ABBV:アッヴィの配当推移

配当

AbbVie(ABBV)配当投資分析(2025年版)

【2025年8月更新】重要なアップデート

  • 配当の最新水準:四半期配当は$1.64/株(年率換算$6.56)。2025年2月に取締役会が同額を宣言(支払は2025年5月等)。2013年の分社化以降、累計増配率は大幅に拡大。出典:アッヴィIRの2025年2月リリース。
  • 経営体制:2024年7月、Robert Michael氏がCEOに就任(前CEOのRichard Gonzalez氏は取締役会議長に)。
  • 見通し:2025年通期の調整後EPSレンジ引き上げ(Q1時点)。詳細はQ1決算後の発表参照。

医薬品セクターは特許存続期間パイプラインの厚みが業績と配当の持続性を左右します。AbbVieはヒュミラ(Humira)の減収局面を、Skyrizi / Rinvoqなどの新世代免疫領域製品群やアラガン買収資産(Botox等)で橋渡しする戦略を継続中です。

まずは直近の利回りと株価(3ヶ月)

短期のボラティリティ把握用に、直近90日間の「配当利回り」と「株価」を確認できます。


長期の配当推移(2013–2025)

注意:AbbVieは2013年にAbbottから分社化。従って「長期推移」は2013年以降が正です(2008年までの連続データはAbbVieには該当しません)。

年間配当(1株)と増配率の推移

年間配当($) 前年比 コメント
2013 1.60 分社化初年
2014 1.66 +4%
2015 2.02 +22%
2016 2.28 +13%
2017 2.56 +12%
2018 3.59 +40% 大幅増配
2019 4.39 +22%
2020 4.84 +10% Allergan買収完了
2021 5.31 +10%
2022 5.71 +8%
2023 5.99 +5%
2024 6.20 +4% 四半期$1.55×4
2025e 6.56 +6% 四半期$1.64×4(取締役会決議)

参考:上表の年次配当(特に2025年の年率換算)は、AbbVieの配当宣言($1.64/四半期)に基づく試算です。

配当性向は「GAAP EPS」だけで判断しない

医薬品は買収関連償却・訴訟・減損などでGAAP純利益/EPSが大きく振れやすい業種です。2023–2024年はGAAPベースの配当性向が200%超に跳ねる年もありましたが、営業キャッシュフローで見ると配当は概ねカバーされてきました。配当の持続性評価では、営業CFやフリーCFに対する配当負担を重視します。

年次の配当総額(支払額)とフリーCF対配当カバー(2013–2024)

配当総額(支払額)は「年計配当($/株)× 期中平均の希薄化株式数」の概算です。フリーCF(FCF)は「営業CF − CapEx(設備投資)」で算出。

フリーCF対配当カバー(FCF/Div)、営業CF対配当カバー(OCF/Div)

キャッシュフロー (M$) 配当総額 (M$) ※概算 カバー比率 (倍)
営業CF CapEx ※概算 フリーCF (FCF) FCF/配当 営業CF/配当
2024 18,806 1,600 17,206 10,912 1.58 1.72
2023 22,839 1,400 21,439 10,602 2.02 2.15
2022 24,943 1,100 23,843 10,107 2.36 2.47
2021 22,777 1,300 21,477 9,399 2.29 2.42
2020 17,588 1,500 16,088 8,518 1.89 2.06
2019 13,324 1,200 12,124 6,497 1.87 2.05
2018 13,427 1,100 12,327 5,457 2.26 2.46
2017 9,960 1,000 8,960 4,096 2.19 2.43
2016 7,041 1,300 5,741 3,671 1.56 1.92
2015 7,535 1,200 6,335 3,293 1.92 2.29
2014 3,549 1,000 2,549 2,706 0.94 1.31
2013 6,267 900 5,367 2,528 2.12 2.48

注記:CapExと配当総額は概算、端数は四捨五入。配当総額=年計配当×期中平均希薄化株式数(目安)。FCF/配当が1.0倍以上なら配当が概ねフリーCFで賄えている目安。各年の営業CF値は本文「主要財務指標の推移(CF)」表に整合。


業績の長期推移(2013–2024)

以下は年次の主要KPI(単位:百万$)。数値は主に公開財務(10-K)および整備済みデータベースを参照しています。

売上高・営業CF・純利益

売上高 営業CF 営業CFマージン(%) 純利益
2013 18,790 6,267 33 4,128
2014 19,960 3,549 18 1,774
2015 22,859 7,535 33 5,144
2016 25,638 7,041 27 5,953
2017 28,216 9,960 35 5,309
2018 32,753 13,427 41 5,687
2019 33,266 13,324 40 7,882
2020 45,804 17,588 38 4,616
2021 56,197 22,777 41 11,542
2022 58,054 24,943 43 11,836
2023 54,318 22,839 42 4,863
2024 56,334 18,806 33 4,278

出典:年次財務(10-K)および集計サイト。長期の売上・CF系列はMacrotrendsの公開データも参照しています。

BS/CFの補足(読み方とABBVの特性)

バランスシート指標(M$/比率)

総資産 総負債 株主資本 自己資本率(%) 負債比率(%)
2013 29,198 24,706 4,492 15 550
2014 27,513 25,771 1,742 6 1,479
2015 53,050 49,105 3,945 7 1,245
2016 66,099 61,463 4,636 7 1,326
2017 70,786 65,689 5,097 7 1,289
2018 59,352 67,798 -8,446 -14 -803
2019 89,115 97,287 -8,172 -9 -1,190
2020 150,565 137,468 13,076 9 1,051
2021 146,529 131,093 15,436 11 849
2022 138,805 121,518 17,287 12 703
2023 134,711 124,314 10,397 8 1,196
2024 135,161 131,797 3,364 2 3,918

キャッシュフロー計算書(抜粋:営業/投資/財務, M$)

営業CF 投資CF 財務CF
2013 6,267 879 -3,442
2014 3,549 -926 -3,293
2015 7,535 -12,936 5,752
2016 7,041 -6,074 -3,928
2017 9,960 -274 -5,512
2018 13,427 -1,006 -14,396
2019 13,324 596 18,708
2020 17,588 -37,557 -11,501
2021 22,777 -2,344 -19,039
2022 24,943 -623 -24,803
2023 22,839 -2,009 -17,222
2024 18,806 -20,820 -5,211
  • 配当の源泉はFCF:ABBVは大型買収後でもFCF>配当を維持する年が大半。2024年はFCF 17.2B$規模・カバー1.6倍で、増配余地は鈍化も維持力は確保
  • 投資→収穫→分配サイクル:2015/2020/2024に投資CFが大きく振れる局面でも、翌期以降の営業CF/FCFの厚みで配当を下支え。
  • BSの見どころ:のれん・無形資産比率が高く、会計上の純利益は償却・減損でブレやすい。一方で営業CFは基礎体力を反映しやすく、配当評価ではCF系KPIの方が頑健。
  • 営業CFは堅調:2021–2023年は$22–25Bのレンジ。2024年は一時調整も$18.8Bの絶対額を確保。
  • 投資CF:大型M&Aやパイプライン投資の年に大きくマイナス化(2020年のAllergan等)。
  • 配当持続性:GAAP益だけでなく「営業CFに対する配当総額比」をチェックするのが医薬品では実務的。

AbbVieのビジネス構造と成長ドライバー

  • 免疫領域:Skyrizi(リサンキズマブ)、Rinvoq(ウパダシチニブ)がHumiraの減収を段階的に補完。製品ライフサイクルと適応拡大が成長のカギ。
  • メディカルアesthetics/ニューロ:Botox(治療/美容)やVraylar等、Allergan資産が分散化とCFの安定化に寄与。
  • 2025年:Q1時点で通期調整後EPS見通しを引き上げ。新旧製品ミックスの転換が継続。

用語ミニ解説(必要最小限)

  • 特許切れ(Patent Cliff):独占販売の終了で売上が大きく減る現象。
  • 調整後EPS:買収償却や一時費用等を除いた指標。GAAPより業績トレンドを捉えやすい。
  • 配当カバー(CFベース):営業CF(またはフリーCF)÷配当支払総額。長期の配当余力をみる際に有効。

配当の安全性:シナリオ別の見立て

  • ベース:Skyrizi/Rinvoqの伸長でCFは底堅い。年5%前後の増配余地。
  • 逆風:想定超の競合・価格圧力・R&Dイベントで一時減益。増配ペース鈍化はあり得るが、現行配当の維持可能性は高め(CF体質)。
  • 追い風:適応拡大・新薬承認・美的領域の堅調で増配余力拡大

主要リスクとモニタリングKPI

  • リスク:価格・償還環境、競合バイオシミラー、研究開発失敗、買収資産の減損、訴訟・規制。
  • KPI:①Skyrizi/Rinvoqの売上トレンド、②調整後EPSガイダンス、③営業CFと配当のカバー比、④純有利子負債/レバレッジ、⑤新薬の申請・承認進捗。

まとめ:配当重視投資家にとってのABBV

  • 長所:分社化後12年連続増配、高いキャッシュ創出力、免疫×美的×神経で収益源が分散
  • 留意:買収関連償却でGAAP利益の変動が大きい。評価はCF(営業/フリー)軸を併用。
  • 現状:四半期配当$1.64、年率$6.56ベース。新旧製品ミックスの転換は進行中。

参考資料

免責事項:本記事は情報提供であり、投資勧誘ではありません。将来の結果を保証しません。最新の開示資料をご確認ください。

Posted by 南 一矢