【製薬の巨人対決】メルク(MRK) vs イーライリリー(LLY)!安定高配当か、爆発的成長か?

世界の人々の健康を支える製薬(ヘルスケア)セクター。その中でも、メルク(MRK)イーライリリー(LLY)は、投資家にとって全く異なる魅力を持つ2大巨頭です。メルクは長年、安定した業績と増配で「ディフェンシブ銘柄」の代表格。一方、イーライリリーは近年、歴史的な新薬の成功により世界で最も注目される「グロース銘柄」へと変貌しました。

本記事では、「安定のメルク」と「成長のリリー」、この対照的な2社の業績、配当、そして将来性を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:運命を分ける「ブロックバスター薬」

  • メルク (MRK) → がん治療薬「キイトルーダ」
    2024年のキイトルーダ売上は$29.5B、メルクの通期売上$64.2Bの中核です。[1] 2028年頃の特許切れを見据え、皮下投与(SC)版「KEYTRUDA QLEX」が2025年9月に米FDA承認を取得。投与時間の短縮(約1〜2分)により採用拡大が期待されます。[2][10]
  • イーライリリー (LLY) → GLP-1系「マンジャロ」「ゼップバウンド」
    糖尿病・肥満症治療薬(有効成分:ティルゼパチド)の世界的ヒットが続き、2025年通期売上ガイダンスは$63.0–$63.5Bへ上方修正(2025年10月30日発表)。Q3は売上+54%の$17.6B、主要製品売上$11.98Bと、需要拡大と量産強化(米バージニア・テキサス新工場、プエルトリコ拡張)が進捗しています。[3]

比較サマリー:バリューのMRK、グロースのLLY

項目 メルク (MRK) イーライリリー (LLY)
主力製品 がん免疫薬キイトルーダ、ワクチンガーダシル[1] GLP-1系マンジャロ/ゼップバウンド[3]
経営課題 キイトルーダの特許切れ(2028年頃)と次の柱育成。SC版承認でディフェンス強化。[2][10] 需要に見合う増産・供給拡大、競合・価格圧力への対応。[3]
連続増配年数 十数年(継続中)[5] 10年以上(継続中)[6]
配当利回り(直近) 約3.74%
$3.24($0.81×4)÷ 株価$86.58(2025-10-30)[5][7]
約0.74%
$6.00($1.50×4)÷ 株価$813.53(2025-10-30)[6][8]
PER(将来予想の目安) 9.7倍
株価$86.58 ÷ EPS $8.93–$8.98 の中央値$8.96(2025通期ガイダンス)[4][7]
約34.8倍
株価$813.53 ÷ EPS $23.00–$23.70 の中央値$23.35(2025通期ガイダンス)[3][8]

業績と成長性の詳細分析

リリーの近年の業績は、新薬の波がどれほど破壊的かを示す好例です。メルクも大型品の伸長で堅調ですが、成長率はリリーが圧倒。

メルク 売上高(前年比) イーライリリー 売上高(前年比)
2025(会社見通し) $64.5–$65.0 B (+約0.9%)[4] $63.0–$63.5 B (+約40%)[3]
2024 $64.2 B (+約6.7%)[1] 約$45.0 B (+約32%)[9]
2023 $60.1 B (+約1%)[1] $34.1 B (+約20%)[9]
2022 $59.3 B

※B=10億ドル。メルクは2024年通期実績および2025年通期ガイダンス、リリーは2024年通期実績および2025年通期ガイダンスを反映。数値は会社開示の概数、または会計区分の違いにより「約」表記。

配当の詳細比較:利回りのMRK、増配率のLLY

利回りはメルクが明確に優位。一方、リリーは事業の急成長を背景に高い増配率配当引き上げ(2025年は$1.50/四半期)を継続しています。[5][6]

MRK 年間配当(増配率) LLY 年間配当(増配率)
2024 $3.08 (+約5.5%) $5.20 (+約15%)
2023 $2.92 (+約5.8%) $4.52 (+約15%)
2022 $2.76 (+約6%) $3.92 (+約15%)
2021 $2.60 (+約7%) $3.40 (+約15%)
2020 $2.44 (+約10%) $2.96 (+約15%)

※年額は会社の配当実績・公表履歴から整理(目安)。最新の四半期配当は本文中の出典を参照([5][6])。

関連記事:
メルク(MRK)の配当推移
イーライリリー(LLY)の配当推移

結論:あなたに合うのはどちら?

「現在の高い配当利回り」と「ディフェンシブ性」を重視するなら → メルク (MRK)

主力依存とパテントクリフは課題ながら、SC版承認などライフサイクル戦略を強化。ワクチン等の柱も持ち、キャッシュ創出力は安定。約3.7%台の利回りと継続的な増配が魅力です。[2][5]

「将来の爆発的な成長性」に期待するなら → イーライリリー (LLY)

GLP-1市場は拡大が続き、経口候補オルフォルグリプロン(orforglipron)の第3相良好を受け、年内の規制申請予定。高バリュエーションだが、供給能力の増強とパイプライン進展が続く限り、長期の資産成長を狙うグロース投資家に適した選択肢です。[3]


※本ページの分析は2025年10月30日(日本時間)時点の公開情報に基づきます。投資判断は必ずご自身の責任でお願いします。