BAC:バンクオブアメリカの配当推移

バフェット銘柄,配当,金融

【2026年10月更新】BAC配当の今後と将来性を徹底分析|安定性と株主還元の実態

「アメリカの銀行」の名を冠する巨大金融機関、Bank of America(BAC)。その配当は今後も安定して伸びるのでしょうか。

本稿では、2025年通期と最新の2026年Q3(2026年9月30日終了、2026年10月14日公表)を中心に、利益の厚み、資本余力、信用コスト、配当と自社株買いのバランスを確認します。

2026年Q3のBACは、総収入300億ドル、純利益69億ドル、希薄化後EPS0.91ドル、ROTCE12.6%でした。ただし、Q3には12億ドルの規制関連和解費用が含まれており、これを除く調整後では純利益81億ドル、EPS1.08ドル、ROTCE14.9%です。2026年Q3末のCET1比率は10.9%で、現行の規制最低水準10.0%を上回っています。[1]

はじめに:この記事でわかること

BACは、金融危機後に縮小した配当を段階的に回復させ、近年も継続的な増配を行ってきました。今後の配当を、以下の観点から評価します。

  • BACの稼ぐ力:純利息収入と非金利収入がどのように伸びているか。
  • 株主還元:配当と自社株買いのバランスは適切か。
  • 資本余力:CET1比率が規制上の最低水準をどの程度上回っているか。
  • 信用リスク:貸倒損失やクレジットカード延滞の動きは悪化していないか。
  • 業界内での立ち位置:BACの強みと、他の大手銀行に見劣りしやすい点は何か。

結論として、BACの普通株配当には引き続き高い持続性があります。2026年7月24日、取締役会は四半期配当を0.28ドルから0.32ドルへ14%引き上げ、2026年9月25日に支払いました。2026年10月17日時点の直近宣言済み配当を単純年率換算すると1.28ドルです。[2]


BAC配当分析サマリー(2026年Q3時点)

  • ここがポイント
    • 直近宣言済みの普通株配当は四半期0.32ドル、単純年率換算で1.28ドルです。
    • 2026年Q3の報告EPS0.91ドルに対する四半期配当性向は約35%。規制関連和解費用を除く調整後EPS1.08ドルでは約30%です。
    • 2026年1~9月の報告EPSは合計3.23ドル、普通株配当は合計0.88ドルで、単純配当性向は約27%です。
    • 2026年Q3の純利益は69億ドル、総収入は300億ドル。調整後純利益は81億ドルでした。
    • 2026年Q3のROTCEは報告ベース12.6%、規制関連和解費用を除く調整後で14.9%です。
    • 2026年Q3末のCET1比率は10.9%、CET1資本は約1,984億ドルでした。
    • 2026年Q3の普通株主還元は約83億ドルで、普通株配当約22億ドル、自社株買い約60億ドルでした。
  • 現状分析:配当性向はなお低く、普通株配当そのものの安全性は高い状態です。一方、CET1比率はQ2の11.2%からQ3の10.9%へ低下しており、2027年にはG-SIBサーチャージ引き上げも予定されています。今後は利益だけでなく、資本余力と自社株買いのペースをより重視する必要があります。
注意:本分析は情報提供のみを目的としており、投資勧誘を行うものではありません。銀行の配当と自社株買いは、利益だけでなく、景気、信用コスト、規制資本、当局の判断によって変化します。

1. BACの「稼ぐ力」:純利息収入と非金利収入の両方が成長

BACの収益は、貸出や債券運用から得られる純利息収入(NII)を軸に、資産運用、カード手数料、投資銀行、トレーディングなどの非金利収入が補完する構造です。

配当原資を判断する際は、最終的な純利益に加え、貸倒引当金繰入前の基礎的な収益力を見る必要があります。本記事では、会社が開示するPTPI(pretax, pre-provision income:税引前・貸倒引当前利益)を、従来記事のPPNRに相当する指標として扱います。

純利益・総収入・PTPI相当額の長期推移

純利益・総収入・PTPI/PPNR相当額(2015~2025通期、単位:10億ドル)
期間 総収入 PTPI/PPNR相当 純利益 備考
2015年通期 $85.4 $32.5 $15.9 利益回復期
2016年通期 $83.7 $30.8 $17.9 費用削減が進展
2017年通期 $87.4 $33.0 $18.2 利上げの効果
2018年通期 $91.2 $38.8 $28.1 米国税制改革の効果
2019年通期 $91.2 $38.3 $27.4 低金利化が進行
2020年通期 $85.5 $30.0 $17.9 新型コロナと引当増加
2021年通期 $89.1 $36.4 $32.0 引当金戻入の寄与
2022年通期 $94.9 $36.2 $27.5 金利上昇の効果
2023年通期 $98.6 $37.0 $26.5 預金コストが上昇
2024年通期 $105.9 $39.0 $27.0 NIIが年後半に改善
2025年通期 $113.1 $43.4 $30.5 増収増益

2025年通期は、総収入が113.1億ドルではなく1,131億ドル、純利益が305億ドルでした。希薄化後EPSは3.81ドル、ROEは10.6%、ROTCEは14.2%です。[3]

2015~2024年の長期データは、Bank of Americaの年次報告・四半期決算アーカイブに基づいて整理しています。[4]

単位に注意:表は10億ドル単位です。「$113.1bn」は1,131億ドル、「$30.5bn」は305億ドルを意味します。日本語本文では読み違いを避けるため、必要に応じて億ドル換算も併記しています。

直近四半期の推移

直近四半期の収益推移(2025年Q3~2026年Q3、単位:10億ドル)
期間 NII
(FTE)
総収入 PTPI 純利益 希薄化後EPS
2025年Q3 $15.4 $29.0 $11.7 $8.3 $1.04
2025年Q4 $15.9 $28.4 $10.9 $7.6 $0.98
2026年Q1 $15.9 $30.3 $11.7 $8.6 $1.11
2026年Q2 $16.2 $31.6 $12.9 $9.1 $1.21
2026年Q3 $16.6 $30.0 $10.2 $6.9 $0.91

2026年Q3の総収入は前年同期比3%増の300億ドル、NIIはFTEベースで166億ドルとなり前年同期比8%増加しました。一方、純利益は69億ドル、希薄化後EPSは0.91ドルで、前年同期を下回りました。主因は12億ドルの規制関連和解費用で、これを除く調整後では純利益81億ドル、EPS1.08ドルです。[1]

収益構成では、2026年Q3の資産運用手数料が前年同期比17%増となる一方、セールス・トレーディング収入は5%減、投資銀行手数料は11%減でした。NIIとウェルス・マネジメントが下支えしたものの、Q2ほど資本市場収入の追い風は強くありませんでした。[1]

2026年Q3のPTPIは報告ベースで約102億ドルですが、規制関連和解費用12億ドルを除く調整後PTPIは約114億ドルです。配当余力を判断する際には、報告利益だけでなく、この一時費用を除いた基礎的な利益水準も確認する必要があります。

2. 1株当たり利益と会社の稼ぐ力(ROE・ROTCE分析)

1株当たり指標と収益性比率(2015~2025通期)
年度 EPS ROE ROTCE 備考
2015年 $1.31 6.4% 8.7% 利益回復期
2016年 $1.50 7.2% 9.6% 効率化が進展
2017年 $1.56 7.3% 9.5% 利上げ局面
2018年 $2.61 11.0% 14.8% 税制改革効果
2019年 $2.75 11.0% 15.0% 高い資本効率
2020年 $1.87 6.7% 9.0% 新型コロナの影響
2021年 $3.57 12.1% 16.8% 引当金戻入の寄与
2022年 $3.19 10.3% 14.5% 金利上昇局面
2023年 $3.08 9.2% 13.0% 預金コストが上昇
2024年 $3.19 9.5% 12.9% 年後半から改善
2025年 $3.81 10.6% 14.2% 収益性が再改善
最新四半期の収益性(2025年Q3~2026年Q3)
期間 希薄化後EPS ROA ROE ROTCE 効率性比率
2025年Q3 $1.04 0.96% 11.4% 15.3% 60%
2026年Q1 $1.11 0.99% 12.0% 16.0% 61%
2026年Q2 $1.21 1.03% 12.7% 17.0% 59%
2026年Q3 $0.91 0.79% 9.4% 12.6% 66%

2026年Q3の報告ROTCEは12.6%へ低下し、効率性比率も66%へ悪化しました。ただし、規制関連和解費用を除く調整後ではROA0.93%、ROE11.1%、ROTCE14.9%、効率性比率62%です。Q2の非常に強い水準からは低下したものの、基礎的な収益性はなお二桁のROTCEを維持しています。[1]

ROEとROTCEの違い

ROE(Return on Equity)は、株主資本を使ってどれだけ利益を上げたかを見る指標です。

ROE = 普通株主に帰属する利益 ÷ 平均普通株主資本 × 100

ROTCE(Return on Tangible Common Equity)は、のれんや無形資産を除いた有形普通株主資本に対する収益力です。

ROTCE = 調整後普通株主利益 ÷ 平均有形普通株主資本 × 100

銀行同士を比較する場合、買収に伴うのれんなどの影響を小さくできるROTCEがよく利用されます。ただし、四半期の数値は年率換算されているため、1四半期だけでなく通期の推移も確認する必要があります。

2026年1~9月の報告希薄化後EPSは合計3.23ドルです。同期間に宣言・支払われた普通株配当は合計0.88ドルで、単純配当性向は約27.2%です。Q3に一時費用が発生しても、普通株配当にはなお十分な利益余力があります。


3. 株主還元(配当と自社株買い)

最新の配当と増配状況

BACは2026年7月24日、四半期配当を0.28ドルから0.32ドルへ14%引き上げました。基準日は2026年9月4日、支払日は9月25日です。直近宣言済み配当を4倍した単純年率は1.28ドルとなります。[2]

同社は、2025年8月1日から有効となった400億ドルの普通株買い戻し枠の下で買い戻しを継続しています。2026年6月30日時点では約170億ドルの買い戻し余力が残っており、2026年Q3にも約60億ドルを買い戻しました。[2][1]

現在の配当について:2026年10月17日時点で、普通株の直近宣言済み配当は2026年Q3の1株当たり0.32ドルです。Bank of Americaの配当履歴ページでは、10月12日時点で将来の普通株配当はまだ宣言されていません。したがって、Q4も0.32ドルが継続すると決めつけず、次回の取締役会決議を確認する必要があります。[2]
近年の四半期別配当実績(2023年Q3~2026年Q3)
四半期 配当/株 前年同期比
2023年Q3 $0.24 +9.1%
2023年Q4 $0.24 +9.1%
2024年Q1 $0.24 +9.1%
2024年Q2 $0.24 +9.1%
2024年Q3 $0.26 +8.3%
2024年Q4 $0.26 +8.3%
2025年Q1 $0.26 +8.3%
2025年Q2 $0.26 +8.3%
2025年Q3 $0.28 +7.7%
2025年Q4 $0.28 +7.7%
2026年Q1 $0.28 +7.7%
2026年Q2 $0.28 +7.7%
2026年Q3 $0.32 +14.3%

配当性向の長期推移

配当実績と配当性向(2015~2025通期)
期間 配当性向 EPS 年間配当 増配率
2015年通期 15.3% $1.31 $0.20 +300.0%
2016年通期 18.7% $1.50 $0.28 +40.0%
2017年通期 30.8% $1.56 $0.48 +71.4%
2018年通期 23.0% $2.61 $0.60 +25.0%
2019年通期 26.2% $2.75 $0.72 +20.0%
2020年通期 38.5% $1.87 $0.72 0.0%
2021年通期 22.1% $3.57 $0.79 +9.7%
2022年通期 26.3% $3.19 $0.84 +6.3%
2023年通期 30.5% $3.08 $0.94 +11.9%
2024年通期 31.3% $3.19 $1.00 +6.4%
2025年通期 28.3% $3.81 $1.08 +8.0%

2025年通期の配当性向は約28.3%でした。EPSの伸びが配当の伸びを上回ったため、2024年通期の31.3%から低下しています。[3]

2026年Q3単独では、報告EPS0.91ドルに対する配当0.32ドルの比率は約35.2%です。規制関連和解費用を除く調整後EPS1.08ドルを基準にすると約29.6%です。2026年1~9月では、報告EPS3.23ドルに対する配当0.88ドルの比率が約27.2%となります。

一般的な事業会社と異なり、銀行の配当余力は配当性向だけでは判断できません。利益が十分でも、CET1比率が規制要件に近づけば、配当や自社株買いを抑える必要があります。

総株主還元(配当+自社株買い)

総株主還元実績(2018~2025通期、単位:10億ドル)
年度 総還元性向 純利益 普通株配当 自社株買い 総還元額
2018年 92.5% $28.1 $6.4 $19.6 $26.0
2019年 111.3% $27.4 $7.5 $23.1 $30.6
2020年 43.0% $17.9 $7.7 $0.0 $7.7
2021年 99.4% $32.0 $7.1 $24.8 $31.9
2022年 65.1% $27.5 $7.8 $10.1 $17.9
2023年 64.5% $26.5 $8.5 $8.6 $17.1
2024年 64.4% $27.0 $8.4 $9.0 $17.4
2025年 98.4% $30.5 $8.4 $21.6 $30.0
直近の普通株主還元(単位:10億ドル)
期間 普通株配当 自社株買い 合計 純利益
2025年Q4 $2.1 $6.3 $8.4 $7.6
2026年Q1 約$2.0 約$7.2 約$9.3 $8.6
2026年Q2 約$2.0 約$6.0 約$8.0 $9.1
2026年Q3 約$2.2 約$6.0 約$8.3 $6.9

2026年Q3は、普通株配当約22億ドルと自社株買い約60億ドルを合わせ、約83億ドルを株主に還元しました。これは報告純利益69億ドルを上回りますが、規制関連和解費用を除く調整後純利益81億ドルには近い水準です。四半期単独の還元率は高いため、資本余力と合わせて確認する必要があります。[1]

自社株買いによって、期末普通株式数は2025年Q3の約73.3億株から、2026年Q3には約69.2億株へ減少しました。利益の伸びに加えて株式数の減少も、1株当たり利益を支える要因です。[1]


4. 会社の体力(資本健全性)は大丈夫か?

指標 2025年末 2026年Q1末 2026年Q2末 2026年Q3末 現行最低水準
CET1比率
Standardized
11.4% 11.2% 11.2% 10.9% 10.0%
CET1資本 $201bn $200bn $202bn $198bn —
SLR 5.7% 5.5% 5.5% 5.5% 3.75%
普通株簿価/株 $38.44 $38.66 $39.34 $39.26 —
有形簿価/株 $28.73 $28.84 $29.37 $29.14 —

2026年Q3末のStandardized CET1比率は10.9%で、Q2末の11.2%から37bp低下しました。CET1資本は約1,984億ドル、標準的手法によるリスク加重資産は約1兆8,240億ドルです。[1]

2026年12月31日までのCET1最低水準は、基礎要件4.5%、ストレス・キャピタル・バッファー2.5%、G-SIBサーチャージ3.0%を合計した10.0%です。2026年Q3末の10.9%は、この水準を約0.9ポイント上回ります。[5]

2027年の資本規制:現行ルールでは、Bank of AmericaのG-SIBサーチャージは2027年1月1日に3.0%から3.5%へ50bp上昇する予定です。他の構成要素が変わらない場合、CET1最低水準も10.0%から10.5%へ上がる計算になります。Q3末のCET1比率10.9%との差は小さくなるため、今後の自社株買いペースを見るうえで重要なポイントです。[5]

2026年FRBストレステスト

FRBが2026年6月24日に公表したストレステストでは、深刻な景気後退シナリオの下でも、Bank of AmericaのCET1比率は最低9.9%にとどまると試算されました。開始時点から最低点までの低下幅は約1.4ポイントです。[6]

9.9%はストレス環境下の試算値であり、2026年Q3末の実際のCET1比率10.9%とは性格が異なります。また、2026年ストレステストを受けてもSCBは2.5%のまま2027年9月30日まで据え置かれる予定です。

ストレステストは配当の増額を保証するものではありませんが、深刻な不況を想定しても資本を維持できるかを見る重要な確認材料です。

バランスシートの規模

2026年Q3末の主要バランスシート指標
指標 2026年Q3末 前年同期比・補足
総資産 $3.43tn 2026年Q2末の$3.50tnから減少
平均預金 $2.02tn 前年同期比+2%
平均貸出金・リース $1.23tn 前年同期比+6%
債券ポートフォリオ $842bn Q2末の$869bnから減少
長期債務 $319bn Q2末の$340bnから減少
普通株主資本 $272bn 簿価/株は$39.26
有形普通株主資本 $202bn 有形簿価/株は$29.14

5. 投資家が注意すべきリスク

  • 金利低下リスク:2026年Q3のNIIは前年同期比8%増えましたが、急速な利下げや長短金利差の縮小は将来のNIIを押し下げる可能性があります。
  • 預金コスト:預金金利の低下が市場金利に遅れる場合、貸出金利が下がっても調達コストが高止まりし、利ざやが圧迫されます。
  • 信用コスト:2026年Q3の貸倒引当金繰入額は約13億ドル、純貸倒償却額も約13億ドルでした。純貸倒償却率は0.44%で、Q2の0.47%から改善しています。[1]
  • クレジットカード:2026年Q3のカード純貸倒償却率は3.22%で、Q2の3.55%、前年同期の3.46%から改善しました。延滞率も前年同期比で改善していますが、景気や雇用が悪化すれば再上昇する可能性があります。
  • 商業用不動産:オフィスを中心とする商業用不動産では、金利、空室率、借り換え条件に注意が必要です。
  • 資本規制:2027年1月にG-SIBサーチャージが50bp上昇する予定で、CET1の規制余力はQ3末時点より厳しくなる可能性があります。[5]
  • 高水準の総還元:2026年Q3の普通株主還元約83億ドルは報告純利益69億ドルを上回りました。自社株買いが続けば、CET1比率とのバランスがより重要になります。
  • 一時費用:2026年Q3には12億ドルの規制関連和解費用が発生しました。配当余力の評価では一時要因を除いた収益力も見る必要があります。
  • マーケット収入の変動:2026年Q3はセールス・トレーディング収入が前年同期比5%減、投資銀行手数料が11%減となり、Q2とは逆に資本市場部門が伸びを抑える要因となりました。
  • 株価評価:業績改善への期待が株価に織り込まれている場合、好決算でも市場予想を下回れば株価が調整する可能性があります。
信用コストの見方:2026年Q3の純貸倒償却率0.44%とカード純貸倒償却率3.22%はいずれもQ2から改善しました。信用指標は足元で悪化していませんが、今後も失業率、カード延滞、商業用不動産の動向を継続して確認する必要があります。

6. 業界内での位置づけ

BACは、JPMorgan Chaseのように毎期突出した収益性を示す銀行というより、約2兆ドルの預金基盤と、個人金融、法人金融、ウェルス・マネジメント、投資銀行、マーケッツを組み合わせて安定的に稼ぐ大手銀行です。

2026年Q3のROTCEは報告ベース12.6%、規制関連和解費用を除く調整後14.9%でした。Q2の17.0%からは低下しましたが、NIIは前年同期比8%増え、ウェルス・マネジメントも拡大しています。一方、投資銀行とトレーディングは前年同期比で減収となり、収益源ごとの振れが表れました。

BACの主な強み

  • 全米に広がる個人・中小企業向けの預金基盤
  • Merrillを中心とするウェルス・マネジメント事業
  • 大企業向け融資、決済、投資銀行、マーケッツの幅広い収益源
  • 2026年1~9月で約27%という低い報告ベースの配当性向
  • 継続的な自社株買いによる1株当たり利益の押し上げ
  • ストレス環境でも規制最低水準を上回ると試算された資本力

見劣りしやすい点

  • 収益性や成長率でJPMorgan Chaseを下回る局面がある
  • NIIの金利感応度が比較的大きい
  • 過去に取得した低利回り債券の影響が長期間残りやすい
  • 自社株買いを積極化するとCET1余剰幅が縮小しやすい
見方のコツ:銀行株の配当は、(1)EPSとPTPIの稼ぐ力、(2)配当性向、(3)信用コスト、(4)CET1比率と規制要件、(5)自社株買いを含む総還元額をセットで見ると判断しやすくなります。

7. 結論と投資判断

Bank of Americaの普通株配当は、2026年Q3時点でも高い持続性を備えていると評価できます。直近宣言済みの四半期配当は0.32ドルで、単純年率換算では1.28ドルです。

2026年Q3の報告純利益は69億ドル、希薄化後EPSは0.91ドル、ROTCEは12.6%でしたが、12億ドルの規制関連和解費用を除く調整後では純利益81億ドル、EPS1.08ドル、ROTCE14.9%です。Q3の配当性向は報告ベースで約35%、調整後EPS基準で約30%にとどまります。[1]

資本面では、2026年Q3末のCET1比率が10.9%、2026年末までの最低水準が10.0%で、余剰幅は約0.9ポイントです。ただし、2027年1月にはG-SIBサーチャージが3.5%へ上がる予定で、他の条件が変わらなければ最低CET1水準は10.5%へ上昇します。[5]

  • 配当の安全性:2026年1~9月の配当性向約27%から見て高い。
  • 増配:2026年Q3に14%増配し、四半期0.32ドルとなった。
  • 自社株買い:EPSを押し上げる一方、CET1資本を消費する。Q3も約60億ドルを実施した。
  • 最大の確認点:NIIと信用コストに加え、2027年の資本要件上昇を前にしたCET1余剰幅と総還元額のバランス。

投資上の見方:
BACは、現在の配当利回りだけを狙う銘柄というより、低い配当性向、増配、自社株買い、NIIとウェルス事業の成長を組み合わせた大型銀行株と捉える方が実態に近いです。

2026年Q3は一時費用で報告利益が押し下げられましたが、信用指標は改善し、NIIは増加しました。一方、CET1比率は10.9%へ低下し、2027年のG-SIBサーチャージ引き上げも控えています。今後は「配当を払えるか」よりも、増配と自社株買いをどのペースで続けられるかが重要な確認点になります。

免責事項

本レポートは公開情報に基づく分析であり、投資助言を構成するものではありません。投資判断は投資家自身の責任において行ってください。本レポートの作成にあたっては正確性を期していますが、その内容の正確性、完全性を保証するものではありません。

最終更新日:2026年10月17日

ミニ解説:BACのような銀行株は、最新四半期のEPSだけを見ると評価を誤りやすくなります。2015年以降の利益、配当、資本比率の推移と、直近のPTPI、信用コスト、自社株買いを一緒に見ることが重要です。

【注】(出典リンク)

  1. 2026年Q3決算・利益・資本・信用コスト・株主還元 → Bank of America:Quarterly Earnings(Q3 2026)(一次情報) → Bank of America:3Q26 Earnings Release / Form 8-K Exhibit 99.1(一次情報) → Bank of America:3Q26 Earnings Presentation(一次情報) 確認日:2026-10-17 ↩
  2. 2026年Q3増配・配当履歴・400億ドル自社株買い枠 → Bank of America:Increases Common Stock Dividend 14% to $0.32 Per Share(一次情報) → Bank of America:Dividends(一次情報) 確認日:2026-10-17 ↩
  3. 2025年通期・年間配当・利益・資本効率・年間還元 → Bank of America:Annual Reports(一次情報) → Bank of America:2025 Form 10-K(一次情報) 確認日:2026-10-17 ↩
  4. 2015~2024年の長期財務・配当データ → Bank of America:Annual Reports Archive(一次情報) → Bank of America:Quarterly Earnings Archive(一次情報) 確認日:2026-10-17 ↩
  5. 現行CET1最低水準・2027年G-SIBサーチャージ・SLR → Bank of America:2026 Q2 Form 10-Q(一次情報) 確認日:2026-10-17 ↩
  6. 2026年ストレステスト・ストレス下の資本比率 → Federal Reserve:2026 Stress Test Results(一次情報) → Federal Reserve:2026 DFAST Results PDF(一次情報) → Bank of America:2026 Dodd-Frank Act Stress Test Presentation(一次情報) 確認日:2026-10-17 ↩

Posted by 南 一矢