ABBV:アッヴィの配当推移

配当

アッヴィ(AbbVie Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

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配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2024 3.50% 4% 6.2 177.2
2023 4.05% 5% 220% 5.99 148 2.72
2022 3.84% 8% 86% 5.71 148.7 6.63
2021 4.69% 10% 82% 5.31 113.1 6.45
2020 5.32% 10% 178% 4.84 90.9 2.72
2019 5.64% 22% 83% 4.39 77.9 5.28
2018 3.68% 40% 98% 3.59 97.5 3.66
2017 3.40% 12% 78% 2.56 75.2 3.3
2016 3.76% 13% 63% 2.28 60.7 3.63
2015 3.25% 22% 65% 2.02 62.1 3.13
2014 2.99% 4% 151% 1.66 55.5 1.1
2013 3.66% 63% 1.6 43.7 2.56

【出典】

着実に成長する配当の実績

アッヴィ(ABBV)の配当実績は、創業以来一貫した増配の歴史を示しています。2013年に親会社アボットラボラトリーズからの分社化に伴い配当を開始して以来、同社は一度も減配することなく、毎年確実に配当を増加させてきました。特に注目すべきは、2018年の大幅増配(40%)と、市場環境が厳しい2020年のパンデミック時にも10%の増配を継続した点です。直近の2023年と2024年も、業績の変動にかかわらず5%の増配を実施しており、株主還元への強いコミットメントを示しています。

配当成長率の推移

アッヴィの配当成長率は、創業からの期間に応じた段階的な変化を示しています:

  • 2013年:配当開始($1.60/株)
  • 2014年:初年度の調整期(4%増)
  • 2015〜2017年:成長加速期(12〜22%の高成長)
  • 2018年:戦略的な大幅増配(40%増)
  • 2019〜2021年:安定成長期(10〜19%の堅調な成長)
  • 2022〜2024年:成熟期(5〜8%の持続的成長)

このパターンは、アッヴィが分社化初期の急成長期から、より成熟した安定的な配当政策へと移行していることを示しています。特に注目すべきは、業績の変動や大型買収(2020年のアラガン買収など)、主力製品ヒュミラの特許切れといった重要な局面でも、一貫して増配を継続してきた点です。これは、同社の強固なキャッシュフロー創出能力と長期的な株主還元重視の経営姿勢を反映しています。

配当利回りの魅力

アッヴィの配当利回りは、製薬セクターの中でも特に魅力的な水準を維持しています。配当額は2013年の$1.60/株から2024年には$6.29/株へと約3.9倍に増加しました。同社の特徴は以下の点にあります:

  • 分社化以来の完璧な増配記録(11年連続増配)
  • S&P 500平均を大きく上回る配当利回り
  • 配当の安定性と予測可能性の高さ
  • 四半期ごとの配当支払いによる安定したインカム創出

アッヴィの高い配当利回りは、医薬品業界特有の安定した収益構造と、同社の株主還元重視の方針を反映しています。特に、ブロックバスター薬(ヒュミラ、スキリージなど)からの安定した収益が、高水準の配当支払いを支えています。ただし、直近の高い配当性向(2023年:220%、2024年:263%)は、EPSの変動と特別要因の影響を示唆しており、持続可能性の観点から詳細な分析が必要です。

注目ポイント:アッヴィは「配当成長株」として高く評価されており、分社化以来の完璧な増配記録と医薬品産業の景気耐性の高さが、安定した配当収入を求める投資家にとって魅力となっています。同社は将来的に「配当貴族」(25年連続増配企業)の仲間入りを目指す姿勢を示しており、長期的な配当成長への道筋を明確にしています。特に、製薬業界では珍しい高い配当利回りと成長性の両立が、同社の差別化要因となっています。

配当性向の持続可能性

配当性向は「1株配当 ÷ EPS」で計算される指標ですが、アッヴィの場合、この指標は近年大きく上昇しています。2021-2022年の82-86%から、2023年には220%、2024年には263%へと急増しました。この高い配当性向は、一見すると配当の持続可能性に疑問を投げかけるものですが、詳細な分析が必要です。

高配当性向の背景:2023-2024年の異常に高い配当性向は、EPSの一時的な減少によるものです:

  • 2023年:純利益が前年の11,836M$から4,863M$へと大幅に減少しました。これは主にスキリージの買収に関連する無形資産の償却費や、一時的な訴訟和解金などの特別費用によるものと考えられます。その結果、EPSは6.63ドルから2.72ドルへと急減し、配当性向が220%に跳ね上がりました。
  • 2024年:純利益はさらに減少して4,278M$となり、EPSも2.39ドルまで低下しました。これにはヒュミラの特許切れに伴うバイオシミラー(後続品)との競合影響や、研究開発投資の増加などが影響していると考えられます。その結果、配当性向は263%に上昇しました。

会計上の一時的要因の影響:製薬会社の純利益は以下の理由で大きく変動することがあります:

  • 無形資産(特許、技術など)の償却費や減損費用
  • 大型買収に伴うのれん代やその減損
  • 製品の承認・非承認に伴う研究開発費の一時的変動
  • 特許訴訟や製造物責任訴訟の和解金
  • 主力製品の特許切れによる収益構造の変化

これらの一時的な会計処理が純利益を大きく変動させるため、配当性向だけでは配当の持続可能性を正確に評価することは困難です。より重要なのは、営業キャッシュフローに対する配当の割合を見ることです。

アッヴィの営業キャッシュフロー指標を見ると、2023年でも22,839M$、2024年でも18,806M$と高水準を維持しています。これに対して年間配当金支払い総額は約10,000M$程度と推定され、営業キャッシュフローの約50%程度をカバーできる水準にあります。このことから、会計上の純利益の一時的な変動にかかわらず、アッヴィは基本的な事業から十分なキャッシュを生み出し、配当を支える能力を持っていると言えます。

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2013 18,790 6,267 33 4,128
2014 19,960 3,549 18 1,774
2015 22,859 7,535 33 5,144
2016 25,638 7,041 27 5,953
2017 28,216 9,960 35 5,309
2018 32,753 13,427 41 5,687
2019 33,266 13,324 40 7,882
2020 45,804 17,588 38 4,616
2021 56,197 22,777 41 11,542
2022 58,054 24,943 43 11,836
2023 54,318 22,839 42 4,863
2024 56,334 18,806 33 4,278

収益性と効率性の変動

アッヴィの財務データからは、製薬大手としての強固な収益基盤と、戦略的な成長拡大の軌跡が見てとれます:

  • 売上高は2013年の18,790M$から2024年には56,334M$へと約3倍に拡大
  • 特に2020年には前年比約38%増と大幅な成長を記録(アラガン買収による影響)
  • 営業CFマージンは2014年の一時的低下(18%)を除き、概ね30-43%の高水準を維持
  • 純利益は変動が大きく、2021-2022年にピーク(11,542M$、11,836M$)を記録した後、2023-2024年に大幅減少

特に注目すべきは、アッヴィが主力製品ヒュミラへの依存度が高い状況から、戦略的買収や研究開発投資を通じて製品ポートフォリオの多様化を実現してきたことです。2020年のアラガン買収は売上高と総資産を大きく増加させましたが、同時に多額の無形資産とのれん代、そして債務も増加させました。2023-2024年の純利益減少は、主にヒュミラの特許切れと競合バイオシミラーの市場参入影響、買収関連の償却費や特別費用によるものと考えられます。

安定したキャッシュフロー基盤

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位で表示しています。

年度 営業CF 投資CF 財務CF
2013 6,267 879 -3,442
2014 3,549 -926 -3,293
2015 7,535 -12,936 5,752
2016 7,041 -6,074 -3,928
2017 9,960 -274 -5,512
2018 13,427 -1,006 -14,396
2019 13,324 596 18,708
2020 17,588 -37,557 -11,501
2021 22,777 -2,344 -19,039
2022 24,943 -623 -24,803
2023 22,839 -2,009 -17,222
2024 18,806 -20,820 -5,211

アッヴィの強みは、その強力なキャッシュフロー生成能力にあります。製薬業界特有の高い利益率と効率的な運転資本管理が、安定した営業キャッシュフローの基盤となっています:

  • 営業CFは2014年の一時的な低下(3,549M$)を除き、着実に拡大して2022年には24,943M$のピークを記録
  • 2020年の投資CF大幅マイナス(-37,557M$)は、アラガン買収費用を反映
  • 同様に2024年の投資CF大幅マイナス(-20,820M$)は、免疫系や神経系疾患領域のパイプライン強化に向けた戦略的買収投資と考えられる
  • 2019年の財務CF大幅プラス(18,708M$)と2020年の大型買収は密接に関連しており、買収資金調達のための負債発行を示唆
  • 2021-2023年の大幅な財務CFマイナス(-19,039M$、-24,803M$、-17,222M$)は、主に株主還元(配当と自社株買い)と負債返済を反映

注目すべきは、主力製品ヒュミラの特許切れ(米国)に直面した2023-2024年も、営業CFが22,839M$と18,806M$の高水準を維持していることです。これは、スキリージやリンゼスなどの後継製品の成長と、多様化された製品ポートフォリオの強さを示しています。

キャッシュフロー分析のポイント:アッヴィのキャッシュフローパターンは、「投資→収穫→分配」というサイクルを繰り返しています。特に2015年、2020年、2024年の大型投資期の後に、強力なキャッシュ創出と積極的な株主還元期が続くパターンが見られます。このサイクルは医薬品産業特有の「研究開発投資と買収→製品承認と市場拡大→特許存続期間中の収穫」という事業モデルを反映しています。同社はこの先もこのサイクルを継続し、新製品の開発・買収と既存製品からのキャッシュフロー最大化のバランスを取る戦略を続けると予想されます。

負債水準と資本構成

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 負債比率
2013 29,198 24,706 4,492 15 550
2014 27,513 25,771 1,742 6 1,479
2015 53,050 49,105 3,945 7 1,245
2016 66,099 61,463 4,636 7 1,326
2017 70,786 65,689 5,097 7 1,289
2018 59,352 67,798 -8,446 -14 -803
2019 89,115 97,287 -8,172 -9 -1,190
2020 150,565 137,468 13,076 9 1,051
2021 146,529 131,093 15,436 11 849
2022 138,805 121,518 17,287 12 703
2023 134,711 124,314 10,397 8 1,196
2024 135,161 131,797 3,364 2 3,918

アッヴィの資本構成には、複数の重要な特徴と変化が見られます:

  • 自己資本率は一貫して低く、2024年には2%まで低下
  • 2018-2019年には株主資本がマイナスになり、自己資本率もマイナスを記録
  • 2020年のアラガン買収により総資産が大幅に増加(89,115M$から150,565M$へ)
  • 負債比率は極めて高く、2024年には3,918%に達している
  • 2020-2022年に改善傾向が見られたが、2023-2024年に再び急速に悪化

この特徴的な資本構成には、以下の要因が影響していると考えられます:

  • 積極的な自社株買いプログラムによる株主資本の減少
  • 大型買収(特に2020年のアラガン買収)に伴う巨額の無形資産計上とのれん代
  • 高い配当支払いによる利益剰余金の制限
  • 特許切れやその他の一時的要因による2023-2024年の収益性低下
  • 買収に伴う大規模な負債調達

アッヴィの極めて高い負債比率は、一般的な企業評価では大きなリスク要因となりますが、製薬業界の文脈では少し異なる解釈が必要です。同社の安定したキャッシュフロー創出能力、分散された満期構成の負債ポートフォリオ、そして景気耐性の高い製薬ビジネスモデルは、高い負債水準を一定程度相殺します。ただし、2024年の自己資本率2%という極端な水準は、今後の財務戦略において改善が望まれる点です。

まとめ:長期配当投資家にとってのアッヴィとは?

アッヴィは、分社化以来の完璧な増配実績と高い配当利回りを持つ製薬大手として、インカム投資家にとって魅力的な選択肢となっています。強力なキャッシュフロー生成能力と多様化された製品ポートフォリオに支えられた配当は、一定の安定性を持っています。

同社の強みは以下の点にあります:

  • 分社化以来11年連続の増配実績と将来の「配当貴族」入りポテンシャル
  • 極めて高い営業キャッシュフローマージン(30-43%)と強力なキャッシュ創出能力
  • スキリージやリンゼスなど複数の成長製品による収益源の多様化
  • 戦略的買収を通じたパイプライン強化と長期成長基盤の構築
  • 免疫学・腫瘍学・神経科学などの高成長・高マージン領域における強みと専門性
  • 医薬品産業特有の景気耐性の高さと予測可能な収益モデル

一方で、注意すべき点としては:

  • 極めて高い負債比率と極端に低い自己資本率(2024年:2%)
  • 直近の非常に高い配当性向(2023年:220%、2024年:263%)
  • 主力製品ヒュミラの特許切れとバイオシミラー競合による収益低下リスク
  • 買収に伴う巨額ののれん代と無形資産評価リスク
  • 製薬業界特有の研究開発リスクと新薬承認の不確実性
  • 医薬品価格に対する政策的・社会的圧力の高まり
  • 競争の激化と後発品・バイオシミラーの市場参入加速

投資家へのポイント:アッヴィへの投資は、「高い配当利回りと安定した増配実績」を求める投資家に適しています。主力製品ヒュミラの特許切れという大きな試練にもかかわらず、同社は新製品の成長とパイプラインの強化により、移行期を乗り越えようとしています。短期的には収益性の変動と高い負債水準に注意が必要ですが、長期的には多様化された製品ポートフォリオと効率的な買収戦略により、配当の持続可能性は比較的高いと評価できます。特に、営業キャッシュフローに対する配当の割合は約50%程度と、会計上の配当性向よりも健全な水準にあることから、目先の配当カットリスクは限定的でしょう。ただし、極端に低い自己資本率と高い負債水準は長期的な懸念材料であり、今後の財務戦略と資本配分の方針に注目する必要があります。

よくある質問

アッヴィの配当はどれくらい安全ですか?

アッヴィの配当は、高い配当性向(2024年:263%)にもかかわらず、比較的安全と評価できます。その理由は以下の通りです:(1) 営業キャッシュフローに対する配当の割合は約50%程度と、会計上の配当性向よりも健全な水準を維持、(2) 主力製品ヒュミラの特許切れという大きな試練にもかかわらず、スキリージやリンゼスなどの後継製品が順調に成長、(3) 分社化以来11年間一度も減配せず、いかなる市場環境でも増配を継続してきた実績、(4) 医薬品産業特有の景気耐性の高さにより、マクロ経済の変動に対して比較的安定した収益を確保。ただし、極めて高い負債比率(2024年:3,918%)と極端に低い自己資本率(2024年:2%)は長期的な懸念材料であり、財務健全性の観点からは改善が望まれます。また、今後の戦略的買収や研究開発投資のペースによっては、配当成長率が抑制される可能性もあります。

主力製品ヒュミラの特許切れは、アッヴィの配当にどのような影響を与えますか?

ヒュミラの特許切れは、アッヴィにとって最大の課題ですが、配当への直接的な影響は限定的と考えられます。2023年に米国市場でバイオシミラーが導入され、ヒュミラの売上は予想通り減少し始めていますが、以下の要因により配当は維持・成長が可能です:

(1) アッヴィは特許切れに備えて、長年にわたり製品ポートフォリオの多様化を進めてきました。特にスキリージ(乾癬治療薬)とリンゼス(免疫疾患治療薬)は急速に成長しており、ヒュミラの売上減少を大幅に相殺しています。

(2) 2019-2020年のアラガン買収により、医療美容やニューロサイエンス分野に製品ラインを拡大し、収益源を多様化しました。特にボトックスなどの長期的な成長製品が、安定した収益基盤を提供しています。

(3) 営業キャッシュフローは2023年も22,839M$と高水準を維持しており、ヒュミラの売上減少にもかかわらず、配当をカバーするのに十分な水準にあります。

(4) 研究開発パイプラインには複数の有望な後期段階の候補薬があり、今後数年で新たな成長ドライバーとなる可能性があります。

ただし、ヒュミラの売上減少が予想以上に急速に進んだ場合や、後継製品の成長が鈍化した場合には、配当成長率のさらなる減速(現在の5%からさらに低下)や、最悪の場合は配当維持(増配停止)の可能性も排除できません。とはいえ、アッヴィの経営陣は配当を重視する姿勢を明確にしており、減配の可能性は非常に低いと考えられます。

極端に低い自己資本率と高い負債比率は長期的な懸念材料ではないですか?

はい、アッヴィの極端に低い自己資本率(2024年:2%)と非常に高い負債比率(2024年:3,918%)は、長期的な財務健全性の観点から重要な懸念材料です。この状況は、主に以下の要因によるものです:

(1) 大型買収(特に2020年のアラガン買収)に伴う多額の負債調達と無形資産計上
(2) 積極的な自社株買いプログラムによる株主資本の減少
(3) 継続的な高配当支払いによる利益剰余金の制限
(4) ヒュミラの特許切れに伴う2023-2024年の収益性低下

この資本構成は一般的な企業では危険水域ですが、アッヴィの場合は以下の要因がリスクを一部緩和しています:

(1) 医薬品産業特有の高いキャッシュフロー生成能力と安定した収益構造
(2) 分散された満期構成の負債ポートフォリオにより、短期的な返済圧力は限定的
(3) スキリージやリンゼスなどの成長製品によるキャッシュフローの下支え
(4) 経済サイクルに比較的影響されにくい製薬ビジネスモデル

とはいえ、この極端な資本構成は金利上昇環境下での借り換えコスト増加、信用格付けへの悪影響、将来的な買収・投資余力の制限など、様々なリスクをもたらします。今後数年間で段階的に負債削減を進め、自己資本率を改善することが望ましいでしょう。そのためには、配当成長の抑制や自社株買いの縮小といった株主還元策の調整が必要となる可能性もあります。長期投資家は、今後の決算発表や投資家向け説明会で示される資本配分方針や負債削減計画に注目すべきでしょう。

2024年の大幅な投資キャッシュフロー支出(-20,820M$)は何を意味していますか?

2024年の大幅な投資キャッシュフロー支出(-20,820M$)は、アッヴィの積極的な外部成長戦略の継続を示しています。この大規模な投資は、主に戦略的買収や提携に向けられたものと考えられます。

具体的には、アッヴィはヒュミラの特許切れに備えて、パイプラインの強化と新たな成長ドライバーの確保に注力しています。2024年には主に以下のような投資が含まれていると推測されます:

(1) 免疫疾患領域の強化:既存の強みを活かした買収や提携により、ヒュミラの後継となる次世代の免疫疾患治療薬のパイプラインを拡充

(2) 神経科学分野の拡大:アルツハイマー病、パーキンソン病、精神疾患などの領域における有望な後期段階の候補薬や技術プラットフォームの獲得

(3) 腫瘍学ポートフォリオの強化:特に精密医療や免疫腫瘍学などの高成長分野における革新的な治療法へのアクセス獲得

(4) 希少疾患領域への進出:高いアンメットニーズと価格プレミアムが期待できる希少疾患治療薬の買収

この大規模な投資は、短期的には財務指標を圧迫し、負債水準を高める要因となる可能性がありますが、長期的には収益源の多様化と持続的な成長基盤の構築に貢献するものと期待されます。アッヴィの過去の買収実績を見ると、スキリージなどの成功例もあり、慎重かつ戦略的な買収アプローチが今後の成功を左右するでしょう。投資家としては、これらの投資が3-5年後にどのようなリターンをもたらすかを注視することが重要です。

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

【出典】

Posted by 南 一矢