DD:デュポンの配当推移

素材,配当

デュポン(DD)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析)

デュポン(DuPont de Nemours, Inc.)は、220年を超える歴史を持つアメリカの化学大手企業です。近年の大規模な事業再編を経て、現在は特殊化学品・先端材料に特化した企業として事業展開しています。一次情報(同社10-K/決算資料)およびMacroTrends等のデータを用いて同社の財務指標と配当実績を分析します。

まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

(株価はGoogle Finance関数。配当はIRの配当履歴・10-Kを優先し、整合を確認)

重要な注意事項:データの範囲について

本記事で提示する財務および配当データは、2019年の再編以降(2019~2024年の6年)に統一しています。
それ以前のデータは、Dow/DuPont分離前の前身体制を含むため、現在のDDとは直接比較できない場合があります。

データソースの制約について

重要な注意事項:MacroTrendsでは配当の長期テーブルが限定的なため、配当総額・DPS・配当性向は同社IR/10-Kの一次情報で検証しています。財務(売上・営業CF・バランスシート等)は10-K/ARの継続事業ベースを優先しています(2019~2021年は2021年10-K、2022~2024年は2024年10-K)。

配当成長の実績(2019~2024・複数ソース統合)

年平均の配当利回り・配当成長率・配当性向・年間一株配($)の推移です。DPSはIRの配当宣言額から集計(2019年は後半2回分)し、EPSは10-Kの希薄化後EPS(総額)を使用しています。:contentReference[oaicite:1]{index=1}

配当データ* 平均株価** 年EPS**
平均利回り 成長率 配当性向 年間配当
2024 2.24% 5.6% 91% 1.52 67.91 1.67
2023 2.06% 9.1% 153% 1.44 69.84 0.94
2022 1.78% 10.0% 11% 1.32 74.12 11.75
2021 1.75% 0.0% 10% 1.20 68.75 11.89
2020 1.99% 100.0% 1.20 60.45 -4.01
2019 0.93% 90% 0.60 64.68 0.67

* DPSはIR配当宣言額(2019年は後半2回=$0.60、2020~2021=$1.20、2022=$1.32、2023=$1.44、2024=$1.52)。配当性向はEPS≤0の年は算出不可とし「—」。
** EPSと平均株価は10-K/MacroTrendsより(EPSは希薄化後EPS総額)。:contentReference[oaicite:3]{index=3}

連続増配年数
4年
(2022→2025、2025年は$0.41へ増配発表済):contentReference[oaicite:4]{index=4}
配当成長率(平均)
約6.1%
(2020→2024のCAGR)
2024年配当性向
91%
2024年配当
$1.52

事業転換期における配当戦略

デュポンは連続増配を継続(22年$0.33→23年$0.36→24年$0.38→25年$0.41/四半期)しています。2019~2024年のDPSは$0.60→$1.52へ増加。2024年の配当性向は約91%で、再編に伴うEPSの振れを反映します。

財務パフォーマンスと成長見通し

主要財務指標の推移(継続事業、M$)

売上高は2019~2021年を2021年10-K、2022~2024年を2024年10-Kに整合。営業CFは連結キャッシュフローから。:contentReference[oaicite:6]{index=6}

年度 売上高 (M$) 営業CF (M$) 同マージン (%) 純利益 (M$)
2024 12,386 2,321 18.7 738
2023 12,068 2,191 18.2 462
2022 13,017 1,249 9.6 5,917
2021 16,653 2,281 13.7 6,515
2020 14,338 4,095 28.6 -2,923
2019 15,436 1,409 9.1 600

配当支払能力の分析

営業キャッシュフローによる配当カバー分析

2024年の営業CFは$2,321M、配当支払総額は約$635Mでカバー比率3.7倍。2021~2024年は概ね2~4倍で安定。2019年は再編影響により配当が通年基準(旧DWDP分を含む)で計上され、カバー比率0.9倍と特殊。

配当支払余力の推移(2019~2024)

営業CF・年間配当支払額はM$、カバー比率は倍数。

年度 営業CF (M$) 年間配当支払額 (M$) 配当カバー比率
2024 2,321 635 3.7
2023 2,191 651 3.4
2022 1,249 652 1.9
2021 2,281 630 3.6
2020 4,095 882 4.6
2019 1,409 1,611 0.9

配当支払額は10-Kの「Dividends paid to stockholders」より。2019年はDWDP分を含む旨が明記。

事業ポートフォリオの変革と将来展望

キャッシュフローの構成(継続事業)。投資CF・財務CFは(-)が流出。

年度 営業CF (M$) 成長率 (%) 投資CF (M$) 財務CF (M$)
2024 2,321 5.9 -849 -1,847
2023 2,191 75.4 172 -2,989
2022 1,249 -45.2 9,004 -7,646
2021 2,281 -44.3 -2,401 -6,507
2020 4,095 190.6 -202 3,238
2019 1,409 -2,313 -11,550

2024~2022は2024年10-K、2021~2019は2021年10-Kのキャッシュフロー要約より。

バランスシートと財務健全性(連結、M$)

自己資本率=株主資本/総資産、負債比率=総負債/株主資本、ROEは当期純利益/平均自己資本の簡便計算。

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 (%) ROE (%) 負債比率 (%)
2024 36,636 12,843 23,793 64.9 3.0 54.0
2023 38,552 13,827 24,725 64.1 1.8 55.9
2022 41,355 14,338 27,017 65.3 21.9 53.1
2021 45,707 18,657 27,050 59.2 19.7 69.0
2020 70,904 31,834 39,070 55.1 -7.3 81.5
2019 69,349 27,793 41,556 59.9 1.4 66.9

各年末バランスシート:2024/2023は2024年10-K、2022/2021は2022年10-K、2020/2019は2020年10-K。

総合評価

自己資本比率は概ね65%前後と健全、営業CFは2021年以降2B$前後で安定。2025年11月にエレクトロニクス事業のスピンオフ(予定)を進行中(ウォーター分離は撤回)。分離後は「New DuPont」と電子材料会社(Qnity™)に分かれ、資本効率改善と事業集中が見込まれます。

配当重視投資家にとっての投資価値

インカム投資家への魅力:

  1. 安定した配当方針:22年以降の連続増配と2~4倍の配当カバー
  2. 事業転換の最終段階:エレクトロニクス分離でポートフォリオ明確化
  3. 技術優位性:先端材料・電子材料の知財基盤
  4. 成長分野への注力:半導体・回路材料、フィルム等

配当投資戦略における位置づけ

成長性重視の配当銘柄として検討

  • ポートフォリオの成長枠としての位置づけ
  • 化学・材料セクターの分散先
  • 分離後の資本政策・DPS方針を追跡
  • 収益回復局面での配当成長余地

投資リスクと対策

主要リスク要因:

  1. 景気感応度(半導体/電子需要)
  2. 事業分離の実行リスク(タイムライン変更等)
  3. 原材料・エネルギーコスト変動
  4. 技術・競争環境の変化
  5. 高い配当性向の年(2023/2024)

リスク軽減策:

  • 分離完了後(2025/11予定)の事業/配当方針を再評価
  • 半導体市況・在庫循環のモニタリング
  • 配当性向の正常化確認(EPS回復とともに)
  • 分散投資の徹底

まとめ:配当投資家にとってのデュポン

2019年以降の再編を経て、デュポンは配当成長の継続可能性と健全なBSを両立。2025年のエレクトロニクス分離により、事業集中と資本効率の向上が期待されます。

DDは、再編後の安定CF×漸進的増配を特徴とする「成長性寄りの配当銘柄」。2025年の事業分離で更に見通しが明確化する可能性があり、中期保有でのDPSの持続性を重視する投資家と相性が良い銘柄です。

免責事項
本記事は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

Posted by 南 一矢