MRKとLLYを比較:メルクとイーライリリーの違いとは

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MRKとLLYを違いを踏まえて比較します。(2025年6月更新)

メルク(Merck&Co.Inc)とイーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company)は製薬企業の代表格です。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(VHT:Vanguard Health Care Index Fund ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

決算(予想:結果)

決算の予想:結果のグラフについては以下の関連記事を参照

メルク(MRK)決算:予想と結果 売上&EPS

イーライリリー(LLY)決算:予想と結果 売上&EPS

【製薬の巨人対決】メルク(MRK) vs イーライリリー(LLY)!安定高配当か、爆発的成長か?

世界の人々の健康を支える製薬(ヘルスケア)セクター。その中でも、メルク(MRK)イーライリリー(LLY)は、投資家にとって全く異なる魅力を持つ2大巨頭です。メルクは長年、安定した業績と増配で「ディフェンシブ銘柄」の代表格でした。一方、イーライリリーは近年、歴史的な新薬の成功により世界で最も注目される「グロース銘柄」へと変貌を遂げました。

本記事では、「安定のメルク」と「成長のリリー」、この対照的な2社の業績、配当、そして将来性を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:運命を分ける「ブロックバスター薬」

  • メルク (MRK) → がん治療薬「キイトルーダ」
    世界で最も売れている医薬品の一つである、がん免疫療法薬「キイトルーダ」が全社の売上の約4割を占めます。この一本足打法は安定した収益源ですが、2028年頃に迎える特許切れ(パテントクリフ)が最大の経営課題です。
  • イーライリリー (LLY) → 糖尿病・肥満症治療薬「マンジャロ」「ゼップバウンド」
    GLP-1受容体作動薬と呼ばれるこれらの新薬が、爆発的な大ヒットを記録。会社の業績と株価を驚異的なスピードで押し上げています。この新薬の成長がどこまで続くかが、リリーの未来を決めます。

比較サマリー:バリューのMRK、グロースのLLY

項目 メルク (MRK) イーライリリー (LLY)
主力製品 がん治療薬「キイトルーダ」、ワクチン「ガーダシル」 糖尿病・肥満症治療薬「マンジャロ」「ゼップバウンド」
経営課題 キイトルーダの特許切れ問題と、次世代の柱の育成 新薬の増産体制の構築と、市場の熾烈な競争
連続増配年数 14年 10年
配当利回り(直近) 約2.4% 約0.7%
PER (株価収益率) 約18倍(将来予想) 約60倍(将来予想)

業績と成長性の詳細分析

イーライリリーの近年の業績は、新薬の成功がいかに破壊的であるかを物語っています。売上・利益ともに、メルクを圧倒する成長率を記録しています。

メルク 売上高 (前年比) イーライリリー 売上高 (前年比)
2024 $60.12 B (+1.3%) $34.12 B (+28.1%)
2023 $59.35 B (+12.6%) $26.63 B (+15.3%)
2022 $52.71 B (+21.7%) $23.10 B (+15.3%)
2021 $43.32 B (+17.3%) $20.04 B (+10.2%)
2020 $36.93 B $18.19 B

※B=10億ドル。会計年度や基準により数値は多少変動します。

配当の詳細比較:利回りのMRK、増配率のLLY

配当利回りではメルクが明らかに優位です。しかし、イーライリリーは事業の急成長を背景に、毎年15%近い高い増配率を続けており、将来の配当成長への期待は非常に高くなっています。

MRK 年間配当 (増配率) LLY 年間配当 (増配率)
2024 $3.08 (+5.5%) $5.20 (+15.0%)
2023 $2.92 (+5.8%) $4.52 (+15.3%)
2022 $2.76 (+6.2%) $3.92 (+15.3%)
2021 $2.60 (+6.6%) $3.40 (+14.9%)
2020 $2.44 (+10.4%) $2.96 (+14.7%)

配当については以下の関連記事を参照

メルク(MRK)の配当推移

イーライリリー(LLY)の配当推移

結論:あなたに合うのはどちら?

両社の比較は、典型的な「バリュー株」と「グロース株」の選択と言えます。

「現在の高い配当利回り」と「割安感」を重視するなら → メルク (MRK)

キイトルーダの特許切れという大きな課題を抱えているため、株価は割安な水準にあり、その結果として2%を超える安定した配当利回りを提供しています。同社がM&Aや新薬開発で課題を克服できると信じる、逆張り・バリュー志向のインカム投資家にとって魅力的な選択肢です。

「将来の爆発的な成長性」に期待するなら → イーライリリー (LLY)

GLP-1市場は今後10年で1000億ドル規模に達するとも言われ、その成長ポテンシャルは計り知れません。現在の株価はその期待を織り込んだ非常に高い水準にありますが、もし予想を上回る成長が続けば、さらなる株価上昇も期待できます。配当利回りは低いものの、将来の大きな資産成長を狙いたいグロース投資家向けの銘柄です。


※本ページの分析は2025年6月9日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

Posted by 南 一矢