ABBV:アッヴィの配当推移
【2025年12月更新】重要なアップデート
- 配当の最新水準:2025年12月時点の四半期配当は$1.64/株(年率換算$6.56)。2013年の分社化以降、AbbVieは四半期配当を累計で330%超引き上げており、S&P Dividend Aristocrats指数の構成銘柄です。さらに、取締役会は2026年2月支払分から四半期配当を$1.73/株へ約5.5%増配することを決議しており、増配トレンドは継続しています。[1]
- 経営体制:2024年7月にRobert A. Michael氏がCEOに就任し、創業CEOのRichard A. Gonzalez氏はエグゼクティブ・チェアマンへ移行しました。これにより、経営トップは世代交代しつつも、創業期からの連続性は維持されています。[2]
- 業績と見通し:2024年通期の売上高は$56.3Bと、Humira(ヒュミラ)の減収をSkyrizi/Rinvoqやメディカル・エステティクス(Botox等)が一定程度補う構図になりました。2025年Q3決算時点で、会社は2025年通期の調整後希薄化EPSガイダンスを$10.38~$10.58から$10.61~$10.65へ引き上げています。[3]
- 2025年Q3のトーン:2025年Q3の売上高は$15.78B(前年同期比+約9%)、調整後希薄化EPSは$1.86でした。売上はSkyrizi/Rinvoqなど成長領域が牽引する一方、研究開発費や提携関連コストの増加によりEPS成長は抑制されています。[3]
医薬品セクターは特許存続期間とパイプラインの厚みが業績と配当の持続性を左右します。AbbVieはヒュミラ(Humira)の特許切れに伴う減収局面を、Skyrizi / Rinvoqなどの新世代免疫領域製品群やアラガン買収資産(Botox等)で橋渡しする戦略を継続中です。[4]
まずは直近の利回りと株価(3ヶ月)
短期のボラティリティ把握用に、直近90日間の「配当利回り」と「株価」を確認できます(Googleスプレッドシート連携チャート)。
長期の配当推移(2013–2025)
注意:AbbVieは2013年にAbbottから分社化しました。従って、配当の「長期推移」は2013年以降がAbbVie単体としての実績です(それ以前はAbbottの系列)。[1]
年間配当(1株)と増配率の推移
| 年 | 年間配当($) | 前年比 | コメント |
|---|---|---|---|
| 2013 | 1.60 | – | 分社化初年 |
| 2014 | 1.66 | +4% | |
| 2015 | 2.02 | +22% | |
| 2016 | 2.28 | +13% | |
| 2017 | 2.56 | +12% | |
| 2018 | 3.59 | +40% | 大幅増配 |
| 2019 | 4.39 | +22% | |
| 2020 | 4.84 | +10% | Allergan買収完了 |
| 2021 | 5.31 | +10% | |
| 2022 | 5.71 | +8% | |
| 2023 | 5.99 | +5% | |
| 2024 | 6.20 | +4% | 四半期$1.55×4 |
| 2025e | 6.56 | +6% | 四半期$1.64×4(2025年通期の想定ランレート) |
上表の年次配当(特に2025年の年率換算)は、AbbVieの配当宣言(四半期$1.64/株)の継続を前提とした試算です。2026年2月支払分からは$1.73/株への増配が決定済みであり、2026年のランレート配当は$6.92($1.73×4)となる見込みです。[1]
配当性向は「GAAP EPS」だけで判断しない
医薬品は買収関連償却・訴訟・減損などでGAAP純利益/EPSが大きく振れやすい業種です。2023–2024年もGAAPベースの配当性向が一時的に高水準となる年がありましたが、営業キャッシュフローで見ると配当は概ねカバーされてきました。配当の持続性評価では、営業CFやフリーCFに対する配当負担を重視するのが実務的です。[5]
年次の配当総額(支払額)とフリーCF対配当カバー(2013–2024)
配当総額(支払額)は「年計配当($/株)× 期中平均の希薄化株式数」の概算です。フリーCF(FCF)は「営業CF − CapEx(設備投資)」で算出しています。[5]
フリーCF対配当カバー(FCF/Div)、営業CF対配当カバー(OCF/Div)
| 年 | キャッシュフロー (M$) | 配当総額 (M$) ※概算 | カバー比率 (倍) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 営業CF | CapEx ※概算 | フリーCF (FCF) | FCF/配当 | 営業CF/配当 | ||
| 2024 | 18,806 | 1,600 | 17,206 | 10,912 | 1.58 | 1.72 |
| 2023 | 22,839 | 1,400 | 21,439 | 10,602 | 2.02 | 2.15 |
| 2022 | 24,943 | 1,100 | 23,843 | 10,107 | 2.36 | 2.47 |
| 2021 | 22,777 | 1,300 | 21,477 | 9,399 | 2.29 | 2.42 |
| 2020 | 17,588 | 1,500 | 16,088 | 8,518 | 1.89 | 2.06 |
| 2019 | 13,324 | 1,200 | 12,124 | 6,497 | 1.87 | 2.05 |
| 2018 | 13,427 | 1,100 | 12,327 | 5,457 | 2.26 | 2.46 |
| 2017 | 9,960 | 1,000 | 8,960 | 4,096 | 2.19 | 2.43 |
| 2016 | 7,041 | 1,300 | 5,741 | 3,671 | 1.56 | 1.92 |
| 2015 | 7,535 | 1,200 | 6,335 | 3,293 | 1.92 | 2.29 |
| 2014 | 3,549 | 1,000 | 2,549 | 2,706 | 0.94 | 1.31 |
| 2013 | 6,267 | 900 | 5,367 | 2,528 | 2.12 | 2.48 |
注記:CapExと配当総額は概算であり、端数は四捨五入しています。配当総額=年計配当×期中平均希薄化株式数(目安)。FCF/配当が1.0倍以上なら、配当が概ねフリーCFで賄えている目安となります。各年の営業CF値は後述の「主要財務指標の推移(CF)」表と整合しています。[5]
業績の長期推移(2013–2024)
以下は年次の主要KPI(単位:百万$)。数値は公開財務(Form 10-K)および整備済みデータベースをベースにしています。[5]
売上高・営業CF・純利益
| 年 | 売上高 | 営業CF | 営業CFマージン(%) | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2013 | 18,790 | 6,267 | 33 | 4,128 |
| 2014 | 19,960 | 3,549 | 18 | 1,774 |
| 2015 | 22,859 | 7,535 | 33 | 5,144 |
| 2016 | 25,638 | 7,041 | 27 | 5,953 |
| 2017 | 28,216 | 9,960 | 35 | 5,309 |
| 2018 | 32,753 | 13,427 | 41 | 5,687 |
| 2019 | 33,266 | 13,324 | 40 | 7,882 |
| 2020 | 45,804 | 17,588 | 38 | 4,616 |
| 2021 | 56,197 | 22,777 | 41 | 11,542 |
| 2022 | 58,054 | 24,943 | 43 | 11,836 |
| 2023 | 54,318 | 22,839 | 42 | 4,863 |
| 2024 | 56,334 | 18,806 | 33 | 4,278 |
長期の売上・CF系列は、AbbVieの年次財務データと外部集計サイト(Macrotrends等)を組み合わせて整理しています。[5]
BS/CFの補足(読み方とABBVの特性)
バランスシート指標(M$/比率)
| 年 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率(%) | 負債比率(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2013 | 29,198 | 24,706 | 4,492 | 15 | 550 |
| 2014 | 27,513 | 25,771 | 1,742 | 6 | 1,479 |
| 2015 | 53,050 | 49,105 | 3,945 | 7 | 1,245 |
| 2016 | 66,099 | 61,463 | 4,636 | 7 | 1,326 |
| 2017 | 70,786 | 65,689 | 5,097 | 7 | 1,289 |
| 2018 | 59,352 | 67,798 | -8,446 | -14 | -803 |
| 2019 | 89,115 | 97,287 | -8,172 | -9 | -1,190 |
| 2020 | 150,565 | 137,468 | 13,076 | 9 | 1,051 |
| 2021 | 146,529 | 131,093 | 15,436 | 11 | 849 |
| 2022 | 138,805 | 121,518 | 17,287 | 12 | 703 |
| 2023 | 134,711 | 124,314 | 10,397 | 8 | 1,196 |
| 2024 | 135,161 | 131,797 | 3,364 | 2 | 3,918 |
キャッシュフロー計算書(抜粋:営業/投資/財務, M$)
| 年 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2013 | 6,267 | 879 | -3,442 |
| 2014 | 3,549 | -926 | -3,293 |
| 2015 | 7,535 | -12,936 | 5,752 |
| 2016 | 7,041 | -6,074 | -3,928 |
| 2017 | 9,960 | -274 | -5,512 |
| 2018 | 13,427 | -1,006 | -14,396 |
| 2019 | 13,324 | 596 | 18,708 |
| 2020 | 17,588 | -37,557 | -11,501 |
| 2021 | 22,777 | -2,344 | -19,039 |
| 2022 | 24,943 | -623 | -24,803 |
| 2023 | 22,839 | -2,009 | -17,222 |
| 2024 | 18,806 | -20,820 | -5,211 |
- 配当の源泉はFCF:AbbVieは大型買収後でもFCF > 配当を維持する年が大半です。2024年はFCFが約$17.2B、配当総額$10.9B規模で、カバー倍率1.6倍前後を確保しています。[5]
- 投資→収穫→分配サイクル:2015/2020/2024年のように投資CFが大きくマイナスとなる局面でも、翌期以降の営業CF・FCFの厚みが配当を下支えしてきました。[5]
- BSの見どころ:のれん・無形資産比率が高く、会計上の純利益は償却・減損でブレやすい一方、営業CFはビジネスの基礎体力を反映しやすい点がAbbVieの特徴です。
- 営業CFは堅調:2021–2023年は$22–25Bレンジ、2024年は一時調整が入ったものの$18.8Bの絶対額を確保しています。[5]
- 投資CF:大型M&Aやパイプライン投資の年には大きくマイナスに振れる(2020年のAllergan買収など)。
- 配当持続性:GAAP益だけでなく「営業CFやFCFに対する配当総額比」を併せてチェックするのが医薬品では実務的です。
AbbVieのビジネス構造と成長ドライバー
- 免疫領域:Skyrizi(リサンキズマブ)、Rinvoq(ウパダシチニブ)がHumiraの減収を段階的に補完。適応拡大と国際展開が中期成長のカギです。[4]
- メディカル・エステティクス/ニューロ:Botox(治療/美容)やVraylar等、Allergan由来資産が事業ポートフォリオの分散化とCFの安定化に寄与しています。[4]
- 2025年:2025年Q3時点でもSkyrizi/Rinvoqは二桁成長を維持し、会社は2025年通期の調整後EPSガイダンスを$10.61~$10.65に引き上げています。Humiraの減収を吸収しつつ、新旧製品ミックスの転換が進行中です。[3]
用語ミニ解説(必要最小限)
- 特許切れ(Patent Cliff):独占販売期間の終了で、売上が大きく減る局面。
- 調整後EPS:買収関連償却や一時費用等を除いた指標。GAAP EPSよりも業績トレンドを捉えやすい。
- 配当カバー(CFベース):営業CF(またはフリーCF)÷配当支払総額。長期の配当余力をみる際に有効。
配当の安全性:シナリオ別の見立て
2025年Q3時点の情報を踏まえると、Humira減収の影響を成長製品群がおおむね吸収しつつも、研究開発や提携関連コスト、金利負担などが利益面の重しになっている状況です。会社ガイダンス上は2025年通期の調整後EPS $10.61~$10.65と、ピーク時(2021–2022年)からは一段低いレンジに落ち着いています。[3]
- ベースシナリオ:Skyrizi/Rinvoqの伸長とAesthetics領域の安定成長でCFは底堅く、年5%前後の増配余地は中期的に維持できる可能性が高い。
- 逆風シナリオ:予想以上の競合・価格圧力・R&Dイベントで一時減益。増配ペース鈍化(低一桁台)はあり得るが、現行配当の維持可能性はCF体質から見て比較的高いと考えられます。
- 追い風シナリオ:適応拡大・新薬承認・美的領域の堅調などでCFが想定超となれば、2026年以降の増配余力拡大も期待できます。
主要リスクとモニタリングKPI
- リスク:価格・償還(償還価格)環境、競合バイオシミラー、研究開発失敗、買収資産の減損、訴訟・規制対応コストなど。
- KPI:①Skyrizi/Rinvoqの売上トレンド、②調整後EPSガイダンスの推移、③営業CFと配当のカバー比(FCF/配当)、④純有利子負債・レバレッジ指標、⑤新薬の申請・承認・上市の進捗。
まとめ:配当重視投資家にとってのABBV
- 長所:分社化後12年連続で四半期配当を引き上げてきた実績、高いキャッシュ創出力、免疫×美的×神経の3本柱で収益源が分散している点は、配当株として魅力的です。[1]
- 留意点:買収関連償却などによりGAAP利益の変動が大きいため、評価ではCF(営業/フリー)軸と併用する必要があります。Humira依存度は低下しつつあるものの、免疫領域での競争は引き続き激しい環境です。[4]
- 現状認識:四半期配当$1.64(年率$6.56)ベースで、2026年2月支払分から$1.73への増配が決定済みです。一方で、2025年通期の調整後EPSガイダンスは$10.61~$10.65と、ピーク水準からは一段低く、高い増配率を長期に維持するフェーズは過ぎつつあるとみるのが妥当でしょう。[1][3]
総じて、AbbVieは「高配当+中期的な緩やかな増配」を期待する投資家に向いた銘柄です。Humira後の移行期にあるため、短期的には業績や株価のボラティリティも想定されますが、Skyrizi/RinvoqやAestheticsを中心としたパイプライン・事業ポートフォリオが機能し続ける限り、CFベースの配当維持力は比較的高いと考えられます。
一方で、バリュエーション(株価水準)と規制・訴訟リスクには常に目配りが必要です。新薬の成否や価格環境の変化次第で、中長期の投資妙味は変動し得ます。
免責事項
免責事項:本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資にあたっては、必ずご自身の判断と責任で行い、最新の開示資料(決算短信・Form 10-K等)をご確認ください。
【注】(出典リンク)
- 配当・株主還元・増配実績:AbbVie「Dividends」→ PR Newswire「AbbVie Reports Third-Quarter 2025 Financial Results」(2026年2月からの$1.73/株への増配言及など)。確認日:2025-12-11。↩
- 経営体制・CEO交代:Reuters「AbbVie says Richard Gonzalez to step down as CEO in July 2024」→ AbbVie「Investor Relations / Leadership」。確認日:2025-12-11。↩
- 2024通期業績・2025年ガイダンス・2025年Q3決算:AbbVie「Annual Reports(Form 10-K 2024)」→ PR Newswire「AbbVie Reports Third-Quarter 2025 Financial Results」。確認日:2025-12-11。↩
- 事業ポートフォリオ(Humira/Skyrizi/Rinvoq、Allergan資産等):AbbVie「Investor Relations」およびForm 10-K 2024「Business」「Segment Review」セクション。確認日:2025-12-11。↩
- 長期財務データ(売上・営業CF・BS・FCF等):AbbVie年次報告書(Form 10-K 2013–2024)→ Macrotrends「AbbVie Financial Statements」。確認日:2025-12-11。↩
- 外部評価・見通し参考:Investor’s Business Daily「AbbVie Stock: Is It A Buy Now?」ほか外部レポート。確認日:2025-12-11。↩

