LOW:ロウズの配当推移
ロウズ・カンパニーズ(Lowe’s Companies Inc)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
(*年次決算が1月なので平均株価は2月1日~1月31日の期間で計算しています)
年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
2025 | 1.78% | 7% | 39% | 4.8 | 269.7 | 12.25 |
2024 | 1.83% | 7% | 36% | 4.5 | 245.3 | 12.48 |
2023 | 2.04% | 16% | 42% | 4.2 | 210.7 | 10.01 |
2022 | 1.84% | 32% | 31% | 3.6 | 201.3 | 11.85 |
2021 | 1.35% | 24% | 36% | 2.8 | 207.1 | 7.75 |
2020 | 1.62% | 9% | 41% | 2.25 | 139 | 5.49 |
2019 | 1.90% | 11% | 73% | 2.06 | 108.6 | 2.84 |
2018 | 1.93% | 17% | 45% | 1.85 | 95.9 | 4.09 |
2017 | 1.93% | 19% | 46% | 1.58 | 81.7 | 3.47 |
2016 | 1.79% | 24% | 49% | 1.33 | 74.2 | 2.73 |
2015 | 1.49% | 23% | 39% | 1.07 | 71.7 | 2.71 |
2014 | 1.64% | 24% | 41% | 0.87 | 53 | 2.14 |
2013 | 1.59% | 13% | 41% | 0.7 | 44.1 | 1.69 |
2012 | 2.04% | 17% | 43% | 0.62 | 30.4 | 1.43 |
2011 | 2.25% | 26% | 37% | 0.53 | 23.6 | 1.42 |
2010 | 1.81% | 17% | 35% | 0.42 | 23.2 | 1.21 |
2009 | 1.76% | 6% | 24% | 0.36 | 20.4 | 1.49 |
2008 | 1.52% | 17% | 18% | 0.34 | 22.4 | 1.86 |
【出典】
54年連続増配の驚異的な実績
ロウズ(LOW)の配当実績は、住宅関連小売業界のリーダーとして、極めて印象的な成長を実現してきました。2008年から2025年にかけて、1株配当は0.34ドルから4.80ドルへと実に1,312%の増加を記録し、年平均成長率は約17.4%という驚異的な水準を達成しています。2025年には54年連続増配を達成し、これは配当アリストクラット(25年連続増配)やディビデンド・キング(50年連続増配)をはるかに上回る記録です。同社の配当政策は、住宅市場の長期的な成長トレンドと、積極的な株主還元戦略を組み合わせた、株主重視のアプローチを反映しています。
2025年5月には四半期配当を$1.15から$1.20へと4%増配し、CEO のMarvin Ellison氏は「継続的な企業変革への取り組みと長期成長への投資に対する取締役会の信頼」を表明しました。現在の年間配当$4.80は、2024年の$4.50から7%増加しており、住宅市場の調整期においても安定した配当成長を維持しています。
配当成長率の進化と戦略的転換
ロウズの配当成長率は住宅市場の動向と株主還元強化戦略を反映した進化パターンを示しています:
- 2008〜2014年:基盤構築期(年間6〜26%の変動、金融危機からの回復と成長基盤確立)
- 2015〜2018年:安定成長期(年間17〜24%の高成長を持続、事業効率化の成果)
- 2019〜2021年:調整・加速期(年間9〜24%の成長、パンデミック特需対応)
- 2022〜2024年:超成長期(年間16〜32%の大幅成長、2022年は32%の記録的増額)
- 2025年〜:安定期(年間4〜7%の成長、新戦略への移行期)
このパターンの変化は、ロウズの「株主還元最優先」から「Total Home戦略による持続的成長」への戦略転換を反映しています。2022年の32%増配はパンデミック特需による収益急拡大の成果でしたが、2025年の7%増配は住宅市場正常化を見据えた持続可能な成長戦略を示しています。
重要な変化として、同社は配当成長と並行してプロフェッショナル事業の強化を加速しています。2025年に発表された$88億ドルでのFoundation Building Materials買収は、専門業者向け市場での競争力強化を目的としており、配当原資の多様化と安定化に寄与すると期待されます。
適度な配当利回りとTotal Home戦略
ロウズの配当利回りは、一般的に1.5%〜2.5%の範囲で推移し、小売業として適切な水準を維持しています。2025年現在の1.78%という利回りは、以下の戦略的バランスを反映しています:
- 高配当成長との両立:控えめな利回りながら年率17%超の配当成長を実現
- Total Home戦略への投資:住宅の新築からメンテナンスまで全工程への対応力強化
- プロ事業拡大:専門業者向け事業による収益安定化
- オムニチャネル強化:デジタル技術による顧客体験向上
- 株価上昇への貢献:配当増額が株価上昇を支える重要な要因
同社の戦略は従来の「配当成長と自社株買いの組み合わせによる総還元最大化」から、「Total Home戦略による持続的成長と安定配当」へと進化しています。新戦略では、①住宅建設からリフォームまでの包括的サービス、②プロフェッショナル市場での競争力強化、③デジタル・技術投資による差別化、④サステナビリティとエネルギー効率化対応、を柱としています。
配当性向の健全性と事業多様化
ロウズの配当性向は18%〜73%の範囲で推移していますが、近年は30〜40%の健全な水準で安定しています。2025年現在の39%という配当性向は、以下の健全性を示しています:
配当性向の安定化要因:
- 2020年〜2025年:30〜42%の安定した範囲(事業効率化とプロ事業強化の成果)
- 収益多様化:DIY市場(一般消費者)とPro市場(専門業者)のバランス改善
- Total Home戦略:住宅ライフサイクル全体への対応による安定需要の確保
- デジタル投資効果:オンライン売上成長(Q2 2025は7.5%増)とオムニチャネル効率化
健全性の背景:ロウズの配当性向が健全である理由は、住宅関連小売業界での強固な地位と戦略的事業転換にあります。同社は全米で約1,750店舗を展開し、DIY市場と専門業者向け市場の両方で競争力を強化しています。2025年のArtisan Design Group($13億ドル)とFoundation Building Materials($88億ドル)の買収により、プロ市場でのシェア拡大と収益安定化を図っています。
住宅市場の長期的な成長要因(住宅ストック老朽化、リモートワーク定着による住環境改善需要、エネルギー効率化投資、インフラ更新需要)により、景気変動に対する耐性も向上しています。現在の配当性向39%は十分な安全マージンを確保しており、将来の配当継続能力を支えています。
財務パフォーマンスと成長見通し
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。
主要財務指標の推移
年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
---|---|---|---|---|
2025(上半期) | 47,900 | 4,200 | 9 | 4,100 |
2024 | 86,377 | 8,140 | 9 | 7,726 |
2023 | 97,059 | 8,589 | 9 | 6,437 |
2022 | 96,250 | 10,113 | 11 | 8,442 |
2021 | 89,597 | 11,049 | 12 | 5,835 |
2020 | 72,148 | 4,296 | 6 | 4,281 |
2019 | 71,309 | 6,193 | 9 | 2,314 |
2018 | 68,619 | 5,065 | 7 | 3,447 |
2017 | 65,017 | 5,617 | 9 | 3,093 |
2016 | 59,074 | 4,784 | 8 | 2,546 |
2015 | 56,223 | 4,929 | 9 | 2,698 |
2014 | 53,417 | 4,111 | 8 | 2,286 |
2013 | 50,521 | 3,762 | 7 | 1,959 |
2012 | 50,208 | 4,349 | 9 | 1,839 |
2011 | 48,815 | 3,852 | 8 | 2,010 |
2010 | 47,220 | 4,054 | 9 | 1,783 |
2009 | 48,230 | 4,122 | 9 | 2,195 |
2008 | 48,283 | 4,347 | 9 | 2,809 |
住宅市場正常化とTotal Home戦略の推進
ロウズの2025年上半期財務データは、住宅市場の正常化局面における堅調な業績を示しています。Q2 2025の売上高は$240億ドル(前年同期比1.7%増)、調整EPSは$4.33(前年同期比5.6%増)を達成し、市場予想を上回る結果となりました:
- 売上高は2022年のピーク$962.5億ドルから2024年$863.8億ドルへと正常化中
- 営業CFマージンは9%水準を安定的に維持し、効率化の定着を示す
- 純利益は2022年の$84.4億ドルから2024年$77.3億ドルへと高水準を維持
- 2025年通期見通し:売上$845-855億ドル、EPS$12.10-12.35
特に注目すべきは、コンパラブル売上の安定化です。Q2 2025では月次推移が改善し(5月-1%→6月+0.3%→7月+4.7%)、住宅市場の底打ちを示唆しています。また、プロフェッショナル事業(専門業者向け)とDIY事業(一般消費者向け)の両方で堅調な売上を実現しており、Total Home戦略の効果が現れています。
デジタル技術への投資効果も顕著で、オンライン売上はQ2に7.5%成長し、MyLowe’s Rewardsロイヤリティプログラムの拡大により顧客エンゲージメントが向上しています。NFL やLionel Messiとのマーケティング提携、YouTuberのMrBeastを含むクリエイターネットワークの活用により、ミレニアル・Z世代への訴求も強化しています。
戦略的M&Aによるプロ事業強化
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。
年度 | 営業CF | 成長率 | 投資CF | 財務CF |
---|---|---|---|---|
2025(上半期) | 4,200 | – | -2,100 | -3,200 |
2024 | 8,140 | -5 | -1,901 | -6,666 |
2023 | 8,589 | -15 | -1,309 | -7,049 |
2022 | 10,113 | -8 | -1,646 | -12,016 |
2021 | 11,049 | 157 | -1,894 | -5,191 |
2020 | 4,296 | -31 | -1,369 | -2,735 |
2019 | 6,193 | 22 | -1,080 | -5,124 |
2018 | 5,065 | -10 | -1,441 | -3,607 |
2017 | 5,617 | 17 | -3,361 | -2,092 |
2016 | 4,784 | -3 | -1,343 | -3,493 |
2015 | 4,929 | 20 | -1,088 | -3,761 |
2014 | 4,111 | 9 | -1,286 | -2,969 |
2013 | 3,762 | -13 | -903 | -3,333 |
2012 | 4,349 | 13 | -1,437 | -2,549 |
2011 | 3,852 | -5 | -2,184 | -1,651 |
2010 | 4,054 | -2 | -1,886 | -1,801 |
2009 | 4,122 | -5 | -3,226 | -939 |
2008 | 4,347 | -3 | -4,123 | -307 |
ロウズの2025年上半期のキャッシュフローは、Total Home戦略に基づく戦略的投資の加速を反映しています。特にプロフェッショナル事業強化のためのM&A活動が活発化しており、投資CFの内容が従来の店舗投資からより戦略的な投資へと変化しています:
- 営業CFは年間$81.4億ドル(2024年)と安定した創出能力を維持
- 戦略的M&A:Q2にArtisan Design Group($13億ドル)買収完了、Foundation Building Materials($88億ドル)買収発表
- 効率的店舗投資:年間$15-20億ドル程度の最適化された設備投資
- 継続的株主還元:配当$6.45億ドル(Q2)と安定した自社株買い
投資CFの変化は、同社の戦略転換を明確に示しています。従来の店舗拡張中心から、①プロ市場でのM&A、②デジタル・オムニチャネル投資、③配送・ロジスティクス最適化、④サステナビリティ対応、への重点移行が進んでいます。
特に重要なのは、2025年に発表された2つの大型買収です。Artisan Design Groupは新築住宅市場での競争力強化、Foundation Building Materialsは商用・住宅建設の専門業者向け流通事業の拡大を目的としており、Total Home戦略の中核を成します。これらの買収により、ロウズは住宅のライフサイクル全体(新築→改修→メンテナンス)への対応力を大幅に強化します。
資本配分の進化:従来の「最大限株主還元」から「成長投資と配当のバランス」への転換により、長期的な競争優位性確保と持続可能な配当成長の両立を図っています。2025年通期では、M&A投資、配当支払い、自社株買いがバランス良く配分される見込みです。
財務構造の健全化と資本効率の改善
以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。
年度 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|---|
2025(Q2) | 44,500 | 58,200 | -13,700 | -31 | -30 |
2024 | 41,795 | 56,845 | -15,050 | -36 | -51 |
2023 | 43,708 | 57,962 | -14,254 | -33 | -45 |
2022 | 44,640 | 49,456 | -4,816 | -11 | -175 |
2021 | 46,735 | 45,298 | 1,437 | 3 | 406 |
2020 | 39,471 | 37,499 | 1,972 | 5 | 217 |
2019 | 34,508 | 30,864 | 3,644 | 11 | 64 |
2018 | 35,291 | 29,418 | 5,873 | 17 | 59 |
2017 | 34,408 | 27,974 | 6,434 | 19 | 48 |
2016 | 31,266 | 23,612 | 7,654 | 24 | 33 |
2015 | 31,721 | 21,753 | 9,968 | 31 | 27 |
2014 | 32,732 | 20,879 | 11,853 | 36 | 19 |
2013 | 32,666 | 18,809 | 13,857 | 42 | 14 |
2012 | 33,559 | 17,026 | 16,533 | 49 | 11 |
2011 | 33,699 | 15,587 | 18,112 | 54 | 11 |
2010 | 33,005 | 13,936 | 19,069 | 58 | 9 |
2009 | 32,625 | 14,570 | 18,055 | 55 | 12 |
2008 | 30,869 | 14,771 | 16,098 | 52 | 17 |
ロウズの財務構造は、2025年第2四半期時点で戦略転換期における調整を示しています。株主資本マイナス状態は継続していますが、これは過去の積極的株主還元戦略の結果であり、現在は新戦略に基づく正常化プロセスに入っています:
- 自己資本率は-31%(2025年Q2)で、2024年の-36%から改善傾向
- ROEは-30%(2025年Q2)で、異常な資本構成の正常化が進行中
- 総資産は戦略的買収により$445億ドル(2025年Q2)に拡大
- 安定したキャッシュフロー創出により、財務リスクは管理可能
財務構造の変化には、以下の戦略的要因が影響しています:
- 2015〜2022年:積極的株主還元による株主資本の意図的圧縮
- 2023〜2024年:住宅市場調整期における財務安定化
- 2025年〜:Total Home戦略による成長投資と財務正常化の並行推進
重要な点として、株主資本マイナス化は同社の戦略的選択の結果であり、住宅小売業の事業特性(高い資産回転率、効率的な在庫管理)により機能しています。しかし、現在の経営陣は過度な財務レバレッジのリスクを認識し、配当成長の適正化と成長投資へのシフトにより、長期的な財務健全性向上を図っています。
正常化への道筋:2025年以降、同社は①配当成長率の適正化(年10%以下)、②自社株買いの縮小、③成長投資の拡大、④営業CFフローの安定化、により段階的な財務構造改善を進める計画です。Total Home戦略の成功により、より安定した収益基盤と適正な資本構成の実現を目指しています。
まとめ:戦略転換期のロウズの投資価値
ロウズは、住宅関連小売業界の大手として、54年連続増配という驚異的な記録を持ちながら、現在は「最大限株主還元」から「Total Home戦略による持続的成長」への戦略転換期にあります。この転換により、短期的な配当成長は鈍化しますが、長期的にはより安定した配当基盤と成長機会を確保することが期待されます。
現在のロウズの強みは以下の点にあります:
- 54年連続増配という米国小売業界屈指の配当記録
- 17年間で1,312%の驚異的な配当成長実績(年平均17.4%)
- 全米約1,750店舗を展開する住宅関連小売業界の圧倒的地位
- Total Home戦略による住宅ライフサイクル全体への対応力強化
- プロ事業拡大:$101億ドルの大型M&Aによる専門業者市場強化
- デジタル変革:オンライン成長7.5%とオムニチャネル戦略
- 安定した営業キャッシュフロー創出能力(売上高の9%)
- 健全な配当性向(39%)による配当継続能力
一方で、注意すべき点としては:
- 住宅市場の金利感応性による業績変動リスク
- Home Depotとの激しい市場競争継続
- 極端な財務レバレッジ(株主資本マイナス)による金融リスク
- 大型M&Aの統合リスクと投資効果の不確実性
- eコマース競争激化とデジタル投資負担
- 原材料価格変動とサプライチェーン混乱リスク
- 経済後退時の裁量的支出削減による売上影響
- 配当成長率の正常化による株価上昇ペース鈍化
投資家へのポイント:ロウズへの投資は、「配当アリストクラットからディビデンド・キングへの進化」と「Total Home戦略による事業変革」の両方を享受できる機会です。短期的には配当成長率が年4-7%程度に正常化しますが、54年連続増配の記録継続と、プロ事業強化による収益安定化が期待されます。
特に注目すべきは、米国住宅市場の構造的成長要因(住宅ストック老朽化、エネルギー効率化投資、リモートワーク定着)が長期的な需要を支えることです。Total Home戦略の成功により、新築から改修・メンテナンスまで住宅ライフサイクル全体での収益機会を拡大し、景気変動に対する耐性向上も見込まれます。
年率10〜15%程度の総合リターン(配当+株価上昇)を期待する長期投資家にとって、現在の転換期は魅力的な投資機会を提供していると考えられます。ただし、財務レバレッジの高さと住宅市場の循環性を考慮し、ポートフォリオ内での適切な比重管理が重要です。
よくある質問
ロウズの配当削減リスクはどの程度ありますか?
ロウズの配当削減リスクは、財務レバレッジの高さにより一定程度存在しますが、54年連続増配の記録と経営陣の配当重視姿勢により、短期的な削減可能性は低いと考えられます。同社の配当性向は39%と健全な水準にあり、営業キャッシュフロー$81.4億ドル(2024年)は年間配当支払い額を十分にカバーしています。ただし、住宅市場の大幅な低迷や金利急上昇による需要減少が長期化した場合、配当成長の一時停止や小幅削減の可能性は否定できません。重要なのは、経営陣が「Total Home戦略による持続的成長」を明確に掲げており、過度な株主還元から事業投資重視への転換を進めていることです。この戦略転換により、中長期的には配当の安定性と成長性の両方が向上すると期待されます。また、プロ事業の強化により収益の景気耐性も改善されるため、従来よりも配当継続能力は向上していると評価できます。
Total Home戦略は従来のビジネスモデルとどう違うのですか?
Total Home戦略は、従来の「小売店舗での商品販売中心」から「住宅ライフサイクル全体でのソリューション提供」への根本的な転換を意味します。具体的には、①新築住宅向け資材供給(Artisan Design Group買収)、②商用・住宅建設の専門業者向け流通(Foundation Building Materials買収)、③DIY・リフォーム市場での既存強み、④メンテナンス・修繕サービス、を統合的に提供します。従来モデルでは住宅関連支出の一部しか取り込めませんでしたが、新戦略では住宅の建設から解体まで全工程での収益機会を創出します。また、顧客層も一般消費者(DIY)から専門業者(Pro)まで拡大し、景気変動に対する耐性も向上します。デジタル技術の活用により、オンライン注文→店舗受取、専門的アドバイス提供、配送・設置サービス等の付加価値サービスも強化されます。この戦略により、単発的な商品販売から継続的な関係構築へとビジネスモデルが進化し、より安定した収益基盤を確保できます。
住宅市場の金利上昇はロウズにどのような影響を与えますか?
金利上昇は短期的にはチャレンジですが、ロウズのTotal Home戦略により影響は従来より軽減されると考えられます。金利上昇により新築住宅需要は確かに減少しますが、①既存住宅の改修・メンテナンス需要は相対的に堅調、②住宅購入を延期した家庭の既存住宅投資増加、③エネルギー効率化リフォームへの政府支援継続、④プロ市場の商用建設需要の安定性、などの要因により需要下支えが期待されます。また、金利上昇環境では住宅の持ち家期間が延長される傾向があり、長期的なメンテナンス・改修需要は逆に増加する可能性があります。同社のプロ事業強化により、住宅以外の商用建設、インフラ更新、工業施設建設等への exposure も拡大しており、住宅市場単体への依存度は低下しています。重要なのは、金利サイクルは一時的である一方、米国の住宅ストック老朽化、エネルギー効率化需要、都市化進展は長期的な構造要因であることです。Total Home戦略により、これらの長期トレンドを捉える能力が強化されています。
大型M&Aの統合リスクと投資効果をどう評価すべきですか?
ロウズの大型M&A(Artisan Design Group$13億ドル、Foundation Building Materials$88億ドル)は、Total Home戦略の中核を成す重要な投資ですが、統合リスクと投資効果の両面で慎重な評価が必要です。ポジティブ要因として、①両社ともプロ市場での確立されたポジションを持つ、②ロウズの既存事業との相乗効果が明確、③住宅建設からリフォームまでの一貫したサービス提供が可能、④市場シェア拡大と価格決定力向上、が期待されます。一方、リスク要因として、①$101億ドルという巨額投資による財務圧迫、②異なる事業文化・システムの統合困難、③プロ市場での競争激化、④住宅市場低迷時の投資回収遅延、があります。ロウズの過去のM&A実績(成功事例もあれば失敗もある)を考慮すると、統合の成否は実行力に依存します。重要な評価ポイントは、①統合による売上相乗効果の実現度、②コスト削減効果の早期発現、③Pro顧客基盤の維持・拡大、④ROI目標(通常3-5年で投資回収)の達成、です。2025-2027年の業績でこれらの指標を注視することが投資判断において重要になります。
【出典】