BAC:バンクオブアメリカの配当推移

バフェット銘柄,配当






【2025年7月更新】BAC配当の今後と将来性を徹底分析 | 安定性と株主還元の実態


「アメリカの銀行」の名を冠する巨大金融機関、Bank of America (BAC)。ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオでも大きな割合を占める同社の配当は、今後も安定的に成長を続けられるのか?最新決算データを基に、その将来性を徹底的に分析します。

はじめに:この記事でわかること

BACは近年継続的に増配してきました。これからも増配が期待できるのか、以下のポイントで評価します。

  • BACの稼ぐ力:金利環境の変化にどう対応しているか?
  • 株主還元:配当と自社株買いのバランスは?
  • 会社の体力:不況に耐える財務基盤は万全か?
  • 他行との比較:業界内での立ち位置は?
  • 現状からの結論:配当の安定性と今後の見通しは?

結論として、BACの配当は「高い安定性と持続性」があり、着実なインカムを求める投資家にとって魅力的な選択肢であると評価します。


BAC配当分析サマリー (2025年7月時点)

  • ここがスゴイ!
    • 10年以上にわたり減配なく、安定的に増配を継続。
    • 会社の体力(CET1比率:2025年Q2末で11.8%)は規制要求を十分に上回る。
    • 稼ぐ力(ROTCE:直近1年で約15%)は大手銀行として良好な水準を維持。
    • 配当性向約32%(2025年上半期実績ベース)と健全で、無理なく配当。
    • 四半期ごとに数十億ドル規模の自社株買いを継続。
  • 現状分析: 2025年上半期も安定した収益を確保。配当の持続性は引き続き高いと判断します。
注意: 本分析は情報提供のみを目的としており、投資勧誘を行うものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。過去の実績は将来の成果を保証しません。

1. BACの「稼ぐ力」:金利環境の変化と収益力

BACの収益は、金利の動向に大きく影響される純利息収入(NII)が柱です。銀行の配当余力を評価する上で重要な、PPNR(貸倒引当前純営業収益)純利益の長期的な推移を見ていきましょう。

純利益・総収入・PPNR推移(単位:10億ドル)
年度 総収入 PPNR* 純利益 備考
2015 $85.4 $32.5 $15.9
2016 $83.7 $30.8 $17.9
2017 $87.4 $33.0 $18.2
2018 $91.2 $38.8 $28.1 税制改革効果
2019 $91.2 $38.3 $27.4
2020 $85.5 $30.0 $17.9 COVID-19影響
2021 $89.1 $36.4 $32.0 引当金戻入益
2022 $94.9 $36.2 $27.5 金利上昇効果
2023 $98.6 $37.0 $26.5 高金利維持
2024 $98.1 $35.0 $24.9 金利収入ピークアウト

*PPNR:総収入から非金利費用を差し引いた筆者計算値。銀行の本源的な収益力を示す。

この表からわかること: BACは10年以上にわたり安定した収益基盤を築いてきました。2022-2023年にかけては金利上昇の恩恵で収益が拡大しましたが、2024年以降はその効果が一巡し、収益はやや落ち着きを見せています。それでもなお、年間350億ドル前後のPPNR(本源的収益)を生み出す力は、安定した配当の強力な基盤です。


2. 1株当たり利益と会社の稼ぐ力(ROE分析)

1株当たり指標と収益性比率
年度 EPS ($) ROE (%) ROTCE* (%) 備考
2015 $1.31 6.4% 8.7%
2016 $1.50 7.2% 9.6%
2017 $1.56 7.3% 9.5%
2018 $2.61 11.0% 14.8% 税制改革効果
2019 $2.75 11.0% 15.0%
2020 $1.87 6.7% 9.0% COVID-19影響
2021 $3.57 12.1% 16.8% 引当金戻入益
2022 $3.19 10.3% 14.5%
2023 $3.08 9.2% 13.0%
2024 $2.99 8.8% 12.5% 安定的な収益

*ROTCE (有形普通株主資本利益率): 銀行の「実質的な」資本効率を示す重要指標。

ROE(自己資本利益率)とROTCEの重要性

ROE(Return on Equity)は、銀行業界で最も重視される収益性指標の一つです。株主が投資した資本に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。

ROE = 純利益 ÷ 平均株主資本 × 100

ROTCE(Return on Tangible Common Equity)は、ROEから無形資産(のれん等)を除いた、より実質的な資本効率を示す銀行業界で重視される指標です。

ROTCE = 純利益 ÷ 有形普通株主資本 × 100

ROEの評価基準(銀行業界):

  • 15%以上:非常に優秀(トップクラス)
  • 10-15%:良好(業界平均以上)
  • 8-10%:普通(業界平均程度)
  • 8%未満:改善の余地あり

この表からわかること:
EPS(1株あたり利益)は、特殊要因があった2021年を除き、安定的です。株主資本の効率性を示すROTCEは、直近で12.5%と、大手銀行として良好な水準を維持しています。これは、株主から預かった資本を効率的に利益に変える力が安定していることを示します。


3. 株主還元(配当と自社株買い)

近年の配当実績と増配状況

BACは安定的な増配を継続しており、2025年Q2の配当も$0.26で維持されました。

近年の四半期別配当実績
四半期 配当/株 ($) 前年同期比増配率
Q3 2023 $0.24 +9.1%
Q4 2023 $0.24 +9.1%
Q1 2024 $0.24 +9.1%
Q2 2024 $0.24 +9.1%
Q3 2024 $0.26 +8.3%
Q4 2024 $0.26 +8.3%
Q1 2025 $0.26 +8.3%
Q2 2025 $0.26 +8.3%

配当性向の長期推移

配当実績と配当性向(2015-2024年)
年度 配当性向 (%) EPS ($) 年間配当 ($) 増配率 (%)
2015 15.3% $1.31 $0.20 +300%
2016 18.7% $1.50 $0.28 +37.5%
2017 30.8% $1.56 $0.48 +72.7%
2018 23.0% $2.61 $0.60 +25.0%
2019 26.2% $2.75 $0.72 +20.0%
2020 38.5% $1.87 $0.72 0.0%
2021 22.1% $3.57 $0.79 +9.7%
2022 26.3% $3.19 $0.84 +6.3%
2023 30.5% $3.08 $0.94 +11.9%
2024 33.2% $2.99 $1.00 +6.4%

この表からわかること:
2015年以降、コロナ禍で増配を見送った2020年を除き、毎年着実に増配しています。重要なのは配当性向で、常に30%前後の健全な水準を維持しています。これは、利益の大部分を事業の成長や財務基盤の強化に再投資しつつ、無理なく配当を支払っていることを示しており、将来の安定性にとって非常に良い兆候です。

総株主還元(配当+自社株買い)

総株主還元実績(単位:10億ドル)
年度 総還元性向 (%) 純利益 配当総額 自社株買い 総還元額
2018 92.5% $28.1 $6.4 $19.6 $26.0
2019 111.3% $27.4 $7.5 $23.1 $30.6
2020 43.0% $17.9 $7.7 $0.0 $7.7
2021 99.4% $32.0 $7.1 $24.8 $31.9
2022 65.1% $27.5 $7.8 $10.1 $17.9
2023 64.5% $26.5 $8.5 $8.6 $17.1
2024 69.9% $24.9 $8.4 $9.0 $17.4

この表からわかること:
BACは配当だけでなく、自社株買いも積極的に行っています。2025年上半期だけでも約77億ドルの自社株買いを実施しました。配当と自社株買いを合わせた「総還元性向」は、規制が厳しかった時期を除き、利益の過半数を株主に還元する高い水準を維持しており、株主還元への強い意欲がうかがえます。


4. 会社の体力(健全性)は大丈夫か?

指標 2023年末 2024年末 2025年Q2末 規制要求 超過幅
CET1比率 11.9% 11.8% 11.8% 10.0% +1.8pp

銀行の健全性を示す最重要指標であるCET1比率は、2025年Q2末時点で11.8%と、規制が要求する10.0%を十分に上回っています。これは、予期せぬ経済危機にも耐えうる強固な財務基盤を維持していることを意味し、安定配当の大きな裏付けとなります。


5. 投資家が注意すべきリスク

  • 金利低下リスク: 今後の利下げ局面では、収益の柱である純利息収入(NII)が圧迫される可能性があります。これが最大の注目点です。
  • 規制の動向: バーゼルIII最終化ルールの影響は限定的と見られますが、今後も銀行に対する規制が強化される可能性は常に存在します。
  • 消費者信用リスク: BACは消費者向け貸出が多いため、景気悪化が深刻化すると貸し倒れが増加する可能性があります。

6. 競合他行との比較分析 (2025年7月時点)

銀行 予想配当利回り 配当性向 (TTM) ROTCE (TTM) CET1比率 (最新)
JPM 2.2% ~26% 21% 15.0%
BAC 2.6% ~32% 15% 11.8%
WFC 2.3% ~28% 12% 11.3%
C 3.4% ~35% 8% 13.4%

この表からわかること:
BACは配当利回り2.6%と主要銀行の中で魅力的な水準にあり、配当性向も健全です。収益性(ROTCE)や自己資本(CET1比率)は業界トップのJPMには及ばないものの、大手銀行として非常に安定した財務内容であり、配当の持続性に対する懸念は低いと言えます。


7. 結論と投資判断

Bank of Americaの配当は、「高い安定性と持続性」があり、特に着実なインカムゲインを重視する長期投資家にとって、ポートフォリオの安定性を高める優れた選択肢であると評価します。

  • 定量的根拠: 10年以上にわたる増配実績、健全な配当性向(約32%)、規制を十分にクリアする自己資本(CET1比率 11.8%)が、配当の安全性を裏付けています。
  • 定性的根拠: 全米に広がる巨大な顧客基盤と、堅実なリスク管理体制が、景気変動に対する耐性を高めています。

投資上の留意点:
BACは安定性が魅力ですが、JPMのような業界トップクラスの収益性や成長性は期待しにくい側面もあります。今後の金利低下局面で純利息収入がどの程度減少するかは、株価と配当成長のペースを左右する重要なポイントになるでしょう。

免責事項

本レポートは、公開情報に基づく分析であり、投資助言を構成するものではありません。投資判断は投資家自身の責任において行ってください。本レポートの作成にあたっては正確性を期していますが、その内容の正確性、完全性を保証するものではありません。

主要な情報源と更新履歴

Bank of America Corporation 公式情報:

記事更新履歴:

  • 2025年7月28日: 2025年Q2決算を反映し、データを全面更新。
  • 次回更新予定: 2025年10月(2025年Q3決算発表後)



Posted by 南 一矢