NKE:ナイキの配当推移

消費財,配当






ナイキ(NKE)配当利回りと株価分析 2025年最新版

ナイキ(Nike Inc)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

(*年次決算が5月なので平均株価は6月1日~5月30日の期間で計算しています)

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2025 2.17% 10% 74% 1.60 73.7 2.16
2024 1.81% 9% 39% 1.45 79.9 3.73
2023 1.29% 11% 41% 1.325 102.5 3.23
2022 1.06% 11% 32% 1.19 112.2 3.75
2021 0.72% 12% 30% 1.07 148.9 3.56
2020 0.76% -10% 60% 0.955 125 1.6
2019 1.18% 39% 43% 1.06 89.9 2.49
2018 0.95% 12% 65% 0.76 79.7 1.17
2017 1.12% 48% 27% 0.68 60.7 2.51
2016 0.85% -15% 21% 0.46 54.3 2.16
2015 0.91% 15% 29% 0.54 59.4 1.85
2014 1.04% 15% 32% 0.47 45.1 1.49
2013 1.14% -5% 30% 0.41 35.9 1.35
2012 1.65% 48% 36% 0.43 26.1 1.2
2011 1.20% 12% 26% 0.29 24.1 1.12
2010 1.30% 8% 27% 0.26 20 0.97
2009 1.51% 14% 32% 0.24 15.9 0.76
2008 1.56% 24% 22% 0.21 13.5 0.94

【出典】

2025年の厳しい現実:24年連続増配を維持も業績は大幅悪化

【重要更新】ナイキは2025年度(2024年6月〜2025年5月)において、24年連続の配当増加を達成しました。年間配当は前年の$1.45から$1.60へと10%増加し、この連続増配記録は同社の配当政策への強いコミットメントを示しています。しかし、その背景には厳しい事業環境があります。

2025年度の業績は大幅に悪化し、売上高は前年比10%減の$46.3億、純利益は前年比44%減の$3.2億となりました。EPSも$3.73から$2.16へと42%減少し、これにより配当性向は39%から74%へと大幅に上昇しています。現在の株価約$73.67に対する配当利回りは2.17%で、配当増加にもかかわらず株価の下落により利回りは向上しています。

変動的な配当の実績

Nike(NKE)の配当実績は、スポーツアパレル業界のリーダーとしての地位を反映しながらも、消費財業界特有の市場変動や経営判断により、一定の変動を示してきました。同社は2008年の1株当たり0.21ドルから2025年には1.60ドルへと、17年間で約7.6倍の配当成長を達成しました。特筆すべきは、24年連続で配当を増加させている点で、これは2020年の減配(-10%)にもかかわらず継続されている驚異的な記録です。過去には2013年(-5%)、2016年(-15%)、2020年(-10%)の3回の減配を経験していますが、直近5年間(2021-2025年)は9-12%の安定した成長を維持しています。

配当成長率の推移

Nikeの配当成長率は極めて変動的で、スポーツアパレル業界特有の不安定性を反映しています:

  • 2008〜2012年:基盤拡大期(8〜48%の大幅な変動)
  • 2013〜2016年:調整期(-15%〜15%の不安定な成長)
  • 2017〜2019年:再成長期(12〜48%の力強い回復)
  • 2020年:パンデミック調整期(-10%の減配)
  • 2021〜2025年:安定成長期(9〜12%の持続的な成長)

このパターンは、Nikeのビジネスモデルの特性と外部環境の変化を反映しています。2012年の48%という大幅増配は、同社のグローバル展開戦略の成功を背景としたものでした。2013年の減配(-5%)は一時的な市場調整、2016年の減配(-15%)は北米市場での競争激化とスポーツ小売業界の構造変化への対応、2020年の減配(-10%)はCOVID-19パンデミックによる店舗閉鎖と消費減退への慎重な対応でした。

2025年の特殊事情:2025年の10%増配は、業績が大幅に悪化する中での配当増加という特殊な状況です。これは24年連続増配の記録を維持するための経営判断と見られ、配当性向が74%まで上昇する結果となっています。

配当利回りの特性

Nikeの配当利回りは、2025年現在約2.17%となり、株価下落により前年の1.81%から大幅に向上しました。消費財企業としては適度な水準を維持していますが、以下の特徴があります:

  • ブランド企業としては妥当な利回り水準
  • 株価下落により相対的な利回りが向上
  • 配当成長による長期的な実質利回りの向上期待
  • 業績悪化を考慮すると現在の利回りはリスクを内包

配当利回りが上昇している要因:

  • 2025年度の業績大幅悪化による株価下落(52週高値$90.62から約19%下落)
  • それでも配当は10%増加させたことによる利回り向上
  • 市場の将来業績への懸念による株価評価の低下

注目ポイント:Nikeは「成長重視の配当政策」を採用しており、事業成長への投資を最優先としながらも株主還元にも配慮しています。しかし、2025年度は業績悪化の中での増配となっており、この配当政策の持続可能性が問われています。同社は配当よりも自社株買いを重視する傾向がありましたが、現在の業績状況では自社株買いよりも配当維持が優先されている状況です。

配当性向の持続可能性

配当性向は「1株配当 ÷ EPS」で計算される指標ですが、Nikeの場合、2025年度は大幅な利益減少により配当性向が急上昇しています。近年の配当性向は以下の通りです:

  • 2020年:60%(パンデミック期の慎重な対応)
  • 2021年:30%(業績回復により大幅改善)
  • 2022年:32%(安定した水準)
  • 2023年:41%(適正な範囲)
  • 2024年:39%(健全な水準を維持)
  • 2025年:74%(大幅上昇、警戒水準)

配当持続性への懸念:Nikeの配当性向74%は警戒すべき水準に達しています。この急上昇は主に利益の大幅減少(EPS $3.73→$2.16)によるもので、配当維持のための配当性向上昇です。配当性向上昇の主要因は以下の通りです:

  • 売上高減少:$51.4億→$46.3億(-10%)の大幅な売上減
  • 利益率悪化:競争激化と需要減退による利益圧迫
  • 中国市場での苦戦:主要成長市場での売上減少
  • デジタル戦略の課題:DTC(Direct-to-Consumer)での売上減

消費財・アパレル業界特有の考慮点:Nikeの収益構造は以下の特徴を持ちます:

  • 季節性の影響:スポーツシーズンやホリデーシーズンによる売上変動
  • ファッショントレンド:消費者嗜好の変化によるブランド人気の変動
  • 競合との競争:Adidas、Under Armour等との激しいシェア争い
  • 製造コスト変動:原材料費や人件費の変動による利益率への影響
  • 為替変動:グローバル事業による為替レートの影響
  • 小売環境変化:eコマース化とDTCモデルへのシフト
  • 新CEO体制:2024年10月にElliott Hillが就任し、事業再建を進行中

重要なのは、2025年度の営業キャッシュフローと配当支払い能力の関係です。業績悪化により営業CFも減少していると予想され、配当性向74%という高水準は今後の配当政策に制約を課す可能性があります。

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2025 46,300 5,600 12 3,200
2024 51,362 7,429 14 5,700
2023 51,217 5,841 11 5,070
2022 46,710 5,188 11 6,046
2021 44,538 6,657 15 5,727
2020 37,403 2,485 7 2,539
2019 39,117 5,903 15 4,029
2018 36,397 4,955 14 1,933
2017 34,350 3,846 11 4,240
2016 32,376 3,399 10 3,760
2015 30,601 4,680 15 3,273
2014 27,799 3,013 11 2,693
2013 25,313 3,032 12 2,472
2012 23,331 1,824 8 2,211
2011 20,117 1,812 9 2,133
2010 19,014 3,164 17 1,907
2009 19,176 1,736 9 1,487
2008 18,627 1,936 10 1,883

収益性と効率性の悪化

Nikeの2025年度財務データは、同社が直面する厳しい事業環境を如実に示しています:

  • 売上高は前年比10%減の$46.3億と大幅減少(2022年レベルまで後退)
  • 営業CFは前年比25%減の約$5.6億と推定(効率性の大幅悪化)
  • 純利益は前年比44%減の$3.2億と大幅減少
  • 営業CFマージンは14%から12%に低下

特に注目すべき悪化要因:

  • 中国市場での苦戦:主要成長市場での売上減少
  • 北米市場の低迷:競合他社との競争激化
  • デジタル事業の課題:NIKE Directが前年比13%減
  • 卸売事業の縮小:チャネル戦略見直しによる影響
  • 利益率の圧迫:コスト上昇と価格競争による収益性悪化

長期的な視点では、売上高は17年間で約2.5倍に成長($18.6億→$46.3億)していますが、2025年度は明らかな転換点となっています。営業CFマージンも過去の15-17%から12%まで低下し、同社の収益効率が悪化していることを示しています。

新経営陣による事業再建への取り組み

2024年10月にElliott Hillが新CEOに就任し、「Win Now」戦略を掲げて事業再建に取り組んでいます:

  • スポーツ回帰:アスリート・ストーリーテリングと高性能製品への集中
  • イノベーション強化:R&D投資の増加と新技術開発
  • ブランド投資:主要スポーツイベントでのマーケティング強化
  • チャネル最適化:DTCと卸売のバランス調整
  • 地域戦略見直し:中国を含むグローバル市場での競争力回復

ただし、これらの施策の効果が業績に反映されるまでには時間を要し、2025年度の厳しい業績は過渡期の現実を示しています。

変動するキャッシュフロー基盤

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2025 5,600 -25 -800 -5,300
2024 7,429 27 894 -5,888
2023 5,841 13 564 -7,447
2022 5,188 -22 -1,524 -4,836
2021 6,657 168 -3,800 -1,459
2020 2,485 -58 -1,028 2,491
2019 5,903 19 -264 -5,293
2018 4,955 29 276 -4,835
2017 3,846 13 -1,008 -2,148
2016 3,399 -27 -1,034 -2,974
2015 4,680 55 -175 -2,790
2014 3,013 -1 -1,207 -2,914
2013 3,032 66 -940 -1,045
2012 1,824 1 586 -2,100
2011 1,812 -43 -1,021 -1,972
2010 3,164 82 -1,268 -1,061
2009 1,736 -10 -798 -734
2008 1,936 3 -490 -1,226

Nikeの2025年度キャッシュフロー分析から、同社の財務基盤への深刻な影響が確認できます:

  • 営業CFは前年比25%減の約$5.6億と大幅減少(推定値)
  • これは2020年パンデミック時の$2.5億に次ぐ低水準
  • 財務CFは約$5.3億のマイナスで、主に配当支払い(約$2.4億)と自社株買いによる
  • 投資CFは軽資産ビジネスモデルを反映して比較的小規模

特に注目すべき点:

  • 2025年:営業CF-25%の大幅減少(業績悪化の直接的影響)
  • 配当支払い能力の懸念:営業CF$5.6億に対し配当支払い約$2.4億(43%)
  • 株主還元の継続:厳しい業績下でも約$5.3億の株主還元を実施
  • キャッシュフロー・カバレッジ:配当+自社株買いが営業CFの95%を占める

キャッシュフロー分析のポイント:2025年度のNikeは、業績悪化により営業CFが大幅に減少する中で、24年連続増配の記録維持と株主還元の継続を優先しています。これにより、キャッシュフローに対する株主還元の比率が非常に高くなっており、今後の配当政策の持続可能性に疑問符がついています。軽資産ビジネスモデルの利点はありますが、現在の業績とキャッシュフロー水準では、配当成長の継続は困難な状況です。

負債水準と資本構成

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 負債比率
2025 35,000 22,000 13,000 37 169
2024 38,110 23,680 14,430 38 164
2023 37,531 23,527 14,004 37 168
2022 40,321 25,040 15,281 38 164
2021 37,740 24,973 12,767 34 196
2020 31,342 23,287 8,055 26 289
2019 23,717 14,677 9,040 38 162
2018 22,536 12,724 9,812 44 130
2017 23,259 10,852 12,407 53 87
2016 21,379 9,121 12,258 57 74
2015 21,597 8,890 12,707 59 70
2014 18,594 7,770 10,824 58 72
2013 17,545 6,464 11,081 63 58
2012 15,465 5,084 10,381 67 49
2011 14,998 5,155 9,843 66 52
2010 14,419 4,665 9,754 68 48
2009 13,250 4,557 8,693 66 52
2008 12,443 4,617 7,825 63 59

Nikeの2025年度の資本構成は、業績悪化と継続的な株主還元により以下の変化を示しています(推定値含む):

  • 総資産は$38.1億から約$35.0億に減少(約8%減)
  • 株主資本は$14.4億から約$13.0億に減少(業績悪化による)
  • 自己資本率は38%から37%に微減
  • 負債比率は164%から169%に悪化

資本構成変化の要因:

  • 業績悪化による資産減少:売上・利益減により総資産が縮小
  • 継続的な自社株買い:株主還元優先により株主資本減少
  • 配当支払いの継続:年間約$2.4億の現金流出
  • 営業キャッシュフロー減少:事業からの現金創出力低下

現在の負債比率169%は以下の要因により警戒すべき水準です:

  • 営業CF減少:債務返済能力の低下
  • 業績不安定性:消費財業界特有の売上変動リスク
  • 競争激化:市場シェア維持のための追加投資需要
  • キャッシュフロー圧迫:配当+自社株買いが営業CFの95%を占有

ただし、以下の点は同社の安定性を支えています:

  • 強力なブランド価値による市場での競争優位性
  • 軽資産ビジネスモデルによる運転資本効率
  • グローバル市場での多様化された事業基盤
  • 新CEO下での事業再建計画の推進

まとめ:長期配当投資家にとってのNikeとは?

Nike(NKE)は、スポーツアパレル業界の圧倒的なリーダーとして、24年連続の配当増加という驚異的な記録を築いていますが、2025年度は同社にとって極めて厳しい転換点となっています。売上高10%減、純利益44%減という大幅な業績悪化の中でも配当を10%増加させた結果、配当性向は74%まで上昇し、配当政策の持続可能性に大きな疑問符がついています。

同社の強みは以下の点にあります:

  • 24年連続増配の驚異的な記録(2025年で$1.60達成)
  • 世界最強クラスのスポーツブランド価値
  • 軽資産ビジネスモデルによる高い資本効率
  • グローバル市場での確固たる地位
  • ESG重視の経営による持続可能性
  • 新CEO(Elliott Hill)による事業再建計画
  • 「Win Now」戦略によるスポーツ回帰とブランド強化
  • 株価下落により相対的に魅力的な配当利回り(2.17%)

一方で、深刻な懸念点としては:

  • 2025年度の大幅な業績悪化(売上-10%、利益-44%)
  • 配当性向74%という危険水準(前年39%から急上昇)
  • 営業キャッシュフロー25%減による配当支払い能力の低下
  • 中国市場での苦戦と地政学リスク
  • 競合リスク:Adidas、Under Armour等との激しい競争
  • デジタル戦略の課題:NIKE Direct事業の減収
  • 経済循環リスク:景気後退時の消費減退による影響
  • 負債比率169%による財務リスクの拡大
  • 株主還元が営業CFの95%を占める不健全な構造

投資家へのポイント:Nikeへの投資は現在、「事業再建への期待 vs 配当削減リスク」という難しい判断を迫られています。24年連続増配という素晴らしい記録がある一方で、2025年度の業績とキャッシュフロー状況を見ると、今後の配当成長継続は極めて困難と予想されます。配当性向74%は明らかに持続不可能な水準であり、新CEOの下での事業再建が成功しない限り、近い将来の配当削減リスクは高いと言わざるを得ません。

現在の投資戦略としては、配当の安定性よりもブランド価値の回復と事業再建に期待する投資家に適していると考えられます。短期的には配当削減リスクを覚悟し、中長期的には新経営陣による事業再建と業績回復による株価上昇を期待する投資スタンスが現実的です。配当投資家にとっては、現在は様子見が賢明な選択かもしれません。

よくある質問

24年連続増配の記録は今後も続きますか?

Nikeの24年連続増配は確かに素晴らしい記録ですが、2025年度の業績を見ると継続は極めて困難と判断されます。配当性向が74%まで上昇し、営業キャッシュフローが25%減少する中での増配は明らかに無理をした結果です。売上高が前年比10%減、純利益が44%減という状況で配当を10%増加させたことは、記録維持を優先した経営判断と見られます。今後、Elliott Hill新CEOの「Win Now」戦略による事業再建が成功しない限り、2026年度以降の配当維持も困難になる可能性が高いです。配当性向を健全な40-50%水準に戻すためには、配当据え置きまたは削減が必要な状況です。投資家は25年目の増配よりも、まずは事業の立て直しと配当の持続可能性確保を期待すべきでしょう。

2025年度の業績悪化の主な原因は何ですか?

Nikeの2025年度業績悪化には複数の要因が重なっています:(1)中国市場での苦戦:地政学的緊張と現地ブランドとの競争激化により、主要成長市場での売上が減少、(2)北米市場の低迷:Adidas等の競合他社との競争激化とスポーツアパレル市場の飽和、(3)デジタル戦略の課題:NIKE Direct(DTC)事業が前年比13%減となり、直販戦略に黄信号、(4)チャネル戦略の見直し:卸売チャネルとの関係調整により短期的な売上減少、(5)消費者行動の変化:パンデミック後の消費者嗜好変化とアスレジャートレンドの鈍化。これらの要因により、同社は従来の成長戦略の見直しを迫られており、Elliott Hill新CEOが「Win Now」戦略でスポーツ回帰とブランド強化を進めていますが、効果が現れるまでに時間を要すると予想されます。

新CEOのElliott Hill氏による事業再建は成功しますか?

Elliott Hill氏は2024年10月にCEOに就任し、「Win Now」戦略を掲げて事業再建に取り組んでいます。同氏はNike社内で30年以上の経験を持つ元幹部で、ブランドマーケティングと商品開発に精通しています。戦略の核心は(1)スポーツ回帰:アスリート中心のブランディングと高性能製品への集中、(2)イノベーション強化:R&D投資増加と新技術開発、(3)マーケティング投資:主要スポーツイベントでのブランド露出拡大、(4)チャネル最適化:DTCと卸売のバランス調整です。ただし、戦略の成功には時間を要し、以下の課題があります:中国市場での競争力回復の困難さ、北米市場での差別化の実現、デジタル戦略の再構築、財務体質の改善。業界専門家の多くは、Hill氏の戦略方向性は正しいものの、成果が業績に反映されるまでに2-3年を要すると予想しています。短期的には厳しい状況が続く可能性が高いでしょう。

現在の株価水準(約$74)は投資妙味がありますか?

現在の株価約$74は、52週高値$90.62から約19%下落した水準にあり、市場が業績悪化を織り込んだ結果です。投資妙味については以下の観点から判断が必要です:ポジティブ要因:(1)配当利回り2.17%は相対的に魅力的、(2)ブランド価値は依然として世界最高水準、(3)新CEO下での事業再建への期待、(4)株価下落により相対的にバリュエーションが改善。リスク要因:(1)2025年度業績悪化により今後さらなる下落の可能性、(2)配当削減リスクによる株価下落圧力、(3)事業再建の成否が不透明、(4)競争激化による収益性回復の困難さ。現在の価格は、事業再建成功を前提とすれば魅力的ですが、配当削減や業績のさらなる悪化リスクを考慮すると、慎重な判断が必要です。配当目的の投資家は現時点では様子見、成長期待の投資家は事業再建の進捗を見極めてからの投資が賢明でしょう。分散投資の一環として少額から始めることを推奨します。

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

【出典】


Posted by 南 一矢