GM:ゼネラルモーターズの配当推移
ゼネラルモーターズ(General Motors Company)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
| 年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
| 平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
| 2025* | 1.11% | 25% | 11% | 0.60 | 58.0 | 5.56 |
| 2024 | 1.05% | 33% | 8% | 0.48 | 45.7 | 6.37 |
| 2023 | 1.04% | 100% | 5% | 0.36 | 34.7 | 7.32 |
| 2022 | 0.45% | – | 3% | 0.18 | 40.2 | 6.13 |
| 2021 | – | – | – | – | 55.9 | 6.7 |
| 2020 | 1.25% | -75% | 9% | 0.38 | 30.5 | 4.33 |
| 2019 | 4.04% | 0% | 33% | 1.52 | 37.6 | 4.57 |
| 2018 | 4.02% | 0% | 27% | 1.52 | 37.8 | 5.53 |
| 2017 | 4.04% | 0% | -58% | 1.52 | 37.6 | -2.6 |
| 2016 | 4.86% | 10% | 25% | 1.52 | 31.3 | 6 |
| 2015 | 4.02% | 15% | 23% | 1.38 | 34.3 | 5.91 |
| 2014 | 3.47% | – | 73% | 1.2 | 34.6 | 1.65 |
※2025年は2025年Q3までの実績と会社・市場の想定を踏まえた推計を含みます。[1]
General Motors (GM)の配当と財務分析:関税・EV投資の逆風下でも株主還元を拡大
変動する配当の実績と2025年の状況
General Motors(GM)の配当実績は、自動車産業の構造的変化や会社独自の財務戦略により大きく変動してきました。2009年の破産と再建後しばらく配当を支払わず、2014年に株式公開後初の配当(年間$1.20)を開始しました。その後徐々に増配し2016年には$1.52に達した後、同水準を2019年まで維持。しかし、2020年のCOVID-19パンデミックによる事業中断と需要の急減により、大幅な配当削減(-75%)を実施して$0.38に引き下げました。さらに2021年には電動化投資とパンデミックからの回復を優先し、配当を完全に停止。2022年には$0.18で配当を再開し、2023年に$0.36、2024年に$0.48と段階的に回復しました。
2025年の配当状況:2025年は四半期配当が$0.12から$0.15へと25%増額され、年間では$0.60水準となっています。2025年2月の増配と同時に、GMは新たに$6 billion規模の自社株買いを公表しており、配当と自社株買いを組み合わせた総合還元を強化する姿勢が明確です。[2]
配当成長率の推移(2025年Q3時点)
GMの配当成長率は、再建フェーズと産業転換期を反映して不規則なパターンを示しています:
- 2010〜2013年:破産再建後の財務基盤強化期で無配
- 2014年:IPO後初の配当導入($1.20)
- 2015〜2016年:成長期で着実な増配(15%、10%)
- 2017〜2019年:配当水準の維持期($1.52で固定)
- 2020年:パンデミックの影響による大幅減配(-75%)
- 2021年:投資優先で配当停止
- 2022〜2025年:段階的回復期(2023年+100%、2024年+33%、2025年+25%)
2025年の増配は、関税やEV投資など複数の不確実性が残る環境下でも実施されました。配当の水準自体はまだ控えめですが、増配の再開と自社株買いの併用は、資本配分の柔軟性と株主重視の姿勢を示すシグナルといえます。[2]
配当性向の持続可能性(2025年Q3反映)
配当性向(「1株配当 ÷ EPS」)は、GMの配当政策における保守的なアプローチを示しています。配当を導入した2014年は73%と比較的高い水準でしたが、その後は安定的な低水準を維持してきました。
- 2015〜2016年:23〜25%の健全な水準
- 2017年:EPSがマイナスとなり計算上はマイナスに
- 2018〜2019年:27〜33%の安定した水準
- 2020年:配当削減により9%に低下
- 2022〜2024年:配当再開後も3〜8%と保守的な水準
- 2025年:増配後も、依然として相対的に低い水準にとどまる見通し
2025年は増配と大型の自社株買いを同時に進める年であり、会社は通期の純利益見通しや投資計画とのバランスを強調しています。2025年の純利益見通し(会社計画)は$11.2〜$12.5 billion、設備投資は$10〜$11 billionのレンジとされており、配当はあくまで余力の範囲で段階的に回復させるスタンスが読み取れます。[2]
財務パフォーマンスと成長見通し(2025年Q3反映)
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。
主要財務指標の推移(2025年推計含む)
| 年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2025* | 188,000 | 18,000 | 10 | 8,500 |
| 2024 | 187,442 | 20,129 | 11 | 6,008 |
| 2023 | 171,842 | 20,930 | 12 | 10,127 |
| 2022 | 156,735 | 16,043 | 10 | 9,934 |
| 2021 | 127,004 | 15,188 | 12 | 10,019 |
| 2020 | 122,485 | 16,670 | 14 | 6,427 |
| 2019 | 137,237 | 15,021 | 11 | 6,732 |
| 2018 | 147,049 | 15,256 | 10 | 8,014 |
| 2017 | 145,588 | 17,328 | 12 | -3,864 |
| 2016 | 149,184 | 16,607 | 11 | 9,427 |
| 2015 | 135,725 | 11,769 | 9 | 9,687 |
| 2014 | 155,929 | 10,061 | 6 | 3,949 |
| 2013 | 155,427 | 12,630 | 8 | 5,346 |
| 2012 | 152,256 | 10,605 | 7 | 6,188 |
| 2011 | 150,276 | 8,166 | 5 | 9,190 |
| 2010 | 135,592 | 6,780 | 5 | 6,172 |
*2025年は2025年Q3までの実績と通期見通しに基づく推計値。[3]
収益性と効率性の分析(関税・EV投資の影響)
GMの財務データからは、自動車産業の景気循環性と同社の戦略的転換が見て取れます。2024年は売上高が過去最高水準に近づき、営業キャッシュフローも高水準を維持しました。
2025年の焦点は、関税コストと電動化投資を抱えながら、既存の北米中心の収益基盤でどこまで吸収できるかです。2025年Q3の決算では市場予想を上回る調整EPSを確保し、通期の見通しを引き上げる動きも報じられています。一方で、関税影響の見積もりは依然として大きな変動要因であり、会社の想定レンジは状況に応じて調整される可能性があります。[4]
安定したキャッシュフロー基盤(2025年見通し含む)
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。
| 年度 | 営業CF | 成長率 | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|---|
| 2025* | 18,000 | -11 | -22,000 | -8,000 |
| 2024 | 20,129 | -4 | -20,517 | 1,938 |
| 2023 | 20,930 | 30 | -14,663 | -6,353 |
| 2022 | 16,043 | 6 | -17,882 | 383 |
| 2021 | 15,188 | -9 | -16,355 | 1,744 |
| 2020 | 16,670 | 11 | -21,826 | 5,552 |
| 2019 | 15,021 | -2 | -10,899 | -4,677 |
| 2018 | 15,256 | -12 | -20,763 | 11,454 |
| 2017 | 17,328 | 4 | -27,572 | 12,584 |
| 2016 | 16,607 | 41 | -35,643 | 17,077 |
| 2015 | 11,769 | 17 | -27,710 | 13,608 |
| 2014 | 10,061 | -20 | -15,359 | 5,675 |
| 2013 | 12,630 | 19 | -14,362 | 3,731 |
| 2012 | 10,605 | 30 | -3,505 | -4,741 |
| 2011 | 8,166 | 20 | -12,740 | -358 |
| 2010 | 6,780 | – | 1,233 | -9,770 |
*2025年は2025年Q3までの実績と通期見通しに基づく推計値。[3]
GMの強みは、安定した営業キャッシュフロー生成能力にあります。2023〜2024年は$20,000M超の営業CFを維持し、パンデミック後の回復局面でも高い収益力を示しました。2025年は関税や電動化投資の負担で短期的な変動があり得るものの、配当と自社株買いを同時に進められる水準のキャッシュ創出力を維持できるかが注目点です。[2][3]
財務基盤と資本構成(2025年見通し)
以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。
| 年度 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 | 負債比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025* | 285,000 | 218,000 | 67,000 | 24 | 325 |
| 2024 | 279,761 | 214,171 | 65,590 | 23 | 327 |
| 2023 | 273,064 | 204,757 | 68,307 | 25 | 300 |
| 2022 | 264,037 | 191,753 | 72,284 | 27 | 265 |
| 2021 | 244,718 | 178,903 | 65,815 | 27 | 272 |
| 2020 | 235,194 | 185,517 | 45,030 | 19 | 412 |
| 2019 | 228,037 | 182,080 | 41,792 | 18 | 436 |
| 2018 | 227,339 | 184,562 | 38,860 | 17 | 475 |
| 2017 | 212,482 | 176,282 | 35,001 | 16 | 504 |
| 2016 | 221,690 | 177,615 | 43,836 | 20 | 405 |
| 2015 | 194,338 | 154,015 | 39,871 | 21 | 386 |
| 2014 | 177,501 | 141,477 | 35,457 | 20 | 399 |
| 2013 | 166,344 | 123,170 | 42,607 | 26 | 289 |
| 2012 | 149,422 | 112,422 | 36,244 | 24 | 310 |
| 2011 | 144,603 | 105,612 | 38,120 | 26 | 277 |
| 2010 | 138,898 | 101,739 | 36,180 | 26 | 281 |
*2025年は2025年Q3までの実績と通期見通しに基づく推計値。[3]
2021年以降の自己資本率の回復と負債比率の改善は、電動化投資と株主還元の両立に向けた土台といえます。2025年は増配と$6 billionの自社株買いを進めながら、投資計画を維持する年であり、資本効率と財務規律のバランスがより重要になります。[2][3]
まとめ:長期配当投資家にとってのGMとは?(2025年Q3反映版)
General Motors(GM)は、自動車産業の構造的転換期において、既存事業のキャッシュ創出力を活用しながら電動化へ投資し、同時に株主還元を段階的に回復させる戦略を採っています。2025年は四半期配当の25%増額と$6 billionの自社株買いが示すとおり、配当単体よりも「配当+自社株買い」の総合還元を重視する色合いが強まっています。[2]
同社の強みは以下の点にあります:
- 安定した営業キャッシュフロー生成能力とパンデミック後の収益回復
- 自己資本率の改善による財務の柔軟性
- 配当性向が低めに推移してきたことによる配当の安全性と増配余地
- 北米中心の強固な収益基盤(ピックアップトラック・SUV等)
- 2025年の増配と自社株買いによる株主還元強化
一方で、注意すべき点としては:
- 過去に配当を停止・削減した実績があること(2020〜2021年)
- 電動化・ソフトウェア化の投資負担と短期収益のブレ
- 自動車産業特有の景気循環性と高い固定費構造
- 規制・貿易政策(関税を含む)の不確実性
配当投資家としては、短期の利回りよりも、景況・政策変動のなかで継続的に増配と自社株買いを両立できるか、そして電動化投資が中長期の収益に結びつくかを軸に評価するアプローチが適切でしょう。[4]
よくある質問(2025年Q3反映)
関税の影響でGMの配当は安全ですか?
2025年は関税コストの不確実性が残る一方で、GMは四半期配当の増額と新たな自社株買いを同時に決定しています。配当と自社株買いの規模・タイミングを柔軟に調整できる点は、環境変化への耐性を高める要素です。ただし、関税見通しが急変する場合には、還元の“配分”が見直される可能性は念頭に置くべきでしょう。[2][4]
$6 billionの自社株買いと配当政策の関係は?
2025年2月に示された新たな$6 billionの自社株買いは、増配と並行して総合還元を高める施策です。発行株式数の圧縮を通じて1株当たり指標の改善が期待できるため、配当成長の“土台”を強化する効果も見込まれます。[2]
ミニ解説:2025年のGMは「配当の段階回復」と「大規模な自社株買い」を組み合わせ、関税・電動化投資の不確実性に対応しながら株主還元の総量と柔軟性を高める局面にあります。[2]
【注】(出典リンク)
- 2025年配当水準・配当性向の前提(2025年Q3時点) → GM Dividend History → MarketWatch(2025年2月報道) ↩(確認日:2025-12-06)
- 四半期配当25%増額($0.12→$0.15)と$6B自社株買い(2025年2月) → GM Dividend History → GM Quarterly Results → Reuters(2025-02-26) ↩(確認日:2025-12-06)
- 売上高・キャッシュフロー・BSの長期推移(2010-2024通期) → GM Annual Reports → SEC 10-K Filings(GM) ↩(確認日:2025-12-06)
- 2025年Q3決算・関税を含む事業環境の最新整理 → GM Quarterly Results → AP(2025年10月の決算報道) → Financial Times(2025年10月の決算報道) ↩(確認日:2025-12-06)

