CAT:キャタピラーの配当推移
キャタピラー(CAT)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析
キャタピラー(Caterpillar Inc.)は、32年連続で配当を増やし続ける「配当貴族」候補銘柄です。世界最大の建設・鉱山機械メーカーとして、その堅実な配当実績を支える財務指標の推移をMacrotrends.comなどのデータを用いて詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
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(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はKoyfin.comを参照)
データソースの制約について
**重要な注意事項**:MacroTrends.comでは、年次の配当データが部分的に提供されています。詳細な配当成長の歴史データについては、MacroTrends以外の複数のソース(株式情報サイト、投資分析プラットフォーム等)も参照して統合的に分析しています。
本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、営業CF、バランスシート等)を中心に、建設機械業界の特性を考慮した配当支払能力の分析を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrendsとそれ以外の信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2024 | 1.60% | 8% | 26% | 5.64 | 353.01 | 22.05 |
2023 | 1.65% | 8% | 26% | 5.20 | 315.00 | 20.12 |
2022 | 2.10% | 8% | 38% | 4.80 | 228.50 | 12.64 |
2021 | 2.20% | 7% | 38% | 4.44 | 201.80 | 11.83 |
2020 | 2.95% | 4% | 77% | 4.16 | 141.00 | 5.46 |
2019 | 2.35% | 7% | 37% | 4.00 | 170.15 | 10.74 |
2018 | 2.65% | 13% | 37% | 3.74 | 141.10 | 10.26 |
2017 | 2.95% | 4% | 270% | 3.32 | 112.50 | 1.26 |
2016 | 4.10% | 3% | N/A | 3.18 | 77.50 | -0.11 |
2015 | 4.25% | 5% | 74% | 3.08 | 72.45 | 4.18 |
2014 | 2.55% | 17% | 75% | 2.94 | 115.20 | 3.90 |
2013 | 2.65% | 12% | 44% | 2.52 | 95.00 | 5.75 |
2012 | 2.45% | 15% | 27% | 2.24 | 91.50 | 8.48 |
2011 | 2.10% | 18% | 26% | 1.94 | 92.30 | 7.40 |
2010 | 2.65% | 13% | 40% | 1.64 | 61.90 | 4.15 |
2009 | 3.85% | 2% | 102% | 1.46 | 37.90 | 1.43 |
2008 | 2.90% | 9% | 29% | 1.44 | 49.65 | 5.00 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合
** EPSと平均株価はMacroTrends.comより
景気循環に強い配当成長の実績
キャタピラー(CAT)は、建設・鉱山機械業界のリーダーとして、**32年連続で配当を増額し続けている「配当貴族」候補**の地位を確立しています。2008年から2024年にかけて、1株配当は1.44ドルから5.64ドルへと292%増加し、年平均成長率は約8.8%を記録しています。
この期間中、リーマンショック(2008年)、鉱山業界の低迷期(2015-2016年)、COVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても一度も減配することなく、継続的な配当成長を維持してきました。景気循環の影響を受けやすい産業でありながら、強固な財務基盤と多角化された事業ポートフォリオがこの安定性を支えています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 64,809 | 12,035 | 18.6 | 10,792 |
2023 | 67,060 | 12,885 | 19.2 | 10,335 |
2022 | 59,427 | 7,766 | 13.1 | 6,705 |
2021 | 50,971 | 7,198 | 14.1 | 6,489 |
2020 | 41,748 | 6,327 | 15.2 | 2,998 |
2019 | 53,800 | 6,912 | 12.8 | 6,093 |
2018 | 54,722 | 6,558 | 12.0 | 6,147 |
2017 | 45,462 | 5,706 | 12.6 | 754 |
2016 | 38,537 | 5,639 | 14.6 | -67 |
2015 | 47,011 | 6,699 | 14.2 | 2,512 |
2014 | 55,184 | 8,057 | 14.6 | 2,452 |
2013 | 55,656 | 10,191 | 18.3 | 3,789 |
2012 | 65,875 | 5,184 | 7.9 | 5,681 |
2011 | 60,138 | 6,957 | 11.6 | 4,928 |
2010 | 42,588 | 5,009 | 11.8 | 2,700 |
2009 | 32,396 | 6,499 | 20.1 | 895 |
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
キャタピラーの配当支払能力は極めて堅固です。2024年の営業キャッシュフローは120億ドルで、配当支払額約27億ドルを大幅に上回っています。これは**4.5倍の配当カバー比率**を意味し、景気循環型企業としては卓越した配当の持続可能性を示しています。
配当支払余力の推移(2008年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 12,035 | 2,646 | 4.5 |
2023 | 12,885 | 2,563 | 5.0 |
2022 | 7,766 | 2,440 | 3.2 |
2021 | 7,198 | 2,331 | 3.1 |
2020 | 6,327 | 2,243 | 2.8 |
2019 | 6,912 | 2,171 | 3.2 |
2018 | 6,558 | 2,082 | 3.1 |
2017 | 5,706 | 1,989 | 2.9 |
2016 | 5,639 | 1,903 | 3.0 |
2015 | 6,699 | 1,850 | 3.6 |
2014 | 8,057 | 1,782 | 4.5 |
2013 | 10,191 | 1,610 | 6.3 |
2012 | 5,184 | 1,425 | 3.6 |
2011 | 6,957 | 1,224 | 5.7 |
2010 | 5,009 | 1,087 | 4.6 |
2009 | 6,499 | 962 | 6.8 |
配当支払余力の分析結果:
- **高いカバー比率**:過去17年間で2.8〜6.8倍を維持し、常に配当を十分にカバー
- **景気耐性**:景気循環の底でも3倍前後のカバー比率を維持
- **保守的な配当政策**:配当性向を低く抑えることで、景気変動に対する耐性を確保
キャッシュフロー創出力と資金配分戦略
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFをM$(百万ドル)単位、営業CF成長率を%単位で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 成長率 (%) | 投資CF (M$) | 財務CF (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 12,035 | -6.6 | -2,493 | -10,227 |
2023 | 12,885 | 65.9 | -2,311 | -14,785 |
2022 | 7,766 | 7.9 | -1,769 | -7,281 |
2021 | 7,198 | 13.8 | -1,201 | -4,188 |
2020 | 6,327 | -8.5 | -1,595 | -3,755 |
2019 | 6,912 | 5.4 | -2,086 | -4,536 |
2018 | 6,558 | 14.9 | -1,808 | -5,462 |
2017 | 5,706 | 1.2 | -1,277 | -2,961 |
2016 | 5,639 | -15.8 | -873 | -3,937 |
2015 | 6,699 | -16.9 | -2,725 | -3,764 |
2014 | 8,057 | -20.9 | -3,537 | -4,862 |
2013 | 10,191 | 96.6 | -3,661 | -5,453 |
2012 | 5,184 | -25.5 | -2,898 | -1,837 |
2011 | 6,957 | 38.9 | -3,681 | -3,251 |
2010 | 5,009 | -22.9 | -1,575 | -1,838 |
2009 | 6,499 | – | -1,504 | -3,390 |
キャッシュフロー分析のポイント
**営業キャッシュフロー**:
- **景気循環の影響**:好況期(2013年、2023年)には120億ドル超、不況期でも50億ドル以上を維持
- **回復力の高さ**:景気後退からの回復期には急速な改善を示す
- **2023年の急回復**:前年比65.9%増と、建設・鉱山業界の回復を反映
**投資キャッシュフロー**:
- **規律ある投資**:年間10億〜37億ドルの範囲で投資を実施
- **景気連動型投資**:好況期に投資を増やし、不況期には抑制
- **効率的な資本配分**:設備投資を最適化し、フリーキャッシュフローを最大化
**財務キャッシュフロー**:
- **株主還元重視**:継続的にマイナス、配当と自社株買いによる積極的な株主還元
- **2023年の大幅還元**:148億ドルのマイナス(自社株買い加速)
- **財務規律**:借入金の削減と株主還元のバランスを維持
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 87,764 | 68,270 | 19,494 | 22.2 | 55.4 | 350 |
2023 | 87,476 | 67,973 | 19,503 | 22.3 | 53.0 | 349 |
2022 | 81,943 | 66,052 | 15,891 | 19.4 | 42.2 | 416 |
2021 | 82,793 | 66,277 | 16,516 | 20.0 | 39.3 | 401 |
2020 | 78,324 | 62,946 | 15,378 | 19.6 | 19.5 | 409 |
2019 | 78,453 | 63,824 | 14,629 | 18.6 | 41.7 | 436 |
2018 | 78,509 | 64,429 | 14,080 | 17.9 | 43.7 | 458 |
2017 | 76,962 | 63,196 | 13,766 | 17.9 | 5.5 | 459 |
2016 | 74,704 | 61,491 | 13,213 | 17.7 | -0.5 | 465 |
2015 | 78,342 | 63,457 | 14,885 | 19.0 | 16.9 | 426 |
2014 | 84,681 | 67,855 | 16,826 | 19.9 | 14.6 | 403 |
2013 | 84,896 | 64,018 | 20,878 | 24.6 | 18.1 | 307 |
2012 | 88,970 | 71,388 | 17,582 | 19.8 | 32.3 | 406 |
2011 | 81,218 | 68,289 | 12,929 | 15.9 | 38.1 | 528 |
2010 | 64,020 | 53,156 | 10,864 | 17.0 | 24.9 | 489 |
2009 | 60,038 | 51,215 | 8,823 | 14.7 | 10.1 | 581 |
バランスシート分析の重要な観点
**自己資本率の推移と戦略的意味**:
- **安定した水準**:2009年の14.7%から2024年の22.2%へと改善
- **業界標準的**:重機械業界では20%台前半が一般的で、キャタピラーは適正水準
- **景気循環への対応**:不況期でも20%前後を維持し、財務の安定性を確保
- **資本効率の追求**:過剰な自己資本を避け、ROEを最適化
**ROE(自己資本利益率)の特徴**:
- **高い収益性**:好況期には40-55%の高水準ROEを達成
- **景気感応度**:2016年のマイナス、2017年の5.5%など、景気循環の影響を受ける
- **直近の改善**:2022年以降、ROEは40%以上に回復、収益性が大幅改善
- **効率的な資本活用**:適度な財務レバレッジでROEを向上
総合評価
キャタピラーの財務戦略は**「景気循環に対応した柔軟な資本管理」**と評価できます。景気循環型企業としては安定した自己資本率を維持し、好況期には高いROEを実現しています。営業キャッシュフロー創出力の強さと保守的な配当政策により、景気変動下でも配当の持続可能性を確保しています。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- **堅実な配当履歴**:32年連続増配という信頼性の高い実績
- **高い配当成長率**:年平均8%前後の配当成長は、インフレ対策として有効
- **低い配当性向**:26%という保守的な配当性向により、景気後退期でも配当維持が可能
- **強力なブランド力**:世界的な建設・鉱山機械のリーダーとしての競争優位性
配当投資戦略における位置づけ
成長配当銘柄として最適
- **景気回復期の恩恵**:インフラ投資拡大期には株価上昇と配当成長の両方を享受
- **ポートフォリオの成長エンジン**:ディフェンシブ銘柄とのバランスを取る成長配当銘柄
- **グローバル分散**:世界中の建設・鉱山需要から収益を得る地理的分散効果
- **技術革新の恩恵**:自動化・電動化など、建機の技術革新による成長機会
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- **景気循環リスク**:建設・鉱山需要は景気変動の影響を大きく受ける
- **商品価格変動**:原材料価格の上昇、特に鉄鋼価格の影響
- **中国経済依存**:建設需要の大きな部分を占める中国経済の動向
- **為替リスク**:海外売上比率約60%による為替変動影響
- **技術革新リスク**:電動化・自動化への対応遅れによる競争力低下リスク
リスク軽減策:
- **長期投資視点**:景気サイクルを超えた長期保有により、循環の影響を平準化
- **分散投資**:ディフェンシブ銘柄との組み合わせによるポートフォリオバランス
- **タイミング分散**:定期積立による購入価格の平準化
- **配当再投資**:不況期の安値で配当を再投資し、複利効果を最大化
- **業界動向の監視**:建設・鉱山業界の動向を定期的にチェック
まとめ:配当投資家にとってのキャタピラー
キャタピラーは、**32年連続増配という堅実な実績**、**年平均8%の高い配当成長率**、**強固なキャッシュフロー創出能力**、**保守的な配当政策**を兼ね備えた、成長配当投資家にとって魅力的な投資対象です。
景気循環型企業でありながら、グローバルなインフラ需要、強力なブランド力、技術革新への対応により、長期的な配当成長の継続が期待できます。特に、インフラ投資拡大期には株価上昇と配当成長の両方を享受できる可能性があります。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、キャタピラーは**「景気循環を活かした成長配当銘柄」**として、ポートフォリオに組み入れることを検討できる銘柄です。ただし、景気循環の影響を受けやすい特性を理解し、長期投資視点での保有と、ディフェンシブ銘柄とのバランスを考慮した投資が推奨されます。
出典
**MacroTrends.com(主要財務データ):**
- Caterpillar EPS – Earnings per Share 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar Revenue 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar Cash Flow from Operating Activities 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar Net Income 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar Total Assets 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar Share Holder Equity 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar ROE – Return on Equity 2010-2025 (CAT)
- Caterpillar Stock Price History 2010-2025 (CAT)
**配当データ(複数ソース統合):**
- Dividend.com – Caterpillar Dividend Analysis
- Koyfin – Caterpillar Dividend History & Safety
- Stock Analysis – Caterpillar Dividend History & Yield
- NASDAQ – Caterpillar Dividend History
- Caterpillar Investor Relations – Dividend History
**追加財務データ:**
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。