LRCX(ラムリサーチ)配当・業績:3D半導体を支えるエッチングの巨人
【2026年5月版】Lam Research (LRCX) 徹底分析:3D半導体を支えるエッチングの巨人、その成長性と配当力
はじめに
Lam Research(ラムリサーチ)は、半導体製造装置業界の主要企業であり、特に「エッチング」と「成膜」という工程で世界トップクラスの競争力を持ちます。これらの技術は、半導体チップ上に微細な回路を形成するための「彫刻」と「コーティング」に相当し、チップの性能を決定づける重要な役割を担っています。
本記事では、Lam Researchが半導体の3D化、AI向け半導体、先端メモリ投資という技術トレンドの波に乗り、いかにして「高成長」を遂げ、同時に「配当と自社株買い」で株主に報いてきたのかを分析します。年次データはFY2025(2025年6月29日終了年度)まで、四半期データはFY2026 Q3(2026年3月29日終了四半期)まで反映しています。[1][2]
【重要】株式分割について
Lam Researchは2024年10月3日に10対1の株式分割を実施しました。本記事の1株当たりデータ(EPS、配当など)は、すべて分割調整後の数値で統一しています。分割発表と同時に、同社は100億ドルの自社株買いプログラムも承認しました。[3]
最重要ポイント:なぜLam Researchは半導体の3D化とAIに不可欠なのか?
Lam Researchの強さを理解する鍵は、3D NANDフラッシュメモリ、HBMを含む先端メモリ、そしてAIチップ向けの最先端ロジック半導体にあります。半導体は、より多くのデータを記憶し、より速く処理するために、回路を平面的に広げるだけでなく、高層ビルのように縦方向へ積み上げる「3D化」が進んでいます。
- エッチング:回路の溝を深く、垂直に、正確に「彫る」技術です。
- 成膜(デポジション):彫った溝に絶縁膜や金属膜を均一に「盛る」技術です。
- 顧客サポート:既存装置の保守・アップグレード・部品供給を通じて、半導体メーカーの稼働率改善を支える事業です。
チップの積層数が増え、AIチップのように構造が複雑になるほど、この「彫る」「盛る」という工程の難易度と回数が増えます。そのため、Lam Researchの高度な装置とサポート事業への需要は、半導体の微細化・3D化・AI化とともに拡大しやすい構造にあります。
【免責事項および出典について】
- 本記事の財務データは、主にLam Research Corp.のForm 10-K、Form 10-Q、四半期決算発表、公式IR資料に基づいて作成しています。[1][2]
- Lam Researchの会計年度は6月締めです。例えばFY2025は2024年7月1日から2025年6月29日までを指します。
- 記事内のCAGR、利益率、自己資本比率、ROE、FCF配当カバー率などは、公式数値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
- スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
【2026年5月更新】
FY2025 Form 10-Kに加え、2026年4月22日発表のFY2026 Q3決算を反映しました。FY2026 Q3は売上高58.41億ドル、GAAP粗利益率49.8%、GAAP営業利益率35.0%、GAAP希薄化後EPS1.45ドル、Non-GAAP希薄化後EPS1.47ドルでした。会社は同四半期について、AI需要を背景に「記録的な売上高とEPS」を達成したと説明しています。[2]
1. 業績分析:半導体サイクルを乗りこなす成長力
Lam Researchの業績は、特にメモリ市場の設備投資サイクルに強く影響されます。ただし、3D NAND、DRAM、HBM、先端ロジック、AI向け半導体の複雑化により、同社が得意とするエッチング・成膜工程の重要性は高まっています。FY2025は売上高が大きく回復し、FY2026に入ってからも四半期ベースで過去最高水準の売上を更新しています。[1][2]
1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移
| 会計年度 | 売上高 百万$ |
営業CF 百万$ |
純利益 百万$ |
EPS 分割調整後・希薄化後$ |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 5,886 | 1,350 | 914 | 0.52 |
| 2017 | 8,014 | 2,029 | 1,698 | 0.96 |
| 2018 | 11,077 | 2,656 | 2,381 | 1.33 |
| 2019 | 9,654 | 3,176 | 2,191 | 1.26 |
| 2020 | 10,045 | 2,126 | 2,252 | 1.46 |
| 2021 | 14,626 | 3,588 | 3,908 | 2.54 |
| 2022 | 17,227 | 3,100 | 4,605 | 3.20 |
| 2023 | 17,429 | 5,179 | 4,511 | 3.22 |
| 2024 | 14,905 | 4,571 | 3,828 | 2.89 |
| 2025 | 18,436 | 6,170 | 5,358 | 4.15 |
| CAGR(年平均成長率) | ||||
| 過去10年 FY2016→FY2025 |
約12.1% | 約16.4% | 約19.4% | 約23.1% |
| 過去5年 FY2020→FY2025 |
約12.9% | 約23.7% | 約18.9% | 約23.2% |
注)EPSは10対1株式分割後の基準に調整。CAGRは筆者算出。[1][4]
- FY2025は大幅回復:FY2025の売上高は184.36億ドル、前年比+23.7%。純利益は53.58億ドル、前年比+40.0%でした。AI向け半導体需要、先端メモリ投資、顧客サポート事業の拡大が追い風になりました。[1]
- 長期成長力:FY2016からFY2025まで、売上高は年率約12.1%、EPSは年率約23.1%で成長しました。EPSの伸びには、利益成長に加え、自社株買いによる株式数減少も寄与しています。
- 営業CFの急拡大:FY2025の営業CFは61.70億ドルで、FY2024の45.71億ドルから増加しました。装置企業でありながら、高い利益率と運転資本管理によって強いキャッシュ創出力を示しています。[1]
1.2. 直近の四半期業績(FY2026 Q1〜Q3)
FY2026も好調に推移しています。2026年3月四半期(FY2026 Q3)は、売上高58.41億ドル、Non-GAAP希薄化後EPS1.47ドルとなり、前四半期比でも売上高・EPSともに増加しました。[2]
| 四半期 | 売上高 百万$ |
GAAP 粗利益率 |
GAAP 営業利益率 |
GAAP EPS 希薄化後$ |
Non-GAAP EPS 希薄化後$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2026 Q1 2025年9月四半期 |
5,324 | 50.4% | 34.8% | 1.24 | 1.26 |
| FY2026 Q2 2025年12月四半期 |
5,345 | 49.6% | 33.9% | 1.26 | 1.27 |
| FY2026 Q3 2026年3月四半期 |
5,841 | 49.8% | 35.0% | 1.45 | 1.47 |
注)FY2026 Q3は2026年3月29日終了四半期。FY2026 Q1〜Q2はLam Researchの四半期決算資料、FY2026 Q3は2026年4月22日決算発表に基づく。[2][5]
- FY2026 Q3は過去最高水準:2026年3月四半期の売上高は58.41億ドルで、前四半期比+9%。同社はAI需要を背景に記録的な売上とEPSを達成したと説明しています。[2]
- 利益率も高水準:FY2026 Q3のNon-GAAP粗利益率は49.9%、Non-GAAP営業利益率は35.0%でした。好ましい製品ミックスと工場効率の改善が寄与しています。[2]
- CSBGが拡大:FY2026 Q3の顧客サポート事業(Customer Support Business Group)は、四半期売上20億ドル超の水準に達しました。設置済み装置の増加は、装置販売だけでなく、保守・部品・アップグレード収益の土台になります。[2]
2. 株主還元:成長とともに積み上がる配当
Lam Researchは2014年に配当を開始して以来、株主還元を着実に強化してきました。配当利回りだけを見ると高配当株ではありませんが、増配、自社株買い、フリーキャッシュフロー創出力を合わせて評価する必要があります。
2.1. 配当実績
FY2025 EPS基準
現行・年換算
- 11年連続の増配:Lam Researchは配当開始後、長期的に増配を続けています。2026年2月には四半期配当0.26ドルを発表し、2026年4月8日に支払われました。[6]
- 健全な配当性向:現行の年換算配当1.04ドルをFY2025の分割調整後EPS4.15ドルで割ると、配当性向は約25%です。利益のサイクル性はありますが、平時の配当余力は十分に残っています。[1]
- 株主還元方針:Lam Researchは、フリーキャッシュフローの75〜100%を配当と自社株買いで株主へ還元する方針を示しています。[3]
2.2. フリーキャッシュフローで見る配当の安全性
| 会計年度 | FCF 百万$ |
配当支払額 百万$ |
FCF配当 カバー率 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 2,954 | 813 | 3.6倍 |
| 2022 | 2,110 | 938 | 2.2倍 |
| 2023 | 4,679 | 1,010 | 4.6倍 |
| 2024 | 4,256 | 1,038 | 4.1倍 |
| 2025 | 5,414 | 1,150 | 4.7倍 |
注)FCFは営業CFから設備投資を差し引いて筆者算出。[1]
- 非常に高いカバー率:FY2025のFCFは54.14億ドルで、配当支払額11.50億ドルの約4.7倍でした。配当の安全性は、半導体装置企業としては高い水準です。
- 総還元もFCF内に収まる:FY2025は配当11.50億ドル、自社株買い34.42億ドル、合計45.92億ドルを株主へ還元しました。これはFY2025のFCF54.14億ドルの範囲内です。[1]
3. 財務分析:積極的な株主還元と財務安定性
Lam Researchは株主還元を重視する一方で、バランスシートも比較的健全に保っています。半導体装置産業は景気循環性が強いため、現金、債務、自己資本、キャッシュフローのバランスを確認することが重要です。
| 会計年度末 | 総資産 百万$ |
総負債 百万$ |
株主資本 百万$ |
自己資本比率 | ROE 概算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 15,892 | 9,865 | 6,027 | 37.9% | 64.8% |
| 2022 | 17,196 | 10,918 | 6,278 | 36.5% | 73.3% |
| 2023 | 18,782 | 10,572 | 8,210 | 43.7% | 54.9% |
| 2024 | 19,161 | 10,542 | 8,619 | 45.0% | 44.4% |
| 2025 | 21,502 | 11,642 | 9,860 | 45.9% | 54.4% |
注)総負債は総資産から株主資本を差し引いて整理。ROEは純利益÷期末株主資本で筆者算出。[1][4]
- 自己資本比率は改善傾向:FY2025末の自己資本比率は45.9%で、FY2021の37.9%から上昇しています。
- 高い資本効率:FY2025のROEは概算で54.4%です。高い利益率と効率的な資本配分が、株主資本に対する高い利益創出につながっています。
- 現金水準:FY2026 Q3末時点の現金・現金同等物・制限付き現金は47.7億ドルでした。前四半期末の62.0億ドルから減少しましたが、主に株主還元、債務返済、設備投資に資金を使ったためです。[2]
- 粗利益率の高さ:FY2025の粗利益率は48.7%で、FY2024の47.3%から改善しました。FY2026 Q3もGAAP粗利益率49.8%、Non-GAAP粗利益率49.9%と高水準です。[1][2]
ミニ解説:Lam Researchのような半導体製造装置企業は、業績が半導体メーカーの設備投資サイクルに左右されます。そのため、単年度の売上やEPSだけでなく、FCF、受注・顧客サポート事業、現金水準、株主還元方針をセットで見ると、投資判断が安定します。
4. 投資判断のヒント:Lam Researchの強みとリスク
Lam Researchへの投資を検討するうえでは、強力な競争優位性と、半導体装置業界特有のリスクの両面を理解することが重要です。
Lam Researchの強み
- エッチング市場でのリーダーシップ:半導体製造の重要工程であるエッチングで世界トップクラスの地位を持ちます。
- 構造的な追い風:3D NAND、DRAM、HBM、先端ロジック、AIチップの製造に不可欠な技術を提供しており、半導体構造の複雑化がそのまま需要増につながりやすい立場です。
- 顧客サポート事業の安定性:設置済み装置の増加により、保守、部品、アップグレード収益が積み上がります。FY2026 Q3には顧客サポート事業が四半期20億ドル超の売上水準に達しました。[2]
- 高い収益性とキャッシュ創出力:FY2025の営業CFは61.70億ドル、FCFは54.14億ドルでした。配当と自社株買いを支える財務力があります。[1]
- 株主還元への明確な姿勢:配当、自社株買い、株式分割を通じて、株主還元を継続的に強化しています。
注意すべきリスク要因
- メモリ市場への依存:Lam Researchはメモリ、特にNANDやDRAM投資の影響を受けやすい企業です。メモリ市況が悪化すれば、装置投資も急減しやすくなります。
- 景気循環性:半導体製造装置は設備投資サイクルに左右されるため、業績と株価の変動性が高くなりやすい分野です。
- 地政学・輸出規制:FY2025の売上高において中国向け比率は大きく、米国の対中輸出規制や地政学的緊張は同社の成長に影響し得ます。[1]
- 技術競争:Applied Materials、東京エレクトロン、KLAなどとの競争は激しく、顧客のロードマップに合わせた技術開発を継続する必要があります。
- 顧客の投資タイミング:AI需要が強くても、顧客の工場建設、クリーンルーム容量、資金調達、在庫状況によって、装置需要のタイミングは前後します。
- 高い市場期待:AI関連需要を背景に株価が高く評価されやすく、好決算でもガイダンスや受注見通しが期待に届かなければ株価が調整する可能性があります。
5. まとめ
Lam Researchは、半導体の3D化とAI化という大きな技術トレンドを捉える、半導体製造装置セクターの中核企業です。FY2025は売上高184.36億ドル、純利益53.58億ドル、営業CF61.70億ドルを記録しました。FY2026 Q3も売上高58.41億ドル、GAAP EPS1.45ドル、Non-GAAP EPS1.47ドルと、四半期ベースで強い業績を示しています。[1][2]
投資家目線では、Lam Researchは「AI・先端メモリ・3D半導体の設備投資拡大を取り込む成長企業」でありながら、「配当と自社株買いで株主還元を継続する高収益企業」でもあります。
一方で、同社は半導体装置企業である以上、メモリ市況、設備投資サイクル、中国向け規制、顧客の投資タイミングに左右されます。投資判断では、売上高やEPSだけでなく、粗利益率、顧客サポート事業、FCF、株主還元、中国向け比率、次世代メモリ・AI関連投資の持続性をセットで確認することが重要です。
【注】(出典リンク)
- Lam Research FY2025 Form 10-K・年次業績 → Lam Research Annual Reports and Proxy → SEC EDGAR Lam Research filings(確認日:2026-05-05) ↩
- Lam Research FY2026 Q3決算 → Lam Research Q3 FY2026 Results → Lam Research Quarterly Results(確認日:2026-05-05) ↩
- 10対1株式分割・100億ドル自社株買い → Lam Research Newsroom「Stock Split and Repurchase Authorization」 → Lam Research Stock Information(確認日:2026-05-05) ↩
- Lam Research過年度データ → Lam Research Annual Reports → Lam Research Financial Information(確認日:2026-05-05) ↩
- Lam Research FY2026 Q1・Q2決算 → Lam Research Quarterly Results → Lam Research Newsroom(確認日:2026-05-05) ↩
- Lam Research四半期配当 → Lam Research IR「Quarterly Dividend」 → Lam Research Stock Information(確認日:2026-05-05) ↩
本記事は公開情報に基づく筆者分析であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。
最終更新日時:2026年5月5日(FY2025 Form 10-K/FY2026 Q3決算反映)

