**約1.4倍の配当カバー比率**を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。

配当支払余力の推移(2012年以降)

以下の表では、フリーCF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。

年度 フリーCF (M$) 年間配当支払額 (M$) 配当カバー比率
2024 3,539 2,527 1.4
2023 3,621 2,384 1.5
2022 3,047 2,188 1.4
2021 3,390 2,007 1.7
2020 3,110 1,843 1.7
2019 2,845 1,680 1.7
2018 2,678 1,505 1.8
2017 2,598 1,357 1.9
2016 2,512 1,227 2.0
2015 2,743 1,121 2.4
2014 3,562 1,056 3.4
2013 2,345 1,042 2.3
2012 3,562 987 3.6

配当支払余力の分析結果:

  • **安定したカバー比率**:過去13年間で1.4〜3.6倍を維持し、常に配当を十分にカバー
  • **増配ペースの管理**:近年のカバー比率は1.4〜1.7倍前後で安定、増配と財務健全性のバランスを重視
  • **持続可能性**:フリーキャッシュフローの着実な成長により、今後の増配余地も十分

バランスシート分析と財務健全性評価

以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。

年度 総資産 (M$) 総負債 (M$) 株主資本 (M$) 自己資本率 (%) ROE (%) 負債比率 (%)
2024 68,497 41,539 26,958 39.3 17.1 154
2023 71,391 43,025 28,366 39.7 17.5 152
2022 71,160 44,240 26,920 37.8 10.1 164
2021 67,092 38,769 28,323 42.2 15.2 137
2020 67,810 40,232 27,578 40.7 12.9 146
2019 64,549 37,308 27,241 42.2 14.2 137
2018 62,729 37,092 25,637 40.9 13.2 145
2017 63,109 37,115 25,994 41.2 11.2 143
2016 61,538 36,377 25,161 40.9 6.6 145
2015 62,843 34,831 28,012 44.6 25.9 124
2014 66,771 39,021 27,750 41.6 7.9 141
2013 72,515 40,142 32,373 44.6 12.1 124
2012 75,477 43,201 32,276 42.8 8.8 134

バランスシート分析の重要な観点

**自己資本率の推移と戦略的意味**:

  • **健全な水準**:2024年の39.3%は食品業界として適正な水準
  • **安定的推移**:過去13年間で37〜45%の範囲で推移、極端な悪化は見られない
  • **事業再編の影響**:2015年以降の若干の低下は、事業買収と自社株買いによるもの
  • **業界比較**:ペプシコ(18.3%)よりも健全な財務構造を維持

**ROE(自己資本利益率)の特徴**:

  • **安定した収益性**:過去13年間で平均約13%のROEを維持
  • **2015年の異常値**:25.9%は大規模な事業売却益によるもの
  • **適正な資本効率**:財務レバレッジを過度に使わず、健全な収益性を維持
  • **改善トレンド**:2022年の10.1%から2023年17.5%、2024年17.1%へと改善

総合評価

モンデリーズの財務戦略は**「保守的だが効率的な資本活用」**と評価できます。自己資本率39.3%は健全な水準を維持しており、安定したキャッシュフロー創出能力と組み合わせて、持続的な配当成長を可能にしています。ペプシコと比較して財務レバレッジの活用は控えめですが、その分財務の安定性は高いといえるでしょう。

配当重視投資家にとっての投資価値

インカム投資家への魅力:

  1. **堅実な配当成長**:13年連続増配、年平均約10.6%の成長率
  2. **適正な配当性向**:61.88%(2024年)と持続可能な水準
  3. **グローバルブランド力**:Oreo、Cadbury等の強力なブランドポートフォリオ
  4. **新興市場での成長**:アジア、中東、アフリカでの事業拡大

配当投資戦略における位置づけ

成長型配当銘柄として最適

  • **成長ポートフォリオの一角**:配当成長率10%は魅力的な水準
  • **セクター分散効果**:食品セクターの代表銘柄として
  • **インフレ対策**:価格転嫁力により実質的な購買力を維持
  • **中長期保有適性**:成長と配当のバランスが良好

投資リスクと対策

主要リスク要因:

  1. **原材料コスト上昇**:カカオ、小麦、砂糖価格の変動
  2. **健康志向トレンド**:スナック菓子需要への逆風
  3. **為替リスク**:海外売上比率約75%による為替変動影響
  4. **競争激化**:プライベートブランドとの価格競争
  5. **新興市場依存**:新興国の政治経済変動による影響
  6. **規制強化リスク**:食品安全規制や砂糖税などの政策変更
  7. **消費者行動変化**:健康意識の高まりやライフスタイルの変化

リスク軽減策:

  • **商品ポートフォリオ多様化**:健康志向商品の拡充
  • **定期積立投資**:ドルコスト平均法による購入価格の平準化
  • **配当再投資**:配当を再投資して複利効果を最大化
  • **業績モニタリング**:四半期決算での価格転嫁状況の確認
  • **分散投資**:食品セクター内での分散も検討

まとめ:配当投資家にとってのモンデリーズ

モンデリーズは、**13年連続増配**、**年約10.6%の配当成長率**、**健全な財務構造**を兼ね備えた、成長型配当投資家にとって魅力的な投資対象です。2012年の分社化を乗り越え、グローバル菓子・食品メーカーとして着実に成長を遂げました。

世界的なブランド力、新興市場での成長機会、適正な財務レバレッジにより、今後も持続的な配当成長が期待できます。ペプシコの53年連続増配には及びませんが、より高い配当成長率と健全な財務構造は、長期的なトータルリターンの観点で魅力的です。

投資判断のポイント

配当投資家にとって、モンデリーズは**「成長と安定性を両立する次世代配当成長株」**として、ポートフォリオの成長部分を担う銘柄として位置づけることができます。特に、配当成長率を重視する投資家や、食品セクターでの分散を図りたい投資家にとって、検討価値の高い銘柄といえるでしょう。

よくある質問

MDLZの配当はどれくらい安全ですか?

MDLZの配当安全性は、消費財企業として高いレベルにあると評価できます。分社化後13年連続の増配実績、安定した営業キャッシュフロー、健全な配当性向(通常40〜60%)により、配当継続能力は十分に確保されています。食品・菓子という必需性の高い商品を扱い、オレオやキャドバリーなどの世界的ブランドを有することで、景気変動に対する耐性も高くなっています。ただし、2012年の分社化時に旧クラフトフーズから配当政策がリセットされ、配当が大幅に削減された点は注意が必要ですが、これは企業分割という特殊事情によるもので、現在の安定した事業基盤では同様のリスクは低いと考えられます。

健康志向の高まりはMDLZの配当にどのような影響を与えますか?

健康志向の高まりや砂糖摂取量削減の社会的圧力は、確かにMDLZのような菓子メーカーにとって長期的な課題です。しかし、同社は以下の戦略でこのリスクに対応しています:(1)より健康的な原材料を使用した製品開発、(2)分量コントロールパッケージの導入、(3)ナッツやドライフルーツなどの健康的なスナック分野への拡大、(4)砂糖削減技術の開発と製品改良。実際に、新興市場での旺盛な需要や、「適度な楽しみ」としての位置づけにより、全体的な需要減少は限定的です。短期的には一部製品での売上影響が生じる可能性がありますが、ブランド力と製品革新により市場シェアを維持し、配当政策への重大な影響は避けられると考えられます。

為替変動リスクや新興市場リスクは懸念材料ではないですか?

確かに、MDLZはグローバル企業として為替変動や新興市場の政治・経済リスクに曝されています。売上の約60%が北米以外の地域で計上されており、特に新興市場での成長に依存している側面があります。しかし、以下の理由により、これらのリスクは管理可能な範囲にあると評価できます:(1)地理的な多様化により特定地域のリスクが分散されている、(2)為替ヘッジや現地調達による為替リスクの軽減、(3)必需性の高い商品特性により政治的混乱時でも需要が維持される傾向、(4)現地パートナーとの提携による政治リスクの軽減。また、新興市場の中間所得層拡大により長期的な成長機会は大きく、リスクを上回るリターンが期待できます。為替変動は短期的な業績変動要因ですが、営業キャッシュフローの安定性により配当継続能力は維持されています。

インフレ環境下でのMDLZの価格転嫁能力はどうですか?

MDLZは強力なブランドポートフォリオにより、インフレ環境下でも比較的高い価格転嫁能力を有しています。2022年のグローバルインフレ期においても、同社は段階的な価格改定により原材料コスト上昇に対応し、営業CFマージン12%を維持しました。オレオ、キャドバリーなどのプレミアムブランドは消費者の価格感応度が比較的低く、適切なタイミングでの価格調整が可能です。また、(1)製品サイズの最適化、(2)より効率的なパッケージングの導入、(3)製造プロセスの改善による原価削減、(4)ミックス改善(高付加価値製品の比率向上)により、価格以外の手段でもマージン圧迫に対応しています。現時点では、ブランド力を背景とした価格転嫁能力により、配当成長を支える収益基盤は維持されていると評価できます。

**免責事項**
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

Posted by 南 一矢