HON:ハネウェルインターナショナルの配当推移

資本財,配当

ハネウェルインターナショナル(Honeywell International Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

最新情報(2025年12月更新): ハネウェルは2025年9月に四半期配当を1株あたり$1.19へ引き上げ、配当の年率は$4.76となりました。[1] これは2010年以降で15回目の増配にあたり、長期の株主還元姿勢が継続していることを示します。[1] また、先進材料事業は2025年10月30日に「Solstice Advanced Materials」としてスピンオフが完了し、残る事業についても自動化と航空宇宙を分離する計画が2026年後半に向けて進行中です。[2][3]

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2025* 2.0%前後 5%前後 43%前後 4.76 (集計中) 10.55
2024 2.11% 5% 45% 4.52 207.3 10.01
2023 2.13% 5% 49% 4.32 195.5 8.89
2022 2.05% 5% 55% 4.17 193.6 7.58
2021 1.73% 4% 48% 3.97 218.1 8.24
2020 2.22% 8% 54% 3.77 163.8 6.99
2019 2.04% 10% 40% 3.63 165 9.08
2018 2.10% 12% 34% 3.36 145.6 9.88
2017 2.12% 12% 137% 3.06 129 2.24
2016 2.30% 14% 39% 2.74 106.7 7.01
2015 2.21% 15% 36% 2.45 97.3 6.82
2014 2.09% 11% 35% 2.15 89.4 6.14
2013 2.23% 10% 34% 1.87 75.5 5.49
2012 2.72% 12% 41% 1.68 56.2 4.09
2011 2.67% 13% 52% 1.53 51.4 2.94
2010 2.88% 0% 47% 1.37 42 2.91
2009 3.71% 10% 59% 1.21 32.6 2.05
2008 2.39% 10% 102% 1.21 46 1.19

*2025年は2025年9月に発表された四半期配当$1.19(年率$4.76)と、2025年通期の調整EPSガイダンス中央値をもとにした参考値です。[1][4]

15年超の連続増配を支える事業の強さ

ハネウェル(HON)の配当実績は、産業コングロマリットの中でも安定感のある部類に入ります。2010年代以降、増配のペースは緩急を伴いながらも、景気後退局面を含めて株主還元を継続してきました。[5]

2025年9月の増配は、企業再編プロセスの只中で行われた点が重要です。先進材料の分離を完了させつつも、既存株主への還元を維持する姿勢が確認でき、配当の“急ブレーキ”リスクは相対的に低いと考えられます。[1][2]

配当成長率の進化と企業再編への対応

ハネウェルの配当成長率は、長期では堅実に推移してきました:

  • 2008〜2010年:金融危機後の慎重な増配・据え置き
  • 2011〜2016年:年間10%前後の比較的高い伸び
  • 2017〜2019年:安定成長
  • 2020〜2024年:4〜8%程度の緩やかな成長
  • 2025年:企業再編を進めながらも増配を継続[1]

2025年10月に先進材料がスピンオフされ、今後は自動化と航空宇宙の分離が2026年後半を目線に進行します。[2][3] この過程では短期的に配当成長のペースが落ちる可能性はありますが、事業の“純粋化”によって資本配分の透明性が高まり、分割完了後は各社の特性に合った配当政策が再設計される余地があります。

配当性向の健全性

近年のハネウェルの配当性向は概ね40〜55%の範囲で推移しており、2025年も調整EPS見通しに対して過度な負担にはなっていません。[4] 増配の原資は、航空宇宙のアフターマーケット拡大やビル・産業領域の自動化需要、エネルギー転換関連の投資回収など、複数の収益ドライバーに支えられています。

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2025(上半期) 20,200 3,200 16 3,450
2024 38,498 6,097 16 6,382
2023 36,662 5,340 15 5,847
2022 35,466 5,274 15 5,235
2021 34,392 6,038 18 5,756
2020 32,637 6,208 19 4,883
2019 36,709 6,897 19 6,630
2018 41,802 6,434 15 7,406
2017 40,534 5,966 15 1,721
2016 39,302 5,498 14 5,425
2015 38,581 5,519 14 5,383
2014 40,306 5,080 13 4,877
2013 39,055 4,335 11 4,363
2012 37,665 3,517 9 3,221
2011 36,529 2,833 8 2,309
2010 32,350 4,203 13 2,271
2009 29,951 3,946 13 1,639
2008 36,556 3,791 10 901

堅調な業績と分離後を見据えたガイダンス

2025年Q2の売上高は104億ドル(前年同期比8%増、オーガニック5%増)となり、調整EPSは$2.75とガイダンスを上回りました。[4] 2025年通期の調整EPSガイダンスは$10.45〜10.65へ引き上げられており、先進材料の分離後を見据えた形で見通しが整理されています。[4]

2024年は資本配分額が過去最高の146億ドルに達したとされ、配当と自社株買い、成長投資のバランスを取りながらポートフォリオを組み替える姿勢が鮮明です。[5]

戦略的資本配分と成長投資

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2025(上半期) 3,200 -5,200 3,400
2024 6,097 14 -10,157 6,839
2023 5,340 1 -1,293 -5,763
2022 5,274 -13 -93 -6,330
2021 6,038 -3 -1,061 -8,254
2020 6,208 -10 -987 -81
2019 6,897 7 -533 -6,600
2018 6,434 8 1,027 -5,032
2017 5,966 9 -3,574 -3,516
2016 5,498 0 -3,342 346
2015 5,519 9 -6,514 37
2014 5,080 17 -1,876 -2,328
2013 4,335 23 -1,959 -433
2012 3,517 24 -1,428 -1,206
2011 2,833 -33 -611 -1,114
2010 4,203 7 -2,269 -2,047
2009 3,946 4 -1,133 -2,152
2008 3,791 -3 -2,023 -1,370

2024年の投資CFの大きな振れは、成長分野への買収と非中核事業の整理を同時に進めた結果とみられます。[5] 先進材料の分離を経て、2026年後半に予定される自動化・航空宇宙の分離に向けて、資本配分の優先順位がより明確化される局面です。[2][3]

健全な財務基盤と分割に向けた準備

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 ROE
2025(Q2) 78,500 58,200 20,300 26 34
2024 75,196 56,035 19,161 25 33
2023 61,525 45,084 16,441 27 36
2022 62,275 44,949 17,326 28 30
2021 64,470 45,221 19,249 30 30
2020 64,586 46,796 17,549 27 28
2019 58,679 39,973 18,494 32 36
2018 57,773 39,415 18,180 31 41
2017 59,470 42,805 16,502 28 10
2016 54,146 34,599 19,369 36 28
2015 49,316 30,898 18,283 37 29
2014 45,451 27,667 17,657 39 28
2013 45,435 27,856 17,467 38 25
2012 41,853 28,788 12,975 31 25
2011 39,808 28,906 10,806 27 21
2010 37,834 27,047 10,666 28 21
2009 35,993 27,022 8,861 25 18
2008 35,490 28,221 7,187 20 13

まとめ:分離フェーズに入ったハネウェルの配当と投資視点

ハネウェルは、先進材料のスピンオフ完了を経て、次段階として自動化と航空宇宙の分離へ向かう“多段階の価値創造モデル”に入っています。[2][3] このプロセスにおいても2025年は増配が継続され、配当の信頼性は維持されています。[1]

投資家へのポイント:現在のHONは「安定的な配当実績」と「事業の純粋化による将来の再評価余地」を併せ持つ局面です。分離完了後は、各社の事業特性に合わせた配当政策が採用される可能性が高く、配当投資家にとっては“配当の中身がより読みやすくなる”メリットが期待されます。

【注】(出典リンク)

  1. 2025年9月の増配(四半期$1.19/年率$4.76) → Honeywell プレスリリース[1] (確認日:2025-12-06)
  2. 先進材料スピンオフ完了(Solstice Advanced Materials) → Honeywell プレスリリース[2] (確認日:2025-12-06)
  3. 自動化・航空宇宙の分離計画(2026年後半目線) → Honeywell ポートフォリオ更新[3] (確認日:2025-12-06)
  4. 2025年Q2実績と2025年通期ガイダンス(調整EPS等) → Honeywell 2025年Q2決算[4] (確認日:2025-12-06)
  5. 2024年通期の資本配分・事業概況 → SEC(Honeywell 10-K)Honeywell IR[5] (確認日:2025-12-06)

Posted by 南 一矢