NEM:ニューモントマイニングの配当推移

素材,配当,金・金鉱株

ニューモント・コーポレーション(Newmont Corporation)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2025* 1.34% 0% 18% 1 74.6 5.68
2024 2.34% 0% 34% 1 42.8 2.92
2023 3.35% -29% -49% 1.45 43.3 -2.97
2022 3.58% -7% -380% 2.05 57.3 -0.54
2021 3.63% 112% 151% 2.2 60.6 1.46
2020 1.80% -28% 30% 1.04 57.9 3.51
2019 3.96% 157% 38% 1.44 36.4 3.81
2018 1.56% 124% 88% 0.56 36 0.64
2017 0.71% 92% -119% 0.25 35.4 -0.21
2016 0.39% 30% -11% 0.13 33.1 -1.18
2015 0.47% -57% 23% 0.1 21.1 0.43
2014 0.98% -81% 23% 0.23 23.4 1.02
2013 3.76% -12% -24% 1.23 32.7 -5.09
2012 2.73% 40% 39% 1.4 51.3 3.61
2011 1.69% 100% 137% 1 59 0.73
2010 0.89% 25% 11% 0.5 56.2 4.55
2009 0.92% 0% 15% 0.4 43.5 2.66
2008 0.92% 0% 22% 0.4 43.4 1.83

*2025年は2025年9月30日時点の状況を踏まえた年換算の参考値です。[1]

配当政策の安定化と業績回復

NEMの配当実績は過去数年間で大きな変化を見せています。2024年から2025年にかけて、同社は四半期0.25ドル(年間1.00ドル)の配当を維持しており、過去の大幅な配当変動から一転して安定性を重視した政策へと転換しています。[1][2]

この安定化の背景には、金価格の上昇局面を追い風としたキャッシュフローの改善があります。2025年Q3の平均実現金価格は3,539ドル/ozと前四半期から上昇し、同四半期のフリーキャッシュフローは16億ドルと、同社が「記録的水準」と位置づける強い内容でした。[1]

加えて、ニューモントは2025年に入ってから資産売却や持分売却等により、ネットで35億ドル超の資金を確保したと説明しています。事業の選択と集中を進めつつ、財務と株主還元の両立を目指す姿勢がより鮮明になりました。[1]

配当成長率の推移

NEMの配当成長率は極めて変動的でした:

  • 2010〜2012年:積極的増配期間(25%、100%、40%の成長)
  • 2013〜2015年:金価格下落による大幅減配期(-13%、-82%、-56%)
  • 2016〜2019年:回復・拡大期間(30%、92%、124%、157%の高成長)
  • 2020年:コロナショックによる減配(-28%)
  • 2021年:大幅増配(112%)
  • 2022〜2023年:連続減配期間(-7%、-29%)
  • 2024〜2025年:安定維持期間(0%、0%)

2024年以降の配当据え置きは、過去の変動的な配当政策からの戦略的転換を示しています。株主還元では自社株買いも併用しており、2025年7月に追加枠が承認された結果、累計で60億ドルの承認枠の下で買い戻しを進めています。2025年Q3決算公表時点での累計実行額は33億ドル、残額は27億ドルとされています。[1]

配当利回りと投資魅力

2025年の平均利回りは1%台前半と、2019〜2021年の高配当期(3〜4%前後)と比べると低い水準にあります。これは配当が安定した一方で、金価格上昇を背景に株価が高水準で推移している影響が大きいと考えられます。[1]

注目ポイント:NEMは従来の景気循環的な配当政策から、より予測可能で安定した配当政策へと比重を移しています。強いキャッシュフローと資産入れ替えの進展が、金価格変動に対する耐性を底上げしている点は押さえておきたいところです。[1]

配当性向の健全化

2025年の配当性向は、利益回復局面を映して低位で推移しているとみられます。2025年Q3は調整後EPSが四半期で1ドル台後半まで伸び、配当0.25ドルとのバランスは良好です。配当の持続可能性は、2023年までの赤字局面と比べて大きく改善しました。[1]

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益は百万ドル(M$)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2025* 21,280 9,600 45% 6,050
2024 18,682 6,363 34% 3,348
2023 11,812 2,763 23% -2,494
2022 11,915 3,220 27% -429
2021 12,222 4,279 35% 1,166
2020 11,497 4,882 42% 2,829
2019 9,740 2,866 29% 2,805
2018 7,253 1,827 25% 341
2017 7,379 2,124 29% -114
2016 6,680 2,786 42% -629
2015 6,085 2,145 35% 220
2014 6,819 1,438 21% 508
2013 8,414 1,543 18% -2,534
2012 9,964 2,372 24% 1,802
2011 10,358 3,584 35% 366
2010 9,540 3,167 33% 2,277
2009 7,705 2,947 38% 1,297
2008 6,124 1,293 21% 831

*2025年は2025年1-9月(2025年Q3まで)の状況を踏まえた年換算の参考値です。[1]

業績の回復とキャッシュ創出の質的改善

2024通期はニュークレスト統合後の再構築と資産入れ替えが本格化した年で、2025年には金価格上昇とコスト規律の強化が収益力の押し上げに寄与しています。[2]

2025年Q3は、営業キャッシュフローが23億ドル、フリーキャッシュフローが16億ドルと高水準で、年初来(2025年1-9月)でもフリーキャッシュフローは44.86億ドルに達しました。配当の安定化に加え、自社株買いと成長投資の同時遂行が現実味を帯びてきた局面といえます。[1]

記録的なキャッシュフロー生成

2025年Q3のフリーキャッシュフロー16億ドルは、金価格上昇局面での収益てこ作用と、非中核資産の整理・コストコントロールが噛み合った結果と考えられます。会社側も2025年に売却等で35億ドル超の資金を回収したとし、Tier 1資産への集中と財務の柔軟性確保を強調しています。[1]

まとめ:2025年以降のNEMへの投資戦略

NEMは2024-2025年にかけて「変動の大きい配当銘柄」から「安定配当+資源価格上昇の取り込み」をより意識した還元姿勢へと移行しています。2025年Q3時点の利益・キャッシュフロー水準は、配当維持の裏付けとして十分に説得力のある内容です。[1]

同社の新たな強みは以下の点にあります:

  • 2025年Q3のフリーキャッシュフロー16億ドル、年初来44.86億ドルの高い創出力[1]
  • 四半期0.25ドルの安定配当の継続[1]
  • 累計60億ドルの承認枠に基づく柔軟な自社株買い[1]
  • 統合完了後の資産入れ替えとTier 1鉱山への集中[2]
  • 金・銅の複合生産によるコモディティリスクの分散[3]

2025年以降の投資戦略:NEMへの投資は、「安定配当収入」と「金価格上昇の恩恵」を両立しやすい形へと整理されつつあります。配当は控えめでも、強いキャッシュフローと買い戻しの組み合わせが総還元の厚みを生みやすい局面です。[1]

よくある質問

2025年以降のNEMの配当はどの程度安全ですか?

2025年Q3のフリーキャッシュフロー16億ドル、年初来の44.86億ドルという実績は、四半期0.25ドル配当の継続を支えるうえで強い材料です。会社側も資産売却の進捗とコスト規律の改善を強調しており、少なくとも2025年の還元余力は過去数年と比べて明確に高いとみられます。[1]

株価が高値圏にある中で、今から投資するメリットはありますか?

配当利回りだけを見ると控えめですが、金価格上昇局面では鉱山会社特有のレバレッジが働きやすく、利益・キャッシュフローの伸びが株主還元と株価の両面に波及しやすい点が特徴です。還元の中心が「安定配当+買い戻し」に移っている点も評価材料になります。[1]

自社株買いプログラムの配当への影響はどうですか?

2025年Q3決算公表時点で、累計60億ドルの承認枠のうち33億ドルが実行済みとされています。発行株式数の抑制は、同じ配当総額でも1株当たり価値の底上げに寄与し得るため、配当を急拡大させずに総還元を厚くする現実的な手段といえます。[1]

※免責事項

本記事は投資判断の参考として公開情報を整理したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

ミニ解説:2025年Q3のポイントは「高い実現金価格」「記録的フリーキャッシュフロー」「資産売却の進展」「買い戻し枠の厚み」です。配当利回り単体よりも、総還元(配当+自社株買い)と金価格サイクルの組み合わせで評価する局面に移っています。[1]

【注】(出典リンク)

  1. 2025年Q3決算・配当0.25ドル・FCF・自社株買い進捗 → Newmont IR: Q3 2025 Results(確認日:2025-12-06)
  2. 2024通期決算・2025見通し・2024年Q4配当0.25ドル → Newmont IR: FY 2024 Results & 2025 Guidance(確認日:2025-12-06)
  3. 事業概要・リスク・資産構成(ニュークレスト統合後の基礎情報) → Newmont 2024 Form 10-K(確認日:2025-12-06)

Posted by 南 一矢