SHW:シャーウィンウィリアムズの配当推移
シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析
シャーウィン・ウィリアムズ(The Sherwin-Williams Company)は、46年連続で配当を増やし続ける「配当貴族」銘柄です。世界最大級の塗料・コーティング製造企業として、その卓越した配当実績を支える同社の財務指標の推移をMacroTrends.comなどのデータを用いて詳細に検証します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はWallStreetZen.comを参照)
データソースの制約について
重要な注意事項:MacroTrends.comでは、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrendsでは直近の配当支払額や配当利回りは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは限定的です。
そのため、46年連続増配などの具体的な配当成長実績については、MacroTrends以外の複数のソース(Dividend.com、Koyfin、WallStreetZen.com等)を参照して確認しています。本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、純利益、バランスシート等)を中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrendsとそれ以外の信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2025*** | 0.85% | 10.5% | 29.5% | 3.16 | 370.00 | 10.90 |
2024 | 0.90% | 9.7% | 29.9% | 3.16 | 352.51 | 10.55 |
2023 | 0.88% | 10.0% | 31.1% | 2.88 | 327.65 | 9.25 |
2022 | 0.92% | 9.2% | 33.9% | 2.62 | 284.78 | 7.72 |
2021 | 0.78% | 8.9% | 34.3% | 2.40 | 307.84 | 6.98 |
2020 | 0.91% | 5.0% | 34.4% | 2.20 | 241.78 | 6.38 |
2019 | 0.87% | 7.7% | 36.8% | 2.10 | 241.50 | 5.71 |
2018 | 0.91% | 8.6% | 30.5% | 1.95 | 214.03 | 6.39 |
2017 | 0.88% | 10.1% | 32.5% | 1.80 | 204.30 | 5.54 |
2016 | 0.96% | 11.8% | 34.1% | 1.63 | 169.58 | 4.78 |
2015 | 0.92% | 12.0% | 35.2% | 1.46 | 158.77 | 4.14 |
2014 | 0.94% | 14.3% | 33.9% | 1.30 | 138.65 | 3.84 |
2013 | 1.05% | 8.8% | 35.5% | 1.14 | 108.67 | 3.21 |
2012 | 1.17% | 7.9% | 35.8% | 1.05 | 89.74 | 2.93 |
2011 | 1.31% | 6.6% | 36.2% | 0.97 | 74.02 | 2.68 |
2010 | 1.36% | 5.3% | 37.1% | 0.91 | 66.92 | 2.45 |
2009 | 1.39% | 4.4% | 37.8% | 0.87 | 62.58 | 2.30 |
2008 | 1.41% | 6.8% | 38.5% | 0.83 | 58.87 | 2.16 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合
** EPSと平均株価はMacroTrends.comより
*** 2025年は見通し値
着実な配当成長の実績
シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)は、塗料・コーティング業界のリーダーとして、46年連続で配当を増額し続けている「配当貴族」の地位を確立しています。2025年第1四半期には配当を$0.715から$0.79に10.5%増額し、46年連続増配を達成しました。
2008年から2025年にかけて、1株配当は0.83ドルから3.16ドルへと281%増加し、年平均成長率は約8.7%を記録しています。この期間中、リーマンショック(2008年)やCOVID-19パンデミック(2020年)といった経済危機においても一度も減配することなく、継続的な配当成長を維持してきました。建設・リフォーム市場への高い依存度にもかかわらず、強力なブランド力と価格決定力により、この安定性を実現しています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業利益、純利益をM$(百万ドル)単位、営業利益率は%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業利益 (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2025* | 21,800 | 3,600 | 16.5 | 2,760 |
2024 | 23,099 | 3,812 | 16.5 | 2,681 |
2023 | 23,052 | 3,626 | 15.7 | 2,389 |
2022 | 22,149 | 3,018 | 13.6 | 2,020 |
2021 | 19,945 | 2,556 | 12.8 | 1,864 |
2020 | 18,362 | 2,541 | 13.8 | 2,030 |
2019 | 17,901 | 2,352 | 13.1 | 1,541 |
2018 | 17,534 | 2,109 | 12.0 | 1,109 |
2017 | 14,984 | 2,134 | 14.2 | 1,566 |
2016 | 11,856 | 1,733 | 14.6 | 1,133 |
2015 | 11,340 | 1,624 | 14.3 | 1,054 |
2014 | 11,130 | 1,468 | 13.2 | 867 |
2013 | 10,186 | 1,285 | 12.6 | 753 |
2012 | 9,534 | 1,153 | 12.1 | 631 |
2011 | 8,766 | 917 | 10.5 | 441 |
2010 | 7,777 | 860 | 11.1 | 463 |
2009 | 7,094 | 824 | 11.6 | 436 |
2008 | 7,980 | 918 | 11.5 | 477 |
* 2025年は見通し値
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
シャーウィン・ウィリアムズの配当支払能力は非常に堅固です。2024年の営業キャッシュフローは31.5億ドルで、配当支払額約8億ドルを大幅に上回っています。これは3.9倍の配当カバー比率を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。2025年も同水準の配当カバー比率を維持する見込みです。
配当支払余力の推移(2019年以降)
以下の表では、営業キャッシュフロー、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2025* | 3,100 | 802 | 3.9 |
2024 | 3,150 | 801 | 3.9 |
2023 | 3,200 | 729 | 4.4 |
2022 | 2,800 | 664 | 4.2 |
2021 | 2,650 | 608 | 4.4 |
2020 | 2,850 | 580 | 4.9 |
2019 | 2,400 | 553 | 4.3 |
* 2025年は見通し値
配当支払余力の分析結果:
- 安定したカバー比率:過去7年間で3.9〜4.9倍を維持し、常に配当を十分にカバー
- 景気耐性:2020年パンデミック時でも4.9倍の高いカバー比率を維持
- 持続可能性:営業キャッシュフロー創出力が高く、配当成長の継続が期待できる
- 配当政策の安定性:配当性向30%以下の保守的な政策により増配余力を確保
強固な収益性と資金配分戦略
以下の表では、粗利益率、営業利益率、純利益率を%単位で表示しています。
年度 | 粗利益率 (%) | 営業利益率 (%) | 純利益率 (%) | ROE (%) |
---|---|---|---|---|
2025* | 48.0 | 16.5 | 12.7 | 67.0 |
2024 | 48.5 | 16.5 | 11.6 | 65.1 |
2023 | 46.7 | 15.7 | 10.4 | 58.3 |
2022 | 42.1 | 13.6 | 9.1 | 77.8 |
2021 | 42.9 | 12.8 | 9.3 | 76.5 |
2020 | 45.4 | 13.8 | 11.1 | 56.2 |
2019 | 45.2 | 13.1 | 8.6 | 37.4 |
2018 | 44.6 | 12.0 | 6.3 | 29.7 |
2017 | 45.8 | 14.2 | 10.5 | 35.2 |
2016 | 47.4 | 14.6 | 9.6 | 30.1 |
2015 | 47.5 | 14.3 | 9.3 | 28.5 |
* 2025年は見通し値
収益性分析のポイント
営業効率の持続的改善:
- 粗利益率の安定化:2022年の42.1%から2024年の48.5%へ大幅改善し、高水準で安定
- 営業利益率の向上:2021年の12.8%から2024年の16.5%へ着実に上昇
- 価格決定力の発揮:原材料コストの上昇を価格転嫁により効果的に吸収
- オペレーショナル・エクセレンス:効率性改善により収益性を継続的に向上
ROEの卓越性:
- 業界最高水準:2024年のROEは65.1%と極めて高水準を維持
- 財務レバレッジ活用:負債資本比率を活用した効率的な資本運用
- 持続的な高収益性:過去5年間で平均65%超のROEを維持
- 資本効率の最適化:株主価値最大化を実現する財務戦略
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率を%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | 負債比率 |
---|---|---|---|---|---|
2025* | 24,500 | 20,200 | 4,300 | 17.6 | 2.35 |
2024 | 23,968 | 19,848 | 4,120 | 17.2 | 2.44 |
2023 | 22,954 | 18,854 | 4,100 | 17.9 | 2.30 |
2022 | 22,594 | 19,996 | 2,598 | 11.5 | 3.70 |
2021 | 20,667 | 18,230 | 2,437 | 11.8 | 3.48 |
2020 | 20,402 | 16,791 | 3,611 | 17.7 | 2.65 |
2019 | 19,857 | 15,734 | 4,123 | 20.8 | 2.82 |
2018 | 19,088 | 15,360 | 3,728 | 19.5 | 3.12 |
2017 | 14,314 | 9,826 | 4,488 | 31.4 | 1.19 |
2016 | 12,088 | 8,413 | 3,675 | 30.4 | 1.29 |
2015 | 12,800 | 9,150 | 3,650 | 28.5 | 1.51 |
* 2025年は見通し値
バランスシート分析の重要な観点
財務レバレッジの戦略的活用:
- 2017年のValspar買収後の構造変化:財務レバレッジを積極活用する戦略に転換
- 自己資本率の安定化:17%台で安定し、強固なキャッシュフロー創出力でカバー
- 負債比率の改善:2022年の3.70倍から2024年の2.44倍へ着実に改善
- 利息カバー率の健全性:営業利益の利息カバー率は9倍超を維持
財務健全性の総合評価:
- キャッシュフロー重視:安定した営業キャッシュフロー創出により財務安定性を確保
- 流動性管理:十分な現金及び短期投資により流動性リスクを管理
- 格付けの安定性:投資適格級の格付けを維持
- 資本効率の最適化:適度なレバレッジによりROE65%超を実現
総合評価
シャーウィン・ウィリアムズの財務戦略は「高レバレッジ・高収益・高効率モデル」の成功例と評価できます。自己資本率は17.2%と低水準ですが、強力なブランド力、価格決定力、継続的な効率改善により、ROE65%という卓越した資本効率を実現しています。配当性向29.5%という保守的な水準により、持続的な配当成長の基盤を確保しています。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- 圧倒的な配当履歴:46年連続増配という業界最高レベルの実績
- 高い配当成長率:年平均9.3%の持続的な配当成長パターン
- 極めて低い配当性向:29.5%と十分な増配余力を確保
- 強固な配当カバー比率:営業キャッシュフローによる3.9倍のカバー率
- 業界リーダーシップ:塗料・コーティング業界における圧倒的な地位
配当投資戦略における位置づけ
成長型配当銘柄として最適
- 配当成長重視戦略:現在の配当利回りは0.85%と低いが、高い配当成長率が魅力
- 長期投資適性:10年、20年スパンで配当収入の大幅増加が期待できる
- トータルリターン追求:配当成長と株価上昇の両方を狙える二重の魅力
- 業界独占的地位:5,400店舗を超える販売網による競争優位性
- ESG投資対応:環境配慮型製品の開発による持続可能な成長
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- 住宅市場依存:新築・リフォーム市場の動向に業績が左右される循環性
- 原材料コスト変動:石油化学製品価格の急激な上昇による収益圧迫リスク
- 金利上昇リスク:高レバレッジのため金利上昇による利払い負担増
- 競争激化:PPG、AkzoNobel等の大手競合との市場シェア争い
- 環境規制強化:VOC規制等の環境規制による製品開発コスト増
- 住宅着工数減少:金利上昇による住宅需要減少の影響
リスク軽減策:
- 分散投資:シングルストック・リスクを避け、ポートフォリオに適度に組み入れ
- 定期積立:ドルコスト平均法による購入価格の平準化
- 配当再投資:DRIPプログラムを活用した複利効果の最大化
- 業績モニタリング:四半期決算での価格転嫁力と需要動向の確認
- マクロ環境監視:住宅市場、金利動向、原材料価格の継続的な監視
- 長期投資視点:短期的な業績変動に惑わされない長期投資姿勢
まとめ:配当投資家にとってのシャーウィン・ウィリアムズ
シャーウィン・ウィリアムズは、46年連続増配の実績、年平均9.3%の配当成長率、29.5%の低い配当性向、ROE65%超の卓越した資本効率を兼ね備えた、配当成長重視の投資家にとって極めて魅力的な投資対象です。
塗料・コーティング業界のリーダーとしての強力なブランド力、5,400店舗を超える販売網、継続的な価格決定力により、今後も高い配当成長の継続が期待できます。2025年のEPS見通し$10.90-$11.10は、引き続き堅調な業績を示唆しています。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、シャーウィン・ウィリアムズは「超高配当成長・超高資本効率の配当貴族銘柄」として、長期保有を前提としたポートフォリオの成長エンジンに位置づけることができる銘柄です。現在の配当利回りは0.85%と低いものの、46年間の増配実績と持続的な配当成長により、将来的に高い配当収入とトータルリターンが期待できます。ただし、財務レバレッジと住宅市場への依存度を考慮し、適切なポジションサイズでの投資が推奨されます。
出典
MacroTrends.com(主要財務データ):
- Sherwin-Williams EPS – Earnings per Share 2010-2024 (SHW)
- Sherwin-Williams Revenue 2010-2025 (SHW)
- Sherwin-Williams Operating Income 2010-2024 (SHW)
- Sherwin-Williams Net Income 2010-2024 (SHW)
- Sherwin-Williams Free Cash Flow 2010-2025 (SHW)
- Sherwin-Williams Total Assets 2010-2024 (SHW)
- Sherwin-Williams Share Holder Equity 2010-2022 (SHW)
- Sherwin-Williams Debt to Equity Ratio 2010-2024 (SHW)
- Sherwin-Williams Profit Margin 2010-2024 (SHW)
- Sherwin-Williams Stock Price History (SHW)
配当データ(複数ソース統合):
- Dividend.com – Sherwin-Williams Dividend Analysis
- StockInvest.us – SHW Dividend History & Growth
- WallStreetZen – Sherwin Williams Dividend History & Yield
- NASDAQ – Sherwin-Williams Dividend History
- MarketBeat – Sherwin-Williams Dividend Date & History
2024-2025年決算・財務データ:
- Sherwin-Williams 2024年通期・第4四半期決算発表
- Sherwin-Williams 2025年第1四半期決算発表
- Sherwin-Williams 46年連続増配発表(2025年2月)
- Sherwin-Williams Q1 2025配当10.5%増額発表
追加財務データ:
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。本記事のデータは2025年9月5日時点の情報に基づいており、最新の情報については各公式サイトをご確認ください。