ABBV:アッヴィの配当推移

ヘルスケア,配当






AbbVie(ABBV)配当利回り・配当安全性分析 2026年5月更新

【2026年5月更新】重要なアップデート

  • 配当の最新水準:2026年2月19日に取締役会が四半期配当$1.73/株を宣言し、2026年5月15日に支払予定です。現行ランレートでは年率$6.92です。[1]
  • 2026年Q1決算:2026年Q1の売上高は$15.002B(前年同期比+12.4%)、GAAP希薄化EPSは$0.39、調整後希薄化EPSは$2.65でした。[2]
  • 2026年ガイダンス更新:会社は2026年通期の調整後希薄化EPS見通しを$13.96~$14.16から$14.08~$14.28へ引き上げました。この見通しには、2026年Q1までに発生した買収IPR&D・マイルストーン費用の$0.41/株のマイナス影響が含まれます。[2]
  • 成長ドライバー:2026年Q1のSkyrizi売上は$4.483B(前年同期比+30.9%)、Rinvoq売上は$2.119B(同+23.3%)でした。Humiraは$688M(同-38.6%)まで縮小していますが、Skyrizi/Rinvoqがその穴を上回る勢いで成長しています。[2]
  • 2025年通期の確定CF:2025年Form 10-Kにより、2025年通期の営業CFは$19.030B、設備投資は$1.214B、フリーCFは$17.816B、配当支払額は$11.657Bと確認できました。[3]
  • バランスシート:2025年末の総資産は$133.960B、総負債は$137.188B、株主資本は-$3.270Bでした。大型買収・配当・自社株買い・無形資産償却の影響で、会計上は株主資本がマイナスになっています。[3]

医薬品セクターは特許存続期間パイプラインの厚みが業績と配当の持続性を左右します。AbbVieはヒュミラ(Humira)の特許切れに伴う減収局面を、Skyrizi / Rinvoqなどの新世代免疫領域製品群やアラガン買収資産(Botox等)で橋渡しする戦略を実行し、2025年には過去最高売上を達成しました。2026年Q1もSkyrizi/Rinvoqとニューロサイエンスが成長を支えています。[2][3]

まずは直近の利回りと株価(3ヶ月)

短期のボラティリティ把握用に、直近90日間の「配当利回り」と「株価」を確認できます(Googleスプレッドシート連携チャート)。

長期の配当推移(2013–2026)

注意:AbbVieは2013年にAbbottから分社化しました。従って、配当の「長期推移」は2013年以降がAbbVie単体としての実績です。2013年以前の長期増配履歴はAbbott時代を含む系列として見る必要があります。[1]

年間配当(1株)と増配率の推移

年間配当($) 前年比 コメント
2013 1.60 分社化初年
2014 1.66 +4%
2015 2.02 +22%
2016 2.28 +13%
2017 2.56 +12%
2018 3.59 +40% 大幅増配
2019 4.39 +22%
2020 4.84 +10% Allergan買収完了
2021 5.31 +10%
2022 5.71 +8%
2023 5.99 +5%
2024 6.20 +4% 四半期$1.55×4
2025 6.56 +6% 2025年内の支払ベース。四半期$1.64×4
2026e 6.92 +5% 現行ランレート。四半期$1.73×4

2025年の年間配当は、支払ベースでは$6.56(四半期$1.64×4)でした。一方、AbbVieの2025年Form 10-Kでは、2025年中に宣言された配当として$6.65/株が示されています。これは、2025年10月31日に宣言され、2026年2月17日に支払われた$1.73/株を含むためです。したがって、配当推移を見る際は「支払ベース」と「宣言ベース」を分けて確認する必要があります。[3]

配当性向は「GAAP EPS」だけで判断しない

医薬品は買収関連償却・訴訟・減損・IPR&D費用などでGAAP純利益/EPSが大きく振れやすい業種です。2025年も取得IPR&D・マイルストーン費用が$5.016B発生し、GAAP利益を押し下げました。2026年Q1も買収IPR&D・マイルストーン費用が調整後EPS見通しに$0.41/株のマイナス影響を与えています。[2][3]

そのため、配当の持続性評価では、GAAP EPSだけでなく、営業CF・フリーCF・調整後EPSに対する配当負担を併せて見るのが実務的です。

年次の配当総額(支払額)とフリーCF対配当カバー(2013–2025)

配当総額(支払額)は会社のキャッシュフロー計算書を優先し、古い年については「年計配当($/株)× 期中平均株式数」の概算を用いています。フリーCF(FCF)は「営業CF − 設備投資」で算出しています。[3]

フリーCF対配当カバー(FCF/Div)、営業CF対配当カバー(OCF/Div)

キャッシュフロー (M$) 配当総額
(M$)
カバー比率 (倍)
営業CF CapEx フリーCF
(FCF)
FCF/配当 営業CF/配当
2025 19,030 1,214 17,816 11,657 1.53 1.63
2024 18,806 974 17,832 11,025 1.62 1.71
2023 22,839 777 22,062 10,539 2.09 2.17
2022 24,943 1,100 23,843 10,107 2.36 2.47
2021 22,777 1,300 21,477 9,399 2.29 2.42
2020 17,588 1,500 16,088 8,518 1.89 2.06
2019 13,324 1,200 12,124 6,497 1.87 2.05
2018 13,427 1,100 12,327 5,457 2.26 2.46
2017 9,960 1,000 8,960 4,096 2.19 2.43
2016 7,041 1,300 5,741 3,671 1.56 1.92
2015 7,535 1,200 6,335 3,293 1.92 2.29
2014 3,549 1,000 2,549 2,706 0.94 1.31
2013 6,267 900 5,367 2,528 2.12 2.48

注記:2025年・2024年・2023年の営業CF、設備投資、配当支払額は2025年Form 10-Kに基づきます。2022年以前のCapExと配当総額は概算を含みます。FCF/配当が1.0倍以上なら、配当が概ねフリーCFで賄えている目安となります。2025年はFCF/配当が1.53倍であり、2024年よりやや低下したものの、配当はFCFで十分にカバーされています。[3]


業績の長期推移(2013–2026)

以下は年次の主要KPI(単位:百万$)です。2025年まではForm 10-K、2026年Q1は2026年4月29日発表の四半期決算に基づいています。[2][3]

売上高・営業CF・純利益

売上高 営業CF 営業CFマージン(%) 純利益
2026 Q1 15,002 690前後*
2025 61,160 19,030 31 4,233
2024 56,334 18,806 33 4,286
2023 54,318 22,839 42 4,873
2022 58,054 24,943 43 11,836
2021 56,197 22,777 41 11,542
2020 45,804 17,588 38 4,616
2019 33,266 13,324 40 7,882
2018 32,753 13,427 41 5,687
2017 28,216 9,960 35 5,309
2016 25,638 7,041 27 5,953
2015 22,859 7,535 33 5,144
2014 19,960 3,549 18 1,774
2013 18,790 6,267 33 4,128

* 2026年Q1の純利益は、GAAP希薄化EPS $0.39と希薄化株式数の規模から見た概算です。四半期決算本文ではEPSと売上高が中心で、営業CFは同リリース本文では主要ハイライトとして示されていません。

2025年の売上高$61.160Bは過去最高を更新しました。GAAP純利益は$4.233Bにとどまりましたが、これは取得IPR&D・マイルストーン費用や無形資産償却などの影響を強く受けています。2026年Q1も同様に、GAAP EPSは$0.39に抑えられた一方、調整後EPSは$2.65でした。[2][3]

BS/CFの補足(読み方とABBVの特性)

バランスシート指標(M$/比率)

総資産 総負債 株主資本 自己資本率(%) 負債比率(%)
2025 133,960 137,188 -3,270 -2 算出困難
2024 135,161 131,797 3,325 2 3,964
2023 134,711 124,314 10,397 8 1,196
2022 138,805 121,518 17,287 12 703
2021 146,529 131,093 15,436 11 849
2020 150,565 137,468 13,076 9 1,051
2019 89,115 97,287 -8,172 -9 算出困難
2018 59,352 67,798 -8,446 -14 算出困難
2017 70,786 65,689 5,097 7 1,289
2016 66,099 61,463 4,636 7 1,326
2015 53,050 49,105 3,945 7 1,245
2014 27,513 25,771 1,742 6 1,479
2013 29,198 24,706 4,492 15 550

2025年末は、総資産$133.960Bに対して総負債が$137.188Bとなり、株主資本は-$3.270Bのマイナスになりました。これは、事業が赤字で資金繰りに窮しているという意味ではありません。AbbVieは大型買収で無形資産・のれんを多く抱える一方、配当、自社株買い、買収関連会計、無形資産償却の影響を受けやすい財務構造です。配当安全性を見る際は、自己資本率だけでなく、営業CF・FCF・債務返済能力を重視する必要があります。[3]

キャッシュフロー計算書(抜粋:営業/投資/財務, M$)

営業CF 投資CF 財務CF
2025 19,030 -6,643 -12,724
2024 18,806 -20,820 -5,211
2023 22,839 -2,009 -17,222
2022 24,943 -623 -24,803
2021 22,777 -2,344 -19,039
2020 17,588 -37,557 -11,501
2019 13,324 596 18,708
2018 13,427 -1,006 -14,396
2017 9,960 -274 -5,512
2016 7,041 -6,074 -3,928
2015 7,535 -12,936 5,752
2014 3,549 -926 -3,293
2013 6,267 879 -3,442
  • 配当の源泉はFCF:2025年は営業CF$19.030B、設備投資$1.214B、FCF$17.816Bでした。配当支払額$11.657Bに対するFCFカバーは1.53倍で、配当はFCFで賄えています。[3]
  • 投資→収穫→分配サイクル:2020年のAllergan買収、2024年のCerevel/ImmunoGen等の買収、2025年のCapstan/Gilgamesh/複数ライセンス契約のように、大型投資の年には投資CFやIPR&D費用が大きく振れます。
  • BSの見どころ:のれん・無形資産比率が高く、会計上の純利益や株主資本は償却・減損・買収会計でブレやすい一方、営業CFはビジネスの基礎体力を反映しやすい点がAbbVieの特徴です。
  • 営業CFは堅調:2021〜2023年は$22–25Bレンジ、2024年は$18.806B、2025年は$19.030Bを確保しています。[3]
  • 配当持続性:GAAP益だけでなく「営業CFやFCFに対する配当総額比」を併せてチェックするのが医薬品では実務的です。

AbbVieのビジネス構造と成長ドライバー

  • 免疫領域:2026年Q1のSkyrizi売上は$4.483B、Rinvoq売上は$2.119Bで、両剤合計は$6.602Bでした。Humiraは$688Mまで減少しましたが、Skyrizi/Rinvoqが完全に成長エンジンへ移行しています。[2]
  • ニューロサイエンス:2026年Q1のニューロサイエンス売上は$2.875B(前年同期比+26.0%)でした。Vraylar、Botox治療用、Ubrelvy/Qulipta、Vyalevが成長を支えています。[2]
  • エステティクス:2026年Q1のエステティクス売上は$1.186B(前年同期比+7.6%)でした。2025年通期は消費環境の弱さで減収でしたが、2026年Q1はBotox Cosmeticが$668M(+20.2%)と回復を示しています。[2]
  • オンコロジー:2026年Q1のオンコロジー売上は$1.631Bで、Venclextaは成長、Imbruvicaは縮小という構図です。[2]
  • パイプライン投資:2025年Form 10-Kでは、Capstan Therapeutics買収、Gilgamesh Pharmaceuticals買収、Ichnos Glenmark、Gubra、ADARxなどへの投資・ライセンス契約が確認できます。これらは短期的にはIPR&D費用としてGAAP利益を押し下げますが、中長期のパイプライン拡充策でもあります。[3]

用語ミニ解説(必要最小限)

  • 特許切れ(Patent Cliff):独占販売期間の終了で、売上が大きく減る局面。
  • 調整後EPS:買収関連償却やIPR&D費用等を除いた指標。GAAP EPSよりも業績トレンドを捉えやすい場合があります。
  • 配当カバー(CFベース):営業CFまたはフリーCFを配当支払総額で割った指標。長期の配当余力を見る際に有効です。
  • IPR&D(仕掛研究開発費):買収で取得した開発段階の研究資産を費用計上するもの。GAAP利益を大きく押し下げることがあります。

配当の安全性:シナリオ別の見立て

2026年Q1決算後、会社は2026年通期の調整後希薄化EPS見通しを$14.08~$14.28へ引き上げました。現行配当年率$6.92をこの調整後EPSレンジで割ると、調整後EPSベースの配当性向は約49%です。GAAP EPSはIPR&D費用などで大きく変動しますが、調整後EPSとFCFの両面では、現行配当は十分に支えられていると見られます。[1][2]

  • ベースシナリオ:Skyrizi/Rinvoqの力強い伸長とニューロサイエンスの拡大でCFは底堅く、年5%前後の増配を中期的に維持できる可能性があります。
  • 逆風シナリオ:Humiraの浸食継続、エステティクス市場の再失速、IRA(インフレ抑制法)や価格圧力、買収資産の減損により、GAAP利益と市場評価が下振れする可能性があります。この場合、増配ペースは低一桁台まで鈍化し得ます。
  • 追い風シナリオ:Skyrizi/Rinvoqの適応拡大、Vyalev・Vraylar・Quliptaなどの伸長、パイプライン進展により、Humira後の成長移行がさらに明確化すれば、増配余力と株価評価の両方が改善する可能性があります。

主要リスクとモニタリングKPI

  • リスク:IRA(インフレ抑制法)による価格環境の変化、競合バイオシミラー、主力品の将来的な特許切れ、研究開発失敗、買収資産の減損、訴訟・規制対応コスト、エステティクス市場の消費環境。
  • KPI:①Skyrizi/Rinvoqの売上トレンド、②調整後EPSガイダンスの推移、③営業CFと配当のカバー比、④純有利子負債・レバレッジ指標、⑤新薬の申請・承認・上市の進捗、⑥エステティクス市場の回復度合い。

まとめ:配当重視投資家にとってのABBV

  • 長所:分社化後も継続的に四半期配当を引き上げてきた実績、高いキャッシュ創出力、免疫×ニューロ×エステティクスの3本柱で収益源が分散している点は、配当株として魅力的です。2025年には過去最高売上$61.160Bを達成し、Humira後の成長移行が着実に進んでいます。[3]
  • 留意点:買収関連償却やIPR&D費用によりGAAP利益の変動が大きいため、評価ではCF(営業/フリー)軸と併用する必要があります。2025年末には株主資本がマイナスに転じており、会計上のBS指標だけを見ると財務負担が大きく見えます。
  • 現状認識:四半期配当は$1.73、年率$6.92です。2026年Q1決算後の調整後EPSガイダンス$14.08~$14.28に対して、配当性向は約49%であり、配当カバーは良好です。[1][2]

総じて、AbbVieは「高配当+中期的な緩やかな増配」を期待する投資家に向いた銘柄です。Humira後の移行期を乗り越え、2025年には過去最高売上を記録し、2026年Q1でもSkyrizi/Rinvoqとニューロサイエンスが高成長を続けています。

一方で、バリュエーション(株価水準)と規制・訴訟リスク、エステティクス市場の動向、買収資産の減損リスクには常に目配りが必要です。配当投資では、利回りだけでなく、FCF/配当カバーと調整後EPSの持続性を継続的に確認することが重要です。

免責事項

免責事項:本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資にあたっては、必ずご自身の判断と責任で行い、最新の開示資料(決算短信・Form 10-K等)をご確認ください。

【注】(出典リンク)

  1. 配当・株主還元・増配実績 → 一次情報:AbbVie「AbbVie Declares Quarterly Dividend」AbbVie IR「Dividends」(確認日:2026-05-07)
  2. 2026年Q1決算・2026年ガイダンス → 一次情報:AbbVie「AbbVie Reports First-Quarter 2026 Financial Results」(確認日:2026-05-07)
  3. 2025年Form 10-K・長期財務データ・CF・BS → 一次情報:SEC EDGAR「AbbVie Form 10-K for the year ended Dec. 31, 2025」AbbVie「Full-Year and Fourth-Quarter 2025 Financial Results」(確認日:2026-05-07)
  4. 株価・配当利回り → 参考情報:Google Finance「ABBV:NYSE」StockAnalysis「ABBV Dividend」(確認日:2026-05-07)



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Posted by 南 一矢