LMTとRTXを比較:ロッキードマーチンとレイセオンテクノロジーズの違いとは

資本財,軍事株,銘柄比較







ロッキード・マーティン(Lockheed Martin Corporation)とRTX(RTX Corporation)は軍事企業の代表格です。その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

※本記事は、公開されている最新の決算情報や財務データに基づき作成していますが、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

2025年8月版の主要更新ポイント:

  • LMTのQ2 2025決算結果を反映(プログラム損失16億ドルを計上)
  • RTXのQ2 2025決算結果を反映(売上9%増、バックログ236億ドル)
  • 最新の配当利回りに更新(LMT: 約2.9%、RTX: 約1.7%)
  • 両社の2025年通期ガイダンスを最新版に更新

株価:過去~現在

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

2025年8月時点の株価情報:
LMT:約$455(52週レンジ:$410-619)、PER: 約25.6倍、目標株価: $506
RTX:約$161(推定)、バックログ$236億で堅調な需要を維持

決算(予想:結果)

マーケットにおけるEPSと売上の予想値の変動を更新してみます。

2025年Q2決算ハイライト:
LMT:売上$182億(前年同期比+0.6%)、EPS$1.46(プログラム損失影響で大幅減少)
RTX:売上$216億(前年同期比+9%)、調整後EPS$1.56(+11%増加)

決算の予想:結果のグラフについては以下の関連記事を参照

ロッキード・マーティン(LMT)今後の見通し

レイセオンテクノロジーズ(RTX)今後の見通し

業績と配当の詳細比較(2025年8月版)

株価や決算と並んで重要なのが、企業のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を示す業績と、株主還元の姿勢を示す配当です。ここではLMTとRTXの2社について、過去5年間のデータを基に詳しく比較・分析します。

比較サマリー

項目 ロッキード・マーティン (LMT) RTX (レイセオン)
事業概要 世界最大の防衛企業。F-35戦闘機などが主力。 防衛システムと航空宇宙エンジン・システムが事業の2本柱。
連続増配年数 23年 (2025年時点) 5年(RTX統合後)
配当利回り (直近) 約2.9% 約1.7%
四半期配当 $3.30 $0.68(Q2で8%増額)

成長性の詳細分析

売上高の比較 (2020-2024年)

RTXは毎年堅実な成長を見せる一方、LMTは安定性を保ちつつも2022年には前年比マイナスを記録するなど、成長率の差が明確です。年ごとの成長率の推移が、最終的な年平均成長率(CAGR)の差につながっていることがわかります。

LMT 売上高
(前年比)
RTX 売上高
(前年比)
2020 $65.40 B
(-)
$56.59 B
(-)
2021 $67.04 B
(+2.51%)
$64.39 B
(+13.78%)
2022 $65.98 B
(-1.58%)
$67.07 B
(+4.16%)
2023 $67.57 B
(+2.41%)
$74.31 B
(+10.80%)
2024 $69.54 B
(+2.92%)
$78.86 B
(+6.12%)
年平均成長率
(CAGR)
1.55% 8.65%

EPS(1株利益)の比較 (2020-2024年)

EPSにおいてもRTXの成長が著しく、毎年力強く数値を伸ばしています。LMTも安定して成長していましたが、2024年は前年比でわずかにマイナスとなりました。

LMT EPS
(前年比)
RTX EPS
(前年比)
2020 $24.30
(-)
$3.51
(-)
2021 $24.95
(+2.67%)
$4.27
(+21.65%)
2022 $27.23
(+9.14%)
$4.78
(+11.94%)
2023 $27.82
(+2.17%)
$5.06
(+5.86%)
2024 $27.55
(-0.97%)
$5.78
(+14.23%)
年平均成長率
(CAGR)
3.19% 13.28%

2025年の業績見通し

最新ガイダンス(2025年通期):
LMT:売上高$73.8-74.8億、EPS$21.70-22.00(下方修正)
RTX:調整後売上$84.8-85.5億、調整後EPS$5.80-5.95(下方修正)

結論:今後の見通しと注意すべきリスク

分析サマリー

  • LMT:成長率は緩やかですが、事業は非常に安定しており、高い配当利回りと力強い株主還元が最大の魅力です。ただし、2025年Q2にプログラム損失16億ドルを計上し、短期的な業績への影響が懸念されます。
  • RTX:合併後のシナジーを発揮し、売上・利益ともに高い成長性を示しています。防衛と商業航空というバランスの取れた事業ポートフォリオが強みで、バックログも236億ドルと過去最高水準です。

注意すべきリスク要因

一方で、両社にはそれぞれ固有のリスクも存在します。

  • LMTのリスク
    • プログラム損失の継続懸念: 2025年Q2に航空機事業の機密プログラム、カナダ海洋ヘリコプタープログラム、トルコ軍用ヘリコプタープログラムで大規模な損失を計上。今後の同様のリスクに注意が必要です。
    • 特定プロジェクトへの依存: F-35戦闘機など、特定の大型国家予算プロジェクトへの依存度が高く、計画の遅延や予算削減が業績に影響を与える可能性があります。
  • RTXのリスク
    • 航空エンジン問題の継続: 傘下のプラット&ホイットニー製GTFエンジンに関する大規模なリコールと検査費用が、引き続き業績とキャッシュフローの重しとなる可能性があります。
    • 関税影響の不確実性: 2025年ガイダンスでは関税の影響を織り込んでいますが、政策変更によるさらなる影響の可能性があります。

総合的な見通し

LMTは「安定性と高配当」を重視する投資家に、RTXは「高い成長性とバランス」を重視する投資家にとって、それぞれ魅力的な選択肢です。ただし、上記のリスク要因を十分に理解した上で、長期的な視点から投資を検討することが重要です。


参照元記事およびデータソース:
【LMT】ロッキード・マーティン社の配当金推移
【RTX】レイセオン社の配当金推移
LMT・RTX 2025年Q2決算報告書、Yahoo Finance、各社投資家向け資料等の公開財務データを参考に作成。
最終更新日:2025年8月29日


Posted by 南 一矢