JPM配当の今後 将来性を徹底分析

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【2026年10月更新】JPM配当と将来性を徹底検証 ─ 2010年以降の長期データで見る「稼ぐ力」と株主還元

アップデート概要(2026年Q3決算まで反映)

$1.652026年9月15日に正式宣言された四半期配当。[1]
$6.60現在の四半期配当$1.65を単純年率換算した金額。
$5.572026年Q3の報告希薄化後EPS。重要項目除外後は$5.75。[2]
20%2026年Q3の報告ROTCE。重要項目除外後は21%。
2026年Q3は、報告純利益$15.3bn、報告収益$50.2bn、マネージド収益$50.9bnでした。Corporateで$658mnの投資有価証券純損失が発生しており、これを除くと純利益は$15.8bn、EPSは$5.75、ROTCEは21%です。Q2はVisa株式関連などの大きな投資利益を含んでいたため、Q3の前四半期比減益だけで基礎収益力の悪化と判断しないことが重要です。[2]
注意:本稿は情報提供を目的としたもので、投資勧誘ではありません。銀行の利益や資本還元は、金利、景気、信用損失、市場環境、規制変更などによって変動します。最終判断はご自身で行ってください。

長期ヒストリーで見る「稼ぐ力」:総収入・PPNR・純利益(2010~2025)

銀行の配当余力を見るうえでは、貸倒引当前の本源的利益を示すPPNR(Pre-Provision Profit)が重要です。JPMorgan Chaseは2010年代を通じて収益規模を広げ、2023年以降は総収入・PPNRとも一段高い水準へ移りました。[3][4]

総収入・PPNR・純利益の長期推移(単位:$bn、2010~2025)
年度 総収入 PPNR 純利益 出典
2010 $102.7 $41.5 $17.4 年次報告書
2011 $97.2 $34.3 $19.0 年次報告書
2012 $97.0 $32.3 $21.3 年次報告書
2013 $96.6 $26.1 $17.9 年次報告書
2014 $97.9 $32.9 $21.7 年次報告書
2015 $93.5 $34.5 $24.4 年次報告書
2016 $95.7 $39.9 $24.7 年次報告書
2017 $99.6 $41.2 $24.4 年次報告書
2018 $109.0 $45.6 $32.5 年次報告書
2019 $115.7 $50.5 $36.4 年次報告書
2020 $120.0 $53.3 $29.1 年次報告書
2021 $121.6 $50.3 $48.3 年次報告書
2022 $128.7 $52.6 $37.7 年次報告書
2023 $158.1 $70.9 $49.6 Form 10-K
2024 $177.6 $85.8 $58.5 Form 10-K
2025 $182.4 $86.8 $57.0 Form 10-K

2025年数値の修正:2025年は、報告ベースの総収入$182.4bn、非金利費用$95.6bn、PPNR$86.8bnです。元原稿の総収入$185.6bn、PPNR$90.0bnはマネージドベースであり、長期表の他年度と基準が混在していたため、報告ベースへ統一しました。[3]

2026年Q3のPPNRは、報告ベースで$22.9bn、マネージドベースで$23.6bnでした。2026年1~9月では、報告ベース$75.9bn、マネージドベース$78.0bnです。Q3はQ2の一時的な投資利益が剥落したため前四半期比では低下しましたが、前年同期比では報告ベース・マネージドベースともPPNRは約3%増加しました。[2]

表の読み方:
・総収入=純金利収入+非金利収入の合計。
・PPNR=総収入-非金利費用。貸倒引当前の本業利益。
・純利益=税金や信用コストなどを反映した最終利益。配当や自社株買いの原資になります。
PPNR = Total net revenue − Noninterest expense
3行で要点:

  1. JPMの配当余力は、単年度の純利益よりもPPNRの厚みで見ると把握しやすくなります。
  2. 2023年以降、総収入とPPNRはパンデミック前を大きく上回るレンジへ移りました。
  3. 2026年Q3は一時的な有価証券損失を除けばEPS$5.75、ROTCE21%で、基礎的な収益力は引き続き高水準でした。

1株当たり利益と会社の資本効率(2015~2025)

1株の「稼ぐ力」はEPS、資本の使い方はROE/ROTCEで確認します。JPMは2025年通期にROE17%、ROTCE20%を維持しました。2026年Q3は報告ベースでROE17%、ROTCE20%、投資有価証券純損失を除くROTCEは21%でした。[2][3]

1株当たり指標と収益性比率(希薄化後EPS・ROA・ROE・ROTCE)
年度 EPS ROA ROE ROTCE 出典
2015 $6.00 0.99% 11% 13% 年次報告書
2016 $6.19 1.00% 10% 13% 年次報告書
2017 $6.31 0.96% 10% 12% 年次報告書
2018 $9.00 1.24% 13% 17% 年次報告書
2019 $10.72 — 15% 19% 年次報告書
2020 $8.88 — 12% 14% 年次報告書
2021 $15.36 — 19% 23% 年次報告書
2022 $12.09 0.98% 14% 18% Form 10-K
2023 $16.23 1.30% 17% 21% Form 10-K
2024 $19.75 1.43% 18% 22% Form 10-K
2025 $20.02 1.29% 17% 20% Form 10-K
2026年Q3の補足:報告希薄化後EPSは$5.57、ROAは1.21%、ROEは17%、ROTCEは20%でした。$658mnの投資有価証券純損失を除くと、EPSは$5.75、ROTCEは21%です。2026年1~9月の報告希薄化後EPSは$19.20でした。[2]

指標の読み解き

ROE = 普通株主に帰属する利益 ÷ 平均普通株主資本 × 100
ROTCE = 普通株主に帰属する利益 ÷ 平均有形普通株主資本 × 100
  • ROE/ROTCEが高いほど、資本を効率よく利益へ変えています。
  • ROTCEは、のれんなどの無形資産の影響を除くため、銀行の資本効率を見る際によく使われます。
  • 一時的な投資利益が大きい四半期は、報告ROTCEだけでなく重要項目除外後ROTCEも確認する必要があります。
目安:ROE 15%以上/ROTCE 17%以上なら、概ね高い収益性

1株当たり指標と配当(2010~2025実績)

JPMの配当を見る際は、年間に実際に宣言された配当と、現在の四半期配当を4倍した年換算額を分けて考える必要があります。2025年の宣言配当は1株当たり$5.80でした。2026年はQ1・Q2に各$1.50、Q3に$1.65が宣言され、1~9月の宣言配当は$4.65となりました。現在の四半期配当$1.65を単純年率換算すると$6.60です。[1][2][3]

EPS(希薄化後)・年間配当(宣言ベース)・配当性向(1株ベース)
年度 EPS 年間配当 配当性向 出典
2010 $3.96 $0.20 5.1% 年次報告書
2011 $4.48 $1.00 22.3% 年次報告書
2012 $5.20 $1.20 23.1% 年次報告書
2013 $4.35 $1.44 33.1% 年次報告書
2014 $5.29 $1.58 29.9% 年次報告書
2015 $6.00 $1.72 28.7% 年次報告書
2016 $6.19 $1.88 30.4% 年次報告書
2017 $6.31 $2.12 33.6% 年次報告書
2018 $9.00 $2.72 30.2% 年次報告書
2019 $10.72 $3.40 31.7% 年次報告書
2020 $8.88 $3.60 40.5% 年次報告書
2021 $15.36 $3.80 24.7% 年次報告書
2022 $12.09 $4.00 33.1% 年次報告書
2023 $16.23 $4.10 25.3% 年次報告書
2024 $19.75 $4.80 24.3% Form 10-K
2025 $20.02 $5.80 29.0% Form 10-K
2026年Q3の配当状況:取締役会は2026年9月15日、普通株の四半期配当を従来の$1.50から$1.65へ引き上げて正式に宣言しました。支払日は2026年10月31日、基準日は10月6日です。2026年1~9月の宣言配当は1株当たり$4.65、Q3の配当性向は報告EPS基準で30%でした。[1][2]

株主還元(配当+自社株買い)と資本配分

JPMは、配当だけでなく自社株買いを組み合わせて資本を返す会社です。2025年通期は普通株配当約$16.1bn、純ベースの自社株買い約$30.6bnを実施しました。2026年Q3は普通株配当約$4.4bnに対し、普通株の純買い戻しは$664mnにとどまりました。直近12カ月のNet payoutは61%です。[2][3]

総株主還元のスナップショット
期間 普通株配当総額 純自社株買い 総還元額 還元率の見方 メモ
2024年通期 $13.8bn $17.8bn $31.6bn 対普通株利益で約55% 買い戻し増加
2025年通期 $16.1bn $30.6bn 約$46.7bn 対普通株利益で約83% 大規模な資本還元
2026年Q1 $4.1bn $8.1bn $12.2bn Net payout LTM 82% 買い戻しが高水準
2026年Q2 $4.0bn $6.2bn $10.2bn Net payout LTM 73% Q2利益増で還元率低下
2026年Q3 $4.4bn $0.7bn 約$5.1bn Net payout LTM 61% 買い戻しを大幅抑制
2026年1~9月:普通株配当の宣言額は約$12.5bn、普通株の総買い戻し額は約$16.1bnでした。Q3の総買い戻し額は約$1.1bn、従業員向け株式発行の影響を差し引いた純買い戻しは$664mnです。Q3に買い戻しを大きく抑えたため、直近12カ月のNet payoutはQ2の73%から61%へ低下しました。[2]
500億ドルの買い戻し枠:取締役会は2026年7月1日付で、上限$50bnの普通株買い戻しプログラムを発効させました。従来の上限$50bnの枠を置き換えるものです。ただし、Q3の実際の買い戻しは大きく抑制されており、枠の大きさと実行額は別物として見る必要があります。買い戻し額と時期は株価、資本需要、規制、経済環境などを踏まえて経営陣が判断します。[1][2]

会社の体力(健全性)は大丈夫か?

配当の持続性は、利益だけでなく自己資本の厚みにも左右されます。2026年Q3末のStandardized CET1比率は13.9%、Advanced CET1比率は14.1%でした。Standardized CET1の規制バッファ込み必要水準は11.5%で、実績はこれを上回っています。[1][2]

指標 2024年末 2025年末 2026年Q1末 2026年Q2末 2026年Q3末
CET1比率(Standardized) 15.7% 14.6% 14.3% 14.2% 13.9%
CET1比率(Advanced) 15.8% 14.1% 14.1% 14.2% 14.1%
SLR 6.1% 5.8% 5.6% 5.5% 5.5%
BVPS $116.07 $126.99 $128.38 $133.01 $132.30
TBVPS $97.30 $107.56 $108.87 $113.35 $112.64

CET1比率は2026年Q2末の14.2%からQ3末の13.9%へ低下しましたが、CET1資本額は約$304bnへ増加しています。Q3は貸出・市場活動の拡大でStandardized RWAが約$2.18tnへ増えたほか、AOCIの悪化も比率を押し下げました。資本額の減少というより、リスク加重資産と評価差額の動きが主因です。[2]

用語ミニ辞典

CET1比率:最も質の高い自己資本をリスク加重資産で割った指標。銀行の損失吸収力を見る基本指標です。

SLR:Tier 1資本をデリバティブなどを含む総エクスポージャーで割ったレバレッジ指標です。

BVPS/TBVPS:1株当たり純資産と、のれんなどを除いた1株当たり有形純資産です。

キャッシュフローと流動性の安定性

銀行は一般企業のような営業キャッシュフローだけでは評価しにくいため、短期流動性を見る際はLCRやHQLAを重視します。2026年Q3のFirm LCRは113%、Bank LCRは119%でした。超過HQLAは$288bn、HQLAと非担保市場性有価証券の合計は$1.511tnです。[2]

指標 2025年末 2026年Q1 2026年Q2 2026年Q3
Firm LCR(平均) 111% 112% 110% 113%
Bank LCR(平均) 115% 120% 118% 119%
超過HQLA $232bn $272bn $254bn $288bn
HQLA+非担保市場性有価証券 $1.464tn $1.505tn $1.497tn $1.511tn
ポイント:LCRは、一定のストレス期間に想定される資金流出を高品質流動資産でどれだけ賄えるかを見る指標です。2026年Q3はQ2からFirm LCR、Bank LCR、超過HQLAがいずれも上昇し、流動性余力は厚い状態が続いています。

与信リスクと金利感応度

JPMは2026年Q3に$2.7bnのCredit Costsを計上しました。純貸倒損失は$2.2bn、引当金の純積み増しは$539mnです。Card ServicesのNCO率は2.91%となり、Q2の3.34%から低下しました。高いPPNRによって信用コストを吸収できていますが、カードローンを中心とする個人向け信用動向は継続的に確認する必要があります。[2]

クレジット指標の推移
項目 2024年通期 2025年通期 2026年Q1 2026年Q2 2026年Q3
Credit Costs $10.7bn $14.2bn $2.5bn $2.5bn $2.7bn
純貸倒損失(NCO) $8.6bn $9.8bn $2.3bn $2.4bn $2.2bn
Card Services NCO率 — 3.14%
2025年Q4
3.47% 3.34% 2.91%
FY2026 Card Services NCO率見通し — — 約3.4% 約3.2% 約3.2%
見通しは維持:会社は2026年Q3決算で、FY2026のCard Services NCO率見通しを約3.2%に据え置きました。Q3実績は2.91%まで低下しており、Q1の3.47%、Q2の3.34%から改善が続いています。[2]
2025年との比較:2025年のCredit Costsには、将来取得予定のApple Cardポートフォリオに関連する$2.2bnの貸倒引当が含まれていました。そのため、2025年通期と2026年の四半期数値を比較する際は、この一時的な引当を分けて見る必要があります。[3]

2026年の会社ガイダンス

2026年Q3決算では、会社は第4四半期の市場環境を前提に、2026年通期の純金利収入と調整後費用の見通しをさらに引き上げました。Q3までの貸出・預金残高の拡大と金利環境がNIIを支える一方、報酬、テクノロジー、マーケティングなどの費用も高い水準が続いています。[2]

項目 2025年実績 2026年Q1時点 2026年Q2時点 2026年Q3時点 見方
純金利収入(NII) $95.9bn 約$103bn 約$105.5bn 約$106.2bn 通期見通しを再上方修正
NII(Markets除き) $92.6bn 約$95bn 約$96.5bn 約$97.2bn 貸出・預金残高が下支え
調整後費用 $95.3bn 約$105bn 約$107.5bn 約$108.6bn 成長投資と収益連動費用が増加
Card Services NCO率 3.14%
2025年Q4
約3.4% 約3.2% 約3.2% 信用見通しは改善後に安定
2027年の予備的な見方:会社は2027年のcentral caseとして、Marketsを除くNIIを約$107bnとする予備的分析も示しました。ただし、これは金利やバランスシートの動きに左右される将来見通しです。2026年Q3時点では、収益見通しの改善と同時に費用見通しも上がっているため、売上成長が費用増をどこまで上回るかが次の焦点になります。[2]

競合他行との比較分析(指標の見方)

JPMの配当を評価する際は、利回りだけでなく、資本効率(ROTCE)、損失吸収力(CET1)、流動性(LCR)を組み合わせて見るのが実務的です。

2026年Q3の報告ROTCEは20%、重要項目除外後は21%、Standardized CET1比率は13.9%、Firm LCRは113%でした。四半期配当$1.65は正式に宣言され、500億ドルの買い戻し枠も有効ですが、Q3の買い戻し実行額は大きく抑えられています。資本還元余力の大きさと、実際に還元するペースは分けて評価する必要があります。[1][2]

読み方のコツ:ROTCEは利益を生み出す効率、CET1は損失を吸収する余力、LCRは短期的な資金流出への耐久力です。配当の安全性は、どれか1つではなく3つを合わせて評価すると見えやすくなります。

本稿の結論

2010年以降の長期データで見ると、JPMのPPNRは構造的に拡大し、配当は利益成長の範囲内で積み上がってきました。2025年通期はEPS$20.02に対して宣言配当$5.80、配当性向は約29%でした。

2026年Q3は報告EPS$5.57、投資有価証券純損失を除くEPS$5.75、同ROTCE21%となりました。2026年1~9月の報告EPSは$19.20です。四半期配当は9月に$1.50から$1.65へ正式に引き上げられ、上限$50bnの自社株買い枠も有効です。[1][2]

一方、2026年Q2にはVisa株式などの大きな投資利益が含まれたのに対し、Q3には$658mnの投資有価証券純損失が発生しました。四半期ごとの報告利益は市場関連項目で振れやすいため、資本還元の持続性を判断する際は、重要項目除外後利益、PPNR、信用コスト、CET1比率の推移を見る必要があります。

総合すると、JPMは配当利回りだけを目的に選ぶ銘柄というより、強い本業、厚い資本、豊富な流動性を背景に、増配と機動的な自社株買いを組み合わせる総合金融グループとして評価するのが適切です。Q3は買い戻し額を抑えましたが、配当は増額され、収益・資本・流動性の基盤は引き続き強いと考えられます。

免責事項

本レポートは公開情報に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。将来予想や配当計画には不確実性があり、実際の結果は会社見通しと異なる可能性があります。

最終更新日:2026年10月17日

【注】(出典リンク)

  1. 2026年の増配・500億ドル自社株買い枠・CET1規制必要水準 → JPMorganChase Declares Increased Common Stock Dividend(2026-09-15) → JPMorganChase Plans Dividend Increase and Has Authorized a New Common Share Repurchase Program(2026-06-24)(確認日:2026-10-17)。 ↩
  2. 2026年Q3決算・PPNR・資本・流動性・与信・株主還元・最新ガイダンス → 3Q26 Earnings Press Release(PDF) → 3Q26 Earnings Presentation(PDF) → 3Q26 Earnings Supplement(PDF)(確認日:2026-10-17)。 ↩
  3. 2025年通期の収益・PPNR・EPS・配当・資本・Apple Card関連引当 → JPMorgan Chase 2025 Form 10-K(PDF) → JPMorgan Chase 2025 Annual Report(PDF)(確認日:2026-10-17)。 ↩
  4. 2010~2024年の長期財務・EPS・配当データ → JPMorganChase Annual Report Archive → JPMorganChase Quarterly Earnings Archive(確認日:2026-10-17)。 ↩

Posted by 南 一矢