SHW:シャーウィンウィリアムズの配当推移

配当

シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析

シャーウィン・ウィリアムズ(The Sherwin-Williams Company)は、42年連続で配当を増やし続ける「配当貴族」銘柄です。世界最大級の塗料・コーティング製造企業として、その卓越した配当実績を支える同社の財務指標の推移をMacroTrends.comなどのデータを用いて詳細に検証します。

まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockanalysis.comを参照)

データソースの制約について

**重要な注意事項**:MacroTrends.comでは、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrendsでは直近の配当支払額や配当利回りは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは限定的です。

そのため、42年連続増配などの具体的な配当成長実績については、MacroTrends以外の複数のソース(Dividend.com、Koyfin、Stockanalysis.com等)を参照して確認しています。本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、純利益、バランスシート等)を中心に、配当支払能力の分析等を行っています。

配当成長の実績(複数ソース統合分析)

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrendsとそれ以外の信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。

配当データ* 平均株価** 年EPS**
平均利回り 成長率 配当性向 年間配当
2024 0.90% 9.7% 29.9% 3.16 352.51 10.55
2023 0.88% 10.0% 31.1% 2.88 327.65 9.25
2022 0.92% 9.2% 33.9% 2.62 284.78 7.72
2021 0.78% 8.9% 34.3% 2.40 307.84 6.98
2020 0.91% 5.0% 34.4% 2.20 241.78 6.38
2019 0.87% 7.7% 36.8% 2.10 241.50 5.71
2018 0.91% 8.6% 30.5% 1.95 214.03 6.39
2017 0.88% 10.1% 32.5% 1.80 204.30 5.54
2016 0.96% 11.8% 34.1% 1.63 169.58 4.78
2015 0.92% 12.0% 35.2% 1.46 158.77 4.14
2014 0.94% 14.3% 33.9% 1.30 138.65 3.84
2013 1.05% 8.8% 35.5% 1.14 108.67 3.21
2012 1.17% 7.9% 35.8% 1.05 89.74 2.93
2011 1.31% 6.6% 36.2% 0.97 74.02 2.68
2010 1.36% 5.3% 37.1% 0.91 66.92 2.45
2009 1.39% 4.4% 37.8% 0.87 62.58 2.30
2008 1.41% 6.8% 38.5% 0.83 58.87 2.16

* 配当データは複数の投資情報サイトから統合
** EPSと平均株価はMacroTrends.comより

連続増配年数
42年
配当成長率(平均)
9.3%
2024年配当性向
29.9%
2024年配当
$3.16

着実な配当成長の実績

シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)は、塗料・コーティング業界のリーダーとして、**42年連続で配当を増額し続けている「配当貴族」**の地位を確立しています。2008年から2024年にかけて、1株配当は0.83ドルから3.16ドルへと281%増加し、年平均成長率は約8.7%を記録しています。

この期間中、リーマンショック(2008年)やCOVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても一度も減配することなく、継続的な配当成長を維持してきました。建設・リフォーム市場への高い依存度にもかかわらず、強力なブランド力と価格決定力により、この安定性を実現しています。

財務パフォーマンスと成長見通し

主要財務指標の推移

以下の表では、売上高、営業利益、純利益をM$(百万ドル)単位、営業利益率は%単位で表示しています。

年度 売上高 (M$) 営業利益 (M$) 同マージン (%) 純利益 (M$)
2024 23,099 3,812 16.5 2,681
2023 23,052 3,626 15.7 2,389
2022 22,149 3,018 13.6 2,020
2021 19,945 2,556 12.8 1,864
2020 18,362 2,541 13.8 2,030
2019 17,901 2,352 13.1 1,541
2018 17,534 2,109 12.0 1,109
2017 14,984 2,134 14.2 1,566
2016 11,856 1,733 14.6 1,133
2015 11,340 1,624 14.3 1,054
2014 11,130 1,468 13.2 867
2013 10,186 1,285 12.6 753
2012 9,534 1,153 12.1 631
2011 8,766 917 10.5 441
2010 7,777 860 11.1 463
2009 7,094 824 11.6 436
2008 7,980 918 11.5 477

配当支払能力の分析

フリーキャッシュフローによる配当カバー分析

シャーウィン・ウィリアムズの配当支払能力は非常に堅固です。2024年のフリーキャッシュフローは20.95億ドルで、配当支払額約8億ドル(推定)を大幅に上回っています。これは**2.6倍の配当カバー比率**を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。

配当支払余力の推移(2019年以降)

以下の表では、フリーキャッシュフロー、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。

年度 フリーCF (M$) 年間配当支払額 (M$) 配当カバー比率
2024 2,095 801 2.6
2023 2,704 729 3.7
2022 1,309 664 2.0
2021 1,888 608 3.1
2020 2,301 580 4.0
2019 1,825 553 3.3

配当支払余力の分析結果:

  • **安定したカバー比率**:過去6年間で2.0〜4.0倍を維持し、常に配当を十分にカバー
  • **景気耐性**:2022年の建設市場低迷時でも2.0倍のカバー比率を維持
  • **持続可能性**:フリーキャッシュフロー創出力が高く、配当成長の継続が期待できる

強固な収益性と資金配分戦略

以下の表では、粗利益率、営業利益率、純利益率を%単位で表示しています。

年度 粗利益率 (%) 営業利益率 (%) 純利益率 (%) ROE (%)
2024 48.5 16.5 11.6 62.0
2023 46.7 15.7 10.4 58.5
2022 42.1 13.6 9.1 55.2
2021 42.9 12.8 9.3 76.5
2020 45.4 13.8 10.1 56.2
2019 45.2 13.1 8.6 37.4
2018 44.6 12.0 6.3 29.7
2017 45.8 14.2 10.5 35.2
2016 47.4 14.6 9.6 30.1
2015 47.5 14.3 9.3 28.5

収益性分析のポイント

**営業効率の改善**:

  • **粗利益率の向上**:2022年の42.1%から2024年の48.5%へ大幅改善
  • **営業利益率の拡大**:2021年の12.8%から2024年の16.5%へ上昇
  • **価格決定力**:原材料コストの上昇を価格転嫁により吸収

**ROEの卓越性**:

  • **業界トップクラス**:2024年のROEは62%と極めて高水準
  • **財務レバレッジ活用**:負債資本比率2.44倍による資本効率の最大化
  • **持続的な高収益性**:過去5年間で平均57.5%のROEを維持

バランスシート分析と財務健全性評価

以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率を%単位で表示しています。

年度 総資産 (M$) 総負債 (M$) 株主資本 (M$) 自己資本率 (%) 負債比率
2024 23,968 19,848 4,120 17.2 2.44
2023 22,954 18,854 4,100 17.9 2.30
2022 22,594 19,996 2,598 11.5 3.70
2021 20,667 18,230 2,437 11.8 3.48
2020 20,402 16,791 3,611 17.7 2.65
2019 19,857 15,734 4,123 20.8 2.82
2018 19,088 15,360 3,728 19.5 3.12
2017 14,314 9,826 4,488 31.4 1.19
2016 12,088 8,413 3,675 30.4 1.29
2015 12,800 9,150 3,650 28.5 1.51

バランスシート分析の重要な観点

**財務レバレッジの活用**:

  • **戦略的変化**:2017年のValspar買収を機に、財務レバレッジを積極活用
  • **自己資本率**:17.2%と低水準だが、強固なキャッシュフロー創出力でカバー
  • **負債比率**:2.44倍と高水準だが、利息カバー率9.3倍で安全性を確保

**財務健全性の評価**:

  • **流動性リスク**:短期資産(54億ドル)は短期負債(68億ドル)を下回る
  • **長期安定性**:強固な事業基盤と価格決定力により、高レバレッジを維持可能
  • **資本効率**:高いROEを実現し、株主価値を最大化

総合評価

シャーウィン・ウィリアムズの財務戦略は**「高レバレッジ・高収益モデル」**と評価できます。自己資本率は低いものの、強力なブランド力、価格決定力、安定したキャッシュフロー創出能力により、現在の負債水準は管理可能です。ROE 62%という卓越した資本効率は、この戦略の成功を示しています。

配当重視投資家にとっての投資価値

インカム投資家への魅力:

  1. **卓越した配当履歴**:42年連続増配という圧倒的な実績
  2. **高い配当成長率**:年平均9.3%の持続的な配当成長
  3. **低い配当性向**:29.9%と増配余力が十分
  4. **強固な財務基盤**:フリーキャッシュフローによる配当カバー率2.6倍

配当投資戦略における位置づけ

成長型配当銘柄として最適

  • **配当成長重視**:現在の配当利回りは0.90%と低いが、高い配当成長率が魅力
  • **長期投資向け**:10年、20年スパンで配当収入の大幅増加が期待できる
  • **トータルリターン**:配当成長と株価上昇の両方を狙える
  • **業界リーダー**:塗料・コーティング業界の圧倒的なシェアと価格決定力

投資リスクと対策

主要リスク要因:

  1. **住宅市場依存**:新築・リフォーム市場の動向に業績が左右される
  2. **原材料コスト変動**:石油化学製品価格の急激な上昇リスク
  3. **金利上昇リスク**:高レバレッジのため金利上昇による利払い負担増
  4. **競争激化**:PPG、BASF等の大手競合との価格競争
  5. **流動性リスク**:短期資産が短期負債を下回る状況

リスク軽減策:

  • **分散投資**:単一銘柄への過度な集中を避ける
  • **定期積立**:ドルコスト平均法による購入価格の平準化
  • **配当再投資**:DRIPプログラムを活用した複利効果の最大化
  • **業績モニタリング**:四半期決算での価格転嫁力の確認
  • **マクロ環境の注視**:住宅市場、金利動向の継続的な監視

まとめ:配当投資家にとってのシャーウィン・ウィリアムズ

シャーウィン・ウィリアムズは、**42年連続増配の実績**、**年平均9.3%の配当成長率**、**29.9%の低い配当性向**を兼ね備えた、配当成長重視の投資家にとって魅力的な投資対象です。

塗料・コーティング業界のリーダーとしての強力なブランド力、価格決定力、効率的な事業運営により、今後も高い配当成長の継続が期待できます。一方で、高い財務レバレッジや住宅市場への依存度など、投資家が注意すべきリスク要因も存在します。

投資判断のポイント

配当投資家にとって、シャーウィン・ウィリアムズは**「高配当成長・高資本効率の配当貴族銘柄」**として、長期保有を前提としたポートフォリオに組み入れることを検討できる銘柄です。現在の配当利回りは低いものの、持続的な配当成長により、将来的に高い配当収入が期待できます。ただし、財務レバレッジのリスクを考慮し、適切なポジションサイズでの投資が推奨されます。

**免責事項**
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

Posted by 南 一矢