コカコーラ(KO)63年連続増配(配当王)のキャッシュフロー創出力
コカ・コーラ(KO)配当指標(利回りや成長率、配当性向等の分析
コカ・コーラ(The Coca-Cola Company)は、63年連続で配当を増やし続ける「配当王」(Dividend King)銘柄です。その卓越した配当実績を支える同社の財務指標の推移をMacroTrends.comなどのデータを用いて詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockprice.comを参照)
データソースの制約について
重要な注意事項:MacroTrends.comでは、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrendsでは四半期ごとの配当支払額や直近の配当利回りは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。
そのため、63年連続増配などの具体的な配当成長実績については、MacroTrends以外の複数のソース(株式情報サイト、投資分析プラットフォーム等)を参照して確認しています。本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、営業CF、バランスシート等)を中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
ここでは、年平均の配当利回り、配当成長率、配当性向、そして年間の一株配当($)の推移について、MacroTrendsとそれ以外の配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2024 | 3.27% | 5.2% | 79% | 1.94 | 62.49 | 2.46 |
2023 | 3.43% | 4.7% | 79% | 1.94 | 56.65 | 2.47 |
2022 | 3.26% | 4.9% | 85% | 1.85 | 56.67 | 2.19 |
2021 | 3.57% | 2.5% | 78% | 1.76 | 48.24 | 2.25 |
2020 | 3.86% | 2.9% | 96% | 1.72 | 43.11 | 1.79 |
2019 | 3.98% | 2.4% | 81% | 1.67 | 42.51 | 2.07 |
2018 | 4.47% | 5.0% | 109% | 1.63 | 36.73 | 1.50 |
2017 | 4.60% | 5.4% | 544% | 1.56 | 34.70 | 0.29 |
2016 | 4.48% | 6.0% | 99% | 1.48 | 32.95 | 1.49 |
2015 | 4.62% | 8.2% | 84% | 1.40 | 30.23 | 1.67 |
2014 | 4.44% | 8.5% | 81% | 1.30 | 29.04 | 1.60 |
2013 | 4.36% | 9.8% | 63% | 1.20 | 27.38 | 1.90 |
2012 | 4.37% | 8.5% | 55% | 1.09 | 24.88 | 1.97 |
2011 | 4.60% | 7.3% | 54% | 1.01 | 21.75 | 1.85 |
2010 | 5.23% | 6.8% | 37% | 0.94 | 17.93 | 2.53 |
2009 | 5.84% | 8.2% | 59% | 0.88 | 14.98 | 1.47 |
2008 | 5.06% | 11.5% | 65% | 0.82 | 15.96 | 1.25 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合
* EPSと平均株価はMacroTrends.comより
着実な配当成長の実績
コカ・コーラ(KO)は、世界最大の飲料メーカーとして、63年連続で配当を増額し続けている「配当王」の地位を確立しています。2008年から2024年にかけて、1株配当は$0.82から$1.94へと約137%増加し、年平均成長率は約5.9%を記録しています。なお、2025年は四半期配当を$0.51へ増額(年率$2.04の示現)しています。
この期間中、リーマンショック(2008年)やCOVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても一度も減配することなく、継続的な配当成長を維持してきました。世界的なブランド力と多様な製品ポートフォリオが、この安定性を支えています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 47,061 | 6,805 | 14.5 | 10,631 |
2023 | 45,754 | 11,599 | 25.4 | 10,714 |
2022 | 43,004 | 11,018 | 25.6 | 9,542 |
2021 | 38,655 | 12,625 | 32.7 | 9,771 |
2020 | 33,014 | 9,844 | 29.8 | 7,747 |
2019 | 37,266 | 10,471 | 28.1 | 8,920 |
2018 | 34,300 | 7,627 | 22.2 | 6,434 |
2017 | 36,212 | 7,041 | 19.4 | 1,248 |
2016 | 41,863 | 8,792 | 21.0 | 6,527 |
2015 | 44,294 | 10,528 | 23.8 | 7,351 |
2014 | 45,998 | 10,615 | 23.1 | 7,098 |
2013 | 46,854 | 10,542 | 22.5 | 8,584 |
2012 | 48,017 | 10,645 | 22.2 | 9,019 |
2011 | 46,542 | 9,474 | 20.4 | 8,584 |
2010 | 35,119 | 9,532 | 27.1 | 11,787 |
2009 | 30,990 | 8,186 | 26.4 | 6,824 |
2008 | 31,944 | 7,571 | 23.7 | 5,807 |
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
コカ・コーラの配当支払能力は注目に値します。2024年の営業キャッシュフローは68億ドル(IRSとの係争に関連した60億ドルのデポジット(預託金)の影響で減少)で、配当支払額約88億ドルに対してやや不足していますが、このデポジットを除外すると営業キャッシュフローは約108億ドルとなり、十分な配当支払能力を有しています。
配当支払余力の推移(2008年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$)* | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 6,805 | 8,806 | 0.8 |
2023 | 11,599 | 8,400 | 1.4 |
2022 | 11,018 | 8,000 | 1.4 |
2021 | 12,625 | 7,600 | 1.7 |
2020 | 9,844 | 7,434 | 1.3 |
2019 | 10,471 | 7,300 | 1.4 |
2018 | 7,627 | 7,100 | 1.1 |
2017 | 7,041 | 6,854 | 1.0 |
2016 | 8,792 | 6,531 | 1.3 |
2015 | 10,528 | 6,176 | 1.7 |
2014 | 10,615 | 5,729 | 1.9 |
2013 | 10,542 | 5,250 | 2.0 |
2012 | 10,645 | 4,790 | 2.2 |
2011 | 9,474 | 4,408 | 2.1 |
2010 | 9,532 | 4,068 | 2.3 |
2009 | 8,186 | 3,800 | 2.2 |
2008 | 7,571 | 3,521 | 2.1 |
* 配当支払額は推定値(発行済株式数×年間配当)
配当支払余力の分析結果:
- 特殊要因の影響:2024年の低いカバー比率はIRS係争に関連する60億ドルのデポジットによる一時的影響
- 通常時の安定性:過去17年間で通常1.0〜2.3倍を維持し、配当を安定的にカバー
- 景気耐性:2008年金融危機、2020年パンデミック時でも配当支払能力を維持
- 持続可能性:一時的要因を除けば、キャッシュフロー創出力は健全
強固なキャッシュフロー創出力と資金配分戦略
以下の表では、営業CF、フリーCF、設備投資をM$(百万ドル)単位、営業CF成長率を%単位で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 成長率 (%) | フリーCF (M$) | 設備投資 (M$)* |
---|---|---|---|---|
2024 | 6,805 | -41.3 | 4,781 | 2,024 |
2023 | 11,599 | 5.3 | 9,821 | 1,778 |
2022 | 11,018 | -12.7 | 9,609 | 1,409 |
2021 | 12,625 | 28.3 | 11,366 | 1,259 |
2020 | 9,844 | -6.0 | 8,856 | 988 |
2019 | 10,471 | 37.3 | 9,395 | 1,076 |
2018 | 7,627 | 8.3 | 6,327 | 1,300 |
2017 | 7,041 | -19.9 | 5,399 | 1,642 |
2016 | 8,792 | -16.5 | 6,680 | 2,112 |
2015 | 10,528 | -0.8 | 8,060 | 2,468 |
2014 | 10,615 | 0.7 | 8,432 | 2,183 |
2013 | 10,542 | -0.9 | 8,103 | 2,439 |
2012 | 10,645 | 12.4 | 8,008 | 2,637 |
2011 | 9,474 | -0.6 | 6,655 | 2,819 |
2010 | 9,532 | 16.5 | 7,451 | 2,081 |
2009 | 8,186 | 8.1 | 6,297 | 1,889 |
2008 | 7,571 | – | 5,839 | 1,732 |
* 設備投資は営業CFからフリーCFを引いて算出
キャッシュフロー分析のポイント
営業キャッシュフロー:
- 安定した創出力:2008年以降、営業CFは68億〜126億ドルの範囲で推移
- 景気耐性:2008年金融危機、2020年パンデミック時も堅調な水準を維持
- 2024年の特殊要因:IRS係争に伴う60億ドルのデポジットで一時的に減少
フリーキャッシュフロー:
- 効率的な投資:設備投資を抑制し、高いフリーキャッシュフロー創出
- 資産軽量化戦略:ボトリング事業のフランチャイズ化により設備投資削減
- 株主還元原資:年間50億〜100億ドルのフリーCFを配当・自社株買いに充当
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 100,549 | 74,177 | 26,372 | 26.2 | 38.7 | 281 |
2023 | 97,703 | 70,223 | 27,480 | 28.1 | 39.1 | 256 |
2022 | 92,763 | 66,937 | 25,826 | 27.8 | 37.4 | 259 |
2021 | 94,354 | 69,494 | 24,860 | 26.4 | 40.9 | 279 |
2020 | 87,296 | 66,012 | 21,284 | 24.4 | 38.4 | 310 |
2019 | 86,381 | 65,283 | 21,098 | 24.4 | 43.6 | 309 |
2018 | 83,216 | 64,158 | 19,058 | 22.9 | 31.8 | 337 |
2017 | 87,896 | 68,919 | 18,977 | 21.6 | 5.8 | 363 |
2016 | 87,270 | 64,050 | 23,220 | 26.6 | 25.7 | 276 |
2015 | 89,996 | 64,232 | 25,764 | 28.6 | 26.8 | 249 |
2014 | 92,023 | 61,462 | 30,561 | 33.2 | 21.6 | 201 |
2013 | 90,055 | 56,615 | 33,440 | 37.1 | 26.1 | 169 |
2012 | 86,174 | 53,006 | 33,168 | 38.5 | 27.2 | 160 |
2011 | 79,974 | 48,053 | 31,921 | 39.9 | 25.7 | 151 |
2010 | 72,921 | 41,604 | 31,317 | 43.0 | 42.7 | 133 |
2009 | 48,671 | 23,325 | 25,346 | 52.1 | 28.9 | 92 |
2008 | 40,519 | 20,047 | 20,472 | 50.5 | 28.4 | 98 |
バランスシート分析の重要な観点
自己資本率の推移と戦略的意味:
- 構造的変化:2008年の50.5%から2024年の26.2%へと低下
- 転換点:2015年以降、より積極的な財務レバレッジ活用方針に転換
- 安定水準:2019年以降は24〜28%で安定、適度なレバレッジ水準を維持
- 業界比較:飲料業界では30%前後が一般的で、コカ・コーラはやや積極的な水準
ROE(自己資本利益率)の特徴:
- 高い収益性:過去17年間で平均約30%の高水準ROEを維持
- 2017年の異常値:5.8%は税制改革による一時的な利益押し下げ効果
- 安定したパフォーマンス:特殊要因を除けば21〜44%の範囲で推移
- 効率的な資本活用:適度な財務レバレッジによりROEを向上
総合評価
コカ・コーラの財務戦略は「保守的かつ効率的な財務レバレッジ活用」と評価できます。自己資本率はペプシコより高く、より保守的な財務構造を維持しています。安定したキャッシュフロー創出能力と世界最強クラスのブランド力により、現在の負債水準は十分に管理可能です。ROEの高さは効率的な資本活用を示しており、株主価値創造の観点では成功している戦略といえるでしょう。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- 卓越した配当履歴:63年連続増配という圧倒的な実績
- 安定した配当成長:年6%前後の持続的な配当成長パターン
- 世界的ブランド力:コカ・コーラブランドによる強固な競争優位性
- 景気耐性:不況時でも安定した需要を維持する生活必需品的特性
配当投資戦略における位置づけ
究極のコア銘柄
- ポートフォリオの礎石:最も信頼性の高い配当収入源として機能
- リスク分散効果:世界200カ国以上での事業展開による地理的分散
- インフレ対応力:価格転嫁力により実質的な購買力を維持
- 世代を超えた投資:「永久保有」戦略に最適な銘柄
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- 健康志向の加速:砂糖入り飲料への規制強化と需要減少
- 競争激化:プライベートブランドや新興ブランドの台頭
- 為替リスク:米国外売上比率が高く為替変動影響が大きい
- 原材料コスト変動:砂糖・アルミニウム価格の変動
- 配当性向の高さ:高い配当性向が成長投資余力を制約する可能性
リスク軽減策:
- 分散投資:単一銘柄への過度な集中を避ける
- 定期積立:ドルコスト平均法による購入価格の平準化
- 配当再投資:DRIPプログラムを活用した複利効果の最大化
- 長期視点:短期的な株価変動に惑わされない投資姿勢
- 補完的投資:成長株との組み合わせによるバランス確保
まとめ:配当投資家にとってのコカ・コーラ
コカ・コーラは、63年連続増配という比類なき実績、世界最強クラスのブランド力、年6%前後の配当成長実績を兼ね備えた、配当重視投資家にとって究極の投資対象です。
世界200カ国以上での事業展開による地理的分散、200以上のブランドを擁する製品ポートフォリオ、健康志向への対応戦略により、長期的な配当成長の継続が期待できます。一方で、高い配当性向や成熟市場での成長鈍化など、投資家が注意すべき点も存在します。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、コカ・コーラは「安定性と信頼性の象徴的な配当王銘柄」として、ポートフォリオの中核に位置づけることを強く推奨できる銘柄です。特に、退職後の安定収入を求める投資家や、世代を超えた資産形成を目指す投資家にとって、最適な選択肢の一つといえるでしょう。
出典
MacroTrends.com(主要財務データ):
- CocaCola EPS – Earnings per Share 2010-2025 (KO)
- CocaCola Revenue 2010-2025 (KO)
- CocaCola Cash Flow from Operating Activities 2010-2025 (KO)
- CocaCola Net Income 2010-2025 (KO)
- CocaCola Total Assets 2010-2025 (KO)
- CocaCola Total Liabilities 2010-2025 (KO)
- CocaCola Share Holder Equity 2010-2025 (KO)
- CocaCola ROE – Return on Equity 2010-2025 (KO)
- CocaCola Stock Price History 2010-2025 (KO)
- CocaCola Free Cash Flow 2010-2025 (KO)
配当・IRプレスリリース:
- Coca-Cola Reports Fourth Quarter and Full Year 2024 Results
- Board Approves 63rd Consecutive Annual Dividend Increase (Feb 20, 2025)
追加財務データ:
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
最終更新日時: 2025年8月31日