JPM配当の今後 将来性を徹底分析

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【2026年7月更新】JPM配当と将来性を徹底検証 ─ 2010年以降の長期データで見る「稼ぐ力」と株主還元


【2026年7月更新】JPM配当と将来性を徹底検証 ─ 2010年以降の長期データで見る「稼ぐ力」と株主還元

アップデート概要(2026年Q2決算まで反映)

$6.00
現在宣言済みの四半期配当$1.50を単純年率換算
$6.60
2026年Q3から予定する年換算配当
四半期$1.65・取締役会承認が条件[1]
$7.70
2026年Q2の報告希薄化後EPS
重要項目除外後は$6.14[2]
23%
2026年Q2の重要項目除外後ROTCE
報告ベースは29%
2026年Q2は、報告純利益$21.2bn、報告収益$57.3bn、マネージド収益$58.0bnでした。ただし、Visa株式に関する税引後利益や一部株式投資益を除くと、純利益は$16.9bn、EPSは$6.14、ROTCEは23%です。決算は非常に強い一方、報告利益のすべてを継続的な利益とみなさないことが重要です。[2]
注意:本稿は情報提供を目的としたもので、投資勧誘ではありません。銀行の利益や資本還元は、金利、景気、信用損失、市場環境、規制変更などによって変動します。最終判断はご自身で行ってください。

長期ヒストリーで見る「稼ぐ力」:総収入・PPNR・純利益(2010~2025)

銀行の配当余力を見るうえでは、貸倒引当前の本源的利益を示すPPNR(Pre-Provision Profit)が重要です。JPMorgan Chaseは2010年代を通じて収益規模を広げ、2023年以降は総収入・PPNRとも一段高い水準へ移りました。[3][4]

総収入・PPNR・純利益の長期推移(単位:$bn、2010~2025)
年度 総収入 PPNR 純利益 出典
2010 $102.7 $41.5 $17.4 年次報告書
2011 $97.2 $34.3 $19.0 年次報告書
2012 $97.0 $32.3 $21.3 年次報告書
2013 $96.6 $26.1 $17.9 年次報告書
2014 $97.9 $32.9 $21.7 年次報告書
2015 $93.5 $34.5 $24.4 年次報告書
2016 $95.7 $39.9 $24.7 年次報告書
2017 $99.6 $41.2 $24.4 年次報告書
2018 $109.0 $45.6 $32.5 年次報告書
2019 $115.7 $50.5 $36.4 年次報告書
2020 $120.0 $53.3 $29.1 年次報告書
2021 $121.6 $50.3 $48.3 年次報告書
2022 $128.7 $52.6 $37.7 年次報告書
2023 $158.1 $70.9 $49.6 Form 10-K
2024 $177.6 $85.8 $58.5 Form 10-K
2025 $182.4 $86.8 $57.0 Form 10-K

2025年数値の修正:2025年は、報告ベースの総収入$182.4bn、非金利費用$95.6bn、PPNR$86.8bnです。元原稿の総収入$185.6bn、PPNR$90.0bnはマネージドベースであり、長期表の他年度と基準が混在していたため、報告ベースへ統一しました。[3]

2026年Q2のPPNRは、報告ベースで$30.0bn、マネージドベースで$30.7bnでした。2026年上半期では、報告ベース$53.0bn、マネージドベース$54.4bnです。2026年Q2は一時的な投資利益を含むものの、貸倒引当前の利益水準そのものも厚い状態です。[2]

表の読み方:
総収入=純金利収入+非金利収入の合計。
PPNR=総収入-非金利費用。貸倒引当前の本業利益。
純利益=税金や信用コストなどを反映した最終利益。配当や自社株買いの原資になります。
PPNR = Total net revenue − Noninterest expense
3行で要点:

  1. JPMの配当余力は、単年度の純利益よりもPPNRの厚みで見ると把握しやすくなります。
  2. 2023年以降、総収入とPPNRはパンデミック前を大きく上回るレンジへ移りました。
  3. 2026年Q2は投資関連利益を除いても純利益$16.9bnを確保しており、本業の収益力も高水準でした。

1株当たり利益と会社の資本効率(2015~2025)

1株の「稼ぐ力」はEPS、資本の使い方はROE/ROTCEで確認します。JPMは2025年通期にROE17%、ROTCE20%を維持しました。2026年Q2は報告ベースでROE24%、ROTCE29%でしたが、Visa株式関連利益などを除外したROTCEは23%です。[2][3]

1株当たり指標と収益性比率(希薄化後EPS・ROA・ROE・ROTCE)
年度 EPS ROA ROE ROTCE 出典
2015 $6.00 0.99% 11% 13% 年次報告書
2016 $6.19 1.00% 10% 13% 年次報告書
2017 $6.31 0.96% 10% 12% 年次報告書
2018 $9.00 1.24% 13% 17% 年次報告書
2019 $10.72 15% 19% 年次報告書
2020 $8.88 12% 14% 年次報告書
2021 $15.36 19% 23% 年次報告書
2022 $12.09 0.98% 14% 18% Form 10-K
2023 $16.23 1.30% 17% 21% Form 10-K
2024 $19.75 1.43% 18% 22% Form 10-K
2025 $20.02 1.29% 17% 20% Form 10-K
2026年Q2の補足:報告希薄化後EPSは$7.70、ROAは1.70%、ROEは24%、ROTCEは29%でした。Visa株式関連利益と一部株式投資益を除くと、EPSは$6.14、ROTCEは23%です。2026年上半期の報告EPSは$13.63でした。[2]

指標の読み解き

ROE = 普通株主に帰属する利益 ÷ 平均普通株主資本 × 100
ROTCE = 普通株主に帰属する利益 ÷ 平均有形普通株主資本 × 100
  • ROE/ROTCEが高いほど、資本を効率よく利益へ変えています。
  • ROTCEは、のれんなどの無形資産の影響を除くため、銀行の資本効率を見る際によく使われます。
  • 一時的な投資利益が大きい四半期は、報告ROTCEだけでなく重要項目除外後ROTCEも確認する必要があります。
目安:ROE 15%以上/ROTCE 17%以上なら、概ね高い収益性

1株当たり指標と配当(2010~2025実績)

JPMの配当を見る際は、年間に実際に宣言された配当と、現在の四半期配当を4倍した年換算額を分けて考える必要があります。2025年の宣言配当は1株当たり$5.80でした。2026年7月15日時点で宣言済みの直近四半期配当は$1.50ですが、会社は2026年Q3から$1.65へ引き上げる意向を公表しています。増配は通常の時期に行われる取締役会の正式承認が条件です。[1][3]

EPS(希薄化後)・年間配当(宣言ベース)・配当性向(1株ベース)
年度 EPS 年間配当 配当性向 出典
2010 $3.96 $0.20 5.1% 年次報告書
2011 $4.48 $1.00 22.3% 年次報告書
2012 $5.20 $1.20 23.1% 年次報告書
2013 $4.35 $1.44 33.1% 年次報告書
2014 $5.29 $1.58 29.9% 年次報告書
2015 $6.00 $1.72 28.7% 年次報告書
2016 $6.19 $1.88 30.4% 年次報告書
2017 $6.31 $2.12 33.6% 年次報告書
2018 $9.00 $2.72 30.2% 年次報告書
2019 $10.72 $3.40 31.7% 年次報告書
2020 $8.88 $3.60 40.5% 年次報告書
2021 $15.36 $3.80 24.7% 年次報告書
2022 $12.09 $4.00 33.1% 年次報告書
2023 $16.23 $4.10 25.3% 年次報告書
2024 $19.75 $4.80 24.3% Form 10-K
2025 $20.02 $5.80 29.0% Form 10-K
2026年の配当状況:2026年上半期に宣言された普通株配当は1株当たり合計$3.00で、2026年Q2の配当性向は報告EPS基準で19%でした。2026年7月31日に支払われる配当は1株当たり$1.50です。会社が予定どおりQ3から四半期$1.65へ増配した場合、新しい単純年率は$6.60となります。[1][2]

株主還元(配当+自社株買い)と資本配分

JPMは、配当だけでなく自社株買いを組み合わせて資本を返す会社です。2025年通期は普通株配当約$16.1bn、純ベースの自社株買い約$30.6bnを実施しました。2026年Q2も普通株配当約$4.0bn、普通株の純買い戻し約$6.2bnを実行しています。[2][3]

総株主還元のスナップショット
期間 普通株配当総額 純自社株買い 総還元額 還元率の見方 メモ
2024年通期 $13.8bn $17.8bn $31.6bn 対普通株利益で約55% 買い戻し増加
2025年通期 $16.1bn $30.6bn 約$46.7bn 対普通株利益で約83% 大規模な資本還元
2026年Q1 $4.1bn $8.1bn $12.2bn Net payout LTM 82% 買い戻しが高水準
2026年Q2 $4.0bn $6.2bn $10.2bn Net payout LTM 73% 利益増加で還元率低下
2026年上半期:普通株配当の宣言額は約$8.1bn、財務諸表上の自己株式純購入額は約$13.8bnでした。2026年Q2は利益が大きく増えたため、直近12カ月のNet payoutはQ1の82%から73%へ低下しています。還元額の縮小だけでなく、利益分母の増加も影響しています。[2]
新しい買い戻し枠:取締役会は2026年7月1日付で、上限$50bnの新しい普通株買い戻しプログラムを承認しました。従来の上限$50bnの枠を置き換えるもので、実際の買い戻し額と時期は株価、資本需要、規制、経済環境などを踏まえて経営陣が判断します。[1]

会社の体力(健全性)は大丈夫か?

配当の持続性は、利益だけでなく自己資本の厚みにも左右されます。2026年Q2末のStandardized CET1比率は14.1%、Advanced CET1比率は14.2%でした。Standardized CET1の規制バッファ込み必要水準は11.5%であり、実績はこれを上回っています。[1][2]

指標 2024年末 2025年末 2026年Q1末 2026年Q2末
CET1比率(Standardized) 15.7% 14.6% 14.3% 14.1%
CET1比率(Advanced) 15.8% 14.1% 14.1% 14.2%
SLR 6.1% 5.8% 5.6% 5.5%
BVPS $116.07 $126.99 $128.38 $133.01
TBVPS $97.30 $107.56 $108.87 $113.35

CET1比率は2024年末から低下していますが、同時にCET1資本額は2026年Q2末に約$303bnへ増加しています。比率低下の主因は、貸出や市場活動の拡大などによってリスク加重資産が増えたことです。2026年Q2末のStandardized RWAは約$2.14tnでした。[2]

用語ミニ辞典

CET1比率:最も質の高い自己資本をリスク加重資産で割った指標。銀行の損失吸収力を見る基本指標です。

SLR:Tier 1資本をデリバティブなどを含む総エクスポージャーで割ったレバレッジ指標です。

BVPS/TBVPS:1株当たり純資産と、のれんなどを除いた1株当たり有形純資産です。

キャッシュフローと流動性の安定性

銀行は一般企業のような営業キャッシュフローだけでは評価しにくいため、短期流動性を見る際はLCRHQLAを重視します。2026年Q2のFirm LCRは110%、Bank LCRは118%でした。超過HQLAは$254bn、HQLAと非担保市場性有価証券の合計は$1.505tnです。[2]

指標 2025年末 2026年Q1 2026年Q2
Firm LCR(平均) 111% 112% 110%
Bank LCR(平均) 115% 120% 118%
超過HQLA $232bn $272bn $254bn
HQLA+非担保市場性有価証券 $1.464tn $1.505tn $1.505tn
ポイント:LCRは、一定のストレス期間に想定される資金流出を高品質流動資産でどれだけ賄えるかを見る指標です。2026年Q2はQ1より低下しましたが、流動性資産の絶対額は引き続き大きい水準です。

与信リスクと金利感応度

JPMは2026年Q2に$2.5bnのCredit Costsを計上しました。純貸倒損失は$2.4bn、引当金の純積み増しは$149mnです。高いPPNRによって信用コストを十分吸収できていますが、カードローンを中心とする個人向け信用動向は継続的に確認する必要があります。[2]

クレジット指標の推移
項目 2024年通期 2025年通期 2026年Q1 2026年Q2
Credit Costs $10.7bn $14.2bn $2.5bn $2.5bn
純貸倒損失(NCO) $8.6bn $9.8bn $2.3bn $2.4bn
Card Services NCO率 3.14%
2025年Q4
3.47% 3.34%
FY2026 Card Services NCO率見通し 約3.4% 約3.2%
見通しの改善:会社は2026年Q2決算で、FY2026のCard Services NCO率見通しを約3.4%から約3.2%へ引き下げました。2026年Q2実績は3.34%で、Q1の3.47%から改善しています。[2]
2025年との比較:2025年のCredit Costsには、将来取得予定のApple Cardポートフォリオに関連する$2.2bnの貸倒引当が含まれていました。そのため、2025年通期と2026年の四半期数値を比較する際は、この一時的な引当を分けて見る必要があります。[3]

2026年の会社ガイダンス

2026年Q2決算では、収益の上振れを受けて純金利収入見通しが引き上げられました。一方、取引量や収益に連動する人件費・仲介費用なども増えたため、調整後費用の見通しも引き上げられています。[2]

項目 2025年実績 2026年Q1時点の見通し 2026年Q2時点の見通し 見方
純金利収入(NII) $95.9bn 約$103bn 約$105.5bn 収益見通しを引き上げ
NII(Markets除き) $92.6bn 約$95bn 約$96.5bn 貸出・預金残高が下支え
調整後費用 $95.3bn 約$105bn 約$107.5bn 収益連動費用も上昇
Card Services NCO率 3.14%
2025年Q4
約3.4% 約3.2% 信用見通しは改善
ガイダンスの読み方:NIIと信用コストの見通しは改善しましたが、調整後費用も増えています。2026年Q2は投資銀行・株式取引を中心に収益が大きく伸びたため、報酬や取引関連費用が増加しました。費用増が将来の収益拡大につながるか、それとも効率性を低下させるかが今後の焦点です。

競合他行との比較分析(指標の見方)

JPMの配当を評価する際は、利回りだけでなく、資本効率(ROTCE)損失吸収力(CET1)流動性(LCR)を組み合わせて見るのが実務的です。

2026年Q2の重要項目除外後ROTCEは23%、Standardized CET1比率は14.1%、Firm LCRは110%でした。収益性、資本、流動性のすべてが高い水準にあることが、増配予定と大規模な買い戻し枠を支えています。[1][2]

読み方のコツ:ROTCEは利益を生み出す効率、CET1は損失を吸収する余力、LCRは短期的な資金流出への耐久力です。配当の安全性は、どれか1つではなく3つを合わせて評価すると見えやすくなります。

本稿の結論

2010年以降の長期データで見ると、JPMのPPNRは構造的に拡大し、配当は利益成長の範囲内で積み上がってきました。2025年通期はEPS$20.02に対して宣言配当$5.80、配当性向は約29%でした。

2026年Q2は報告EPS$7.70、重要項目除外後EPS$6.14、同ROTCE23%となり、本業の収益力も高水準です。取締役会はQ3から四半期配当を$1.50から$1.65へ引き上げる意向を示し、上限$50bnの新しい自社株買い枠も設定しました。[1][2]

一方、2026年Q2の報告利益にはVisa株式などの大きな投資利益が含まれます。資本還元の持続性を判断する際は、記録的な報告利益だけでなく、重要項目除外後利益、PPNR、信用コスト、CET1比率の推移を見る必要があります。

総合すると、JPMは配当利回りだけを目的に選ぶ銘柄というより、強い本業、厚い資本、豊富な流動性を背景に、増配と自社株買いを続ける総合金融グループとして評価するのが適切です。短期的な市場利益には振れがあるものの、配当を支える基礎的な体力は依然として強いと考えられます。

免責事項

本レポートは公開情報に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。将来予想や配当計画には不確実性があり、実際の結果は会社見通しと異なる可能性があります。

最終更新日:2026年7月15日

【注】(出典リンク)

  1. 2026年の増配予定・新しい500億ドル自社株買い枠・現在の宣言済み配当 → JPMorganChase Plans Dividend Increase and Has Authorized a New Common Share Repurchase Program(2026-06-24)JPMorganChase Declares Common Stock Dividend(2026-05-18)(確認日:2026-07-15)。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
  2. 2026年Q2決算・資本・流動性・与信・株主還元・最新ガイダンス → 2Q26 Earnings Press Release(PDF)2Q26 Earnings Presentation(PDF)2Q26 Earnings Supplement(PDF)(確認日:2026-07-15)。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
  3. 2025年通期の収益・PPNR・EPS・配当・資本・Apple Card関連引当 → JPMorgan Chase 2025 Form 10-K(PDF)JPMorgan Chase 2025 Annual Report(PDF)(確認日:2026-07-15)。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
  4. 2010~2024年の長期財務・EPS・配当データ → JPMorganChase Annual Report ArchiveJPMorganChase Quarterly Earnings Archive(確認日:2026-07-15)。:contentReference[oaicite:3]{index=3}


Posted by 南 一矢