CMCSA:コムキャストの配当推移
コムキャスト(CMCSA)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析)
コムキャスト(Comcast Corporation)は、メディア・通信業界のリーディングカンパニーとして、安定した配当政策を維持してきました。同社はケーブルテレビ、高速インターネット、NBC Universal などの多角的な事業ポートフォリオを通じて、堅実な株主還元を実現しています。MacroTrends.com や Comcast IR ページなどのデータを用いて、その配当支払能力と財務健全性を詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近 90 日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報は Stockprice.com を参照)
データソースの制約について
重要な注意事項:MacroTrends.com では、売上高・営業キャッシュフロー・EPS・純利益・バランスシートなど主要財務データは提供されていますが、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。
そのため、配当成長実績については、Comcast IR ページや Dividend.com など複数のソースを参照して確認しています。本記事では、MacroTrends で確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrends と Comcast IR ページ、および信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年 EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2024 | 3.49% | 6.9% | 29.9% | 1.24 | 35.57 | 4.14 |
2023 | 2.83% | 7.4% | 31.3% | 1.16 | 40.98 | 3.71 |
2022 | 2.52% | 6.9% | 89.3% | 1.08 | 42.82 | 1.21 |
2021 | 2.11% | 5.2% | 33.2% | 1.01 | 47.88 | 3.04 |
2020 | 2.31% | 5.5% | 42.1% | 0.96 | 41.47 | 2.28 |
2019 | 2.37% | 5.8% | 32.2% | 0.91 | 38.46 | 2.83 |
2018 | 2.12% | 41.0% | 34.0% | 0.86 | 40.60 | 2.53 |
2017 | 1.55% | 13.5% | 12.8% | 0.61 | 39.45 | 4.75 |
2016 | 1.24% | 10.3% | 30.2% | 0.5375 | 43.33 | 1.78 |
2015 | 1.17% | 8.8% | 30.1% | 0.4875 | 41.67 | 1.62 |
2014 | 0.80% | 15.4% | 21.1% | 0.3375 | 42.00 | 1.60 |
2013 | 1.07% | 20.0% | 30.5% | 0.3900 | 36.50 | 1.28 |
2012 | 1.29% | 19.3% | 28.5% | 0.3250 | 25.28 | 1.14 |
2011 | 1.23% | 44.1% | 36.3% | 0.2723 | 22.22 | 0.75 |
2010 | 0.95% | 42.6% | 29.1% | 0.1890 | 20.00 | 0.65 |
2009 | 0.93% | 2.0% | 21.0% | 0.1325 | 14.19 | 0.63 |
2008 | 0.90% | – | 18.8% | 0.13 | 14.44 | 0.69 |
* 配当データは Comcast IR ページ(2022-2024 年の実績)および Dividend.com(2021 年以前の調整済みデータ)より統合。
** EPS と平均株価は MacroTrends.com より推計
着実な配当成長の実績
コムキャスト(CMCSA)は、メディア・通信業界の大手企業として、2007 年以降、18 年連続で配当を増額してきました。2008 年から 2024 年にかけて、1 株配当は 0.13 ドルから 1.24 ドルへと 854% 増加し、年平均成長率は約 14.8% という堅実な成長を記録しています。
特に注目すべきは、2010 年代前半の積極的な増配戦略です。NBC Universal の買収(2011 年完全子会社化)やケーブル事業の拡大により事業基盤が強化され、2009 年から 2014 年にかけて年率 10%以上の配当成長を維持しました。近年は成熟化に伴い増配率は穏やかになりましたが、着実な成長を継続しています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益を M(百万ドル)単位、営業CFマージンは % 単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 123,731 | 27,673 | 22.4 | 16,192 |
2023 | 121,572 | 28,501 | 23.4 | 15,388 |
2022 | 121,427 | 26,413 | 21.8 | 5,370 |
2021 | 116,385 | 29,146 | 25.0 | 14,159 |
2020 | 103,564 | 24,737 | 23.9 | 10,534 |
2019 | 108,942 | 25,697 | 23.6 | 13,057 |
2018 | 94,507 | 24,297 | 25.7 | 11,731 |
2017 | 85,029 | 21,261 | 25.0 | 22,735 |
2016 | 80,736 | 19,691 | 24.4 | 8,678 |
2015 | 74,510 | 19,485 | 26.1 | 8,163 |
2014 | 68,775 | 16,945 | 24.6 | 8,380 |
2013 | 64,657 | 14,160 | 21.9 | 6,816 |
2012 | 62,570 | 14,854 | 23.7 | 6,203 |
2011 | 55,842 | 14,345 | 25.7 | 4,160 |
2010 | 37,937 | 11,179 | 29.5 | 3,635 |
2009 | 35,756 | 10,281 | 28.8 | 3,638 |
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
コムキャストの配当支払能力は極めて堅固です。2024 年の営業キャッシュフローは 277 億ドルで、配当支払額約 48 億ドルを大幅に上回っています。これは 5.7 倍の配当カバー比率 を意味し、配当の持続可能性は極めて高いと評価できます。
配当支払余力の推移(2010 年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額を M$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 27,673 | 4,846 | 5.7 |
2023 | 28,501 | 4,812 | 5.9 |
2022 | 26,413 | 4,784 | 5.5 |
2021 | 29,146 | 4,699 | 6.2 |
2020 | 24,737 | 4,440 | 5.6 |
2019 | 25,697 | 4,195 | 6.1 |
2018 | 24,297 | 3,990 | 6.1 |
2017 | 21,261 | 2,919 | 7.3 |
2016 | 19,691 | 2,618 | 7.5 |
2015 | 19,485 | 2,455 | 7.9 |
2014 | 16,945 | 1,769 | 9.6 |
2013 | 14,160 | 2,079 | 6.8 |
2012 | 14,854 | 1,766 | 8.4 |
2011 | 14,345 | 1,515 | 9.5 |
2010 | 11,179 | 1,066 | 10.5 |
配当支払余力の分析結果:
- 圧倒的なカバー比率:過去 15 年間で 4.9〜10.5 倍を維持し、常に配当を十分すぎるほどカバー
- 安定した創出力:営業CFは 100 億ドル以上を安定的に創出、2020 年代は 250 億ドル超で推移
- 戦略的な配当政策:高いカバー比率は、成長投資と株主還元のバランスを重視した結果
強固なキャッシュフロー創出力と資金配分戦略
以下の表では、営業CF、フリーCF、FCF転換率を示しています。
年度 | 営業CF (M$) | フリーCF (M$) | FCF転換率 (%) |
---|---|---|---|
2024 | 27,673 | 15,376 | 55.6 |
2023 | 28,501 | 16,122 | 56.6 |
2022 | 26,413 | 15,457 | 58.5 |
2021 | 29,146 | 19,000* | 65.2 |
2020 | 24,737 | 13,700* | 55.4 |
* 2020-2021 年は MacroTrends 以外のソースからの推計値
キャッシュフロー分析のポイント
営業キャッシュフロー:
- 業界トップクラスの創出力:年間 250 億ドル超の営業CFは通信・メディア業界でトップクラス
- 高い利益率:営業CFマージン 20% 超を安定的に維持
- ストリーミング競争下でも堅調:Netflix 等との競争激化でも安定したCF創出
フリーキャッシュフロー:
- 潤沢な FCF:年間 150 億ドル超の FCF を安定的に創出
- 効率的な設備投資:インフラ投資を継続しながら 50% 超の FCF 転換率を維持
- 株主還元の原資:配当と自社株買いの原資として十分な水準
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本を M$(百万ドル)単位、自己資本率および ROE を % 単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 270,000* | 184,000* | 86,038 | 31.9 | 19.1 | 214 |
2023 | 264,811 | 181,585 | 83,226 | 31.4 | 18.4 | 218 |
2022 | 257,275 | 175,648 | 81,627 | 31.7 | 6.1 | 215 |
2021 | 275,905 | 178,415 | 97,490 | 35.3 | 14.7 | 183 |
2020 | 273,869 | 182,131 | 91,738 | 33.5 | 12.2 | 199 |
2019 | 263,414 | 179,540 | 83,874 | 31.8 | 16.5 | 214 |
2018 | 251,677 | 179,206 | 72,471 | 28.8 | 16.3 | 247 |
2017 | 259,917 | 190,455 | 69,462 | 26.7 | 38.0 | 274 |
2016 | 242,488 | 186,316 | 56,172 | 23.2 | 15.7 | 332 |
2015 | 230,946 | 176,968 | 53,978 | 23.4 | 15.5 | 328 |
2014 | 229,131 | 176,061 | 53,070 | 23.2 | 15.9 | 332 |
2013 | 216,299 | 165,243 | 51,056 | 23.6 | 13.7 | 324 |
2012 | 215,942 | 166,137 | 49,805 | 23.1 | 12.7 | 334 |
2011 | 188,088 | 140,431 | 47,657 | 25.3 | 8.8 | 295 |
2010 | 165,968 | 121,539 | 44,429 | 26.8 | 8.3 | 274 |
* 2024 年は直近四半期データからの推計値
バランスシート分析の重要な観点
自己資本率の推移と戦略的意味:
- 安定した財務基盤:自己資本率は 23〜35% の範囲で推移、メディア業界では健全な水準
- 大型買収の影響:2010 年代の買収により総資産が急拡大、自己資本率は一時低下
- 回復傾向:2020 年代に入り自己資本率は 30% 超に回復、財務健全性が向上
- 業界比較:メディア・通信業界では 25〜35% が標準的で、コムキャストは適正範囲内
ROE(自己資本利益率)の特徴:
- 安定した収益性:2022 年を除き 12〜20% の安定した ROE を維持
- 2017 年の異常値:38.0% は税制改革による一時的な利益押し上げ効果
- 2022 年の低下:6.1% は一時的な減損処理の影響、基調は健全
- 効率的な資本活用:適度な財務レバレッジを活用して株主価値を創造
総合評価
コムキャストの財務戦略は「安定性と成長性のバランス」を重視したものと評価できます。自己資本率 30% 超という健全な財務基盤を維持しながら、積極的な成長投資と株主還元を両立させています。特に、年間 250 億ドル超の営業キャッシュフロー創出力は、配当の安定性と将来の成長投資の両方を支える強固な基盤となっています。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- 安定した配当成長:18 年連続増配の実績と健全な配当性向(30% 前後)
- 魅力的な配当利回り:現在の年間配当水準($1.32)は市場平均を上回る水準
- 強固な事業基盤:ケーブル・インターネット事業の安定収益とコンテンツ事業の成長性
- 潤沢なキャッシュフロー:配当カバー比率 5 倍超の圧倒的な支払能力
配当投資戦略における位置づけ
成長配当銘柄として最適
- バランス型投資:高配当と成長性を兼ね備えた銘柄として魅力的
- セクター分散効果:メディア・通信セクターへの分散投資として有効
- インフレ対応力:価格転嫁力と配当成長によりインフレへの対応が可能
- 中長期保有適性:安定した事業基盤と成長投資により長期保有に適する
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- ストリーミング競争:Netflix、Disney+ 等との競争激化によるコンテンツコスト上昇
- コードカッティング:ケーブルテレビ契約者の減少トレンド
- 5G 投資負担:次世代通信インフラへの大規模投資の必要性
- 規制リスク:ネット中立性規制やメディア集中規制の強化
- 景気感応度:広告収入の景気変動への感応度
リスク軽減策:
- 事業の多角化:ケーブル、インターネット、コンテンツ、テーマパークの多角的収益源
- ブロードバンド事業の成長:高速インターネット需要の継続的な拡大
- Peacock の成長:自社ストリーミングサービスによる新たな収益機会
- コスト管理の徹底:効率的な運営による利益率の維持・向上
- 段階的な投資アプローチ:配当を維持しながらの計画的な成長投資
まとめ:配当投資家にとってのコムキャスト
コムキャストは、18 年連続増配の実績、魅力的な配当利回り、年間 250 億ドル超の営業キャッシュフロー創出力を兼ね備えた、配当重視投資家にとって魅力的な投資対象です。
メディア・通信業界の構造変化という課題に直面しながらも、ブロードバンド事業の成長、コンテンツ事業の多角化、効率的な資本配分により、安定した配当成長を継続しています。特に、配当性向 30% 前後という保守的な水準は、将来の成長投資余地を残しながら、安定的な株主還元を可能にしています。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、コムキャストは「高配当利回りと成長性を両立する優良配当銘柄」として、ポートフォリオの中核に位置づけることができる銘柄です。メディア業界の変革期にあっても、強固な財務基盤と多角的な事業ポートフォリオにより、長期的な配当成長の継続が期待できます。
出典
MacroTrends.com(主要財務データ):
- Comcast EPS – Earnings per Share 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast Revenue 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast Cash Flow from Operating Activities 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast Net Income 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast Total Assets 2010-2024 (CMCSA)
- Comcast Total Liabilities 2010-2022 (CMCSA)
- Comcast Share Holder Equity 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast ROE – Return on Equity 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast Free Cash Flow 2010-2025 (CMCSA)
- Comcast Shares Outstanding 2010-2025 (CMCSA)
配当データ(複数ソース統合):
- NASDAQ – Comcast Dividend History
- Dividend.com – Comcast Dividend Analysis
- Koyfin – Comcast Dividend History & Safety
- Stock Analysis – Comcast Dividend History & Yield
- Simply Wall St – Comcast Dividend Analysis
追加財務データ:
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。