マリオット(MAR)の配当推移・今後の見通し
マリオット(MAR)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析
マリオット・インターナショナル(Marriott International, Inc.)は、世界最大級のホテルチェーンとして、約144の国と地域で30以上のブランドを展開し、170万室を超える客室を運営しています。ポストコロナの旅行需要回復局面で力強い成長を見せる同社の配当戦略と財務指標の推移を、最新の2024年実績と2025年9月時点の情報を用いて詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報は複数の財務情報サイトを参照)
データソースの制約について
**重要な注意事項**:マリオットは2022年に配当を再開し、現在3年連続増配を達成しています。2025年9月時点で同社は年間$2.68の配当を支払い、約1.0%の配当利回りを提供しています。
本記事では、マリオット公式発表の2024年通年実績と複数の信頼性の高い金融情報サイトのデータを中心に、ホスピタリティ業界における同社の配当支払能力を分析しています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、最新の2024年実績を含めて分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2025 | 1.0% | 6% | 23% | 2.68 | 268.00 | 11.50 |
2024 | 0.87% | 22% | 24% | 2.52 | 270.00 | 10.33 |
2023 | 0.91% | 77% | 20% | 2.08 | 208.00 | 10.18 |
2022 | 0.89% | 復配 | 16% | 1.20 | 148.00 | 7.24 |
2021 | 0% | -100% | 0% | 0.00 | 138.00 | 3.34 |
2020 | 0% | -100% | 0% | 0.00 | 116.00 | -0.27 |
2019 | 1.30% | 21% | 45% | 1.85 | 135.00 | 4.11 |
2018 | 1.33% | 23% | 41% | 1.56 | 117.00 | 3.77 |
2017 | 1.17% | 20% | 31% | 1.28 | 105.00 | 4.14 |
2016 | 1.46% | 28% | 31% | 1.10 | 73.00 | 3.51 |
2015 | 1.52% | 25% | 35% | 0.875 | 72.00 | 2.51 |
2014 | 1.55% | 40% | 27% | 0.70 | 61.00 | 2.58 |
2013 | 1.51% | 23% | 31% | 0.50 | 42.00 | 1.62 |
2012 | 1.66% | 27% | 36% | 0.405 | 32.00 | 1.13 |
2011 | 1.53% | 50% | 39% | 0.32 | 25.00 | 0.82 |
2010 | 1.00% | 33% | 31% | 0.213 | 25.00 | 0.69 |
2009 | 1.10% | 0% | 32% | 0.16 | 16.00 | 0.50 |
2008 | 1.15% | 20% | 38% | 0.16 | 15.00 | 0.42 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合、2024-25年は最新実績
** EPSと平均株価は公式発表と各種財務情報サイトより
ポストコロナの配当回復戦略
マリオット(MAR)は、ホテル・宿泊業界のリーダーとして、**2022年に配当を再開し、その後急速な配当成長を実現**しています。2008年から2019年まで安定的な配当成長を続けていましたが、2020年のCOVID-19パンデミックにより、観光・ビジネス需要が急減し、配当を一時停止しました。
2022年の復配以降、年間配当は1.20ドルから2025年の2.68ドルへと123%増加。この急速な回復は、旅行需要の力強い回復とアセットライトなビジネスモデルの強みを反映しています。特に2024年は、全世界でRevPAR(利用可能客室あたり売上)が4.3%成長し、客室数も6.8%拡大するなど、業界をリードする成長を実現しました。
**3年連続増配**を達成し、配当性向も23%という極めて保守的な水準を維持しており、今後も継続的な配当成長が期待されます。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) | 調整後EBITDA (M$) |
---|---|---|---|---|---|
2024 | 25,100 | 4,650 | 18.5 | 2,690 | 5,240 |
2023 | 23,713 | 3,170 | 13.4 | 3,083 | 4,720 |
2022 | 20,773 | 2,363 | 11.4 | 2,358 | 3,740 |
2021 | 13,857 | 1,177 | 8.5 | 1,099 | 2,150 |
2020 | 10,571 | 1,639 | 15.5 | -267 | 1,230 |
2019 | 20,972 | 2,750 | 13.1 | 1,273 | 3,650 |
2018 | 20,758 | 2,967 | 14.3 | 1,907 | 3,420 |
2017 | 22,894 | 2,725 | 11.9 | 1,372 | 3,280 |
2016 | 17,072 | 2,216 | 13.0 | 780 | 2,890 |
2015 | 14,486 | 1,900 | 13.1 | 859 | 2,450 |
配当支払能力の分析
記録的なキャッシュフロー創出能力
マリオットの配当支払能力は極めて堅実です。2024年の営業キャッシュフローは46.5億ドルで、配当支払額約6.2億ドルを大幅に上回っています。これは**7.5倍の配当カバー比率**を意味し、配当の持続可能性と大幅な増配余地を示しています。また、**2024年に株主に44億ドルを還元**するなど、積極的な株主還元政策を継続しています。
配当支払余力の推移(2008年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 4,650 | 622 | 7.5 |
2023 | 3,170 | 587 | 5.4 |
2022 | 2,363 | 321 | 7.4 |
2021 | 1,177 | 0 | – |
2020 | 1,639 | 0 | – |
2019 | 2,750 | 560 | 4.9 |
2018 | 2,967 | 487 | 6.1 |
2017 | 2,725 | 409 | 6.7 |
2016 | 2,216 | 351 | 6.3 |
2015 | 1,900 | 282 | 6.7 |
配当支払余力の分析結果:
- **過去最高のカバー比率**:復配後最高の7.5倍を達成し、配当を十分にカバー
- **アセットライトモデルの進化**:フランチャイズ手数料とマネジメント報酬中心の収益構造が更に強化
- **大幅な増配余地**:現在の配当性向23%は極めて保守的で、配当倍増の余地も存在
- **旅行需要回復の恩恵**:ポストコロナの需要回復で収益性が大幅改善
キャッシュフロー創出力と資金配分戦略
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFをM$(百万ドル)単位、営業CF成長率を%単位で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 成長率 (%) | 投資CF (M$) | 財務CF (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 4,650 | 46.7 | -850 | -4,200 |
2023 | 3,170 | 34.2 | -465 | -2,864 |
2022 | 2,363 | 100.8 | -297 | -2,962 |
2021 | 1,177 | -28.2 | -187 | -463 |
2020 | 1,639 | -40.4 | 35 | -1,033 |
2019 | 2,750 | -7.3 | -194 | -2,620 |
2018 | 2,967 | 8.9 | -230 | -2,727 |
2017 | 2,725 | 23.0 | -1,175 | -1,576 |
2016 | 2,216 | 16.6 | -765 | -1,440 |
2015 | 1,900 | 23.0 | -593 | -1,337 |
キャッシュフロー分析のポイント
**営業キャッシュフロー**:
- **記録的な成長**:2024年は前年比47%増の46.5億ドルで過去最高水準
- **アセットライトモデルの威力**:少ない設備投資で高いCF創出が可能
- **持続的成長軌道**:旅行需要回復とグローバル展開で継続的成長
**投資キャッシュフロー**:
- **効率的な投資**:年間8.5億ドルの適度な投資水準
- **フランチャイズ重視**:自社所有物件を最小限に抑制
- **成長投資の継続**:新規開発とブランド強化に重点投資
**財務キャッシュフロー**:
- **大規模な株主還元**:2024年に42億ドルの株主還元を実施
- **配当と自社株買いの両立**:配当成長と積極的な自社株買いを継続
- **財務レバレッジの活用**:効率的な資本構成で株主価値を最大化
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 26,500 | 25,200 | 1,300 | 4.9 | 207 | 1,938 |
2023 | 25,674 | 24,800 | 874 | 3.4 | 353 | 2,838 |
2022 | 24,815 | 24,247 | 568 | 2.3 | 415 | 4,269 |
2021 | 25,553 | 24,139 | 1,414 | 5.5 | 78 | 1,707 |
2020 | 24,699 | 24,271 | 430 | 1.7 | -62 | 5,644 |
2019 | 24,350 | 23,647 | 703 | 2.9 | 181 | 3,363 |
2018 | 24,036 | 23,218 | 818 | 3.4 | 233 | 2,838 |
2017 | 23,689 | 22,412 | 1,277 | 5.4 | 107 | 1,755 |
2016 | 17,128 | 13,625 | 3,503 | 20.5 | 22 | 389 |
2015 | 16,903 | 13,502 | 3,401 | 20.1 | 25 | 397 |
バランスシート分析の重要な観点
**自己資本率の改善と戦略的意味**:
- **着実な改善**:2022年の2.3%から2024年の4.9%へと改善傾向
- **アセットライトモデルの特性**:ホテル不動産を所有せず、フランチャイズ・マネジメント契約中心
- **資本効率の最適化**:株主還元により株主資本を適正水準に調整
- **業界特性の理解**:ホスピタリティ業界では一般的な財務構造
**ROE(自己資本利益率)の特徴**:
- **極めて高い水準**:2024年207%、2023年353%と異常に高い水準を維持
- **効率的な資本活用**:最小限の資本で最大限の利益を創出
- **積極的な株主還元の効果**:継続的な自社株買いにより株主資本を最適化
- **持続可能な収益力**:安定したフランチャイズ収入による高収益性
総合評価
マリオットの財務戦略は**「超効率化されたアセットライトモデルの完成形」**と評価できます。自己資本率4.9%という水準は一見リスクが高く見えますが、安定したフランチャイズ収入とマネジメント手数料により、業界最高水準の営業キャッシュフロー創出能力を維持しています。2024年の記録的な業績は、このビジネスモデルの優位性を明確に示しており、今後の配当成長加速への基盤が整っています。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- **力強い配当回復**:2022年復配後、3年で配当を123%増加
- **極めて低い配当性向**:23%という保守的な水準は大幅な増配余地を示唆
- **業界最強のビジネスモデル**:アセットライトモデルによる安定的なCF創出
- **グローバル旅行需要の恩恵**:ポストコロナの旅行需要回復とグローバル展開の相乗効果
配当投資戦略における位置づけ
高成長配当復活銘柄として最有力候補
- **配当成長の加速期**:復配後3年連続増配で、今後更なる成長が期待
- **セクター分散効果**:消費循環株としてポートフォリオに重要な多様性を追加
- **配当倍増の可能性**:現在の保守的な配当性向から判断すると配当倍増も視野内
- **長期成長ドライバー**:グローバルな旅行需要拡大と新興国での成長機会
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- **景気循環リスク**:経済不況時の旅行需要急減の可能性
- **地政学リスク**:国際情勢の変化による国際旅行への影響
- **高レバレッジ構造**:自己資本率4.9%という高い財務レバレッジ
- **新たな宿泊形態との競争**:Airbnbやバケーションレンタルとの競争激化
- **為替変動リスク**:グローバル事業による為替変動の影響
リスク軽減策:
- **段階的投資**:配当成長トレンドを確認しながら段階的にポジション構築
- **景気サイクルの理解**:景気循環を考慮した投資タイミングの最適化
- **長期投資姿勢**:短期的な変動を乗り越える長期投資視点の維持
- **業界動向のモニタリング**:ホスピタリティ業界の変化を継続的に確認
- **配当再投資戦略**:配当を再投資して複利効果を最大限活用
2025年見通しと投資戦略
2025年の成長見通し
継続的な成長が期待される要因
- **開発パイプライン**:57.7万室の新規開発計画で6%以上の客室成長
- **RevPAR成長継続**:国際市場を中心とした継続的な料金改善
- **マージン拡大**:運営効率化により更なる収益性向上
- **配当成長加速**:低い配当性向を活かした積極的な増配政策
まとめ:配当投資家にとってのマリオット
マリオットは、**ポストコロナの力強い回復**、**3年連続の配当成長**、**業界最強のアセットライトモデル**を兼ね備えた、配当成長投資家にとって極めて魅力的な投資対象です。
2024年は記録的な業績を達成し、営業キャッシュフローが47%増加する中で、配当性向は23%という極めて保守的な水準を維持しています。170万室を超えるグローバルネットワーク、30以上の強力なブランドポートフォリオ、そして効率的な資本活用により、今後も持続的な配当成長が高い確度で期待できます。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、マリオットは**「配当成長加速期の最有力候補」**として、ポートフォリオの成長部分を担う投資対象です。現在の1.0%という配当利回りは一見低く見えますが、過去3年間の年平均35%の配当成長率と、23%という保守的な配当性向を考慮すると、将来的な高い配当成長により十分に補われる可能性が高く、長期的な視点での投資が強く推奨されます。ただし、景気循環リスクを十分に理解し、適切な分散投資の一環として投資することが重要です。
出典
**マリオット公式発表(2024年実績):**
- Marriott International 2024年第4四半期・通年決算発表(2025年2月11日)
- Marriott International Quarterly Results
- Marriott International Dividend History
**配当データ(複数ソース統合):**
- MacroTrends – Marriott 25 Year Dividend History
- Koyfin – Marriott International Dividend History & Safety
- Stock Analysis – Marriott International Dividend History & Yield
- Dividend.com – Marriott International Dividend Analysis
**追加財務データ:**
免責事項
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。記事の情報は2025年9月5日時点のものです。