MO:アルトリアの配当推移

タバコ株,必需品,配当






アルトリアグループ(MO)配当利回りと株価分析


アルトリアグループ(MO)配当利回りと株価分析

【2025年1月更新】 最新の2024年通年業績、2025年第1四半期配当($1.06)、2025年業績ガイダンスを反映しました。

アルトリアグループ(Altria Group, Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2024 8.17% 6.7% 62% 4.08 49.9 6.54
2023 8.69% 4% 84% 3.84 44.2 4.57
2022 7.68% 5% 115% 3.68 47.9 3.19
2021 7.49% 4% 263% 3.52 47 1.34
2020 8.23% 4% 142% 3.4 41.3 2.4
2019 6.68% 9% -469% 3.28 49.1 -0.7
2018 4.98% 18% 82% 3 60.2 3.68
2017 3.64% 8% 48% 2.54 69.8 5.31
2016 3.68% 8% 32% 2.35 63.9 7.28
2015 4.03% 9% 81% 2.17 53.9 2.67
2014 4.75% 9% 78% 2 42.1 2.56
2013 5.18% 8% 81% 1.84 35.5 2.26
2012 5.26% 8% 83% 1.7 32.3 2.06
2011 5.96% 8% 96% 1.58 26.5 1.64
2010 6.61% 11% 78% 1.46 22.1 1.87
2009 7.59% -21% 86% 1.32 17.4 1.54
2008 8.20% -45% 71% 1.68 20.5 2.36

2024年の配当実績と2025年見通し

  • 2024年配当総額:年間$4.08(前年比6.7%増)
  • 2025年第1四半期:$1.06(前年同期比3.9%増)
  • 連続増配:17年連続(2025年で60回目の増配を達成)
  • 目標配当性向:調整後EPSの約80%

【出典】

安定した配当成長の実績

Altria Group(MO)の配当実績は、たばこ産業特有の規制環境や社会的圧力にもかかわらず、安定した成長を続けています。2008年の1株当たり$1.68から2024年には$4.08へと、16年間で約143%の増加を達成しました。特筆すべきは、このような長期にわたる一貫した増配トレンドが、複数の景気サイクルや規制強化、喫煙率の低下といった逆風にもかかわらず維持されてきた点です。

配当成長率の推移

MOの配当成長率は比較的安定しています:

  • 2008〜2009年:経済危機の影響により減配(-45%、-21%)
  • 2010〜2015年:回復期に安定した成長(8〜11%)
  • 2016〜2017年:安定した8%の成長
  • 2018年:成長率の加速(18%)
  • 2019〜2023年:より控えめで安定した成長(4〜9%)
  • 2024年:回復基調(6.7%)

このパターンは、初期の経済危機からの回復と、その後の成熟企業としての安定した配当政策への移行を反映しています。特に注目すべきは、2010年以降、一度も配当を削減していない点です。

配当性向の持続可能性

2024年の改善:配当性向は62%まで改善し、2023年の84%から大幅に健全化しました。これは、EPSが$4.57から$6.54へと43.1%増加したことによるものです。

配当性向(「1株配当 ÷ EPS」)は、MOにとって重要な指標ですが、その値は年によって大きく変動しています:

  • 2008〜2015年:71〜96%の範囲で比較的高水準だが安定
  • 2016〜2017年:例外的に低い水準(32%、48%)を記録
  • 2018年:82%と典型的な高水準に戻る
  • 2019年:EPSがマイナスとなり、計算上は-469%
  • 2020〜2023年:142%、263%、115%、84%と変動
  • 2024年:62%と大幅改善

財務パフォーマンスと成長見通し

2024年業績ハイライト

  • 売上高:$20.44B(前年比-0.3%)
  • 調整後EPS:$5.12(前年比+3.4%)
  • 営業CFマージン:43%(前年45%から微減)
  • 配当支払い:$6.8B(年間総額)
  • 自社株買い:$3.4B(7,350万株を回収)

2025年ガイダンス

2025年業績見通し:

  • 調整後EPS:$5.22〜$5.37(前年比+2%〜+5%)
  • 新規自社株買い:$1B(2025年末までに完了予定)
  • 営業日数:1日減(第1四半期に影響)
  • 実効税率:23%〜24%

セグメント別業績(2024年)

セグメント 売上高
(B$)
前年比 調整後OCI
(B$)
OCIマージン
喫煙可能製品 17.74 -0.8% 10.92 61.6%
経口たばこ製品 2.67 +4.5% 1.81 67.8%
その他 0.04 -36.7% -0.41 N/A

強力なキャッシュフロー基盤

2024年の株主還元:配当$6.8Bと自社株買い$3.4Bを合わせて、総額$10.2Bを株主に還元しました。これは営業キャッシュフロー$8.75Bを上回る積極的な還元です。

MOの最大の強みは、極めて堅固なキャッシュフロー生成能力にあります。たばこ産業の特性として、ブランド力に基づく価格設定力と低い設備投資要件により、高いキャッシュフローマージンを実現しています。

重要な事業変化と戦略

IQOS商業化権利の売却

2024年の重要な取引:アルトリアは、加熱式たばこ「IQOS」の米国における商業化権利をPhilip Morris International(PMI)に売却し、$27億の利益を計上しました。これは2024年のEPS押し上げ要因となっています。

NJOY事業の進展

  • NJOY消耗品の出荷量:Q4に前年比15.3%増の1,280万個
  • NJOYデバイスの出荷量:Q4に前年比22.2%増の110万個
  • 米国市場シェア:消耗品で6.4%(前年比+2.8ポイント)

長期キャッシュフロー分析と配当カバー率

営業キャッシュフローと配当支払いの推移(17年間)

年度 営業CF
(M$)
CF成長率
(%)
配当支払
(M$)
配当カバー率
(倍)
FCF
(M$)
株主還元
(M$)
還元率
(%)
2024 8,753 -6 6,800 1.29 8,578 10,200 119
2023 9,287 12 6,553 1.42 9,004 8,374 93
2022 8,256 -2 6,297 1.31 8,074 9,541 118
2021 8,405 0 6,105 1.38 8,193 10,029 122
2020 8,385 7 5,734 1.46 8,242 5,396 65
2019 7,837 -7 5,598 1.40 7,694 4,712 61
2018 8,391 71 5,115 1.64 8,214 -4,716 -57
2017 4,901 28 4,678 1.05 4,434 7,771 175
2016 3,826 -35 4,332 0.88 3,649 5,329 146
2015 5,843 25 4,253 1.37 5,828 6,780 116
2014 4,663 7 3,920 1.19 4,486 4,694 105
2013 4,375 13 3,610 1.21 4,177 4,702 113
2012 3,885 8 3,345 1.16 3,805 5,175 136
2011 3,581 29 3,109 1.15 3,194 3,012 94
2010 2,767 -20 2,873 0.96 2,508 2,583 103
2009 3,443 -29 2,595 1.33 3,678 -276 -8
2008 4,881 -53 3,306 1.48 5,360 2,585 48

配当カバー率の安定性分析

  • 17年平均カバー率:1.26倍(配当は営業CFの79%をカバー)
  • 危険水準(1.0倍未満):2010年(0.96倍)、2016年(0.88倍)の2回のみ
  • 2018年以降:安定して1.29-1.64倍を維持
  • フリーキャッシュフロー:2024年は$85.8億と潤沢

キャッシュフロー構造の特徴

「営業CF > 配当支払い」の安定性:過去17年間で営業CFが配当支払いを下回ったのは2010年と2016年の2回のみです。特に2018年以降は、営業CFが年間$8B台の高水準で安定し、配当カバー率も1.29-1.64倍の健全な範囲を維持しています。

2024年の積極的株主還元:配当$68億に加えて自社株買い$34億を実施し、総還元額$102億は営業CF$87.5億を上回りました。これは一時的なIQOS権利売却益や現金蓄積を活用した戦略的な株主還元です。

バランスシート分析と財務健全性

資本構成と負債水準の推移(17年間)

年度 総資産
(B$)
総負債
(B$)
株主資本
(B$)
自己資本率
(%)
純負債
(B$)
D/E比率 債務/EBITDA
2024 35.2 37.4 -2.2 -6 21.8 N/A 2.1
2023 38.6 42.1 -3.5 -9 22.5 N/A 2.2
2022 37.0 40.9 -3.9 -11 25.1 N/A 2.4
2021 39.5 41.1 -1.6 -4 26.3 N/A 2.7
2020 47.4 44.4 2.8 6 26.9 15.6 2.8
2019 49.3 42.9 6.2 13 25.4 6.9 2.6
2018 55.5 40.6 14.8 27 26.2 2.7 2.3
2017 43.2 27.8 15.4 36 14.5 1.8 1.7
2016 45.9 33.1 12.8 28 16.8 2.6 2.1
2015 31.5 28.5 2.9 9 19.7 9.9 2.8
2014 34.5 31.4 3.0 9 21.9 10.4 3.2
2013 34.9 30.7 4.1 12 21.8 7.5 3.1
2012 35.3 32.1 3.2 9 23.1 10.1 3.4
2011 36.8 33.0 3.7 10 24.9 9.0 3.8
2010 37.4 32.2 5.2 14 25.8 6.2 4.1
2009 36.7 32.6 4.1 11 27.5 8.0 4.2
2008 27.2 24.4 2.8 10 21.8 8.6 3.9

バランスシート構造の特徴と注意点

  • マイナス株主資本(2021年以降):積極的な株主還元によるもので、会計上の現象
  • 債務水準の管理:債務/EBITDA比率は2.1倍で、目標の2.0倍付近を維持
  • 流動性の確保:現金$31.3億と未使用の信用枠により十分な資金調達力
  • 金利リスク:長期固定金利債務が中心で、金利上昇の影響は限定的

財務レバレッジの戦略的活用

レバレッジド・リキャピタリゼーション戦略:2021年以降の株主資本のマイナス化は、同社が採用している典型的な「レバレッジド・リキャピタリゼーション」戦略の結果です。これは以下の特徴があります:

  • 高収益ビジネスの活用:安定した高収益事業からのCF創出力を背景
  • 税務効率化:負債の利子控除効果により税務上の最適化
  • 株主還元最大化:会計上の株主資本を超える還元の実現
  • 資本効率向上:ROEの向上(分母がマイナスのため計算上は複雑)

信用格付けと財務制約

信用格付け(参考):

  • S&P:BBB(安定)
  • Moody’s:Baa2(安定)
  • 投資適格級を維持
  • 債務契約上の財務制約条項をクリア

負債構成と満期プロファイル

2024年の負債管理:総負債$249億のうち、短期債務は$15.3億(6.1%)に抑制されており、大部分が長期固定金利債務です。満期の分散により、リファイナンシングリスクは適切に管理されています。

流動性管理:

  • 現金および現金同等物:$31.3億
  • 未使用のリボルビング信用枠:$35億
  • 総流動性:約$66億
  • 短期債務に対する流動性カバー率:4.3倍

Posted by 南 一矢