NEM:ニューモントマイニングの配当推移

素材,配当,金・金鉱株

ニューモント・コーポレーション(Newmont Corporation、ティッカー:NEM)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを見る指標)等も確認します。NEMの場合、金価格サイクルの影響が大きいため、EPSだけでなく、フリーキャッシュフロー、自社株買い、ネットキャッシュの状況も合わせて見ることが重要です。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当、平均株価、通年EPSの推移を確認します。2025年以降は、従来の四半期0.25ドル配当から、2026年Q1時点で四半期0.26ドルへ小幅に引き上げられています。[1][2]

配当 平均株価 年EPS
(報告)
調整後EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2026E 約0.9%
(5月7日)
約4% 約13%
(TTM EPS比)
1.04
(現行年率)
117.59
(5月7日)
約7.71
(TTM)
2025 約1% 約16% 1.01 6.39 6.89
2024 2.34% 0% 34% 1.00 42.8 2.92 3.48
2023 3.35% -29% -49% 1.45 43.3 -2.97
2022 3.58% -7% -380% 2.05 57.3 -0.54
2021 3.63% 112% 151% 2.20 60.6 1.46
2020 1.80% -28% 30% 1.04 57.9 3.51
2019 3.96% 157% 38% 1.44 36.4 3.81
2018 1.56% 124% 88% 0.56 36.0 0.64
2017 0.71% 92% -119% 0.25 35.4 -0.21
2016 0.39% 30% -11% 0.13 33.1 -1.18
2015 0.47% -57% 23% 0.10 21.1 0.43
2014 0.98% -81% 23% 0.23 23.4 1.02
2013 3.76% -12% -24% 1.23 32.7 -5.09
2012 2.73% 40% 39% 1.40 51.3 3.61
2011 1.69% 100% 137% 1.00 59.0 0.73
2010 0.89% 25% 11% 0.50 56.2 4.55
2009 0.92% 0% 15% 0.40 43.5 2.66
2008 0.92% 0% 22% 0.40 43.4 1.83

※2025年の年間配当は、四半期0.25ドルを基本に、2025年第4四半期分として2026年2月に宣言された0.26ドルを含めた概算です。2026Eは、2026年Q1に宣言された四半期配当0.26ドルを4倍した現行年率配当1.04ドルを用いています。[1][2]

配当政策の安定化と業績回復

NEMの配当実績は過去数年間で大きな変化を見せています。2024年から2025年にかけて、同社は四半期0.25ドルを中心とした安定配当を維持してきました。2026年Q1には四半期0.26ドルへ小幅に引き上げられ、現行年率配当は1.04ドルとなっています。[1][2]

この安定化の背景には、金価格の上昇局面を追い風としたキャッシュフローの改善があります。2025年通期の平均実現金価格は3,498ドル/oz、2026年Q1は4,900ドル/ozまで上昇しました。2025年通期のフリーキャッシュフローは73億ドル、2026年Q1だけでも31億ドルに達しています。[1][2]

加えて、ニューモントは2025年に非中核資産の売却を進め、2025年中に36億ドル、2026年1月分を含めた累計で45億ドルの税引後売却収入を得たと説明しています。これにより、Debtを34億ドル削減し、2025年末にはネットキャッシュ20.58億ドル、2026年Q1末にはネットキャッシュ32.43億ドルという強い財務ポジションに移行しました。[1][2]

配当成長率の推移

NEMの配当成長率は極めて変動的でした:

  • 2010〜2012年:積極的増配期間(25%、100%、40%の成長)
  • 2013〜2015年:金価格下落による大幅減配期(-13%、-82%、-56%)
  • 2016〜2019年:回復・拡大期間(30%、92%、124%、157%の高成長)
  • 2020年:コロナショック下での配当調整(-28%)
  • 2021年:大幅増配(112%)
  • 2022〜2023年:連続減配期間(-7%、-29%)
  • 2024〜2025年:四半期0.25ドルを中心とした安定維持期間
  • 2026年:新しい資本配分方針のもと、四半期配当を0.26ドルへ小幅引き上げ

2024年以降の配当据え置きと、2026年の小幅引き上げは、過去の変動的な配当政策から、より持続可能で予測しやすい配当政策へ移行していることを示しています。会社は2026年から、年間11億ドル規模のサステナブルな現金配当を基本とし、自社株買いで発行株式数を減らすことで、1株当たり配当を徐々に引き上げる考え方を示しています。[1]

配当利回りと投資魅力

2026年5月7日時点の配当利回りは約0.9%です。これは、2019〜2023年の高配当期と比べるとかなり低い水準です。理由は単純で、配当が安定的な水準に抑えられている一方、金価格上昇と業績改善を背景に株価が大きく上昇しているためです。[3]

注目ポイント:NEMは、現在の株価水準では「高配当銘柄」というより、金価格上昇の恩恵を受ける資源株+安定配当+大規模自社株買いの組み合わせで評価する銘柄です。2026年Q1には、従来の60億ドル自社株買い枠を使い切ったうえで、追加の60億ドル枠を承認しています。[2]

配当性向の健全化

2025年の報告EPSは6.39ドル、調整後EPSは6.89ドルでした。年間配当は1.01ドル前後であるため、報告EPSベースの配当性向は約16%、調整後EPSベースでは約15%にすぎません。2026年Q1も、報告EPS3.00ドル、調整後EPS2.90ドルに対して四半期配当0.26ドルであり、配当負担は非常に軽い水準です。[1][2]

配当の持続可能性は、2023年までの赤字局面と比べて大きく改善しました。むしろ現在の論点は、「配当を維持できるか」ではなく、「金価格高騰による余剰キャッシュを、どの程度まで自社株買い・増配・成長投資に振り向けるか」に移っています。

財務パフォーマンスと成長見通し

以下の表では、売上高、営業CF、純利益は百万ドル(M$)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益 調整後EPS
2026 Q1 7,313 3,785 52% 3,262 2.90
2025 22,669 10,334 46% 7,085 6.89
2024 18,682 6,363 34% 3,348 3.48
2023 11,812 2,763 23% -2,494
2022 11,915 3,220 27% -429
2021 12,222 4,279 35% 1,166
2020 11,497 4,882 42% 2,829
2019 9,740 2,866 29% 2,805
2018 7,253 1,827 25% 341
2017 7,379 2,124 29% -114
2016 6,680 2,786 42% -629
2015 6,085 2,145 35% 220
2014 6,819 1,438 21% 508
2013 8,414 1,543 18% -2,534
2012 9,964 2,372 24% 1,802
2011 10,358 3,584 35% 366
2010 9,540 3,167 33% 2,277
2009 7,705 2,947 38% 1,297
2008 6,124 1,293 21% 831

業績の回復とキャッシュ創出の質的改善

2024通期はニュークレスト統合後の再構築と資産入れ替えが本格化した年で、2025年には金価格上昇、コスト管理、非中核資産売却が同時に進み、収益力が大きく改善しました。2025年通期の売上高は226.69億ドル、営業CFは103.34億ドル、フリーキャッシュフローは72.99億ドルでした。[1]

2026年Q1はさらに強い内容で、平均実現金価格は4,900ドル/oz、営業CFは37.85億ドル、フリーキャッシュフローは31.44億ドルに達しました。金価格上昇局面における鉱山会社の営業レバレッジが、利益とキャッシュフローに非常に強く表れています。[2]

記録的なキャッシュフロー生成

2025年通期のフリーキャッシュフロー72.99億ドルは過去最高水準で、2026年Q1には四半期だけで31.44億ドルを記録しました。これは、金価格上昇、銀・銅など副産物価格の上昇、AISC改善、非中核資産売却後のポートフォリオ集中が組み合わさった結果です。[1][2]

キャッシュフローと還元の見方

  • 2025年通期:営業CF103.34億ドル、FCF72.99億ドル、配当支払11.06億ドル。
  • 2026年Q1:営業CF37.85億ドル、FCF31.44億ドル、四半期配当0.26ドルを宣言。
  • 自社株買い:2025年は23.03億ドルの自社株買いを実施。2026年Q1には従来の60億ドル枠を使い切り、追加60億ドル枠を承認。
  • 財務:2026年Q1末の現金及び現金同等物は87.75億ドル、ネットキャッシュは32.43億ドル。

バランスシート分析と財務健全性

資本構成と負債水準の推移

年度 総資産
(B$)
総負債
(B$)
株主資本
(B$)
自己資本率 Debt
(B$)
Net debt
(cash)
2026 Q1 57.7 22.6 34.9 60.6% 5.1 -3.2
2025 57.1 23.1 33.9 59.3% 5.1 -2.1
2024 55.3 24.1 31.2 56.5% 8.5 5.3
2023 42.0 17.8 24.0 57.1%
2022 38.6 17.3 21.1 54.7%
2021 40.0 17.8 22.0 55.0%
2020 41.6 19.6 21.7 52.2%
2019 40.1 18.8 21.0 52.4%

バランスシート構造の特徴と注意点

  • ネットキャッシュ化:2025年末はネットキャッシュ20.58億ドル、2026年Q1末は32.43億ドルのネットキャッシュとなりました。これは2024年末のネットデット53.08億ドルから大きな改善です。[1][2]
  • Debt削減:2025年にDebtを34億ドル削減し、2025年末のDebtは51.15億ドル、2026年Q1末は50.79億ドルです。
  • 現金残高:2026年Q1末の現金及び現金同等物は87.75億ドル、総流動性は128億ドルです。
  • 資本配分方針:年間11億ドル規模の持続可能な現金配当、ネットキャッシュ目標、開発投資、自社株買いを組み合わせる方針です。
  • 注意点:金価格が大きく下落した場合、現在の高いFCFは急速に縮小する可能性があります。配当は低めに抑えられているため安全性は高い一方、自社株買いは市況次第で変動しやすい還元策です。

2026年ガイダンスと投資計画

2026年の会社ガイダンスでは、帰属金生産量は約530万オンス、金の副産物AISCは1,680ドル/ozを見込んでいます。維持投資は約19.5億ドル、開発投資は約14億ドルで、Cadia Panel Caves、Tanami Expansion 2、Red Chrisのフィージビリティスタディなどを進める計画です。[1]

2026年Q1時点では、帰属金生産量は130万オンス、金の副産物AISCは1,029ドル/ozでした。Q1は副産物価格や販売量、維持投資の低さなどが有利に働きましたが、会社は年後半に維持投資が増える見通しも示しています。したがって、Q1のAISCを通年にそのまま引き伸ばすのではなく、会社ガイダンスを基準に見るのが妥当です。[2]

まとめ:2026年以降のNEMへの投資戦略

NEMは2024〜2026年にかけて、「変動の大きい配当銘柄」から「安定配当+大規模自社株買い+金価格上昇の取り込み」を重視する還元姿勢へと移行しています。2025年通期と2026年Q1の利益・キャッシュフロー水準は、配当維持の裏付けとして非常に強い内容です。[1][2]

同社の新たな強みは以下の点にあります:

  • 2025年通期FCF72.99億ドル、2026年Q1のFCF31.44億ドルという高い創出力
  • 四半期0.26ドルへの小幅増配と、年間11億ドル規模の安定配当方針
  • 追加60億ドル枠を含む大規模な自社株買い
  • 2026年Q1末でネットキャッシュ32.43億ドルという強いバランスシート
  • Tier 1鉱山への集中と非中核資産売却の完了
  • 金・銅・銀など複数金属へのエクスポージャー

2026年以降の投資戦略:NEMへの投資は、「高配当」よりも、「金価格上昇局面での利益レバレッジ」「低めだが安定した配当」「余剰キャッシュによる自社株買い」の組み合わせで考える局面です。配当利回りだけを見ると魅力は控えめですが、FCFとネットキャッシュの改善を踏まえると、総還元と株価上昇余地を重視する投資家にとっては注目度の高い銘柄です。

よくある質問

2026年以降のNEMの配当はどの程度安全ですか?

現時点ではかなり安全性が高いと考えられます。2025年通期のFCFは72.99億ドル、配当支払は11.06億ドルであり、FCF配当カバー率は約6.6倍です。2026年Q1もFCF31.44億ドルに対して四半期配当0.26ドルで、配当負担は軽い水準です。ただし、金価格が大きく下落すればFCFも縮小するため、配当安全性は金価格とAISCの差に大きく左右されます。[1][2]

株価が高値圏にある中で、今から投資するメリットはありますか?

配当利回りだけを見ると約0.9%と控えめです。しかし、金価格上昇局面では鉱山会社特有のレバレッジが働きやすく、利益・キャッシュフローの伸びが自社株買いと株価の両面に波及しやすい点が特徴です。2026年Q1時点で、会社は従来の60億ドル買い戻し枠を使い切り、追加60億ドルの自社株買い枠を承認しています。配当よりも、金価格と総還元を重視する投資判断になります。[2]

自社株買いプログラムの配当への影響はどうですか?

会社は2026年から、年間11億ドル規模の現金配当を基本にしつつ、自社株買いで発行株式数を減らすことで、1株当たり配当を引き上げる考え方を示しています。つまり、配当総額を急に増やすのではなく、株式数を減らして1株当たり価値を高める設計です。これは、資源価格サイクルに左右されやすい鉱山会社としては、比較的保守的で現実的な株主還元策といえます。[1]

※免責事項

本記事は投資判断の参考として公開情報を整理したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

ミニ解説:2026年のNEMを見るポイントは「配当利回り」よりも、「金価格」「FCF」「ネットキャッシュ」「自社株買い」です。配当は低めに抑えられていますが、金価格上昇で生まれた余剰キャッシュを、Debt削減と自社株買いに回す構図が鮮明になっています。

【注】(出典リンク)

  1. 2025年通期決算・2026年ガイダンス・配当0.26ドル・資本配分方針 → 一次情報:Newmont IR「Fourth Quarter and Full Year 2025 Results」SEC EDGAR「Newmont 2025 Results 8-K」(確認日:2026-05-08)
  2. 2026年第1四半期決算・配当0.26ドル・FCF31億ドル・追加60億ドル自社株買い枠 → 一次情報:SEC EDGAR「Newmont Q1 2026 Earnings Release」Newmont IR「First Quarter 2026 Results」(確認日:2026-05-08)
  3. 株価・配当利回り・時価総額 → 参考情報:Google Finance「NEM:NYSE」StockAnalysis「Newmont」(確認日:2026-05-08)
  4. 2024通期決算・2024年配当・ニュークレスト統合後の事業基盤 → 一次情報:Newmont IR「Full Year 2024 Results」Newmont 2024 Form 10-K(確認日:2026-05-08)
  5. 事業概要・鉱山ポートフォリオ・金銅銀の資源構成 → 一次情報:Newmont Operations & ProjectsNewmont About Us(確認日:2026-05-08)

Posted by 南 一矢