GMとFを比較:ゼネラルモーターズとフォードモーターの違いとは

銘柄比較

GMとFを違いを踏まえて比較します。(2025年6月更新)

ゼネラルモーターズ(General Motors Company)とフォードモーター(Ford Motor Company)は自動車製造の代表格です。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(XLY:Consumer Discretionary Select Sector SPDR Fundを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

決算(予想:結果)と配当

決算の予想:結果のグラフについては以下の関連記事を参照

ゼネラルモーターズ(GM)決算:予想と結果 売上&EPS

フォードモーター(F)決算:予想と結果 売上&EPS

【米自動車大手対決】GM vs フォード(F)!EV時代の勝者は?配当と戦略を徹底比較

アメリカの魂とも言える自動車産業の二大巨頭、ゼネラル・モーターズ(GM)フォード・モーター(F)。長年のライバルである両社は今、「100年に一度の変革期」と言われるEV(電気自動車)シフトの荒波の真っただ中にいます。高配当株として注目されることも多いですが、その配当には注意すべき歴史があります。

本記事では、この伝統的な自動車メーカーがEV時代をどう戦うのか、その戦略、業績、そして株主還元の実態を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:配当は「安定」ではない

高配当株として語られる両社ですが、インカム投資家は注意が必要です。GMとフォードは、コロナショックが起きた2020年に、揃って配当金の支払いを一時停止(無配化)した歴史があります。自動車産業は典型的な景気敏感(シクリカル)セクターであり、不況期には業績が悪化し、配当がカットされるリスクが常に伴います。生活必需品やヘルスケアセクターのような「安定増配」を期待する銘柄ではないことを理解することが大前提です。

EV戦略の違い:統合のGM、分業のフォード

  • GM (ゼネラル・モーターズ) →「Ultium(アルティウム)」プラットフォーム戦略
    自社開発したバッテリープラットフォーム「Ultium」を、高級車キャデラックからトラックまで、あらゆるEVの共通基盤として使用。部品の共通化によるコスト削減と、開発スピードの向上を目指す「統合」戦略です。
  • フォード (F) → 事業分割戦略
    事業を3つに分割し、それぞれの役割を明確化。①伝統的なエンジン車で利益を稼ぐ「Ford Blue」、②EV開発に集中投資する「Ford Model e」、③商用車部門の「Ford Pro」。エンジン車の利益でEVの赤字を補う「分業」戦略です。

比較サマリー:EV戦略で未来は変わるか

項目 ゼネラル・モーターズ (GM) フォード・モーター (F)
EV戦略 共通プラットフォーム「Ultium」による統合戦略 エンジン車とEVの事業部門を分割する分業戦略
現在の利益源 大型ピックアップトラックやSUVなどの高収益なエンジン車
配当の歴史 2020年に無配化、その後2022年に配当を再開
配当利回り(直近) 約0.8% 約5.1%
PER (株価収益率) 約5倍 約12倍

業績と成長性の詳細分析

両社ともコロナ禍からの回復と、旺盛な自動車需要を背景に2023年にかけて業績を伸ばしました。しかし、金利上昇やEVへの巨額投資、労働組合のストライキなどが重しとなり、今後の道のりは平坦ではありません。

GM 売上高 (前年比) F 売上高 (前年比)
2024 $171.8 B (+9.6%) $176.2 B (+11.4%)
2023 $156.7 B (+23.4%) $158.1 B (+15.9%)
2022 $127.0 B (+3.8%) $136.4 B (+7.0%)
2021 $122.5 B (-10.7%) $127.5 B (-18.4%)
2020 $137.1 B $156.2 B

※B=10億ドル。会計年度や基準により数値は多少変動します。

配当の詳細比較:復活した配当、その中身は?

2020年に揃って配当を停止しましたが、業績の回復を受けて両社とも配当を再開しました。フォードは定期配当に加えて「特別配当」を出すこともあり、株主還元への意欲を示しています。

GM 年間配当 (増配率) F 年間配当 (増配率)
2024 $0.36 (+33.3%) $0.60 + $0.18(特別配当)
2023 $0.27 (配当再開) $0.60 + $0.65(特別配当)
2022 $0.00 (無配) $0.40 (配当再開)
2021 $0.00 (無配) $0.15 (-75.0%)
2020 $0.38 (-75.0%) $0.60

配当については以下の関連記事を参照

ゼネラルモーターズ(GM)の配当推移

フォードモーター(F)の配当推移

結論:あなたに合うのはどちら?

両社への投資は、そのEV戦略の将来性と、経営陣の実行力をどう評価するかにかかっています。

「共通基盤(プラットフォーム)化」の効率性に賭けるなら → ゼネラル・モーターズ (GM)

「Ultium」という共通基盤をテコに、将来的なコストダウンと高い利益率を目指す戦略は合理的です。自動運転部門「クルーズ」も、大きなポテンシャルを秘めています。より技術志向の戦略を好む投資家に向いています。

「事業分割による選択と集中」の明確さを評価するなら → フォード・モーター (F)

利益を稼ぐエンジン車部門と、未来へ投資するEV部門を明確に分けた戦略は、投資家にとって非常に分かりやすいです。高収益な商用車部門「Ford Pro」の存在も強みです。フォードの高い配当利回りと、経営の透明性を評価する投資家にとって、面白い選択肢となるでしょう。


※本ページの分析は2025年6月9日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

Posted by 南 一矢