LRCX(ラムリサーチ)配当・業績:3D半導体を支えるエッチングの巨人

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【2025年版】LRCX(ラムリサーチ)配当・業績:3D半導体を支えるエッチングの巨人


【2025年版】Lam Research (LRCX) 徹底分析:3D半導体を支えるエッチングの巨人、その成長性と配当力

はじめに
Lam Research(ラムリサーチ)は、半導体製造装置業界の巨人であり、特に「エッチング」と「成膜」という工程で世界トップクラスのシェアを誇ります。これらの技術は、半導体チップ上に微細な回路を形成するための「彫刻」と「コーティング」に相当し、チップの性能を決定づける極めて重要な役割を担っています。
本記事では、Lam Researchが半導体の3D化という大きな技術トレンドの波に乗り、いかにして「高成長」を遂げ、同時に「加速する配当」で株主に報いてきたのかを分析します。半導体セクターの中でも、特にメモリ市場と密接な関係を持つ同社の投資価値とリスクを、財務データから解き明かします。

最重要ポイント:なぜLam Researchは半導体の3D化に不可欠なのか?

Lam Researchの強さを理解する鍵は、3D NANDフラッシュメモリ最先端ロジック半導体の進化にあります。半導体は、より多くのデータを記憶し、より速く処理するために、回路を平面的に広げるだけでなく、高層ビルのように縦方向に積み上げる「3D化」が進んでいます。

  • エッチング:回路の溝を深く、垂直に、そして正確に「彫る」技術。
  • 成膜(デポジション):彫った溝に絶縁膜や金属膜を均一に「盛る」技術。

チップの積層数が増えるほど、この「彫る」「盛る」という工程の難易度と回数が爆発的に増加するため、Lam Researchの高度な装置への需要が構造的に拡大しているのです。

【免責事項および出典について】

  • 本記事の財務データは、主にLam Research Corp.がSEC(米国証券取引委員会)に提出した公式報告書(Form 10-K)、信頼性の高い金融データ提供サイト「MacroTrends.net」等の情報を基に作成されています。詳細な出典は記事末尾に記載しています。
  • 会計年度は6月締めです。各種指標は筆者が算出したものです。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任においてお願いします。

1. 業績分析:半導体サイクルを乗りこなす成長力

Lam Researchの業績は、特にメモリ市場の設備投資サイクルに強く影響されますが、長期的な技術革新を背景に力強い成長を遂げてきました。

1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移

会計年度 売上高(百万$) 営業CF(百万$) 純利益(百万$) EPS ($)(1株当たり利益)
2014 4,607 717 632 3.58
2015 5,259 786 656 3.71
2016 5,886 1,350 914 5.17
2017 8,014 2,029 1,698 9.56
2018 11,077 2,656 2,381 13.25
2019 9,654 3,176 2,191 12.59
2020 10,045 2,126 2,252 14.61
2021 14,626 3,588 3,908 25.37
2022 17,227 3,100 4,605 32.02
2023 17,429 5,179 4,511 32.22
2024 (TTM) 14,239 4,302 3,576 26.55
CAGR (年平均成長率)
過去10年(FY14-24) 11.9% 19.6% 18.9% 22.2%
過去5年(FY19-24) 8.1% 6.3% 10.3% 16.1%

出典: MacroTrends.net等、信頼できる情報源より筆者作成。TTMは執筆時点の過去12ヶ月実績。CAGRは筆者算出。

  • 力強い長期成長:過去10年間で売上高は年率11.9%で成長。特にEPSは自社株買いの効果も大きく、年率22.2%という高い成長率を達成しています。
  • 近年の減速:過去5年では、メモリ市場の調整局面(特に2023-2024年)を反映し、成長ペースは鈍化しています。TTM(過去12ヶ月)の業績は、直近の業界の厳しさを物語っています。

2. 株主還元:成長と共に加速する配当

Lam Researchは2014年に配当を開始して以来、株主還元を着実に強化してきました。

2.1. 配当実績

連続増配年数
10年

5年平均配当成長率
17.6%

配当性向 (TTM)
約29%

年間配当 (2024年)
$7.80

  • 10年連続の増配:配当開始以来、一度も減配することなく増配を続けています。
  • 高い配当成長率:直近5年間の平均増配率は17.6%と非常に高く、株主のインカムを力強く成長させています。
  • 健全な配当性向:配当性向は約29%と低く抑えられており、将来の増配余力と事業の安定性を示唆しています。

注意:2015年のデータについて

一部のデータサイトでは2015年に異常な配当成長率が記録されていますが、これは特別配当による一時的なものです。本分析では、この一回限りのイベントを除いた、持続的な通常配当の成長を評価しています。

2.2. フリーキャッシュフローで見る配当の安全性

会計年度 フリーCF(百万$) 年間配当支払額(百万$) FCF配当カバー率
2019 2,804 713 3.9倍
2020 1,732 746 2.3倍
2021 2,954 813 3.6倍
2022 2,110 938 2.3倍
2023 4,484 1,010 4.4倍

出典: MacroTrends.net等。カバー率は筆者算出。

  • 非常に高いカバー率:フリーキャッシュフローは常に配当支払額の2倍以上あり、配当の安全性は極めて高いレベルです。

3. 財務分析:積極的な株主還元と財務レバレッジ

Lam Researchは、株主価値の最大化を目指し、財務レバレッジを積極的に活用する資本政策を採っています。

会計年度 総資産(百万$) 株主資本(百万$) 自己資本比率 ROE (%)(自己資本利益率)
2019 12,001 4,674 38.9% 46.9%
2020 14,559 5,172 35.5% 43.5%
2021 15,892 6,027 37.9% 64.8%
2022 17,196 6,278 36.5% 73.3%
2023 18,782 8,210 43.7% 54.9%

出典: MacroTrends.net等。比率・ROEは筆者算出。

  • レバレッジの活用:自己資本比率は35%~45%の範囲で推移しており、負債を戦略的に活用して事業を拡大しています。
  • 高い資本効率 (ROE):ROEは50%前後、時には70%を超える非常に高い水準を記録します。これは、高い利益率と財務レバレッジの組み合わせによるもので、資本を効率的に利益に転換している証です。

4. 投資判断のヒント:Lam Researchの強みとリスク

Lam Researchへの投資を検討する上で、その強力な競争優位性と、業界特有のリスクの両面を理解することが不可欠です。

Lam Researchの強み (事業の優位性)

  • エッチング市場でのリーダーシップ:半導体製造の最重要工程の一つであるエッチングで世界トップクラスのシェアを誇ります。
  • 3D化トレンドの最大の受益者:3D NANDメモリや次世代ロジック半導体の製造に不可欠な技術を提供しており、構造的な追い風を受けています。
  • 高い収益性とキャッシュ創出力:技術的優位性を背景に高い利益率を確保し、潤沢なフリーキャッシュフローを生み出しています。
  • 強力な顧客基盤:Samsung、Micron、SK Hynixといった大手メモリメーカーや、TSMC、Intelといったロジックメーカーとの強固な関係を築いています。

注意すべきリスク要因

  1. メモリ市場への高い依存度:売上の中でも特にメモリ(特にNAND)市場への依存度が高く、同市場の市況(シリコンサイクル)から極めて大きな影響を受けます。
  2. 景気循環性:半導体業界全体の設備投資の波に業績が大きく左右されるため、株価の変動性(ボラティリティ)が高くなる傾向があります。
  3. 地政学リスク:米国の対中輸出規制は、同社の中国向けビジネスに直接的な影響を与えます。
  4. 激しい技術競争:Applied Materialsや東京エレクトロンといった競合との間で、常に熾烈な技術開発競争に晒されています。

5. まとめ

本記事では、Lam Researchの財務データを多角的に分析しました。最後に、投資判断のためのポイントを整理します。

Lam Researchは、半導体の3D化という不可逆的なトレンドを捉え、高い成長性と株主還元を両立させる、半導体装置セクターの中核企業です。その技術的リーダーシップは強固な収益基盤を形成し、景気循環の谷を乗り越えながらも株主への還元を加速させる原動力となっています。

投資家は、この力強い成長ポテンシャルと、特にメモリ市場のサイクルに連動する業績の変動性というリスクを天秤にかける必要があります。

最終的な投資判断は、Lam Researchの技術的優位性と、半導体業界特有のボラティリティをご自身の投資戦略と照らし合わせて評価することが重要です。

6. 出典情報

公式情報

財務データ


Posted by 南 一矢