BLK:ブラックロックの配当推移

配当,金融






BlackRock(BLK)配当投資・財務分析【2008–2025年8月更新版】

【2025年8月更新】主な変更点

  • 四半期配当:2025年は$5.21/株へ増配(年率換算$20.84)。権利日・支払日はIR参照<脚注 注1>
  • Q2 2025:AUM$12.53兆、GAAP EPS$10.19(調整後$12.05)、年初来長期フロー$1520億<注2>
  • M&A:Preqin買収完了2025/3/3、HPS完了2025/7/1<注3, 注4>
  • 中期方針:有機ベースフィー成長(買収・為替を除く既存の基本手数料の伸び)5%以上調整後OPM45%以上を再確認<注5>

ブラックロック(BLK)— 配当・財務の長期分析

  • 直近四半期配当:$5.21/株
  • 2025年 年率換算配当:$20.84(暫定、年末確定)
  • 2024年 EPS(GAAP):$42.01
  • 2024年 売上高:$20.41B
  • 2025年Q2 AUM$12.53T
  • 2025年YTD長期フロー:$152B(長期資金の純流入)

※AUM・フロー・四半期EPSはQ2 2025時点。年次は2024通期。出典は脚注。

配当利回りと株価(直近90日)

配当実績と配当性向(長期:2008–2024)

2008年以降の年平均配当利回り・増配率・配当性向(=1株配当÷EPS)・年計配当($)・平均株価・通年EPSを一覧化。2025年は年途中のため年率換算のみ別掲。

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2024 2.35% 2% 49% 20.4 867.1 42.01
2023 2.89% 2% 55% 20 692.7 36.51
2022 2.84% 18% 57% 19.52 688.3 33.97
2021 1.95% 14% 43% 16.52 846.1 38.22
2020 2.60% 10% 46% 14.52 558.6 31.85
2019 2.95% 9% 46% 13.2 448.2 28.43
2018 2.45% 21% 45% 12.09 493 26.58
2017 2.36% 9% 33% 10 423.7 30.12
2016 2.62% 5% 48% 9.16 350.1 19.02
2015 2.51% 13% 44% 8.72 347.2 19.79
2014 2.42% 15% 40% 7.72 319.1 19.25
2013 2.49% 12% 40% 6.72 269.7 16.87
2012 3.23% 9% 44% 6 185.5 13.79
2011 3.07% 38% 44% 5.5 179.3 12.37
2010 2.21% 28% 38% 4 181.1 10.55
2009 1.81% 0% 51% 3.12 172.7 6.11
2008 1.67% 16% 54% 3.12 186.5 5.78

2025年の補足:四半期配当$5.21 → 年率換算$20.84(対2024年+約2.2%)。確定は年末実績で判断<注1>。

用語解説(このセクション)
  • 配当性向:1株配当 ÷ EPS(1株利益)。高すぎると増配余地が小さい。
  • EPS(1株利益):当期純利益を発行株式数で割った利益指標。
  • 平均利回り:年の平均株価に対する配当額の割合。

主要財務指標(年次:2008–2024)

年度 収益($M) 営業CF($M) 同マージン(%) 純利益($M)
2008 5,064 1,916 38 784
2009 4,700 1,399 30 875
2010 8,612 2,488 29 2,063
2011 9,081 2,826 31 2,337
2012 9,337 2,240 24 2,458
2013 10,180 3,642 36 2,932
2014 11,081 3,087 28 3,294
2015 11,401 3,004 26 3,345
2016 12,261 2,273 19 3,168
2017 13,600 3,950 29 4,952
2018 14,198 3,075 22 4,305
2019 14,539 2,884 20 4,476
2020 16,205 3,743 23 4,932
2021 19,374 4,944 26 5,901
2022 17,873 4,956 28 5,178
2023 17,859 4,165 23 5,502
2024 20,407 4,956 24 6,369
用語解説(このセクション)
  • 営業CF:本業から生み出す現金。配当の源泉として重要。
  • 営業CFマージン:収益に対する営業CFの割合。高いほど現金創出効率が良い。

キャッシュフロー詳細(年次:2008–2024)

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2008 1,916 226 -394 -887
2009 1,399 -27 -5,519 6,749
2010 2,488 78 -627 -3,170
2011 2,826 14 -204 -2,485
2012 2,240 -21 -266 -944
2013 3,642 63 -483 -3,392
2014 3,087 -15 239 -1,861
2015 3,004 -3 -465 -2,064
2016 2,273 -24 -371 -1,685
2017 3,950 74 -608 -2,630
2018 3,075 -22 -808 -2,765
2019 2,884 -6 -2,014 -2,583
2020 3,743 30 -254 244
2021 4,944 32 -1,937 -2,287
2022 4,956 0 -1,130 -5,442
2023 4,165 -16 -959 -1,992
2024 4,956 19 -3,004 2,236
用語解説(このセクション)
  • 投資CF:設備投資や買収など投資活動の現金収支。マイナスは将来成長のための投資が多い状態。
  • 財務CF:配当・自社株買い・借入返済など資本政策の現金収支。

バランスシート(年次:2008–2024)

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 負債比率
2008 19,924 7,364 12,069 61 61
2009 178,124 153,522 24,329 14 631
2010 178,459 152,125 26,094 15 583
2011 179,896 154,534 25,048 14 617
2012 200,451 174,834 25,403 13 688
2013 219,873 193,203 26,460 12 730
2014 239,792 212,272 27,366 11 776
2015 225,261 196,217 28,503 13 688
2016 220,177 190,833 29,098 13 656
2017 220,241 187,977 31,798 14 591
2018 159,573 126,033 32,374 20 389
2019 168,622 133,693 33,547 20 399
2020 176,982 139,326 35,283 20 395
2021 152,648 113,755 38,893 25 292
2022 117,628 78,843 38,785 33 203
2023 123,211 81,971 41,240 33 199
2024 138,615 89,260 49,355 36 181
用語解説(このセクション)
  • 自己資本率:総資産に占める株主資本の比率。安全性の目安。
  • 負債比率:株主資本に対する負債の比率。小さいほど保守的。

投資家のためのBLK分析(2025年版)

① いまのブラックロックを一言で

ブラックロックは世界最大の資産運用会社です。2025年4–6月期の運用資産残高(AUM=預かり資産の合計)は$12.53兆と過去最高圏でした。年初からの長期資金の純流入(長期フロー=長期用ファンドへ入ったお金から出たお金を引いたもの)も$1520億と堅調です。

② どうやって稼いでいる?(収益の柱)

  • ベースフィー保有残高に対して毎年もらう基本手数料):AUMが増えるほど安定的に増えやすい収益。
  • テクノロジー/データ収益Aladdin(運用管理の基盤システム)やPreqin(プライベート市場のデータ)など、相場に左右されにくい定額型の収益
  • パフォーマンス・フィー成績が良かった時の成功報酬):景気や相場で増減。

③ 配当は安心?

過去の配当性向(配当÷1株利益)はおおむね33〜58%の範囲で、無理のない水準でした。
本業が生む現金(営業キャッシュフロー)やフリーキャッシュフローが配当原資になっており、「平時は増配を続け、荒天時は買い戻しを抑えて配当を守る」という運用会社らしい設計です。

④ これからの伸びどころ(3本柱)

  1. プライベートクレジット非上場企業などへの貸付):HPSの統合で拡大。一般に手数料水準が高く、収益の質を押し上げます。
  2. インフラ投資空港・発電・通信網など):GIPの買収完了で長期・安定の案件が増え、景気に左右されにくい柱になります。
  3. テクノロジー/データAladdin × Preqin):契約型の安定収益。相場が荒れても落ちにくく、全社の下支えに。

会社は中期目標として、有機ベースフィー成長(買収や為替の影響を除いた基本手数料の伸び)年5%以上と、調整後営業利益率(一過性費用を除いた利益率)45%以上の達成を掲げています。

⑤ 何に注意する?(主なリスク)

  • 手数料の下押し圧力:低コストETFが増えると平均手数料が下がりやすい → 高付加価値の私募/インフラ/テックで補う戦略。
  • 相場の荒れ(ボラティリティ):AUMや成功報酬がぶれやすい → 長期フロー(年金・積立など)が粘り強く下支え。
  • 規制の変化:ESGや流動性規制などで商品設計・コストが変わる可能性。

⑥ 見ておくと安心な数字(KPI)

  1. 有機ベースフィー成長率5%以上が会社の目安。既存事業の地力を見る指標。
  2. 調整後営業利益率45%以上を維持できているか。効率の良さを示す。
  3. 長期フロー:長期資金の純流入がプラスかどうか(配当の土台)。
  4. AUMの内訳(ミックス)オルタ(私募、インフラなど)やアクティブ比率が上がると収益性は改善しやすい。
  5. FCF/配当フリーキャッシュフロー÷配当が1倍以上なら、配当を現金創出で賄えている目安。

用語ミニ解説

  • AUM:預かっている資産の合計。大きいほど手数料収入が安定しやすい。
  • 長期フロー:長期運用向けファンドへの資金の出入り。積立・年金などが多く、粘り強い。
  • ベースフィー:残高にかかる基本手数料(継続的)。
  • 調整後営業利益率:一時要因を除いた「本業の稼ぐ力」の割合。
  • オルタ:株・債券以外(私募クレジット、インフラ、不動産など)。一般に手数料が高め。
  • FCF(フリーキャッシュフロー):自由に使える現金。配当や自社株買いの原資。

まとめ

BLKは「安定配当×構造成長」。2008年以降の長期データでも、強い現金創出力と健全な財務を背景に増配を継続。2025年は配当増額、AUM過去最高圏、Preqin/HPSの統合でテック・プライベートクレジットの柱を強化。中期は有機ベースフィー成長≧5%、調整後OPM≧45%の達成継続が投資仮説の中核となります。

出典・脚注

  1. BlackRock 配当履歴(IR) / 2025/5/15・2025/7/23の配当発表リリース
  2. Q2 2025 Earnings Release(PDF) / 同ニュースリリース
  3. Preqin買収完了(2025/3/3)
  4. HPS買収完了(2025/7/1)
  5. Investor Day 2025(有機ベースフィー≧5%、調整後OPM≧45%)
  6. 年次財務の連続系列参考:BlackRock IR / 10-K / 10-Q、Macrotrends(Revenue / Net Income / Cash Flow)

出典:AUM$12.53兆・年初来$1520億の長期フローは2025年Q2決算資料・報道、Preqin買収(2025/3/3)HPS買収(2025/7/1)GIP買収完了(2024/10/1)は各社リリース、中期目標(有機ベースフィー5%以上・調整後OPM45%以上)はInvestor Day資料。

免責事項:本記事は情報提供であり、特定銘柄の売買推奨ではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。数値は2025年8月時点の公表資料に基づきます。


Posted by 南 一矢